太ももの痛みを部位別にわかりやすく解説|前・裏・内側・外側の原因とセルフケア

「立ち上がるたびに太ももが重い」「歩くとピリッと痛むけれど、どこが悪いのか分からない…」そんな不安やモヤモヤを抱えていませんか?太ももの痛みは、年齢や運動不足のせいだけに見えますが、実はどの場所が痛いか(前・裏・内側・外側)で原因も対処法もまったく変わってきます。

本記事では、太ももの痛みを部位別に分かりやすく整理し、原因の目安とセルフケアの方法、さらに「病院に行くべきサイン」まで丁寧に解説しています。「この痛み、どうしたらいい?」という不安を少しでも軽くするために、ぜひご自身の症状と照らし合わせながら読み進めてみてください。

参考記事:太ももが痛い原因を部位別に徹底解説!ストレッチやセルフマッサージなど治し方も紹介

太ももが痛い理由|前側が痛いのは大腿四頭筋や大腿神経が関連

太ももを痛がる女性の画像

太ももの前側は、体を支え、歩く・立つ・階段をのぼるといったあらゆる動作で酷使される部位です。筋肉の柔軟性低下や膝関節の負担により、腰からくる神経が圧迫されると前側の痛みが起こりやすくなります。この章では、前ももの痛みに多い原因と、その見分け方を整理して解説します。

参考記事:太もも前が痛い原因は?突然の痛みで歩けないときに考えられる5つの理由

① 大腿四頭筋の張り・筋疲労(歩きすぎ/階段/姿勢)

前ももの痛みで最も多いのが、大腿四頭筋の筋疲労によるものです。40代以降は筋肉の回復力が低下するため、長時間歩いた日や階段の上り下り、立ち仕事などの直後に前ももが張りやすくなります。また、反り腰姿勢の人は大腿四頭筋が常に軽く縮んだ状態になるため、日常の何気ない動作で疲労が蓄積しやすくなります。

大腿四頭筋の画像

この痛みは「筋肉痛のようなズーンとした重さ」であることが多く、動き始めに痛みが強くても、身体が温まると軽くなりやすいのが特徴です。特に以下のようなときに多くみられます。

  • 階段をのぼった翌日に前ももが張る
  • 立ち仕事の終盤に前側がパンパンに感じる
  • 長時間のデスクワークで反り腰になっている

筋肉が原因の痛みは、揉む・温める・軽く伸ばすなどで改善しやすく、時間が経つと自然に軽快するケースがほとんどです。

② 大腿神経痛(腰由来のビリビリ・しびれ)

前側の鋭い痛みやビリビリとしたしびれ感がある場合、大腿神経が圧迫されている可能性があります。大腿神経は腰椎から伸び、太ももの前側の感覚・筋力を支配しているため、腰の問題が太ももの痛みとして現れることがあります。

40代以降は、椎間板の変性や腰部の筋力低下が進みやすく、「腰はそこまで痛くないのに、前ももだけがしびれる」という状況も珍しくありません。神経痛の特徴としては以下が挙げられます。

  • 針で刺されたような鋭い痛み
  • 触れるとピリピリする
  • 太ももの前側〜膝にかけて電気が走る
  • 長時間座ると悪化する

筋肉痛と違い、姿勢を変えても痛みが大きく変化しないことも多く、腰を反らしたり前かがみになると痛みが強まる場合は神経痛の可能性が高まります。

③ 膝蓋腱炎・膝のトラブルが太ももへ波及

膝の痛みが原因で、太ももの前側が引っ張られるように痛むケースもよく見られます。特に膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、膝のお皿の下にある腱が炎症を起こし、その緊張が大腿四頭筋につながって前ももの痛みとして感じられることがあります。

膝のトラブルが太ももに波及するサインとしては、以下のパターンが見られます。

  • 階段の下りで膝が痛く、そのあと前ももが張る
  • しゃがむと膝と太もも前側の両方に痛みが出る
  • 膝の周囲が熱っぽく、前ももも重く感じる

膝の痛みがあると、身体は無意識に動作をかばうため、太ももの前側ばかりに負担が集中します。その結果、筋肉が常に引っ張られ、痛みが前ももに広がっていくのです。

太ももが痛い理由|裏側が痛いのはハムストリングス・坐骨神経・肉離れが関連

太ももの裏側は、座る時間が長くなる中高年層で特に痛みが出やすい場所です。裏側には“ハムストリングス”という大きな筋肉群が集まり、さらに坐骨神経が走っているため、筋肉・神経・急な負荷など、多様な原因で痛みが起こります。

