鎖骨の下が痛いのは胸郭出口症候群なの?痛みの原因と簡単なセルフケア方法を紹介

肩から頭あたりに現れる痛みはさまざまですが、なかには「鎖骨の下」が痛むケースがあります。

肩こりや首こりに比べると馴染みが薄いといえるので、「なぜ鎖骨の下が痛むのだろう」と不安を覚える方も多いかもしれません。

鎖骨の下が痛む原因としては、「胸郭出口症候群」をはじめ、いくつかの症状が考えられます。そのなかには重篤な病気も含まれるので注意が必要です。

そこで当記事では、鎖骨の下が痛む原因やセルフケア方法を解説します。

最後まで目を通すことで、あなたの鎖骨の下が痛む理由についておおよその見当がつき、ご自身でケアできるようになるでしょう。

ぜひお役立てください。

鎖骨の下が痛む主な原因(症状)を解説

鎖骨の下には様々な筋肉や神経が存在する

鎖骨には肩や腕の運動に関わる筋肉が付き、さまざま神経が通ります。またリンパ節が存在しているほか、鎖骨の下に肺の先端が出ています。

したがって鎖骨の下が痛む場合、筋肉神経、あるいはリンパ節臓器などに原因があるとお考えください。

では以下より、原因や症状を解説していきます。

神経の圧迫(胸郭出口症候群)

鎖骨の下が痛む原因の1つ「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」

まず考えられるのが、「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」です。鎖骨の下から出る神経が圧迫されたり、引っ張られたりすることで起こります。

痛みに加えて手のしびれが現れる場合、胸郭出口症候群の可能性があるとお考えください。男女比でみると、男性より女性に多いという特徴があります。

胸郭出口症候群が起こる原因はいくつかあり、「長時間手を上げて行う仕事」や「腕を回す動作が多いスポーツ」がきっかけで発症するケースもあれば、「なで肩」など姿勢が影響して発症するケースも多いです。

参考記事:なで肩がひどい時の3つの対処法 〜肩こりもこれで改善!〜

鎖骨付近の筋肉の凝り

鎖骨周りの筋肉が凝っている可能性もあります。

鎖骨の下あたりには、「大胸筋(だいきょうきん)」「鎖骨下筋(さこつかきん)」といった筋肉が付き、これらの筋肉に負担がかかることで痛みが発生します。

そして筋肉に負担がかかる理由としては、悪い姿勢(猫背など)や長時間の重労働過度な運動などです。そして負担が大きいと、筋肉痛のように痛みが強くなるので注意しましょう。

参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!

鎖骨下のリンパの腫れ

リンパ節が腫れている可能性も考えましょう。

鎖骨には、リンパが流れる「リンパ節」が存在し、おもに老廃物を外に出すはたらきをしています。

そして、ウィルス・細菌感染ストレスが原因で鎖骨のリンパ節が腫れるケースがあります。

軽度な腫れであれば短期間での改善も考えられますが、重篤な病気が隠れているケースもあるので十分注意してください。

気胸(ききょう)

もう1つ考えられるのが、「気胸(ききょう)」が起こっているケースです。気胸とは、肺に穴が空き、空気が漏れることで肺がしぼむ病気です。

気胸には、怪我や衝撃などで発生するケース「外傷性気胸」や、とくに理由がなく発生する「自然気胸」、生理の前後に起こる「月経随伴性気胸」などがあります。

したがって、気胸は男性に多く見られるものの、女性が発症するケースも存在します。「息苦しい」「息を吸うと痛い」といった症状が見られる場合は気胸の可能性があるので、注意が必要です。

鎖骨の下の痛みを放置してはダメ!すぐ医療機関を受診しよう

上記で紹介した症状以外に、より重篤な病気(リンパ腫やがんなど)が痛みの原因になっている可能性も考えられます。

したがって、鎖骨の下の痛みを放置するべきではありません。まずは早急に医療機関を受診するのが大切です。

検査を受け、重篤な病気ではないと判明した段階で、自身でセルフケアを考えましょう。

鎖骨の下の痛みが楽になる!おすすめセルフケア

ではここから、鎖骨の下の痛みが楽になるおすすめセルフケアを紹介します。

エクササイズから生活における注意点まで、どれも鎖骨の下の痛み改善につながります。

すぐに始められる方法ばかりなので、ぜひ実践してみてください。

ストレッチ・筋力トレーニングを行う

まず、ストレッチ筋力トレーニングを継続してみてください。

筋肉や関節を動かすことで血流が良くなり、鎖骨の下の痛みが改善されるでしょう。また姿勢が改善されることで、鎖骨周りの負担減も期待できます。

それでは以下より、おすすめのストレッチ・筋トレを紹介します。

1つ目は「第一肋骨モビライゼーション」です。

第一肋骨モビライゼーション
STEP1:バスタオルを用意しましょう
STEP2:背中へ回し片側をお尻で固定します
STEP3:もう一方を斜め下へ引っ張りましょう
STEP4:首を側方へ傾けましょう
STEP5:元の姿勢に戻ります
STEP6:繰り返し実施してみてください
※タオルをしっかり下方へ引っ張りましょう

