「左脇腹が筋肉痛のように痛い」「体をひねっただけで脇腹に違和感がある」と感じたことはありませんか?
実は近年、運動不足や長時間の座りっぱなし、ストレスによる体幹の不調が重なり、このような症状を訴える人が増えています。放っておいても自然に治るケースもありますが、中には内臓や神経に関係する重要なサインであることも。
この記事では、左脇腹に起こる「筋肉痛のような痛み」の背景と原因、そしてすぐにできる対処法までをわかりやすく解説します。
なぜ?左脇腹に「筋肉痛のような痛み」が出る人が増えている背景

最近、「左脇腹がズキッと痛む」「体をひねると筋肉痛のような違和感がある」といった声が増えています。実際、運動をしていなくても、日常生活の中で知らず知らずのうちに脇腹に負担をかけているケースは多くあります。
その背景には、現代人特有の生活環境や身体の使い方の変化が深く関係しています。
長時間の座りっぱなしが筋肉のバランスを崩す
在宅ワークやスマホ操作など、長時間座りっぱなしの姿勢が習慣になっている人は、体幹の筋肉が使われにくくなり、左右の筋肉バランスが崩れやすくなります。
とくに腹斜筋や肋間筋といった脇腹の筋肉が硬くなると、日常動作のちょっとしたひねりでも、筋肉痛のような痛みを引き起こします。

ストレスで内臓や神経の過敏性が高まっている
ストレスは筋肉だけでなく、内臓や神経系にも影響を与えます。たとえば過敏性腸症候群のような腸の機能異常では、左側の腹部(脇腹周辺)に違和感や鈍痛を感じることがあります。
また、自律神経が乱れることで体幹の筋肉の緊張が高まり、「筋肉痛のような痛み」が慢性化することもあります。
体幹の弱化と姿勢の崩れが慢性化を招く
本来、体幹の筋肉は姿勢を保ち、内臓を支える重要な役割を担っています。しかし、運動不足や腹筋の弱化により、姿勢が崩れて脇腹に不自然な負担がかかるようになると、筋膜や筋繊維が緊張し、ちょっとした刺激でも痛みが出るようになります。
考えられる原因|左脇腹が筋肉痛のように痛くなる4つの主なメカニズム
「筋肉痛のような痛み」が左脇腹に現れる場合、単なる筋疲労と思ってしまいがちですが、その背景には筋肉・神経・姿勢・内臓など、複数のメカニズムが関係していることがあります。
ここでは、特に見落とされやすい4つの主要な原因を取り上げ、それぞれの特徴や見分け方を解説します。
参考記事:脇腹がつるのはなぜ?正しい対処法と効果的なストレッチ方法を紹介
参考記事:左脇腹がズキズキ痛むのはなぜ?考えられる病気と自宅での対処法を解説
1. 姿勢の悪化による筋膜の緊張
長時間のデスクワークやスマホ使用などにより、猫背や前傾姿勢が習慣化すると、体幹の筋肉バランスが崩れ、特に腹斜筋や肋間筋といった脇腹まわりの筋膜が常に引っ張られる状態になります。

筋膜は、筋肉を包む膜組織で、体全体を覆う「張力ネットワーク」のような存在です。この筋膜が硬くなると、ちょっとした動きでも筋肉に負荷が集中し、筋肉痛のような鋭い痛みや違和感を引き起こすことがあります。
こんな人は要注意:
- 座り姿勢で背中が丸まっている
- 呼吸が浅く、肋骨の動きが硬い
- 肋間や体側にピンポイントの突っ張りを感じる
筋膜リリースやストレッチで緊張を解いてあげることで、症状が軽減することが多いのが特徴です。
2. 咳やくしゃみ・運動による筋肉の使いすぎ
風邪をひいたあとや、くしゃみ・咳を繰り返した後に、左脇腹にズキッとした痛みを感じる場合は、腹斜筋や肋間筋のオーバーユース(使いすぎ)が原因かもしれません。
また、急なスポーツや慣れない動作(ゴルフスイング・腹筋運動など)によって、筋肉が微細に損傷を受けることでも、筋肉痛と似た痛みが発生します。これは「遅発性筋痛(DOMS)」と呼ばれるもので、発症から1〜2日後にピークを迎えるのが特徴です。
見分けるポイント:
- 明確な「使いすぎ」のきっかけがある
- 体をひねったり、笑ったり、くしゃみすると痛い
- 数日で自然に軽減していく
アイシングや軽いストレッチ、安静が基本的な対処法となります。
3. 肋間神経痛・帯状疱疹など神経系のトラブル
脇腹には「肋間神経」という細い神経が走っており、これが圧迫や炎症を受けることで、筋肉痛とは異なるピリピリ・ズキズキ・刺すような痛みを感じることがあります。これが「肋間神経痛」です。
