運動中や日常生活のなかで、突然脇腹が「つる」ような痛みに襲われた経験はありませんか?つったような感覚は一時的なものが多いとはいえ、繰り返す場合や症状が長引くと不安にもなります。
本記事では、脇腹がつる原因と考えられるメカニズムをはじめ、見逃してはいけないサイン、正しい対処法や予防に役立つストレッチ方法まで、幅広くわかりやすく解説します。気になる症状がある方は、参考にしてください。
突然脇腹がつるのはなぜ?主な原因とメカニズムを解説
筋肉の使いすぎや姿勢の悪さ、ミネラル不足など、脇腹がつる原因はさまざまです。ここでは代表的な原因を3つのカテゴリーに分けて詳しく見ていきます。
筋肉疲労や姿勢の乱れによるもの
運動後や急な動作で発症する脇腹のつりは、腹斜筋や肋間筋など、普段意識しにくい筋肉の疲労が関係しています。特に息を大きく吸ったときやひねり動作をしたときに痛みが出る場合は、これらの筋肉が過緊張状態にあると考えられます。
また、猫背や前かがみ姿勢が続くと、脇腹の筋肉が常に縮こまった状態になります。このような状態では血流が滞りやすく、筋肉が酸欠状態になり、突然けいれんを引き起こすことがあります。
参考:【胸や脇腹が痛む】肋間神経痛とは?原因や症状、自分でできる対処法を解説
参考:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
ミネラル不足による神経伝達の乱れ
スポーツや暑い環境で大量に汗をかいた後は、水分とともにナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルが失われます。これが筋肉の収縮・弛緩に必要な神経伝達の働きを乱し、けいれんの原因となるのです。
水分だけを摂ってミネラルを補わないと、体内の電解質バランスがさらに崩れてしまいます。運動後にはスポーツドリンクや経口補水液を利用するのが効果的です。
神経の異常や内臓疾患が原因のケース
肋骨の間を走る神経が炎症や圧迫を受けた場合、「つる」ような痛みとして感じることがあります。特にストレスや冷えが引き金になることが多く、咳や深呼吸でも痛みが悪化します。
また、片側の脇腹だけが頻繁につる、または強い痛みを伴う場合、内臓の疾患も疑われます。たとえば右脇腹であれば肝臓や胆のう、左脇腹なら腎臓や腸の問題が関連している可能性があります。これらは筋肉のけいれんとは異なる原因です。
以上のように、脇腹がつる背景には「筋肉・栄養・神経や内臓」といった複数の側面が絡んでいます。次のセクションでは、こうした痛みが繰り返される場合に注意すべき「病気のサイン」について詳しく解説していきます。
脇腹のつるような痛みが続く場合は病気のサインかも?
たびたび同じ症状が出る場合、重大な病気が隠れていることもあります。脇腹がつるような感覚は、一時的な筋肉のけいれんによることが多いですが、「何度も繰り返す」「左右どちらかに集中して痛む」「ほかの症状を伴う」といった場合は、注意が必要です。
ここでは、見逃してはいけない体からのサインについて解説します。
頻繁につる・左右で症状が違う場合の見分け方
「右脇腹」と「左脇腹」では、関連する内臓が異なります。繰り返し同じ側に症状が出る場合は、その位置にある内臓の異常が関係している可能性も考慮しましょう。
右脇腹の痛み
右側に何度もつるような違和感が出る場合、脂肪肝や胆石症など肝・胆道系の疾患が疑われます。食後に痛みが強くなる場合は、消化器系の負担が影響しているかもしれません。
左脇腹の痛み
左側では、腎臓や脾臓、大腸に関連する問題が多く見られます。便通異常や排尿のトラブルを伴う場合、消化器や泌尿器系の検査が必要です。
筋肉と内臓の痛みの違いを見極めるポイントとして、筋肉が原因の場合、姿勢や動きに応じて痛みが変化することが多く、安静にすると和らぎます。一方で、内臓疾患による痛みは、体勢に関係なく持続したり、食事や排泄など内的な要因で強まる傾向があります。
早期に受診した方が良い症状の特徴
ただの筋肉のけいれんと思って放置していると、見逃してしまうケースも。次のような症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
しびれや感覚の鈍さ
肋間神経や脊髄神経に関わる異常がある可能性があります。特に背中や脇腹だけでなく、手足にもしびれが広がる場合は注意が必要です。
吐き気や食欲不振
消化器疾患の初期症状として現れることがあり、脇腹の違和感とともに継続する場合は、胃腸や肝胆系の病気が疑われます。
動けないほどの激しい痛み
内臓疾患による急性症状(例:腎結石、急性胆のう炎など)は、急に耐えがたい痛みが生じることがあります。このような症状は救急外来での対応が必要なこともあります。
不安を感じたら「何科」に行けばよい?