こちらのエクササイズを行うことで、鎖骨の近くに付く「第一肋骨(だいいちろっこつ)」が動くので、鎖骨周りが緩みやすくなります。

とくに胸郭出口症候群の改善に効果的です。

2つ目は「胸椎(きょうつい)伸展運動」です。

胸椎(きょうつい)伸展運動
STEP1:両手を壁につき額を当てます
STEP2:背中を反らせましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰をなるべき反らさないように注意しましょう

上記のエクササイズによって、「胸椎(きょうつい)」が伸びます。とくに姿勢改善に効果的なのでぜひ取り組んでみてください。

3つ目は「僧帽筋中部エクササイズ」です。

僧帽筋中部エクササイズ
STEP1:うつ伏せになり両手を広げましょう
STEP2:肩甲骨を寄せながら腕を持ち上げましょう
STEP3:ゆっくり降ろします
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腕を可能な限り高く上げてみてください
こちらの筋トレは、肩の後ろに付く「僧帽筋」を鍛えるのに適しています。継続することで肩周りの血流が良くなり、姿勢が良くなります。

生活習慣を見直す

気づかないうちに、生活習慣が乱れていないでしょうか?

悪い姿勢や寝不足、食生活の乱れは、痛みの発生と密接に関係しています。したがって、生活習慣の見直しで鎖骨の下の痛みが和らぐ可能性もあります。

では、具体的に見ていきましょう。

姿勢を矯正する

姿勢を整えることで鎖骨の下の痛みを緩和できる

先ほども少し触れましたが、「猫背」「ストレートネック」「巻き肩・なで肩」など、姿勢の崩れが肩周りへの負荷につながります。そして鎖骨への負担も増えることで、神経が圧迫されたり筋肉が凝ったりします。

ぜひ、普段の姿勢を矯正しましょう。

とくに、パソコン作業中は姿勢が崩れやすいので注意が必要です。そこで、頭の位置を後ろに引くことを意識してみてください。

姿勢が整うと重心が正しく乗り、鎖骨への負担が減るでしょう。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:ストレートネックの原因とは?正しい寝方・枕の高さを理解しよう!
参考記事:巻き肩を治す方法はある?効果的な寝方やグッズの使い方・おすすめストレッチを解説

十分な睡眠時間を確保する

当たり前ですが、毎日しっかり眠ることが大切です。

寝不足の日が続くことで自律神経(身体の状態を保つ神経)のバランスが崩れ、血流が悪くなり痛みが現れます。また自律神経が乱れるとリンパの流れも悪くなってしまうので、鎖骨の下の痛みにつながります。

忙しいなかでも、睡眠時間は確保しましょう。あわせて、普段使用している寝具を見直すのもおすすめです。

食生活を見直す

食事にも注意しましょう。食生活の乱れが血流悪化や免疫力低下につながります。

健康的な献立に明確な正解はありませんが、とくに玄米なすカツオ、レバーバナナなどは血流改善や自律神経の調整に効果的です。

普段、ファーストフードやコンビニ弁当で食事を済ませる機会が多い方は、自炊を始めてみるのも良いかもしれません。

どのくらいでセルフケアの効果は現れる?

セルフケアを始めるにあたって、「どのくらいで効果が出るか」が気になるでしょう。

症状の程度や原因にもよりますが、1週間や2週間セルフケアを続けただけでは効果は現れないとお考えください。

一時的に痛みが楽になったとしても、すぐぶり返すケースも少なくありません。

本格的に効果が出て痛みが改善するまで、数か月かかる場合が多いです。したがって、まずは3か月間続けてみましょう

まとめ

肩から上の部位は、人間が生活を営むうえで重要な臓器や神経が多く存在します。鎖骨の下が痛む原因が何であれ、そのまま放置することは避けましょう。

まずは医療機関を受診して、痛みの原因を正確に把握し、そのうえで痛みを改善・予防するセルフケアを実践してみてください。

時間はかかるかもしれませんが、痛みの改善が期待できるでしょう。

それでは当記事が、あなたにとって少しでもお役に立てば幸いです。

【参考文献】
1)Xavier Demondion 1, Pascal Herbinet, Serge Van Sint Jan, Nathalie Boutry, Christophe Chantelot, Anne Cotten:Imaging assessment of thoracic outlet syndrome
2)Julie Freischlag 1, Kristine Orion 2:Understanding thoracic outlet syndrome

3)Mark R. Jones,corresponding author1 Amit Prabhakar,2 Omar Viswanath,3,4,5 Ivan Urits,1 Jeremy B. Green,6 Julia B. Kendrick,6 Andrew J. Brunk,6 Matthew R. Eng,6 Vwaire Orhurhu,1 Elyse M. Cornett,7 and Alan D. Kaye:Thoracic Outlet Syndrome: A Comprehensive Review of Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment
4)菊谷 光代:リンパ浮腫を知る-その発生機序と看護師の役割-
5)藤芳 直彦, 江藤 敏, 花岡 勅行, 荒木 雅彦, 稲葉 晋, 向井 秀泰, 嶋村 文彦, 新田 正和:胸部外傷後11日目に発症した 緊張性気胸によるCPAOAの1例
6)亀崎 文彦, 園田 信成, 小出 真一郎, 尾辻 豊:家族性自然気胸の一例
7)木下 貴裕, 前部屋 進自, 櫻井 照久, 岡村 吉隆:原発性自然気胸に対する治療とその成績