また、帯状疱疹ウイルスが神経に潜伏している場合、免疫力が落ちたタイミングで再活性化し、皮膚に赤い発疹が出る前から脇腹に強い神経痛が起こることもあります。
注意すべき症状:
- 一点に集中する鋭い痛み
- 圧痛(押すと痛い)がある
- 皮膚にチクチク・灼熱感・かゆみが出てきたら帯状疱疹の可能性
これらは内科や皮膚科での診察が必要です。自己判断でマッサージや温熱を加えると悪化する場合があります。
4. ストレスや内臓からの放散痛
意外に多いのが、内臓の異常によって引き起こされる「放散痛」です。たとえば、大腸や腎臓、膵臓など、左側にある内臓の調子が悪くなると、周囲の神経を介して脇腹に痛みが現れることがあります。
特に「ストレス性腸症候群(IBS)」では、腸の動きが過敏になり、腸管ガスがたまることで左腹部に不快感や張りを感じやすくなります。また、便秘や冷えによっても、同様の違和感が生じることがあります。
こんな場合は内臓由来の可能性大:
- 腹部全体が張っている
- 食後や緊張時に痛みが出やすい
- 排便・入浴後に痛みがやわらぐ
継続的に症状が出る場合は、消化器内科や婦人科などでの検査が安心です。
注意すべき危険サイン|病院に行くべき「脇腹の痛み」の見極め方
左脇腹の痛みが筋肉痛のように感じられる場合でも、その裏に重大な病気が隠れていることもあります。放置して悪化すると、日常生活に大きな支障をきたすばかりか、命に関わるケースもゼロではありません。
ここでは、「この痛みは要注意」という危険なサインを、症状別に詳しく解説します。
左脇腹に激痛が走る・急に強まる
痛みが「ズキズキ」や「ピリピリ」といった軽度のものではなく、刺すような激痛やキリキリとした痛みに変化したときは要注意です。特に、何もしていないのに痛みが急激に強くなったり、我慢できないレベルの痛みが続く場合は、筋肉や神経の問題にとどまらず、内臓系の異常が疑われます。
たとえば、尿路結石や膵炎などは、脇腹から背中にかけて放散する強い痛みを引き起こすことがあります。こうした内臓疾患は、時間とともに悪化するため、早期の診断と治療が非常に重要です。
冷や汗や吐き気を伴う
単なる筋肉の痛みでは見られないのが、自律神経反応を伴う症状です。強い痛みと同時に、
- 冷や汗が出る
- 顔色が青白くなる
- 吐き気や嘔吐がある
- 呼吸が浅く、動悸がする
といった症状が出ている場合は、消化器・泌尿器・循環器の緊急性の高い疾患が関与している可能性があります。
特に、痛みの場所が左側の上腹部や脇腹で、背中側にも痛みが放散しているときは、膵炎や腎結石など、即座の処置が必要な病気である可能性があります。
皮膚の異常や発疹がある
痛みのある部位の皮膚に、赤みや水ぶくれ、帯状の発疹が現れてきたら、帯状疱疹の可能性が高くなります。帯状疱疹は、痛みが発疹に先行して数日間現れることも多く、「筋肉痛だと思っていたら発疹が出てきた」というケースも少なくありません。
帯状疱疹はウイルスによる神経の炎症が原因であり、早期に抗ウイルス薬を服用しないと神経痛が慢性化するリスクがあります。見た目に変化が現れた場合は、すぐに皮膚科または内科を受診しましょう。
痛みの場所が移動する・広がる
痛みが徐々に左腹部から背中、または下腹部に広がる場合、単なる筋肉や姿勢の問題ではなく、内臓疾患の放散痛や炎症拡大が起きていることがあります。特に、痛みの位置が動くように感じたり、範囲が広がる場合は注意が必要です。
また、片側から両側へ痛みが波及してきた場合も、消化器や泌尿器系のトラブルが隠れていることがあります。
痛みが長期間続いている・頻繁に再発する
筋肉痛や神経痛であれば、多くの場合は数日~1週間程度で自然に軽快するのが一般的です。しかし、
- 2週間以上、痛みが断続的に続いている
- 定期的に左脇腹に同じような痛みが出る
- 痛みが徐々に強くなっている
といった状況であれば、慢性炎症や内臓系疾患、婦人科疾患などの可能性も否定できません。とくに再発性の場合は、生活習慣やストレス、食生活、隠れた基礎疾患が影響していることもあるため、専門医でのチェックが勧められます。
病院に行くべき目安は?
