あなたは右下腹部に痛みや違和感を感じたことはありませんか?「いつものことだから」と放っておくと、重大な病気のリスクを見過ごしてしまうかもしれません。
本記事では、右下腹部の痛みに不安を感じた女性に向けて、原因や対処法をわかりやすく解説します。婦人科系の疾患から、腸や尿路など消化器系・泌尿器系の異常、さらには日常生活で起こり得る要因まで、幅広い視点で解説。
セルフケアの方法や受診の目安も紹介しますので、心当たりのある方はぜひ最後までお読みください。
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右下腹部が痛い…女性に多い主な原因とは?
まずは右下腹部痛の代表的な原因を、疾患別に分類して解説します。症状の背後には重大な疾患が隠れている場合もあり、軽視せず冷静に対処することが大切です。
婦人科系の疾患:排卵痛・子宮内膜症・卵巣の病気
女性の右下腹部の痛みでまず疑われやすいのが婦人科系のトラブルです。
排卵のタイミングに合わせて下腹部がチクチクと痛む排卵痛は、多くの女性が経験する症状です。通常は数日で自然に治まることが多く、病気ではない場合もありますが、痛みが強く日常生活に支障があるようなら婦人科への相談が望まれます。
また、子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が本来とは異なる部位で増殖する疾患で、下腹部痛や性交時痛、生理痛が強くなるのが特徴です。特に右側の卵巣や卵管に病変がある場合、右下腹部に局所的な痛みを感じることがあります。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は卵巣に液体が溜まる袋状の腫瘍で、ある程度の大きさになると痛みや張りを感じるようになります。嚢腫がねじれる「卵巣茎捻転」は緊急性が高く、激しい痛みを伴うため早急な医療対応が必要です。
さらに、異所性妊娠(子宮外妊娠)も注意すべき疾患です。受精卵が子宮以外、特に卵管で着床すると、右側に着床した場合は右下腹部に強い痛みが現れる可能性があります。放置すると命にかかわるため、妊娠の可能性がある場合は特に注意しましょう。
消化器系の疾患:虫垂炎・便秘・腸炎など
右下腹部の痛みは消化器系のトラブルでもよくみられます。
代表的なものが「虫垂炎(盲腸)」です。初期はみぞおちあたりに痛みを感じ、徐々に右下腹部へ移動するのが特徴です。発熱や吐き気を伴うこともあり、早めの医療機関の受診が重要です。
一方で、便秘やガス溜まりによる腹部の張りや痛みも非常に多いケースです。とくにストレスや運動不足、水分摂取の少なさが原因となりやすく、慢性化すると痛みが強くなることもあります。
また、「腸炎」や「過敏性腸症候群」なども見逃せません。腸の粘膜が炎症を起こしている場合、下痢や腹痛を伴い、腸の右側に問題があると右下腹部に痛みが出ることもあります。過敏性腸症候群は、ストレスや食生活の乱れで症状が出ることが多く、慢性的な不快感に悩まされがちです。
尿路系の病気:尿路結石や膀胱炎の可能性
見落とされがちですが、尿路系の異常も右下腹部に痛みを引き起こす要因になります。
「尿路結石」は腎臓や尿管にできた石が尿の流れを阻害し、鋭い痛みを生じる疾患です。痛みは波のように強くなったり弱くなったりすることが多く、背中や腰にまで放散する場合もあります。尿が濁ったり血が混じることもあります。
「膀胱炎」は女性に多い尿路感染症で、下腹部に鈍い痛みを感じるほか、頻尿や排尿時の痛みが伴うことが特徴です。軽度であれば内服薬で改善することもありますが、繰り返すようであれば慢性化のリスクもあるため注意が必要です。
見逃してはいけない!今すぐ受診が必要な症状
すぐに病院へ行くべき危険な兆候について解説します。急な強い痛みや出血、意識の低下を伴うような症状は、重大な病気のサインかもしれません。適切な判断と早めの医療機関の受診が、重症化を防ぐカギになります。
緊急性が高いケースとは?
