足の付け根が痛い原因は?片側・女性に多いケースと今すぐできるセルフケア法

足の付け根に突然ズキッとした痛みを感じると、不安になりますよね。歩くたびに気になったり、片側だけに出ると「何かの病気かも」と心配になる方も多いのではないでしょうか。

特に「片側だけ痛い」「女性に多い」「動かすと痛む」といったケースでは、関節や筋肉、姿勢の乱れなどが関係していることも。

本記事では、そうした症状の背景や自宅でできる対処法をわかりやすく解説します。

足の付け根が痛くなるのはどんなとき?

股関節が痛そうな女性の画像

足の付け根の痛みは、日常のちょっとした動作や姿勢の変化をきっかけに現れることが多く、「いつのまにか痛くなっていた」というケースも珍しくありません。

このセクションでは、特に多いシチュエーション別に痛みの特徴を整理していきます。

歩くと痛い、立ち上がると痛い:動作に伴う痛み

階段を上るとき、椅子から立ち上がるとき、あるいは何気なく歩いているときに、足の付け根にピキッとした痛みが走る——そんな経験がある方は少なくないでしょう。

こうした動作時の痛みは、股関節周辺の筋肉や腱、関節包といった組織にストレスがかかっているサインです。特に長時間の座位やデスクワークのあとに急に動くと、筋肉が硬くなっており、股関節がスムーズに動かず痛みが出やすくなります。

また、片足に重心をかけるクセや、内股歩きといった姿勢の乱れがあると、関節や筋肉にかかる負荷が片側に偏り、痛みを誘発しやすくなります。

寝起きにズキッと痛む:朝特有の痛み

朝起きたとき、布団から出ようと体を動かした瞬間に足の付け根がズキッと痛む……これは、睡眠中に体がほとんど動かないため、関節や筋肉がこわばっていることが一因です。

特に中高年以降では、股関節の可動域が狭くなりやすく、睡眠中に関節が圧迫されたり血流が滞ると、朝に痛みが出ることがあります。加えて、冷えによって筋肉が収縮している状態も、寝起きの痛みを強める要因となります。

このような「朝の痛み」は、ストレッチや温浴で血行を促進することで軽減する場合が多く、慢性化を防ぐポイントになります。

片側の足の付け根が痛む原因とは?

足の付け根の痛みが「片側だけ」に現れる場合、身体のバランスの崩れや特定の部位への負荷が関係している可能性があります。

ここでは、特に片側に痛みが集中する原因について、代表的な3つの視点から解説します。

左右のバランスの崩れや姿勢の偏り

普段、無意識のうちに片足に体重をかけて立っていませんか?または、足を組んで座る、片足に体重をかけて歩くといった習慣がありませんか?

このような日常のクセは、骨盤や股関節周辺の筋肉に偏った負荷をかけ、結果として片側の足の付け根に痛みを引き起こす要因となります。特に女性に多い「内股歩き」や「反り腰」の姿勢は、骨盤の左右バランスを崩しやすく、股関節の可動に影響を与えます。

また、長時間のデスクワークやスマートフォン操作で前かがみになった姿勢が続くと、股関節の前側が縮こまり、片側の筋肉が過緊張を起こして痛みにつながるケースもあります。

筋肉や腱の過緊張・炎症

股関節まわりには、腸腰筋、大腿筋膜張筋、梨状筋といった多くの筋肉や腱が関与しており、これらが硬くなったり炎症を起こすと、痛みが片側に集中することがあります。

腸腰筋の画像

大腿筋膜張筋の画像

梨状筋の画像

たとえば、普段あまり運動しない人が急に長時間歩いたり走ったりした場合、片脚に偏った負荷がかかり、筋肉痛や軽い腱炎を起こすことがあります。筋肉の炎症は安静で軽快することもありますが、放置すると慢性化し、関節の動きにまで悪影響を及ぼすことも。

特に姿勢や歩き方に癖がある人は、特定の筋肉ばかりが酷使されて炎症を起こしやすく、痛みが片側に出やすくなります。

坐骨神経痛や神経圧迫の可能性

片側だけに現れる痛みの背後には、神経の圧迫が関係している場合もあります。代表的なのが「坐骨神経痛」です。

坐骨神経は腰から足にかけて伸びる長い神経で、腰椎やお尻の筋肉が圧迫すると、足の付け根や太ももにかけて鋭い痛みやしびれが出ることがあります。特に片側に限定して起こるのが特徴で、長時間の立位や歩行で悪化しやすい傾向があります。

坐骨神経痛の画像

また、梨状筋症候群といって、お尻の筋肉(梨状筋)が坐骨神経を圧迫することで似たような症状が出ることも。どちらも神経性の痛みであり、筋肉のストレッチや体幹の安定化が改善のポイントとなります。

参考記事:坐骨神経痛でやってはいけないことは?つらい症状を軽くする簡単ストレッチも紹介!

