肩の付け根がズキズキ痛むときの原因5つ|すぐできるストレッチ付き

肩の付け根がズキズキと痛む症状は、年齢や生活習慣を問わず突然起こることがあります。

「ちょっと動かしただけなのに…」と驚いたり、「何をしても痛みが取れない」と不安になったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。 日常の動作に支障をきたすだけでなく、夜間の痛みで眠れなくなる人も少なくありません。

本記事では、肩の付け根に痛みが出る代表的な原因を5つ取り上げ、それぞれの特徴や見分け方をわかりやすく解説します。ぜひ、ご覧ください。

肩の付け根が痛むときのセルフチェックポイント

肩が痛そうな女性の画像

突然の肩の付け根の痛みに戸惑ったとき、まず大切なのが「症状のセルフチェック」です。

痛みの場所やタイミング、左右差、感じ方など、いくつかの観点から自分の状態を整理することで、原因の絞り込みや適切な対応に近づくことができます。ここでは、押さえておきたい4つのチェックポイントをご紹介します。

1. 痛みは片側?それとも両側?

まず確認したいのが「痛む側」です。片側だけに痛みがある場合、多くは局所的な筋肉や腱のトラブルが疑われます。特に利き手側であれば、日常的な使いすぎや負荷が影響しているかもしれません。

一方、両側に痛みがある場合は注意が必要です。加齢やホルモンバランス、自律神経の乱れ、または関節リウマチなど全身性の疾患が背景にあることも。左右の違いは、症状の深刻度や受診の優先度を判断する材料になります。

2. いつ痛むか?動作時か安静時か

次は、「どのタイミングで痛みが出るか」を確認しましょう。

動かしたときに痛みが増す場合、筋肉・腱・関節の一部に物理的な障害がある可能性が高くなります。たとえば、腕を上げる・回すなどの動作で痛みが出るときは、腱板損傷やインピンジメント症候群の可能性が考えられます。

反対に、安静にしていてもズキズキと痛む「安静時痛」や「夜間痛」がある場合は、炎症性の疾患(四十肩、石灰性腱炎など)を疑う必要があります。特に夜に痛くて目が覚めるようなら、早めの対応が必要です。

3. 痛む場所は前側?後ろ側?それとも付け根?

痛みの位置も大事な手がかりになります。肩の前側が痛いときは、上腕二頭筋腱や大胸筋など、前方の筋肉に関係した問題が考えられます。重いものを持つ・荷物を前に運ぶなどの動作で悪化しやすいのが特徴です。

五十肩病態の画像

後ろ側の痛みや肩甲骨付近の違和感は、棘下筋や肩甲挙筋など、背面の筋肉の緊張や炎症が疑われます。特にデスクワークで長時間同じ姿勢が続く人に多く見られます。

また、「肩の付け根」そのものに痛みを感じるときは、腱の炎症や石灰沈着、インピンジメント症候群など関節構造に起因する可能性も高まります。

4. 痛みの種類は?ズキズキ・ピリピリ・重だるさ

最後に、「痛みの質」を意識してみましょう。どんなふうに痛いのかを言語化できるだけで、原因の見当がつきやすくなります。

  • ズキズキと脈打つような痛み:炎症が進行しているサイン。四十肩や石灰性腱炎でよく見られます。
  • ピリピリ・しびれるような感覚:神経の圧迫が原因である可能性が高く、頚椎症や胸郭出口症候群などが疑われます。
  • 重だるさやこわばり:筋疲労や血行不良が原因で、姿勢の悪さや運動不足が背景にあることも。
  • 突き刺すような鋭い痛み:腱の損傷や部分断裂など、組織の物理的な破損を伴っている可能性があります。

このように、「どこが・いつ・どんなふうに・どちら側が」痛むかを自分なりに整理しておくと、症状の理解が深まり、医師への説明もスムーズになります。

肩の付け根がズキズキ痛む原因5つ

肩の付け根にズキズキとした痛みを感じたとき、考えられる原因は複数あります。特に40代以降は、加齢による組織の変性や筋肉・関節の使いすぎなどが痛みの引き金になることが多くあります。ここでは代表的な5つの原因について、症状の特徴や見分け方を詳しく解説します。

 1. 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

40代以降に多く見られる「四十肩・五十肩」は、肩関節周囲の炎症によって可動域が制限される症状です。初期には肩の前側や付け根に違和感があり、徐々に動かすと痛むようになります。夜寝ている間にもズキズキと痛む「夜間痛」が出現するのが特徴です。

痛みは肩の一部だけでなく、腕や背中の方まで広がることもあります。服の着脱や髪を結ぶといった日常動作が困難になるケースも珍しくありません。放置してしまうと回復に1年以上かかることもあるため、早めの対処が重要です。

参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介
参考記事:四十肩を早く治す方法が知りたい!痛み緩和に有効なストレッチや寝方・ツボを解説

