「肩甲骨の間がズーンと重い」「動かすとズキッとする」そんな背中の痛みに心当たりはありませんか?放っておくと慢性化したり、内臓由来の痛みだったりすることもあります。
一時的なコリだと思っても、日々の姿勢や筋肉の使い方のクセが積み重なることで、痛みが強くなることも。見逃さず、早めの対処が大切です。
本記事では、肩甲骨の間の痛みのタイプや場所別の原因、今すぐできる対処法までわかりやすく解説します。
肩甲骨の間が痛い…こんな症状ありませんか?
肩甲骨の間、つまり背中の上部に位置するエリアに違和感や痛みを感じる方は少なくありません。
日常の姿勢やストレス、体の使い方が蓄積されて現れることが多く、「いつのまにか痛くなっていた」というケースも。ここでは、よく見られる3つの症状パターンを紹介します。
動かすとズキッとする痛み
朝起きて腕を伸ばしたとき、デスクワーク中に少し姿勢を変えただけで背中にズキッと痛みが走る。このように動作時に鋭く痛む場合は、肩甲骨周辺の筋肉が緊張し、可動域が狭くなっている可能性があります。
特に僧帽筋や菱形筋(りょうけいきん)など、肩甲骨と背骨をつなぐ筋肉は、長時間の同一姿勢によって固まりやすく、急に動かすことで引きつれたような痛みが出やすくなります。また、重い物を持ったあとや、スポーツ・作業などで過度に使った後にも、同様の痛みが現れることがあります。
ジワジワ続く慢性的な不快感
日常生活に支障が出るほどではないものの、「なんとなく重だるい」「肩甲骨の間がずっとこっている感じがする」といった慢性的な不快感は、多くの人が感じる症状です。
このタイプの痛みは、筋肉の疲労物質や老廃物の蓄積、血行不良によって起こることが多く、特にデスクワークやスマートフォン操作で前かがみの姿勢が続く人に多く見られます。肩甲骨が外側に引っ張られることで、内側の筋肉が常に引き伸ばされた状態になり、だんだんと痛みや重さとして感じられるのです。
慢性的な肩甲骨間のこりは、ストレッチ不足や運動不足が原因のことも多く、放っておくと可動域の制限や別の部位への影響も招きかねません。
息苦しい、寝ていても痛いなどの違和感
肩甲骨の間の痛みが、単なる筋肉のこりや疲労ではなく、より深刻な問題のサインであることもあります。特に以下のような症状がある場合は注意が必要です。
- 息を吸うと背中が痛む
- 寝ている間や夜中に痛みで目が覚める
- 背中の痛みとともに胸の圧迫感や息苦しさがある
これらは、筋肉や神経だけでなく、内臓の不調や炎症、循環器・呼吸器系の疾患が関与している可能性もあります。急な発症や、安静時でも痛みが治まらないような場合は、できるだけ早く医療機関に相談することが大切です。
肩甲骨の間が痛い原因とは?
肩甲骨の間に痛みが出る原因は一つではありません。姿勢や生活習慣に由来する筋肉のトラブルだけでなく、神経系の問題や内臓からの関連痛が隠れていることもあります。ここでは主な3つの原因を紹介し、それぞれの特徴と注意点を整理します。
参考記事:肩甲骨周りが痛い原因とは?肩・首こり解消にもオススメのストレッチを紹介!
筋肉のコリ・使いすぎによる疲労
最もよく見られる原因が、肩甲骨周辺の筋肉の緊張や疲労です。特に「菱形筋」「僧帽筋」といった、肩甲骨と背骨をつなぐ筋肉が関与しています。
長時間のデスクワークやスマホの操作など、同じ姿勢を続けることで筋肉が収縮しっぱなしになり、血流が悪化。老廃物が蓄積して、痛みやだるさとして感じるようになります。
また、運動不足も要因のひとつです。筋肉を動かす機会が少ないと柔軟性が低下し、ちょっとした動きでも痛みが出るようになります。逆に急に無理な運動をした場合も、筋肉の使いすぎによって炎症を起こし、痛みの原因になることがあります。
神経の圧迫や炎症による関連痛
肩甲骨の間の痛みは、単なる筋肉の問題ではなく「神経の圧迫」が関係していることもあります。背骨(胸椎)から枝分かれする神経が、姿勢の悪さや背骨のゆがみによって圧迫されると、神経痛のような鋭い痛みが肩甲骨の間に放散するのです。
特に猫背や背中の丸まりが強い人は、背骨が湾曲し、神経の通り道が狭くなってしまいます。その結果、軽い動作や呼吸の際にも「ピリッ」「ズキッ」とした痛みが出ることがあります。
また、頸椎(首)や胸椎の椎間板が変性して神経に触れる「椎間板ヘルニア」などでも、肩甲骨周辺に放散痛が出るケースがあるため、慢性化している場合は注意が必要です。
内臓からの関連痛の可能性
肩甲骨の間の痛みは、時に内臓の疾患が関連していることがあります。たとえば次のようなケースが報告されています:
- 心臓:狭心症や心筋梗塞では、左肩甲骨の内側に放散するような痛みが出ることがあります。
- 肺:肺炎や気胸など、肺の病変が背部痛として現れることがあります。息苦しさや咳を伴うことが多いです。
- 消化器系:胃や膵臓、肝臓などのトラブルが、肩甲骨周辺に「関連痛」として現れることも。
こうした内臓由来の痛みは、姿勢や動作に関係なく痛みが持続したり、夜間や安静時にも強く感じられるのが特徴です。明らかな違和感がある場合は、早めの医療機関受診が重要です。
右・左・中央…痛む場所で異なる原因とは?
