肩こりによるめまいの正体は?ふわふわ・ぐるぐる感が続く人の原因と改善策

日常生活の中で「肩こり」と「めまい」を同時に感じる方は意外と多く、原因がはっきりしないまま不安を抱えている人も少なくありません。

「ふわふわ」「ぐるぐる」とした感覚が続くと、日常生活に支障をきたすこともあります。実はこの二つの症状、体の構造的にも機能的にも深く関係していることがあるのです。ここでは、肩こりがめまいを引き起こすメカニズムをわかりやすく解説していきます。

肩こりとめまいが同時に起こるのはなぜ?

肩こりを気にする女性の画像

肩こりとめまいが同時に起こる理由には、筋肉・神経・血流といった複数の生理的要因が関係しています。単なる疲労では片づけられないこの現象を、詳しく紐解いてみましょう。

肩こりが脳や耳に与える影響とは

肩の筋肉が過緊張を起こすと、その周辺にある血管や神経が圧迫され、脳や内耳への血流が低下する可能性があります。特に、肩から首、後頭部にかけての筋肉は脳への血流に関わる重要な動脈を取り囲んでおり、筋緊張が続くことで酸素や栄養が行き届きにくくなります。

この結果、バランス感覚を司る内耳(耳の奥)や脳幹の働きが鈍り、ふらつきや回転性のめまいが起きると考えられています。肩こりは単なる筋肉のこわばりではなく、脳への影響を及ぼす可能性がある深刻な症状とも言えるのです。

交感神経の緊張と自律神経の乱れが引き起こす不調

肩こりが慢性化すると、交感神経が常に優位な状態になりがちです。交感神経は「緊張・興奮」を司る神経であり、筋肉の緊張や心拍の上昇、血管の収縮などを引き起こします。

この状態が長く続くと、自律神経全体のバランスが崩れ、めまいや頭痛、吐き気、不眠といった症状が現れやすくなります。特に、ストレス社会に生きる現代人は、この自律神経の不調が肩こりと合わさることで、めまいという形で現れるケースが少なくありません。

血流障害による「ふわふわ・ぐるぐる感」

肩こりによって血流が滞ると、脳や内耳に十分な血液が届きにくくなくなります。これが、いわゆる「ふわふわ感」や「ぐるぐる感」を引き起こす原因となります。脳は非常に血流に敏感な器官で、わずかな酸素不足でもめまいやふらつきを感じるようになります。

さらに、血流不足によって目や耳の感覚が鈍くなると、平衡感覚が乱れ、身体が揺れているような錯覚に襲われることがあります。これが、肩こりが引き金となって生じる「非回転性のめまい(ふわふわ感)」や「回転性のめまい(ぐるぐる感)」のメカニズムです。

肩こりによるめまいに多い具体的な症状と特徴

めまいを気にする女性の画像

肩こりが原因で起こるめまいには、いくつかの特有のパターンがあります。ここでは、日常生活の中で感じやすい具体的な症状や、その背景にある身体の変化について解説していきます。原因を知ることで、セルフケアや医療機関受診の判断がしやすくなります。

朝起きた時や下を向いた時にめまいが出る理由

朝起きた瞬間や、顔を下に向けたときに「ふわっ」とした感覚や軽い目まいを感じた経験はありませんか?これは、睡眠中の体勢や血流の停滞が関係している場合があります。

寝ている間は筋肉の活動が減り、特に首や肩の血流が滞りやすくなります。加えて、枕が合っていない、寝返りが少ないなどの要因が重なると、首まわりの筋肉が朝から緊張状態にあり、起床時に急に頭を動かすことでバランスが崩れやすくなるのです。

また、顔を下に向けると、首の後ろ側の筋肉が引き伸ばされ、緊張が強まります。この時に脳や内耳への血流が一時的に低下し、めまいを引き起こすケースもあります。

更年期や疲労によるふわふわした感覚

とくに40代以降の女性に多く見られるのが、更年期の時期に伴う「ふわふわ感」です。女性ホルモンの減少は自律神経の乱れを招きやすく、肩こりやめまいといった症状が出やすくなります。

さらに、日常的な疲労の蓄積でも同様の症状が現れます。身体が常に緊張状態にあり、筋肉が硬くなりやすい状況では、些細な動作でふらつきを感じることがあります。これは、肉体的な疲労だけでなく、精神的ストレスによる交感神経の過剰反応が背景にあることも少なくありません。

耳鳴り・頭痛・目の疲れも同時にある場合の注意点

肩こりによるめまいが起きているときに、「耳鳴り」や「頭痛」「目の奥の疲れ」などの症状を同時に感じることがあります。これらの症状がセットで現れる場合、より深刻な自律神経の乱れや脳の血流障害が関係している可能性があります。