右下腹部の痛みでも、「いつもと違う」「急に激しくなった」「立ち上がれない」など、明らかに異常な感覚があるときは、重大な疾患が潜んでいる可能性があります。
急性腹症(きゅうせいふくしょう)
急性腹症は、腹部に急激な炎症や出血、臓器の破裂などが起こる危険な状態を総称する医学用語です。
主な原因には虫垂炎の進行や腹膜炎、腸閉塞、消化管穿孔などがあり、症状の進行が早く、緊急手術が必要になることもあります。
- 突然の激しい腹痛
- 発熱や吐き気を伴う
- 腹部が硬くなる、押すと強い痛みがある
こうした症状が見られる場合は、救急外来をすぐに受診するか、救急車を呼ぶ判断が必要です。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
異所性妊娠とは受精卵が子宮以外、特に卵管内に着床する妊娠異常です。
初期には妊娠と変わらない軽い症状で始まりますが、卵管が破裂すると内部出血を引き起こし、命に関わる状態となります。
- 妊娠検査薬で陽性なのに胎嚢が見えない
- 片側だけの下腹部の鋭い痛み
- 出血、冷や汗、めまい、失神
妊娠の可能性がある方で、このような症状がある場合は、すぐに婦人科を受診してください。
卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)
卵巣にできた嚢腫(のうしゅ)や腫瘍が、重みでねじれてしまう状態です。ねじれによって血流が途絶えると、卵巣組織が壊死してしまいます。
- 突然片側の下腹部が激しく痛み出す
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 痛みが持続し、姿勢を変えても楽にならない
診断・治療が遅れると卵巣を摘出することになるため、早期の受診が重要です。
動脈瘤の破裂
特に中高年の女性で注意が必要なのが「腹部大動脈瘤の破裂」です。これは動脈の一部が膨れて破裂する重篤な状態で、突然の激痛とともにショック症状を引き起こします。
- 腹部または背中に雷のような激痛
- 急激な血圧低下、冷や汗、意識低下
症状が現れたら、ただちに救急車を呼ぶ必要があります。
受診先はどこ?症状別・診療科の目安
異変を感じたとき、どの診療科に行けばよいのか分からないこともあるでしょう。症状の性質によって、受診すべき科は異なります。
婦人科
- 生理周期に関連する痛み
- 妊娠の可能性がある場合
- おりものの変化や不正出血
婦人科系の疾患は、一般的な内科では判断が難しいことが多いため、できるだけ早く専門医に相談しましょう。
消化器内科
- 吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状
- 食欲不振や胃の不快感があるとき
右下腹部の痛みが腸や胃からくるものかどうかを確認するには、消化器内科の受診が適切です。
泌尿器科
- 排尿時の痛みや違和感
- 頻尿、残尿感、血尿
膀胱炎や尿路結石など、排尿に関連する症状がある場合は泌尿器科が担当となります。
緊急の場合は救急外来へ
次のような症状がある場合には、夜間・休日を問わず、迷わず救急外来を利用してください。
- 強い腹痛が突然始まった
- 嘔吐、出血、意識がもうろうとしている
- 歩けない、冷や汗が止まらない
日常生活が原因のケースも?ストレスや姿勢に注意
日常のちょっとした癖やストレスが、右下腹部の痛みに繋がっている場合もあります。疾患のように明確な病名がつかないケースでも、体からのSOSを見逃さないことが大切です。
ストレスが引き起こす身体の変化
心のストレスが原因で、体に痛みとして現れることは珍しくありません。現代人の多くが抱える慢性的な緊張状態が、自律神経を乱し、腹部に不快な症状をもたらすことがあります。
緊張型腹痛とは?