肩甲骨の「間」が痛いと感じるとき、実際には右寄りなのか、左寄りなのか、あるいは背骨の真ん中なのかによって、考えられる原因や注意すべきポイントが変わります。ここでは、痛みの出る「場所別」にそれぞれの特徴と可能性について整理します。
右側が痛い場合に考えられること
肩甲骨の右内側に違和感や痛みを感じる場合、最も多いのは筋肉の使いすぎによる筋疲労やコリです。利き腕が右の方が多いため、日常生活で右側の肩や腕を多く使い、その影響で肩甲骨周囲の筋肉に負担がかかりやすくなります。
とくに「僧帽筋」や「広背筋」などの大きな筋肉が緊張すると、右肩甲骨の内側にズキッとした痛みが走ることがあります。重いカバンをいつも右肩で持っている、パソコンのマウスを長時間使っている、などの習慣も要因となります。
また、稀にですが肝臓の不調(肝機能低下や胆石症)などが背中右側に関連痛として現れることもあるため、食後の不快感や全身のだるさを伴う場合は内科的なチェックも視野に入れるとよいでしょう。
参考記事:【右肩甲骨の突然の痛み】考えられる原因や簡単にできる対処法・ストレッチを解説
左側が痛い場合に考えられること
左の肩甲骨内側の痛みは、筋肉疲労や姿勢の偏りのほか、特に注意したいのが「心臓」からの関連痛です。
狭心症や心筋梗塞など、循環器系の疾患は肩や左の背中に鈍い痛みや圧迫感として現れることがあります。胸の痛みや息苦しさを伴う場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。
一方、猫背やスマホ首などの影響で、左側の筋肉に緊張が集中していることもよくあります。特に首から肩甲骨にかけての筋膜が硬くなると、じわじわとした痛みが続きやすく、デスクワークや長時間の座位が習慣になっている方は要注意です。
参考記事:突然の左肩甲骨の痛みはなぜ?考えられる原因と今すぐできる対処法
中央が痛い場合の原因と特徴
肩甲骨の間、つまり背骨に近い「中央」に痛みを感じる場合、背中の筋肉や椎間関節、さらには胸椎の不調が関係している可能性が高くなります。
長時間の前かがみ姿勢で背骨に圧力がかかり、胸椎(背骨の中央部分)と筋肉の連携が悪くなることで、背中の中央に緊張や痛みが出ることがあります。これがいわゆる「背中が張る」「背筋が重だるい」といった感覚に繋がります。
また、胸椎の可動域が狭くなると、呼吸が浅くなったり、肩甲骨の動きが制限されたりするため、悪循環に陥りやすくなります。中央の痛みは、単に筋肉の疲労というよりも、姿勢全体の乱れが引き起こしている場合が多いため、体幹の柔軟性を取り戻すことが改善の鍵となります。
【今すぐ実践】肩甲骨の間の痛みに効くセルフケア
肩甲骨の間の痛みは、日常的なセルフケアで軽減できるケースが多くあります。ここでは、今すぐ実践できる3つのケア方法を紹介します。いずれも難しい動きではないので、痛みの程度に応じて無理のない範囲で行ってみましょう。
簡単ストレッチで筋肉をゆるめる
肩甲骨まわりのストレッチは、固まった筋肉をほぐし、血行を促進する効果があります。特に背中の上部は普段あまり動かさない部分のため、意識的なケアが重要です。
菱形筋ストレッチ
STEP1:両手をつなぎ前方へ出しましょう。
STEP2:お臍を覗き込みながら背中を丸めましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。
STEP4:繰り返し実施しましょう。
この動作は「菱形筋」や「僧帽筋」といった筋肉を優しく伸ばし、動きの悪くなった肩甲骨の可動性を取り戻すのに有効です。1日2〜3回、習慣にすることで慢性的な痛みの予防にもつながります。
セルフマッサージで血流を促進
背中の痛みに対しては、筋肉をほぐすセルフマッサージも有効です。自分では手が届きにくい部位ですが、道具や工夫を活用すれば効果的にアプローチできます。
【やり方の一例】
- フェイスタオルを筒状に丸めて床に置き、仰向けに寝て肩甲骨の間に当てる。
- ゆっくり左右に体を動かし、圧がかかるように転がす。
- 痛気持ちいい程度の刺激で、1~2分行う。
または、テニスボールを壁と背中の間に挟み、肩甲骨内側に当てながら上下左右に動くのも効果的です。特に硬くなりやすいポイントにピンポイントで刺激を与えることで、筋膜リリースにもなります。