特に、耳が詰まった感じや高音の耳鳴りが長引く場合には、内耳の機能が低下している可能性もあります。また、後頭部からこめかみにかけての鈍い頭痛、画面を見ると目がしみるような疲労感などは、肩こり由来の症状としてよく見られるものです。

これらの複合的な症状が続く場合は、早めの対処が重要です。生活習慣の見直しに加え、次章で紹介する原因を意識した改善策を取り入れることで、状態をコントロールしやすくなります。

肩こり由来のめまいを引き起こす原因とは

肩こりが原因でめまいが起きる背景には、私たちの生活習慣や姿勢に根本的な要因があります。ここでは、現代人に多く見られる具体的な原因について解説しながら、めまい予防に向けての理解を深めていきましょう。

長時間の同じ姿勢とスマホ・PC作業

パソコン作業やスマートフォンの長時間使用は、現代人の肩こりを引き起こす最大の要因の一つです。とくに、首を前に突き出すような姿勢や、長時間下を向いたままでいる姿勢は、肩や首の筋肉に強い負担をかけ続けます。

このような姿勢が続くと、首から肩にかけての筋肉が硬くなり、血流が滞りやすくなります。その結果、脳や耳への酸素供給が不十分となり、めまいが引き起こされやすくなります。仕事中に「急にふらっとする」「集中できない」と感じることがある方は、首肩まわりの過緊張が隠れた原因かもしれません。

不良姿勢の画像

不良姿勢の画像

不良姿勢・猫背が首と肩に与える負担

日常生活における悪い姿勢、とくに猫背や巻き肩といった姿勢は、首と肩の筋肉に慢性的なストレスをかけます。姿勢が崩れると、頭部の重さを支えるバランスが乱れ、肩や首に過度な負担がかかります。

猫背の状態では、頭が前に出ることで首の後ろ側が常に引っ張られる状態となり、筋肉の緊張が慢性化します。これが血流を悪化させるだけでなく、神経系にも悪影響を及ぼし、自律神経の乱れを誘発しやすくなります。結果として、慢性的な肩こりに加えて、ふわふわしためまいや軽い吐き気が続くといった症状が現れるのです。

冷えや運動不足が筋肉と血流に与える影響

意外と見落とされがちですが、「冷え」や「運動不足」も肩こりとめまいの原因になります。身体が冷えると、血管が収縮して筋肉が硬直しやすくなり、血流が悪化します。特に冬場や冷房の効いたオフィスで長時間座っていると、首や肩の血流が滞りやすくなります。

また、運動不足によって筋肉が硬くなり、柔軟性や血液循環が低下すると、全身の代謝機能にも悪影響を及ぼします。このような状態では、ちょっとした疲労やストレスでもめまいが出やすくなり、症状が慢性化してしまうリスクも高まります。

今日からできる!自宅で行う改善ストレッチ&セルフケア

肩こりによるめまいを予防・改善するためには、日常的に筋肉をほぐし、血流を促すことが大切です。ここでは、特別な道具がなくても自宅で簡単にできるストレッチやツボ押し、セルフケアの方法を紹介します。習慣化することで、症状の軽減や再発防止に役立ちます。

参考記事:肩こりを一瞬で治す方法とは?ストレッチやマッサージで辛い肩こりを解消する方法!

胸張り運動で血流を促進

肩こり対策の基本は、肩甲骨の可動域を広げて血流を改善することです。以下の簡単な運動を毎日行うだけで、筋肉の緊張が緩み、めまいの軽減が期待できます。

胸張り運動

STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。

首・後頭部のストレッチで自律神経を整える

首の後ろ側をやさしく伸ばすことで、自律神経のバランスを整え、ふわふわ感やぐるぐる感の予防につながります。以下のストレッチを試してみてください。

僧帽筋ストレッチ

STEP1:手を腰の後ろに回しましょう。
STEP2:肩が上がらないように抑えましょう。
STEP3:頭を斜め下へ傾けましょう。肩の上が伸びている状態を数秒間保持しましょう。
STEP4:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう。

頸部伸展筋ストレッチ

STEP1:両手を頭の後ろへ回しましょう。
STEP2:頭を前方へ倒しましょう。首の後方が伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。