最初に受診するなら、内科(総合診療科)がおすすめです。原因が特定できない場合でも、そこから適切な診療科へ紹介してもらえます。
- 筋肉や神経に関連しそうな場合 → 整形外科、神経内科
- 消化器の不調がある場合 → 消化器内科
- 排尿異常を伴う場合 → 泌尿器科
また、症状が強く、すぐに対応が必要と感じたときは、ためらわず救急外来を利用することも選択肢の一つです。
以上が、脇腹の痛みが繰り返される・長引く場合に考えられる病気の可能性と、見分け方・受診の目安です。次の章では、実際に痛みが起きたときにどう対処すればよいかを具体的に紹介します。
脇腹がつったときの正しい対処法とNG行動

痛みが出たとき、正しく対処できるかどうかで回復にも差が出ます。脇腹がつったとき、多くの人が咄嗟に自己流の対処をしがちですが、それが症状を悪化させる原因になることもあります。
この章では、つったときにまず行うべき正しい処置と、やってはいけないNG行動について具体的に解説します。
まず試したい!基本の応急処置
・深呼吸と安静が第一の対策
脇腹が急につったとき、まずは動きを止めて、ゆっくりと深呼吸を行いましょう。呼吸を整えることで、筋肉への酸素供給が改善され、緊張が和らぎます。また、急な動きや体勢の変化は症状を悪化させることがあるため、できるだけその場で安静にするのがポイントです。
・姿勢を変えて筋肉を緩める
痛みを感じている脇腹を無理に伸ばさず、やや前かがみの姿勢で座る、または横になって身体を丸めるようにすることで、筋肉の緊張が少しずつ和らぐことがあります。痛みが少し引いてきたら、軽く背伸びをする、脇腹をゆるやかにストレッチするなど、自然な動きで筋肉を整えていくと回復が早まります。
悪化させないために避けるべきNG行動
・つった部分を強く揉む・叩く
「つったときは揉めばいい」と思っている方も多いですが、これは誤解です。筋肉が収縮している状態で揉んでしまうと、かえって炎症を悪化させたり、筋繊維を傷つけることになります。特に脇腹の筋肉は肋骨や内臓に近いため、過度な圧迫は内臓に刺激を与えるリスクもあります。
・無理に伸ばす・激しく動く
つった状態で強引にストレッチをしたり、大きく身体を動かすことは、筋肉や腱を損傷させる原因になります。痛みが引くまではできるだけ動きを控えましょう。一時的に症状が緩和されても、再発を防ぐためには、じっくりとした回復が大切です。
・冷やす?温める?正しい使い分け
急なけいれん時(つった直後)は、基本は「温める」が有効です。蒸しタオルやカイロなどでじんわりと温めると、筋肉の血行が促進されます。運動による疲労や腫れを伴う場合は「冷やす」方が向いているケースもあります。ただし、冷やしすぎには注意が必要です。
再発を防ぐ!脇腹がつらない身体をつくるセルフケア
つる頻度が高い人は、普段から予防策を意識しましょう。脇腹がつる症状を根本から改善するには、日常的なセルフケアが重要です。
自宅でできる!効果的なストレッチ
まずは筋肉の柔軟性を高めるストレッチを3つ紹介します。簡単に実施できる内容になっておりますので、ぜひ試してみてください。
広背筋ストレッチ
STEP2:体を真横に傾け、背中・脇腹を伸ばしましょう。数秒間姿勢を保持しましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
注意点:傾ける方向と反対側へ重心を移動させましょう。
ウイングストレッチ
STEP2:片脚を曲げて上にあげます。
STEP3:反対側の床に近づけるように背中を捻りましょう。
注意点:肩が床から離れないように注意しましょう。
食事と生活習慣でつりにくい体質へ
次に日頃意識したい食生活・生活習慣について紹介いたします。
水分とミネラルをしっかり補給
脇腹がつる原因の一つである「ミネラル不足」は、日々の水分補給と栄養管理で予防できます。
- カリウム:バナナ、アボカド、ほうれん草など
- マグネシウム:豆類、ナッツ類、海藻類
- ナトリウム:発汗が多い日は塩分も適度に摂取
特に運動前後や夏場は、スポーツドリンクや経口補水液などを活用し、ミネラルと水分をバランスよく摂ることが大切です。
バランスの良い食事を意識する
炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素をバランスよく摂ることで、筋肉の機能と回復力が高まります。偏食や過度なダイエットは、筋肉に必要な栄養が不足し、つりやすい体質になる原因になります。
生活習慣の見直しも大切
睡眠不足は自律神経を乱し、筋肉の緊張を引き起こします。また、ストレスが続くと神経過敏になり、けいれんが起こりやすくなります。対処法として、入浴やストレッチでリラックス時間をつくり、心身を整えましょう。
まとめ
脇腹がつる原因は、筋肉の疲労やミネラル不足だけでなく、神経や内臓の異常が関係する場合もあります。
突然の痛みに焦らず、まずは深呼吸と安静で対応しましょう。症状が続く場合は受診を検討することも大切です。
予防には、日々のストレッチや水分・栄養管理、良質な睡眠が効果的。日常生活に無理なく取り入れ、つらない体をつくっていきましょう。
【参考】
1)国立がん研究センター 大腸がんの症状について