以下のような場合には、早急に医療機関の受診を検討してください。
- 安静にしていても強い痛みがある
- 冷や汗や吐き気、発熱を伴う
- 発疹・しびれ・感覚の異常がある
- 痛みが1週間以上続く、または何度も繰り返す
- 痛みがどんどん強くなる、範囲が広がる
受診する科としては、筋肉や神経が疑われる場合は整形外科、内臓系の疑いがある場合は内科、発疹や皮膚異常があれば皮膚科が適切です。
今すぐできる3つの対処法|痛みをやわらげるセルフケア
左脇腹の痛みが明らかに軽度で、「筋肉を使いすぎたかもしれない」「無理な姿勢で過ごしていた」などの心当たりがある場合、まずは自宅でできる対処法を試してみましょう。ここでは、体への負担が少なく、痛みをやわらげる効果が期待できるセルフケアを3つご紹介します。無理のない範囲で行うことが大切です。
1. 左脇腹をゆっくり伸ばす「体側ストレッチ」
筋肉や筋膜の緊張が原因の痛みに対しては、体側(たいそく=脇腹の側面)をゆっくりと伸ばすストレッチが効果的です。体側のストレッチは、縮こまりがちな腹斜筋や肋間筋をやさしく伸ばすことで、筋肉痛のような違和感を軽減してくれます。
広背筋ストレッチ
STEP1:両手を頭の上で組みましょう。
STEP2:体を真横に傾け、背中・脇腹を伸ばしましょう。数秒間姿勢を保持しましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
注意点:傾ける方向と反対側へ重心を移動させましょう。
このストレッチは、入浴後など筋肉が温まっているタイミングで行うと、より効果が高まります。
2. 炎症を抑えるための「アイシング」
運動やくしゃみなどによって筋肉を強く使った直後の痛みには、「冷やす」ことも大切です。アイシング(冷却)は、筋肉や組織の炎症を鎮め、痛みを感じる神経の働きを一時的に弱めてくれます。
アイシングの方法:
- 保冷剤や氷をビニール袋に入れ、薄いタオルで包む
- 左脇腹の痛みが出ている箇所にあて、10〜15分冷やす
- 1日2〜3回を目安に行う(最低でも1時間以上間隔をあける)
※冷やしすぎは血流を妨げ、逆効果になるため注意。皮膚が赤くなったり、しびれるような感覚が出た場合はすぐに中止してください。
炎症が疑われる初期段階(痛みが出てから48時間以内)に有効な方法です。
3. 痛みを和らげる「深呼吸・腹式呼吸」
筋肉の緊張だけでなく、ストレスや自律神経の乱れが関係している痛みに対しては、「深呼吸」や「腹式呼吸」が効果的です。呼吸によって副交感神経を優位にし、体の緊張をゆるめることで、筋肉のこわばりや神経過敏が緩和されることがあります。
腹式呼吸
STEP1:椅子に座った状態で腰に触れ収縮を感じましょう。
STEP2:鼻から息を吸いお腹を膨らませましょう(3秒間)
STEP3:口から息を吐きお腹に力を入れましょう(6秒間)
注意点:腰は動かさないように注意する
朝の目覚め時や、寝る前のリラックスタイムに取り入れると、睡眠の質も向上し、痛みの軽減にもつながります。
再発予防のためにできる生活習慣の見直し
一度改善した左脇腹の痛みが、数日後や数週間後に再発することは珍しくありません。その多くは、姿勢の悪さやストレス、運動不足など、日常生活に潜む原因が解消されていないことに起因します。
ここでは、再発を防ぐために今日から始められる生活習慣の改善ポイントを紹介します。
姿勢の見直し:正しい座り方・立ち方を意識する
左脇腹の痛みは、体の歪みや姿勢不良が大きく関係しています。とくに猫背や骨盤の傾き、片側重心の立ち方は、体幹に不均等な負担をかけ、脇腹の筋肉を緊張させやすくします。

日常で意識したいポイント:
- 座るときは骨盤を立て、腰が丸まらないように背もたれを使う
- 両足を床にしっかりつけ、組み足を避ける
- 長時間同じ姿勢をとらず、1時間ごとに立ち上がる
- 立つときは左右均等に体重をかけ、片足重心を避ける