参考記事:太もも(大腿)の裏が痛いのはなぜ?痛みの原因と簡単ストレッチ・マッサージを紹介

① ハムストリングスの硬さ・過緊張

太ももの裏側が「突っ張る」「硬い」「座っていると張ってくる」という感覚がある場合、最も多いのがハムストリングスの硬さです。デスクワークや車の運転などで長時間座る生活が続くと、裏ももが常に縮んだ状態になり、筋肉内の血流が悪化して張りやすくなります。

ハムストリングスの画像

特に40代以降は柔軟性が低下しやすく、次のような動作で裏側の痛みが出やすくなります。

  • 前屈すると裏ももが強く張る
  • 歩き始めに裏がつっぱる
  • 座った姿勢から立ち上がる瞬間に痛む

このタイプの痛みは、筋肉が固まっていることが主な原因で、温める・軽くストレッチをするなどで改善しやすいのが特徴です。痛みが深部ではなく表面的な張りとして出ることが多く、動き始めに痛みが強く、身体が温まると軽快する傾向があります。

② 坐骨神経痛(裏もも〜ふくらはぎへ電気のような痛み)

裏ももの痛みの中で「ビリッ」「ジンジン」「冷たいような痛み」がある場合は、筋肉よりも神経が関わる坐骨神経痛が疑われます。坐骨神経は腰椎から伸び、太ももの裏を通ってふくらはぎへと続く神経で、腰の負担が大きくなる40代以降で特にトラブルが増えます。

坐骨神経痛の画像

坐骨神経痛の特徴としては以下のようなものがあります。

  • 裏ももからふくらはぎへ痛みが広がる
  • 電気が走るような鋭い痛み
  • 長時間座ると悪化
  • 腰の重だるさを伴う

神経由来の痛みは、筋肉痛と違い体勢を変えても大きくは改善しないことが多く、特に長く座った後の立ち上がりなどで一気に痛みが強くなる場合があります。表面ではなく奥から来る痛みが特徴で、冷感やしびれを伴うことも少なくありません。

坐骨神経痛は放置すると慢性化しやすいため、痛みが“脚全体に放散する”ような場合は早めの対処が必要になります。

③ 肉離れ(急なズキッ・歩行痛)

太ももの裏側で急に「ズキッ」と刺すような痛みが走り、その後歩くたびに痛む場合は、ハムストリングスの肉離れが疑われます。肉離れはスポーツのイメージが強いですが、40代以降では日常のちょっとした動作でも起こりやすくなります。

例としては、以下のように些細な動作でも筋線維に急激な負荷がかかると肉離れが起きます。

  • 歩幅を大きく取った瞬間
  • 子どもを抱え上げた際の片足負荷
  • 転びそうになって踏ん張ったとき

また、肉離れの特徴は、以下のような点です。

  • 急激な痛みの発生
  • 歩行時の強い痛み
  • 痛む場所が指1〜2本分で明確
  • 内出血や腫れを伴うこともある

筋肉痛とは違い、その場で動けなくなるほど痛むこともあり、痛む部位を強く押すと鋭く響くのが特徴です。軽度でも無理に動くと治りが遅れ、慢性化することがあるため、急な裏ももの痛みには注意が必要です。

太ももが痛い理由|内側が痛いのは閉鎖神経や内転筋、股関節の不調が関連

太ももの内側は、筋肉・神経・股関節のいずれからも痛みが出やすい複雑な部位です。股関節に近い位置にあり、日常の立ち方や歩き方の癖が影響しやすいため、40代以降では特に痛みが増えやすくなります。この章では、内ももの痛みに多い3つの原因を、痛みの性質の違いとあわせてわかりやすく解説します。

① 内転筋の張り・軽い炎症

最も多い内ももの痛みは、股を閉じる動作を担う内転筋の張りや軽い炎症によるものです。日常生活では歩行時に内転筋が常に使われており、筋力と柔軟性の低下によって疲労が蓄積しやすくなります。