 2. 腱板損傷・断裂

肩の動きを支える「腱板」が部分的に損傷したり断裂したりすることで、ズキッと鋭い痛みが走ることがあります。特に重い物を持ち上げたときや、腕を高く上げたときに痛みが増すのが特徴です。

損傷が軽度の場合は安静やストレッチで回復が見込めますが、完全に断裂している場合は手術が必要になることもあります。無理をして肩を使い続けると悪化する可能性があるため、症状が続く場合は整形外科での画像検査が推奨されます。

腱板断裂の画像

 3. 石灰沈着性腱炎(石灰性腱炎)

ある日突然、肩の付け根に激しいズキズキした痛みが起こる場合、「石灰沈着性腱炎」が疑われます。これは腱の中に沈着したカルシウム(石灰)が炎症を引き起こすことで発症します。

痛みは非常に強く、夜眠れないほどになることも。腕を少し動かしただけで激痛が走るため、動作が大きく制限されます。痛みのピークは数日続きますが、その後は自然に治まることもあります。冷やすことで一時的に痛みが和らぐこともあるため、急性期の対応が重要です。

 4. インピンジメント症候群

腕を上げたり回したりしたときに「引っかかるような痛み」がある場合、「インピンジメント症候群」が考えられます。肩関節内の構造が狭くなり、腱板や滑液包などの組織が挟み込まれることで痛みが生じます。

インピンジメント症候群の画像

野球や水泳など、腕を大きく使うスポーツをしている方に多く見られる症状で、繰り返しの動作による使いすぎが原因です。悪化すると慢性的な肩痛や可動域制限につながるため、早期の対応が必要です。

 5. 頚椎症・胸郭出口症候群など神経圧迫

首や背中から肩にかけての神経が圧迫されることで、肩の付け根にズキズキした痛みが現れることがあります。これには「頚椎症」や「胸郭出口症候群」などが関係しており、肩の痛みに加えて腕のしびれや筋力の低下を伴うことがあります。

デスクワークや長時間のスマホ操作など、首に負担をかける姿勢が続く人に多いのが特徴です。肩だけでなく首や背中の違和感を併発している場合は、神経由来の痛みの可能性も疑いましょう。

参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説

痛みを軽減するセルフストレッチ3選

肩の付け根にズキズキとした痛みを感じたとき、「できるだけ動かさない方がいいのでは?」と不安になる方も多いでしょう。しかし、炎症が落ち着いた後の回復期には、適切な範囲でストレッチを行うことで、血流を促進し、関節の可動域を保つことができます。ここでは、痛みを悪化させないように注意しながら、自宅で簡単にできる3つのストレッチをご紹介します。

1. 胸張り運動:肩の位置を正しく戻す

肩の動きに大きく関わるのが「肩甲骨」です。デスクワークや猫背の姿勢が続くと、肩甲骨が外側に開き、肩の付け根に負担がかかりやすくなります。このストレッチでは、肩甲骨を意識的に内側へ寄せて、肩周辺の緊張を和らげます。

胸張り運動

STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。

肩の付け根に痛みがあるときは、無理に力を入れず、ゆっくりと行うことが大切です。

2. テーブルサンディング:関節全体をほぐす

肩関節は360度動く球関節であるため、動かさずにいると固まりやすくなります。可動域をしっかりと動かす運動を取り入れることで、血行を促進する効果があります。

テーブルサンディング

STEP1:自然な体勢を保てる高さの机に、タオルと手を置きましょう。
STEP2:可能な範囲で両手を前方に滑らせましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻りましょう。
注意点:背中が丸まらないように注意してください。

動かす範囲は徐々に広げていくのがポイントです。少しでもズキズキしたら中止し、炎症が落ち着いてから再開しましょう。

3. 大胸筋ストレッチ:前側のこわばりを緩める

肩の前側に痛みや突っ張り感がある方におすすめなのが、壁を利用したストレッチです。胸の筋肉(大胸筋)や上腕二頭筋を伸ばすことで、肩の前方への引っ張りを軽減し、痛みの緩和につながります。

大胸筋ストレッチ

STEP1:片足を前方へ大きく踏み出しましょう。
STEP2:片手を壁につけましょう。
STEP3:体重を前方へ移動させましょう。前胸部が伸びている状態を保持ししょう。
STEP4:元の姿勢に戻りましょう。

このストレッチは姿勢改善にもつながるため、継続して取り入れることで肩の痛みが出にくい身体作りにも効果的です。

ストレッチの注意点:炎症期は避ける

どのストレッチにも共通して言えるのは、「炎症が強い時期には無理に動かさない」ことです。ズキズキとした痛みが強い急性期は、冷やしたり安静を保ったりすることが優先されます。ストレッチは、痛みが落ち着き始めた「回復期」から徐々に始めましょう。

