右肩だけ痛い時に考えられる原因は?要注意な病気や簡単なセルフケアを解説

肩の痛みの中でも「片方の肩だけが痛む」ケースは多いです。とくに、右利きの方にとって、右肩のみに現れる痛みは厄介なはず。

「なぜ右肩だけ痛むのだろう?」と疑問を抱くのも不思議ではありません。そして、できるだけ早く右肩を楽にしたいと思うでしょう。

そこで当記事では、右肩だけが痛む原因や、痛み緩和に効果的なセルフケアを詳しく紹介します。

最後まで読み進めることで、あなたの右肩が痛む理由について見当がつき、対処法まで分かるでしょう。

ぜひ参考にしてください。

なぜ右肩だけが痛む?原因(病気)は?

さっそく、右肩が痛む原因について解説していきます。

ご自身の痛み方と類似点がないか、心当たりがないかを照らし合わせてみましょう。

なお、これより紹介する痛みの特徴や種類については例外もあります。したがって原因を正確に知るには医療機関への受診が必要です。

あらかじめ把握しておいてください。

筋肉の疲れ・凝り

右肩が痛む原因の1つ「筋肉の疲れ・凝り」

まず考えられるのは、肩周りの筋肉の疲れ・凝りです。こういった痛みは右肩にも左肩にも発症し得ますが、普段から右手を多く使う場合は、右肩に痛みが出やすいと思われます。

肩の筋肉の軽い疲労は、いわゆる「肩こり」に該当すると思われ、少し休めば改善するでしょう。

しかし、痛みに加えて「しびれ」も伴う場合、鎖骨の下から出る神経が圧迫される「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」の可能性が考えられ、長期化するケースが多いです。

肩の筋肉が疲れたり凝ったりする要因としては、右肩への負荷の蓄積が考えられます。

右手を上げた体勢で長時間作業しませんでしたか。あるいはスポーツや筋トレで右手を酷使していませんか。

そのほか右肩への負荷が増える理由には「姿勢の悪さ」「運動不足による肩の筋力低下」「毎晩右肩を下にして就寝している」などがあります。

参考記事:鎖骨の下が痛いのは胸郭出口症候群なの?痛みの原因と簡単なセルフケア方法を紹介

首から発生する肩の痛み

首に原因がある痛みが、右肩まで広がるケースもあり得ます。首と肩は筋肉や神経でつながっているからです。

考えられる病気としては、首の骨(頚椎)が変形する「頚椎症(けいついしょう)」や、頚椎と頚椎の間に挟まっている椎間板(ついかんばん)が飛び出る「頚椎椎間板ヘルニア」などです。

頚椎症も頚椎椎間板ヘルニアも、痛みとともに「しびれ」や「筋力低下」が、左右どちらかに発生しやすいという特徴があります。

したがって右肩にも左肩にも発症する可能性はありますが、右手を多く使う場合は、右肩に痛みやしびれが現れやすいと思われます。

頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアが発生する要因は、「遺伝」「首への負荷」「生活習慣」などです。

もし、右肩だけでなく首も痛む場合は、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアの可能性を考えましょう。

参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介

スポーツ・転倒などによる怪我

スポーツや日常生活での「怪我」が原因かもしれません。

「プレー中に右肩をぶつけた」「階段で転んだ際に右肩を打った」などがきっかけで右肩を痛めた可能性はあるでしょう。右肩を痛めた瞬間について「心当たりがない」「忘れている」というケースも。

もちろん軽い怪我であれば、短期間で改善するケースが多いです。

しかし、腱板(肩甲骨と腕をつなぐ筋肉の総称)が損傷あるいは切れてしまう「腱板損傷・腱板断裂」や、肩が外れてしまう「脱臼(だっきゅう)」になれば、改善までに時間がかかります。

なお、特に前触れもなく、腱板損傷・腱板断裂や脱臼が自然に発症するケースもあるので要注意です。

加齢により発生する痛み

加齢」によって右肩の痛みが発生している可能性も考えましょう。

20代ではほとんど現れず、40代以降に好発する肩の疾患がいくつか存在します。たとえば、「石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)」や「肩関節周囲炎」(いわゆる五十肩)などです。

もし「突然肩がズキズキ痛み出した」としたら、石灰沈着性腱板炎や肩関節周囲炎かもしれません。

ただし、石灰沈着性腱板炎も肩関節周囲炎も、原因や発生機序について分かっていない点も多いです。また、どちらも両側の肩に発症するケースがあるので注意してください。

参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介

内臓の病気

そのほか考えられるのは、内臓の病気により右肩が痛むケースです。

以下の病気では、右肩に激痛が現れる可能性があります。

  • 胆石症(胆嚢に石ができる病気)
  • 肺炎(肺に炎症が起こる病気)
  • 気胸(肺に穴が空く病気)
  • 肝炎(肝臓の細胞が破壊される病気)