姿勢の見直しで負担を減らす
根本的な再発防止のためには、姿勢の改善が不可欠です。猫背や前かがみ姿勢が続くと、肩甲骨の間に常に負担がかかり、ストレッチやマッサージをしてもすぐに痛みが戻ってしまいます。
【姿勢改善のポイント】
- パソコン画面は目線の高さに合わせる。
- 腰を反りすぎず、お腹と背中を軽く引き寄せる意識。
- 肩をすくめず、首を前に突き出さない。
- 座りっぱなしを避け、1時間に1回は肩や背中を動かす。
姿勢は習慣の積み重ねで変化していきます。意識し始めたその日から、小さな改善を積み重ねていくことが、肩甲骨の痛みと向き合う第一歩です。
こんな時は要注意!受診の目安とチェックポイント
肩甲骨の間の痛みは、ほとんどが筋肉の緊張や姿勢のクセによるものですが、中には内臓疾患や神経の異常が隠れているケースもあります。ここでは「セルフケアでは対処しきれない」症状の見極めポイントを紹介します。
痛みが数日続く・悪化している
「軽い筋肉痛だと思っていたけれど、数日たっても改善しない」「マッサージしても痛みがむしろ強くなる」といった場合は、単なる疲労ではなく、炎症や神経系のトラブルが起きている可能性があります。
特に、以下のような状態に当てはまる場合は、整形外科や接骨院などの専門機関で診断を受けることをおすすめします。
- 3日以上、痛みが変わらず続いている
- 徐々に痛みが強くなっている
- 日常動作(着替え・荷物を持つなど)に支障が出ている
慢性的な痛みは、放置することで他の筋肉や関節に負担をかけ、二次的な不調を引き起こすリスクもあります。
息苦しさ・胸痛など他の症状がある
肩甲骨の間の痛みに加えて、「呼吸が浅い」「胸が締めつけられる」「動悸がある」などの症状が出ている場合は、内臓からの関連痛が疑われます。
【注意が必要な症状】
- 左側の肩甲骨の奥が重苦しく痛い → 狭心症や心筋梗塞の兆候
- 背中全体に鈍痛があり、咳や発熱もある → 肺炎や胸膜炎などの呼吸器疾患
- 食後や夜間に痛みが増す → 消化器系の不調(膵炎・胆のう疾患など)
このようなケースでは、整形外科だけでなく内科や循環器科の受診も視野に入れるべきです。「いつもの肩こりと違う」と感じたら、自己判断せず専門医に相談しましょう。
セルフケアで改善しないとき
ストレッチやマッサージ、姿勢の見直しなど、セルフケアを数日間継続しても痛みが和らがない場合は、体の使い方そのものに問題があるか、別の根本原因が潜んでいるかもしれません。
特に、次のような状態にある方は、身体の評価を一度専門家に依頼するのが安全です。
- 同じ箇所に何度も痛みが再発する
- 運動をすると痛みが強まる
- 寝ているときや安静時にも痛む
整形外科では、X線やMRIなどを用いて骨や関節、神経の状態を調べることができ、的確な原因把握と治療方針の決定が可能です。
まとめ
肩甲骨の間の痛みは、姿勢の悪さや筋肉のこり、神経の圧迫、さらには内臓の不調まで、さまざまな原因が関係しています。
痛みの位置や感じ方に応じて、ストレッチやマッサージなどのセルフケアを取り入れることで、多くの場合は改善が期待できます。ただし、息苦しさや長引く痛み、セルフケアで効果がない場合は早めの受診が重要です。日々の姿勢や体の使い方を見直し、再発を防ぐことも大切にしましょう。
【参考文献】
1)Richard Dias 1, Steven Cutts, Samir Massoud:Frozen shoulder
2)Alexis Dang , Michael Davies:Rotator Cuff Disease: Treatment Options and Considerations
3)Jia X, Ji JH, Petersen SA, Keefer J, McFarland EG. Clinical evaluation of the shoulder shrug sign. Clin Orthop Relat Res. 2008 Nov;466(11):2813-9. doi: 10.1007/s11999-008-0331-3. Epub 2008 Jun 10. PMID: 18543050; PMCID: PMC2565053.