加齢とともに多くの人が悩まされる「変形性膝関節症」。歩くたびに痛む、階段の上り下りがつらい…そんな症状を抱える方は少なくありません。
本記事では、変形性膝関節症の原因をわかりやすく解説し、自宅で無理なく続けられるリハビリ方法やストレッチを紹介します。医師に「手術も視野に入れて」と言われる前に、まずは日常生活の中でできるケアから始めてみませんか?ぜひ最後までお付き合いください。
変形性膝関節症とは?症状と原因をわかりやすく解説
変形性膝関節症は、中高年に多く見られる膝の慢性疾患で、膝関節の軟骨が徐々にすり減っていくことで、炎症や痛み、可動域の制限などを引き起こします。
参考記事:変形性膝関節症は自力で治せる?おすすめの運動とNG動作も解説!
膝関節の軟骨がすり減るメカニズム
関節軟骨は、骨同士がこすれないようにクッションのような役割を担っています。しかし、加齢や過度な負荷によってこの軟骨がすり減ると、骨と骨が直接ぶつかるようになり、炎症や痛みが生じます。
初期~末期の進行過程と症状の違い
初期では膝のこわばりや違和感が中心ですが、中期になると階段の昇降や歩行時に強い痛みが出てきます。末期には変形が目立ち、関節の可動域も狭くなり、日常動作が大きく制限されるようになります。
膝関節症の進行度の画像
加齢・筋力低下・姿勢など原因はさまざま
主な原因は加齢ですが、体重の増加、膝まわりの筋力低下、姿勢の乱れなども大きく関係しています。特に、膝関節への負担がかかる生活習慣が長年続くことでリスクは高まります。
お家でできるリハビリの基本|膝への負担を減らす生活習慣
変形性膝関節症のリハビリは、特別な施設や器具がなくてもお家で日常的に行うことで十分に効果が期待できます。まずは、膝に余計な負担をかけない「生活習慣の見直し」から始めましょう。
椅子の高さや座り方を見直す
膝への負担を和らげるためには、座る姿勢が非常に重要です。椅子は「膝と股関節が直角になる高さ」が理想で、座面が低すぎると膝が深く曲がりすぎ、逆に高すぎると足が浮いてしまい不安定になります。座る際は背筋を伸ばし、両足をしっかり床につけるようにしましょう。
正しい椅子の姿勢の画像
膝にやさしい日常動作のポイント
- 立ち上がるときは手を使って体を支えながらゆっくり
- 階段は手すりを使い、痛みの少ない脚から先に出す
- 和式生活を避け、洋式トイレや椅子生活に変える
といった日常の中の小さな動作が、膝への負担軽減につながります。
痛みがある時の対処法と冷温の使い分け
炎症がある場合はアイシング(冷却)で熱と痛みを抑えます。慢性的なこわばりや筋肉の緊張には、温タオルや湯船での温熱療法が効果的です。
ただし、温冷どちらもやりすぎは禁物。痛みが強い場合はまず休息を優先し、無理な動作は避けてください。
参考記事:【膝が痛い時の対処法】自宅で簡単!辛い痛みを改善するストレッチ3選
変形性膝関節症に効く!改善ストレッチと筋トレ5選
膝の変形を防ぐ・進行を遅らせるには、筋肉の柔軟性と筋力をバランスよく整えることが欠かせません。以下では、自宅でできる安全で効果的なストレッチと筋トレを5つ紹介します。
① 太もも前面を伸ばすストレッチ(大腿四頭筋)
膝を伸ばす働きをもつ大腿四頭筋の柔軟性が失われると、膝の動きに制限がかかりやすくなります。
大腿四頭筋ストレッチ
STEP1:横向きの姿勢となり足首をつかみましょう。
STEP2:掴んだ足を後方へ引っ張りましょう。太もも前面の筋肉が伸びた状態を保持し
しょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を反らないように注意しましょう。
② ハムストリングスの柔軟性アップ
太ももの裏側の筋肉が硬くなると、膝を曲げ伸ばしする際に負担がかかります。
ハムストリングスストレッチ
STEP1:椅子に座り、片脚を前に出しましょう。
STEP2:上体を真っ直ぐし、体を前へ倒しましょう。太ももの後ろが伸びた状態を維持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を丸めないように注意しましょう。
③ 内転筋トレーニングで膝の安定性強化
内ももの筋肉を鍛えることで、膝の軸がブレにくくなり、歩行が安定します。
股関節内転運動(座位)
STEP1:太ももの間に柔らかいボールを入れましょう。
STEP2:太ももの間でボールをつぶしましょう。
STEP3:ゆっくりと力を抜きます。
注意点:腰が丸くならないように注意しましょう。
④ イスを使ったスクワット風運動(軽負荷)
安全性の高い運動で膝周りの筋力をまんべんなく鍛えられます。
チェアスクワット
STEP1:椅子に浅く腰を掛け、足をひらく
STEP2:体を前に倒す
STEP3:反動をつけずに立ち上がる。その後、お辞儀をしながらゆっくり座る
注意点:膝が内側に入らないように注意する
自宅リハビリを続けるコツと注意点
リハビリの効果は、「継続」によって初めて実感できます。とはいえ、無理に頑張るのは逆効果のため、正しい知識と習慣づくりが重要です。
無理せず“少しずつ”が基本
変形性膝関節症のリハビリは、「毎日10分程度」「痛みが出ない範囲で」が原則です。最初から完璧を目指さず、できる範囲で続けることが大切です。週2~3回でも、続けることで確実に膝まわりの筋肉は反応してくれます。
痛みが強いときは運動を中止する
ストレッチや運動中に痛みが強くなった場合は、すぐに中止しましょう。炎症が起きている可能性があり、そのまま続けると症状が悪化することもあります。リハビリは「気持ちよく伸びる程度」に留めるのが鉄則です。
医療機関との併用でより効果的に
自宅リハビリだけでも効果は期待できますが、不安がある方や症状が進行している方は、整形外科や身体の専門家である理学療法士に相談することをおすすめします。病院での指導を受けながら、自宅でも継続する「ハイブリッド型」のリハビリが理想的です。
まとめ
変形性膝関節症は、進行性の疾患ですが、早めに正しいリハビリを行えば痛みの緩和や動きの改善が期待できます。お家でできるストレッチや軽い筋トレは、膝への負担を減らし、関節をサポートする大切な習慣です。無理のない範囲で、毎日の生活に少しずつ取り入れていくことで、症状の進行を抑えることができます。痛みが強いときは無理をせず、必要に応じて専門医の指導も受けながら、自分のペースで継続していきましょう。
【参考文献】
1)日本運動器理学療法士学会:膝関節機能障害 理学療法ガイドライン 第2版
2)変形性膝関節症 日本整形外科学会
3)高石 翔,森下 元賀:変形性膝関節症保存例における運動イメージと疼痛との関連性.PAIN REHABILITATION.2024 ,14-1,p16-24