なお、内臓の病気が原因で肩や腰などに現れる痛みを「放散痛(ほうさんつう)」と呼びます。

右肩の痛みに加え、「だるさ」「発熱」「息を吸うと痛む」「食欲減退」などが現れている場合は要注意です。すぐに医療機関で診察を受けましょう。

参考記事:背中の右側の痛みは内臓が原因!?考えられる原因と適切な対処法

【放置はダメ】早めに病院を受診しよう

病院で右肩を診てもらっている様子

右肩に痛みを感じても、多忙などの理由から「我慢しよう」と考えてしまいがちです。

痛みが小さいうちはまだしも、放置することで痛みが長引いたり増したりする可能性があります。一概には言えませんが、右肩の痛みが自然に消えることはほとんどないとお考えください。

そして、内臓の病気が原因だった場合、放置していたことで取り返しがつかないことになる可能性もあります。

したがって痛みの程度にかかわらず、できるだけ早く病院で診てもらうことが大切です。検査によって痛みの原因が分かれば、適切な治し方も分かってきます。

そのうえで、お医者さんのアドバイスを仰ぎながら、ご自身でも痛みの改善に取り組みましょう。

右肩の痛みを改善するエクササイズ・セルフケア

ではここから、右肩の痛みを改善するために有効なエクササイズ・セルフケアをいくつかご紹介します。

いずれも、コツコツ続けることで効果が出てきます。費用がかからない方法ばかりなので、ぜひ実践してみてください。

痛みが強いうちは安静にする

言うまでもありませんが、痛みを我慢して肩を動かすことは避けるべきです。

右肩の痛みが強いうちは、できるだけ安静にするように心がけましょう。右手を使う作業を最小限に抑えてみてください。

また、右肩が痛みだして間もない段階では、肩周りを冷やすのが効果的です。炎症が引いていけば、痛みが幾分楽になります。

加えて、就寝時は仰向けの寝相を心がけつつ、肘の下にタオルを置くのがおすすめです。この方法で肩への負担を減らすことが可能です。

肩用サポーターの着用も有効

右肩の痛みが強い段階では、肩用サポーターの着用も効果的です。

サポーターを着用することで右肩が保護され、動きが適度に制限されるので、日常動作が行いやすくなります。

サポーターを選ぶ際は、素材やサイズをよくチェックしてみてください。付け替えられるように、あらかじめ複数購入しておくのも良いでしょう。

ただし、サポーターはあくまで補助であって、痛みを改善する効果はありません。肩が動かせるようになった段階で、サポーターを外すように心がけてください。

ストレッチ

肩を動かすのが可能になったら、ストレッチを行うのがおすすめです。

ストレッチには、「肩関節の動きをスムーズにする」「肩周りの血流を良くする」など多くのメリットがあります。空き時間を使って取り組みましょう。

それではおすすめのストレッチを紹介します。

1つ目は「斜角筋(しゃかくきん)ストレッチ」です。

斜角筋ストレッチ
STEP1:片手を後方に回し、もう一方の手で鎖骨を抑えます
STEP3:首を斜め後方へ反らしましょう
STEP4:元の姿勢に戻ります
※腰を反らさないように注意しましょう

上記のストレッチを行うことで、首の動きや安定性に関係する「斜角筋(しゃかくきん)」という筋肉が伸ばされます。とくに、先ほど紹介した「胸郭出口症候群」の改善に効果が期待できます。

2つ目は「胸張り運動」です。

胸張り運動
STEP1:両手を前方に伸ばしましょう
STEP2:胸を張りながら肩甲骨を内側へ寄せます
STEP3:背中を丸めながら両手を前方へ伸ばしましょう
※顎を引きながら実施しましょう

こちらのストレッチは、肩の後ろに付く肩甲骨を内側に寄せる・安定させる際に作用する「僧帽筋中部線維(そうぼうきんちゅうぶせんい)」や「菱形筋(りょうけいきん)」を柔らかくする効果があります。