スマホやパソコン作業中も、画面の位置や目線の高さを調整し、首や肩、体側への負担を減らしましょう。
ストレスケア:呼吸・入浴・睡眠の質を高める
ストレスは、筋肉の緊張だけでなく内臓機能や自律神経のバランスにも影響を及ぼします。とくに腸の不調や腹部の違和感として現れるケースも多いため、心身を整える習慣を持つことが大切です。
おすすめのストレスケア習慣:
- 腹式呼吸や瞑想を取り入れ、リラックスタイムを確保する
- 入浴で体を温め、筋肉と神経をやわらげる
- 睡眠の質を上げるため、就寝前のスマホを控える・照明を暗くする
「自分に合ったリラックス法」を見つけることで、慢性的な緊張からくる痛みの再発も防ぎやすくなります。
軽い運動習慣:体幹を鍛える・柔軟性を保つ
体幹の筋肉(腹筋・背筋・骨盤周り)を維持することは、脇腹の筋肉に過度な負担がかからないための予防策にもなります。また、筋肉の柔軟性を保つことで、急な動作やくしゃみ・咳でも筋肉が傷つきにくくなります。
取り入れやすい運動習慣:
- 毎日5〜10分のストレッチ(体側・背骨まわり中心)
- ウォーキングやヨガ、ピラティスなどの軽運動
- テレビを見ながらできる腹斜筋トレーニング(サイドクランチ等)
無理なく続けることが、再発予防のカギです。1日だけで成果を求めず、習慣化を目指しましょう。
受診の目安と危険なサイン
左脇腹の痛みが軽度で、原因に心当たりがある場合はセルフケアでの改善も期待できます。しかし、痛みの性質や併発する症状によっては、速やかな医療機関の受診が必要なケースもあります。
ここでは、放置せず受診を検討すべき「危険なサイン」と、病院選びのポイントを紹介します。
セルフケアで改善しないときは受診を検討
筋肉痛や軽度の筋膜性の痛みであれば、ストレッチや安静で数日以内に自然と軽減することが多いです。しかし以下のような場合は、早期に医師の診察を受けることが望ましいといえます。
- 痛みが1週間以上続く、または悪化している
- 体を動かさなくてもズキズキと痛む(安静時痛)
- 再発を繰り返している
- 痛みの原因に心当たりがまったくない
「そのうち治るだろう」と放置してしまうと、慢性化や重症化のリスクが高まります。
放置が危険なケースと主な症状
以下の症状が見られる場合、自己判断での放置は危険です。重大な疾患の初期サインである可能性もあるため、速やかな受診を強くおすすめします。
- 激しい痛みや突発的な痛み(内臓疾患・神経系トラブル)
- 発熱や吐き気、冷や汗を伴う(腎臓・膵臓・消化器系)
- 発疹や皮膚の赤み(帯状疱疹など)
- 排尿・排便に異常がある(泌尿器・婦人科の可能性)
- 痛みの部位が移動・拡大する
特に、左脇腹の奥には腎臓・膵臓・大腸・卵巣(女性)など多くの臓器があり、関連痛として痛みが現れることもあります。見た目に変化がなくても、内側で何かが進行しているサインかもしれません。
受診するなら何科?迷ったら内科・整形外科へ
痛みの種類や予想される原因によって、適切な診療科は異なります。
- 筋肉や姿勢の問題が疑われる場合:整形外科
- 内臓の違和感や冷や汗・吐き気を伴う場合:内科・消化器内科
- 皮膚の異常がある場合:皮膚科
- 月経周期との関連がある場合(女性):婦人科
迷ったときは、まず内科を受診するのが無難です。必要に応じて、適切な専門科に紹介してもらえる体制が整っています。
まとめ
左脇腹の「筋肉痛のような痛み」は、姿勢の乱れや筋肉の使いすぎ、ストレス、内臓からの放散痛など、さまざまな要因が絡んでいます。
軽度であればストレッチやアイシング、深呼吸などのセルフケアで改善することも多いですが、痛みが長引く、激しくなる、冷や汗や吐き気を伴う場合は、早めの受診が必要です。体の違和感を放置せず、日頃から姿勢や生活習慣を整えることが、再発予防にもつながります。自分の体の声に耳を傾け、適切な対応を心がけましょう。
【参考文献】
1)急性腎盂腎炎 厚生労働省
2)慢性疼痛ガイドライン 厚生労働