重心が内側に傾きやすい歩き方の人は、さらに負担が集中しやすい傾向があります。このタイプの痛みは、次のような場面でよく現れます。

  • 長時間歩いたあとに内側がズーンと重い
  • 立ち上がりで付け根〜内側が引っ張られる
  • 内ももが筋肉痛のようにズキズキする

内転筋が硬くなると、股関節の可動域も狭くなり、歩くたびに内側が突っ張る感覚が出やすくなります。軽い炎症がある場合は、押すと「イタッ」と痛む場所がはっきりしていることも多く、温めると軽快するのも特徴です。

内転筋の画像

② 閉鎖神経痛(内ももがピリピリ・刺すように痛い)

内ももにピリッ、ジワーッとした神経特有の痛みがある場合、閉鎖神経が圧迫されている可能性があります。閉鎖神経は骨盤の中を通って内ももに広がる神経で、姿勢の崩れ・股関節の硬さ・腰の負担などによって刺激されやすくなります。

閉鎖神経痛の特徴は以下のような痛み方です。

  • 歩くと内ももに電気が走る
  • 座っていると付け根〜内側がジンジンする
  • 触れるとピリピリするような不快感
  • 奥のほうが刺されるように痛い

筋肉の張りと違って、痛みが浅くない、表面ではないという印象が強く、体勢を変えても痛みが抜けにくいことがあります。また、冷えやストレスで症状が増悪しやすいのも神経痛ならではです。

40代以上は骨盤周囲の柔軟性が低下しやすく、股関節の動きが小さくなることで閉鎖神経への負担が増えるため、神経痛の発生が増える傾向があります。

③ 股関節のトラブルが内ももに派生(変形性股関節症など)

内ももの痛みで見逃してはいけないのが、股関節からの痛みの派生です。股関節は太もも全体の動きを司る重要な関節で、変形性股関節症や股関節周囲の炎症があると、痛みが太ももの内側に広がることがあります。

股関節の画像

股関節が原因の場合は、以下のような特徴があります。

  • 付け根(鼠径部)が痛く、そこから内ももへ広がる
  • 歩行時に「ズキッ」と痛み、歩き方が崩れる
  • 朝の動き始めに痛みが強い
  • 長く歩くと内側が重くなり、休むと少し楽になる

股関節の問題は、単に筋肉を伸ばすだけでは改善しにくく、関節の可動域低下や軟骨のすり減りが根本にあるケースもあります。40代以降は、この関節自体の変化が痛みの背景にある可能性が高くなるため、自分の痛みが股関節の影響を受けているかどうかを早めに見極めることが重要です。

太ももが痛い理由|外側が痛いのは腸脛靭帯や体重バランス、姿勢の癖が関連

太ももの外側は、体重バランスや姿勢の崩れの影響を強く受ける部位で、ランニングや歩行量が増えると痛みが出やすくなります。外側には“腸脛靭帯”という強く硬い組織が走っており、ここが張ったり擦れたりすると鋭い痛みが生じます。また、外側の神経が圧迫されることでビリビリした感覚が出ることもあります。この章では、外側の痛みを引き起こす3つの代表的な原因を丁寧に解説します。

① 腸脛靭帯炎(外側がこすれて痛む)

太ももの外側の痛みで最も多い原因が「腸脛靭帯炎」です。腸脛靭帯は、骨盤から膝の外側まで続く長い靭帯で、歩く・走る・階段の昇り降りのたびに大腿骨と擦れ合います。40代以降では筋力の低下や股関節周りの硬さから、靭帯と骨の摩擦が増えやすく、外側がズキズキ痛むようになります。

腸脛靭帯炎の画像

腸脛靭帯炎の痛みは次のような特徴があります。

  • 歩き始めに外側がズキッとする
  • 階段の下りで痛みが強い
  • ランニング後に膝の外側〜太もも外側が重だるい
  • 押すとピンポイントで痛い場所がある

痛みの出方は“鋭い張り”や“刺すような痛み”で、筋肉痛とは異なり、動作のたびに一定の場所が痛むことが多いのが特徴です。

外側の筋バランスが崩れ、臀部(おしり)の筋肉がうまく働かない状態が続くと、腸脛靭帯の負担がさらに増えて悪化しやすくなります。

② 外側大腿皮神経痛(しびれ・ピリピリ)