呼吸を止めず、痛みを感じない範囲でやさしく行うことがポイントです。緊張がほぐれると、自然とリラックスしやすくなります。

目を休める・ツボ押し(風池・合谷)でリラックス効果

めまいを和らげるには、目の疲れを取ることやツボ押しで自律神経を整えるのも有効です。とくに以下のツボは、肩こり・めまい・頭痛に共通して効果があるとされています。

風池のツボの画像

合谷のツボの画像

  • 風池(ふうち):後頭部の生え際、耳の後ろにあるくぼみ。親指でゆっくり10秒押す×3セット
  • 合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の骨が交差するくぼみ。反対の親指で10秒押す×3セット

また、画面を長時間見る方は、1時間に1回は目を閉じたり、遠くを見たりして目を休める習慣を取り入れると、目と首の緊張を同時にほぐすことができます。

病気のサインかも?受診の目安と見極めポイント

セルフケアを続けても改善しないめまいや肩こりには、病気が潜んでいる可能性もあります。特に、症状が悪化している、または複数の不調が同時に出ている場合には、早めの受診が必要です。このセクションでは、医療機関を受診すべきタイミングや診療科の選び方、考えられる疾患について詳しく解説します。

症状が長引く・悪化する場合に考えられる疾患

肩こりやめまいが数週間以上続いていたり、症状が以前よりも重くなっている場合は、単なる疲労や筋肉の緊張だけでなく、別の病気が関与している可能性があります。

  • 回転性の強いめまいが繰り返し起こる
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 耳鳴り、聴力低下、頭痛が頻繁に出る
  • 歩行困難や手足のしびれがある

こうした症状がある場合には、耳や脳、神経系の疾患の可能性も考えられます。自己判断せず、できるだけ早く専門の医師に相談しましょう。

肩こり以外のめまい原因(メニエール病・脳疾患など)

めまいの原因は非常に多岐にわたります。代表的な疾患には以下のようなものがあります。

  • メニエール病:内耳のリンパ液が増えることで起こる疾患。回転性のめまい、耳鳴り、難聴を伴う。
  • 良性発作性頭位めまい症(BPPV):頭の位置を変えると短時間の強いめまいが起こる。
  • 脳梗塞・脳出血・脳腫瘍:激しい頭痛、ろれつが回らない、視覚や運動の異常などを伴う。

特に神経症状を伴う場合は、すぐに脳神経内科や総合病院で検査を受けることが重要です。

医療機関を受診すべきタイミングと科の選び方

症状が軽度であっても、次のような状態があれば、医療機関を受診する目安となります。

  • 1週間以上セルフケアを続けても改善が見られない
  • 日常生活に支障をきたすめまいが週に何度も起きる
  • 新しい症状(耳鳴り、頭痛、しびれなど)が加わった

受診する科は症状の内容によって判断しますが、迷った場合は以下を参考にしてください。

  • 整形外科:肩や首の痛みが強く、姿勢や動作に制限がある場合
  • 耳鼻咽喉科:耳の症状や回転性めまいがある場合
  • 神経内科:しびれ、ふらつき、頭痛など神経系の異常を伴う場合

どこを受診すれば良いかわからない場合は、まずは内科で相談すると適切な専門科に紹介してもらえます。

まとめ

肩こりとめまいが同時に現れる背景には、血流の低下や自律神経の乱れといった身体内部の変化が隠れています。とくに、ふわふわした感覚やぐるぐる回るようなめまいが続く場合は、肩こりが原因の可能性を疑いましょう。

日常的にできるストレッチやツボ押し、姿勢の見直しは、改善と予防の両方に効果的です。ただし、症状が長引く、悪化する、耳鳴りやしびれを伴うといった場合には、早めに医療機関を受診し、他の疾患の可能性も確認しておくことが大切です。小さな不調を見逃さず、日々のケアで健やかな体を取り戻しましょう。

【参考文献】
1)加藤 剛平,岩本 幸英,豊永 敏宏:勤労者の肩こり症状に関連する因子の検討,日本職業・災害医学会会誌67(2)87-94,2017
2)Carroll LJ, Hogg-Johnson S, van der Velde G, Haldeman S, Holm LW, Carragee EJ, Hurwitz EL, Côté P, Nordin M, Peloso PM, Guzman J, Cassidy JD; Bone and Joint Decade 2000-2010 Task Force on Neck Pain and Its Associated Disorders. Course and prognostic factors for neck pain in the general population: results of the Bone and Joint Decade 2000-2010 Task Force on Neck Pain and Its Associated Disorders. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Feb 15;33(4 Suppl):S75-82. doi: 10.1097/BRS.0b013e31816445be. PMID: 18204403.
3)上野 美由紀 , 谷野 多見子, 他:デスクワーカーの座位行動中における運動プログラムの構築.産業衛生学雑誌,2024,66-6p292-302

author avatar
桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。