また、ストレッチ中に痛みが悪化するようであれば、すぐに中止してください。痛みが引かない、もしくは悪化する場合は、整形外科など専門機関への相談が必要です。

ストレッチでも改善しないときは?受診の目安

自宅でのストレッチやセルフケアを続けても、肩の付け根の痛みが改善しない場合には、「我慢しすぎて悪化させない」判断が大切になります。特に40代以降では、加齢に伴う筋肉や腱の変性も進みやすく、早めに医療機関を受診することで予後が大きく変わることもあります。ここでは、受診の目安となるポイントを詳しく解説します。

1. 数日たっても痛みが引かない

軽い筋肉痛や一時的なこわばりであれば、数日〜1週間程度で自然と症状が軽くなることが多いですが、肩の付け根の痛みが 3日以上続く、もしくは悪化している場合 は、単なる使いすぎではなく「腱の炎症」や「関節の構造的な異常」が疑われます。

とくに、以下のような症状がある場合は放置しないことが大切です。

  • 痛みで腕が上がらない・服が着られない
  • 夜にズキズキして目が覚める
  • 安静にしても改善の兆しがない

これらは、四十肩・石灰沈着性腱炎・腱板損傷など、画像診断が必要な疾患の可能性があります。

2. 発熱やしびれを伴う場合はすぐ受診を

肩の痛みと同時に「微熱が続いている」「腕や手にしびれがある」などの症状がある場合、自己判断での対応は危険です。特にしびれや感覚異常がある場合は、頚椎症や神経の圧迫、または胸郭出口症候群といった神経障害が原因である可能性があります。

さらに、まれではありますが、「関節の感染」や「内科的疾患(胆石や心疾患など)」が肩の痛みとして現れるケースも報告されています。以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 微熱や寒気がある
  • 腕や手のしびれ、力が入らない
  • 胸の痛みや息苦しさを伴う

3. 整形外科ではどんな検査をするの?

肩の痛みで受診する場合、「何科に行けばいいのか迷う」という方も多いかもしれません。基本的には 整形外科 が最も適した診療科です。整形外科では、以下のような検査を行います。

  • 問診・触診:痛みの範囲や動きの確認
  • X線検査:骨の状態や石灰沈着の有無を確認
  • 超音波検査(エコー):腱や筋肉の損傷を見る
  • MRI検査(必要に応じて):腱板断裂など詳細な診断

最近では、初診でもエコーを活用するクリニックが増えており、その場で「どの腱が炎症を起こしているか」までわかることもあります。早期に状態を把握することで、適切な治療方針が立てられ、回復への近道になります。

4. 放置によるリスクとは?

「そのうち治るだろう」と自己判断で放置してしまうと、以下のようなリスクが高まります。

  • 関節が固まって動かなくなる(拘縮)
  • 炎症が慢性化し、回復に数ヶ月〜年単位かかる
  • 腱の断裂が進行して、手術が必要になる
  • 首や腕にまで痛みが広がる

特に四十肩は、初期段階での対応を誤ると「凍結肩」と呼ばれる状態になり、数年単位でのリハビリが必要になるケースも。違和感を感じた時点で、早めに対処することが、最小限の負担で回復するためのカギとなります。

5. どんなタイミングで受診すべきか?

以下のいずれかに当てはまる方は、セルフケアではなく医療機関での診察を検討してください。

  • 痛みが3日以上続いている
  • 夜間痛で眠れない
  • 腕を動かすと激痛が走る
  • 腕や手にしびれ、脱力感がある
  • 市販薬やストレッチで改善が見られない

このような症状があるとき、「何科に行けばいいの?」と悩むかもしれませんが、まずは整形外科での受診が安心です。

専門医による正確な診断と治療計画により、無理なく痛みを改善していくことができます。

まとめ

肩の付け根のズキズキする痛みは、四十肩や腱の炎症、神経圧迫など、さまざまな原因が考えられます。まずは「片側か両側か」「痛みのタイミング」「痛む部位や種類」などをセルフチェックしましょう。軽度であればストレッチで改善が期待できますが、数日経っても変わらない・夜間痛がある・しびれを伴うといった場合は、無理せず整形外科を受診することが大切です。

【参考文献】
1)村木 孝之:肩関節周囲炎 理学療法ガイドライン,理学療法学43(1).67-72.2016
2)Joseph D Zuckerman 1, Andrew Rokito:Frozen shoulder: a consensus definition
3)K Nobuhara 1, D Sugiyama, H Ikeda, M Makiura:Contracture of the shoulder
4)Jing-lan Yang 1, Chein-wei Chang, Shiau-yee Chen, Jiu-jenq Lin:Shoulder kinematic features using arm elevation and rotation tests for classifying patients with frozen shoulder syndrome who respond to physical therapy

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。