太もも外側に“ビリビリ”“ジンジン”としたしびれがある場合は、外側大腿皮神経という感覚神経が圧迫されている可能性があります。この神経は腰骨の近くを通って太ももの外側へ向かうため、骨盤まわりの締め付けや姿勢の乱れの影響を受けやすい神経です。

40代以降で特に次のような場面で症状が現れやすくなります。

  • きついズボンやベルトで圧迫される
  • お腹まわりの脂肪で神経に負担がかかる
  • 長時間立ちっぱなしで腰が反る
  • 片足重心の癖がある

外側大腿皮神経痛の特徴は、「表面がしびれる感じ」「触れるとチリッとする不快感」「足の感覚が薄い」など、筋肉痛とは明らかに違う“神経症状”が出る点です。痛みというよりしびれ・灼熱感のほうが強いことも多く、姿勢や服装が原因となっているケースでは、圧迫を避けると症状が軽快することがあります。

③ 姿勢の崩れ・骨盤の傾きによる外側負荷

ランニングやスポーツをしていない人でも、太ももの外側が痛むケースは多くあります。その背景にあるのが、「骨盤の傾き」や「体重の偏り」といった姿勢の問題です。

次のような姿勢の癖が外側の負担を増やします。

  • 片側に重心をかけて立つ
  • 猫背で股関節が内側にねじれる
  • 反り腰で太もも前〜外側が緊張
  • 歩くときに足が内側に入る(内股

このような姿勢では、歩くたびに外側の筋肉(大腿筋膜張筋)が過剰に働き、外側に痛みが出やすくなります。筋肉が常に引っ張られる状態が続くため、長時間歩いた日の夕方に痛みが強くなるのが特徴です。痛む場所が「広く」「ざっくり外側」といった場合は、腸脛靭帯の炎症ではなく、姿勢の問題で負荷が分散されずに一部に集中している可能性が高いといえます。

部位別|今すぐできるセルフケアとストレッチ

太ももの痛みは、筋肉の硬さ・使いすぎ・姿勢の崩れが原因のことが多く、適切なストレッチやセルフケアでやわらぎやすい特徴があります。この章では、前・裏・内側・外側の痛みに合わせて、今日からすぐ実践できる方法を紹介します。

① 前側の痛み向けストレッチ(大腿四頭筋)

大腿四頭筋が硬くなると、膝の動きが悪くなり、歩行時に前ももへ負担が集中します。このストレッチで筋肉を縦方向に伸ばすことで血流が改善し、張り感や重さが緩みやすくなります。

大腿四頭筋ストレッチ

STEP1:片足を後方でつかみましょう。
STEP2:つかんだ足を後方に引っ張りましょう。太もも前面が伸びた状態を保持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を反らさないように注意しましょう。

② 裏側の痛み向けストレッチ(ハムストリング)

長時間座るとハムストリングスが短縮し、立ち上がりや歩行時に急に引き伸ばされて痛みが出ます。丁寧に伸ばすことで筋肉の柔軟性が戻り、突っ張り感が取れやすくなります。

ハムストリングスストレッチ

STEP1:片脚を前方に出しましょう。
STEP2:骨盤を前方に倒しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を丸めないように注意しましょう。

③ 内側の痛み向けストレッチ(内転筋)

内転筋は疲労すると収縮したまま硬くなり、股関節の動きを制限し痛みにつながります。このストレッチで筋肉の広がりが回復すると、歩いたときの内側の引っ張り感が軽くなります。

内転筋ストレッチ

STEP1:両足の足底を合わせましょう。
STEP2:肘を太ももに当て、体を前方へ傾けましょう。太ももが伸びた状態を保持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。

④ 外側の痛み向けケア(腸脛靭帯リリース)

腸脛靭帯が硬くなると骨との摩擦が増え、外側の痛みが出ます。過度に強い刺激は逆効果ですが、やさしく圧をかけることで周囲の筋膜が緩み、動いたときのズキズキ感が軽減します。

グリッドマッサージ(外側広筋・腸脛靭帯)