- 精神的ストレスによって腹部の血流が悪化
- 腸の動きが不安定になり、痛みや違和感を感じやすくなる
- チクチク、ズキズキといった非特異的な痛みが特徴
緊張やプレッシャーがかかると腹痛が強くなり、リラックスすると和らぐというパターンが多く見られます。仕事や家事、人間関係など、生活環境の影響は見逃せません。
自律神経の乱れにも注意
ストレスが長期間続くと、自律神経のバランスが崩れ、内臓機能全体が低下します。これにより便秘や下痢を繰り返すようになり、右下腹部に痛みを感じるケースも少なくありません。
体は正直です。「ただのストレスだから」と軽く見ず、心と体の両面からケアする視点が求められます。
座りっぱなしや姿勢の乱れが与える影響
日常生活の中で、無意識のうちに悪い姿勢を取り続けている人は少なくありません。特に座り仕事の多い現代人にとって、姿勢の悪さが下腹部の不調に関与することは非常に多いです。
骨盤のゆがみと腹部の圧迫
- 長時間の座位や片足重心で骨盤がゆがむ
- 骨盤が後傾・前傾すると内臓の位置がズレて圧迫される
- 下腹部に違和感や痛みが生じやすくなる
特に猫背や反り腰の人は、腹部への圧力が強まり、血流や神経伝達にも悪影響を与えることがあります。こうした微細な変化が蓄積すると、慢性的な右下腹部の不快感につながることも。
運動不足による筋緊張の蓄積
- 筋肉を使わないことで柔軟性が失われる
- 特に腹部・骨盤周りの筋肉が硬くなりやすい
- 血流の停滞により、痛みや張りが生じる
軽いストレッチやウォーキングでも良いので、日常的に身体を動かすことが、慢性的な腹部の違和感を予防・改善するポイントとなります。
このように、病気でないからといって油断せず、日々の姿勢やストレス管理にも目を向けることで、腹部の不快な症状は改善できる可能性があります。
自宅でできる対処法と予防ケア|セルフチェック&簡単ストレッチ
軽度な右下腹部の痛みであれば、生活習慣を見直したり、セルフケアをしたりすることで改善が期待できます。ここでは、自宅でできるチェック法や、腸内環境の整え方、効果的なストレッチについて解説します。
腸の不調が原因?便秘やガス溜まりをセルフチェック
まずは、下腹部の痛みが消化器系由来かを見極めるために、自分で確認できるポイントを紹介します。
セルフチェックで確認したいこと
- 数日間排便がない、あるいは排便しても残便感が強い
- お腹が張っている・ガスが溜まっている感覚がある
- 食事量は変わらないのに体重が増えている
- 下腹部を軽く押すと圧迫感や違和感がある
これらに当てはまる場合、便秘やガスの蓄積による痛みが疑われます。
腸もみでお腹をやさしく刺激
腸の動きを促すセルフマッサージ「腸もみ」は、便秘やガスによる痛みに効果的です。
- 仰向けになり、両手で下腹部を「の」の字を描くようにやさしくマッサージ
- 朝起きた直後、または入浴後のリラックスタイムが最適
- 無理に押さず、ゆったりとした呼吸で行うのがコツ
数分間の腸もみでも、腸のぜん動運動が活性化し、排便のリズムが整いやすくなります。
食事を見直して腸活を促進
便秘がちな方は、以下のポイントを意識して腸内環境を整えましょう。
- 食物繊維を含む野菜や海藻、雑穀を積極的に摂る
- 発酵食品(ヨーグルト、味噌、キムチなど)で腸内の善玉菌を増やす
- 冷たい飲み物は控え、温かいスープや白湯で内臓を温める
- 朝食後にコップ1杯の水を飲むことで、腸の動きを促す
下腹部をほぐすストレッチで血流改善
血行不良や筋緊張が原因で起こる痛みには、ストレッチが効果的です。特に骨盤まわりの可動域を広げることで、痛みや冷えの改善が期待できます。
ヒップロール
STEP1:仰向けになり両手を横に広げ、両膝を90度に曲げましょう。
STEP2:両膝をくっつけたまま横に倒しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:倒す際に肩が浮かないように注意しましょう。
このストレッチは腹部や腰部の筋肉をやさしく緩めてくれます。
胸椎回旋運動
STEP1:手を胸の前に組み、足を閉じて座りましょう。
STEP2:上半身を回しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。繰り返し実施しましょう。
注意点:捻る際に足が開かないように注意しましょう。
この動きは、腹斜筋や体幹のインナーマッスルに刺激を与え、内臓の位置を整える効果も期待できます。
まとめ
女性の右下腹部の痛みは、婦人科系・消化器系・泌尿器系など、さまざまな原因が考えられます。緊急性のあるケースも少なくないため、「いつもと違う痛み」には早めの受診が大切です。
また、日常生活のストレスや姿勢の悪さも原因になることがあり、セルフチェックやストレッチによる予防・対処法も効果的です。
自分の体からのサインを見逃さず、不安なときは迷わず専門医へ相談しましょう。
【参考文献】
1)今岡 祐輝, 大原 正裕, 漆原 貴 ,他.速やかな緊急手術を要する虫垂炎の術前予測因子の検討.日本臨床外科学会誌.2015年,76,1,p1-5
2)矢澤 浩之, 帆保 翼, 矢澤 里穂,他.当院における異所性妊娠大量出血症例の手術成績と管理の現状.日本産科婦人科内視鏡学会雑誌.2021,37,1,30-3