とくに「肩関節周囲炎(五十肩)」や「腱板断裂・腱板損傷」の改善に有効です。

ほかにも右肩の痛みに効くストレッチ方法はあります。なお、ストレッチを行う際はバランスを考慮し、左側も同様に行うように意識してみてください。

参考記事:【ガチガチ肩こり解消】寝ながらできる肩甲骨ストレッチを動画で解説!
参考記事:【動画で解説】座ったままで肩こり解消!簡単にできる肩甲骨ストレッチを紹介

筋力トレーニング

ストレッチができるようになったら、筋力トレーニングも行いましょう。

肩の筋トレによって筋力がアップすることで、肩周りの安定性が増します。結果的に肩への負担が減り、痛み改善につながります。

筋トレといっても、器具を用意する必要もなければ、ジムに通う必要もありません。以下より、自宅にいながらできるおすすめの筋トレを紹介します。

1つ目は「スキャプラ・プッシュ・アップ」です。

スキャプラ・プッシュ・アップ
STEP1:両肘を地面につけます
STEP2:肘で背中を押し背中を丸めましょう
STEP3:胸を前方に出しながら背中を反らします
STEP4:2つの動作を繰り返し実施しましょう
※背中を丸める際はお腹を覗きましょう
※背中を大きく動かすように意識してみてください

この筋トレによって、脇の下から肩甲骨にかけて付く「前鋸筋(ぜんきょきん)」が鍛えられ、肩甲骨の動きが良くなります

2つ目は「僧帽筋下部エクササイズ」です。

僧帽筋下部エクササイズ
STEP1:うつ伏せになり片手を伸ばしましょう
STEP2:伸ばした手を上方へ持ち上げます
STEP3:ゆっくり下ろします
※可能な限り腕を高く挙げてみてください
※肘が曲がらないように注意しましょう

こちらの筋トレを行うことで、肩甲骨を下方に寄せたり安定させたりする働きを持つ「僧帽筋下部線維(そうぼうきんかぶせんい)」が鍛えられます。

肩周りの筋トレを行う際は、くれぐれも無理をしないように注意しつつ、左側も同回数行うように心がけましょう。

生活習慣を見直す

ストレッチや筋トレとあわせて、生活習慣を見直してみてください。肩の痛みとは無関係に思える癖やルーティンが、実は密接につながっているケースは多いです。

まず、悪い姿勢は肩への負担を増やします。とくに「猫背」「巻き肩」「なで肩」は右肩の痛みにつながりやすいので、ぜひ矯正しましょう。

そして「寝不足」「栄養バランスが偏った食事」「喫煙」なども、筋肉の緊張を招き痛みを増大させる要因になります。

もちろん健康だけを考えて生活するわけにはいきませんが、肩の痛みから解放されるためにも、生活習慣を改めることをおすすめします。

参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
参考記事:巻き肩を治す方法はある?効果的な寝方やグッズの使い方・おすすめストレッチを解説
参考記事:なで肩がひどい時の3つの対処法 〜肩こりもこれで改善!〜

右肩の痛みはどのくらいで改善する?

右肩の痛みは少なからず日常生活に影響を及ぼします。したがって、「右肩の痛みはどのくらいの期間で改善するのか」が気になる方も多いはず。

痛みの改善するまでの期間について、一概には言えません。人によって体質や骨格などが異なるからです。

とはいえ、1か月以内に痛みがなくなるケースはほとんどなく、3か月から6か月は痛みが続くとお考えください。重症であれば、1年以上かかるケースもあり得ます。

ただし、セルフケアを続けたり生活習慣を改めたりできれば、右肩の痛みをより早く改善できるでしょう。

まとめ

右肩だけ痛む場合、まずは「どういった痛み方なのか」「痛みの原因について心当たりがないか」を確かめましょう。

繰り返しになりますが、決して痛みを放置せず、早めに病院を受診するべきです。そのうえで、ご自身でセルフケアを実践してみてください。

右肩の痛みが徐々に改善していけば、日常生活をより快適に送れるでしょう。

それでは当記事が、少しでもあなたの悩み解決に役立てば幸いです。

【参考文献】
1)Mark R. Jones,corresponding author1 Amit Prabhakar,2 Omar Viswanath,3,4,5 Ivan Urits,1 Jeremy B. Green,6 Julia B. Kendrick,6 Andrew J. Brunk,6 Matthew R. Eng,6 Vwaire Orhurhu,1 Elyse M. Cornett,7 and Alan D. Kaye6:Thoracic Outlet Syndrome: A Comprehensive Review of Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment
2)Sravisht Iyer 1, Han Jo Kim 2:Cervical radiculopathy

3)Alexis Dang 1, Michael Davies:Rotator Cuff Disease: Treatment Options and Considerations
4)Kimberley Hayes 1, Mary Callanan, Judie Walton, Anastasios Paxinos, George A C Murrell:Shoulder instability: management and rehabilitation
5)Joseph D Zuckerman 1, Andrew Rokito:Frozen shoulder: a consensus definition
6)K Nobuhara 1, D Sugiyama, H Ikeda, M Makiura:Contracture of the shoulder