STEP1:グリッドを準備しましょう。
STEP2:グリッドを太もも外側に当てましょう。
STEP3:反対方向へも動かしましょう

太もものストレッチは「どの部位が痛むか」によって狙う筋肉が大きく変わります。無理のない範囲で継続すると、姿勢が安定し、痛みの再発予防にもつながります。

太ももの痛みで病院に行くべき症状・判断基準

太ももの痛みは多くの場合、筋肉疲労や姿勢のクセによる一時的な問題ですが、なかには重大な疾患のサインであったり、早めの治療が必要なケースもあります。

特に40代以降では、神経や血管、関節の変化が痛みとして現れやすいため、“放置できる痛み”と“受診が必要な痛み”を早期に見分けることが大切です。この章では、受診すべき具体的な危険サインを整理して解説します。

① しびれ・力が入らない・歩けない

太ももの痛みとともに「しびれ」や「力が入らない」症状がある場合は、神経が強く圧迫されている可能性があります。代表的な原因には、腰椎由来の神経圧迫(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など)や外側大腿皮神経の圧迫などが挙げられます。

特に注意すべきサインは以下の通りです。

  • 歩くと脚がガクッと抜ける感じがある
  • 足先までしびれが広がっていく
  • 前もも・外側・内側の感覚が鈍い
  • 座る・立つなどの基本動作がつらい

筋肉痛とは違い、神経のトラブルは放置すると悪化しやすく、回復が難しくなることがあります。「歩き方がおかしい」「足に力が入らない」と感じたら早めの受診が必要です。

② 発熱・腫れ・赤みがある

太ももに痛みとともに 腫れ・赤み・熱感・発熱 がある場合は、筋肉や皮膚、関節の炎症が疑われます。

特に次のような状態は要注意です。

  • 太ももの一部がボコッと腫れている
  • 触ると熱を持っている
  • 歩くとズキッと鋭い痛みが出る
  • 全身のだるさや38度以上の熱がある

これらの症状は、筋肉や皮下組織の炎症、感染症、血栓(深部静脈血栓症)などが背景にある可能性があります。血栓は放置すると命に関わる危険があるため、「片側だけが急に腫れて熱い」場合は特に注意が必要です。

炎症性の痛みは時間とともに悪化することが多く、自己判断で長く放置すべきではありません。

③ 外傷後の強い痛み・肉離れの疑い

スポーツや日常生活で転倒したり、急に踏ん張ったりした後に太ももが強く痛む場合、肉離れや筋断裂の可能性があります。40代以降では筋肉の弾力が低下し、「ちょっとした動作」で肉離れが起こりやすくなります。

以下の状態に当てはまる場合は受診を検討すべきです。

  • 「ブチッ」「ズキッ」と音や感覚を伴って痛んだ
  • 歩行時に脚を引きずるほど痛い
  • 痛む場所を押すと鋭く響く
  • 内出血(皮膚が紫色)が出てきた

肉離れは軽度でも適切な処置が重要で、誤ったストレッチや無理な運動をすると治りが遅れたり再発につながったりします。早期に状態を確認し、適切な固定やリハビリを開始することが大切です。

④ 長期間つづく・夜間の痛みが強い

太ももの痛みが2〜3週間以上続く、または夜になると痛みが強くなる場合は、慢性化や関節の変性、腫瘍性の病変など、深いレベルのトラブルが潜んでいる可能性があります。

特に注意すべきポイントは以下の通りです。

  • 横になっても痛い(筋肉痛では起こりにくい)
  • 夜間・早朝の痛みで目が覚める
  • 日ごとに痛みが増している
  • 痛みが太ももだけでなく、付け根や腰にも広がっている

夜間痛は筋肉よりも関節や神経の問題で起こりやすく、変形性股関節症・腰椎トラブル・骨の炎症などが背景にあるケースもあります。痛みが長引くほど回復にも時間がかかるため、“いつもよりおかしい”と感じたら早めに医療機関で原因を確認するようにしましょう。

まとめ

太ももの痛みは、前・裏・内側・外側のどこが痛むかで原因が大きく異なります。筋肉の張り、神経の圧迫、関節の変化など、部位によって対処法も変わるため、まず「どこが痛むのか」を明確にすることが重要です。位置と痛みの性質を手がかりに原因を絞り込み、必要に応じてセルフケアや受診を適切に選ぶことで、痛みの改善と再発予防につながります

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。