女性に多い!足の付け根が痛くなる主な理由

足の付け根の痛みは、女性に多く見られる症状のひとつです。その背景には、妊娠やホルモンの影響、加齢による変化、生活習慣など、女性特有の身体的要因が関係しています。

このセクションでは、女性に多い原因を3つの視点から解説します。

妊娠中や産後に起こるホルモンの影響

妊娠中や出産後、女性の体は大きな変化を経験します。とくに妊娠後期になると、リラキシンというホルモンの分泌が増え、骨盤まわりの靱帯や関節が緩みやすくなります。これは出産の準備として自然な働きですが、その分、股関節や足の付け根にかかる負担が増し、痛みが出やすくなるのです。

また、出産後もしばらくはホルモンの影響が続き、骨盤が安定しないまま抱っこや授乳などの姿勢を繰り返すことで、左右どちらかに痛みが出るケースが多く見られます。特に赤ちゃんを片方の腕で長時間抱っこしている人は、筋肉のバランスが崩れやすく、足の付け根に違和感や鈍痛が残りやすくなります。

更年期に増える骨密度や筋力の変化

更年期を迎えると、エストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンは、骨や筋肉の健康を保つ役割を果たしており、その減少は骨密度の低下や筋力の衰えにつながります。

骨盤まわりの筋肉が弱ると、股関節をうまく支えられなくなり、動作のたびに関節や筋に過剰なストレスがかかります。これが足の付け根の痛みを引き起こす原因となります。

また、閉経後は関節の柔軟性も低下しやすく、朝のこわばりや歩行時の痛みが目立つようになる人も少なくありません。こうした変化に気づかずに無理をすると、慢性的な痛みへと進行するリスクもあります。

女性に多い体の使い方と生活習慣

女性は男性に比べて筋力が弱く、骨盤の構造にも違いがあります。そのため、足を内側に向けて歩く「内股歩き」や、反り腰、猫背といった姿勢の癖がつきやすく、これが長年にわたり足の付け根に影響を及ぼすことがあります。

また、冷え性やむくみなど、血流の悪さが痛みの一因となることも。特に冷房の効いたオフィスや、締め付けの強い服装が続くと、下半身の循環が悪くなり、筋肉や関節に痛みが出やすくなります。

このような生活習慣に無自覚なままでいると、年齢を重ねるごとに慢性化しやすくなるため、早めに見直しが必要です。

痛む場所で異なる?内側・外側・前側の痛みの見分け方

足の付け根の痛みといっても、実際に「どこが痛むのか」によって、考えられる原因や対処法が変わってきます。このセクションでは、「内側」「外側」「前側」と痛む位置別に、それぞれの特徴と注意点を解説していきます。

参考記事:股関節痛の原因は何?痛みと関連する病気とストレッチ・筋トレ法を専門家が解説!

内側が痛いときに考えられる原因

足の付け根の内側、いわゆる鼠径部(そけいぶ)に痛みを感じる場合、最も多いのが「股関節の炎症」や「内転筋群の過緊張」です。

内転筋は、脚を内側に閉じる動きで使われる筋肉群で、日常的に内股気味で歩いている方や、長時間立ちっぱなしでいる方に負担がかかりやすくなります。筋肉の疲労や炎症により、内側に鋭い痛みや違和感が生じることがあります。

内転筋の画像

また、鼠径部にはリンパ節や血管が集中しているため、炎症やむくみによって圧迫され、ズーンと重だるい痛みが出ることも。さらに、女性では婦人科系の問題が関連しているケースもあり、痛みが長引く場合は専門機関での診断が必要です。

外側のズキズキは関節か筋膜のトラブル?

足の付け根の外側に痛みを感じるときは、「大腿筋膜張筋」や「中殿筋」といった股関節の外側を支える筋肉に炎症が起きている可能性があります。

臀筋群を説明した画像

特に、坂道や階段を頻繁に使う生活をしている人、スポーツで横方向の動きが多い人などは、これらの筋肉が酷使されやすく、過緊張から痛みを引き起こしやすい傾向があります。

また、関節包の炎症や股関節の軟骨トラブルも、外側に痛みが出ることがあります。痛みが強く、寝返りや立ち上がりの際にズキッと響くような場合は、股関節の構造に関わる問題を疑う必要があります。

前側が痛い場合の可能性と特徴

股関節の前側、つまり脚の付け根の前面に痛みを感じるときは、「腸腰筋の緊張」や「腱の炎症」が原因として多く挙げられます。

腸腰筋は、上半身と下半身をつなぐ重要な筋肉で、座りっぱなしの生活や前かがみの姿勢が長く続くと、硬く縮こまってしまいます。こうした状態で急に立ち上がったり歩いたりすると、引っ張られるような痛みを感じることがあります。

また、前側の痛みは、股関節の可動制限とも関連していることがあり、「脚を上げにくい」「階段を上るときに違和感がある」といった症状が出ることもあります。

【セルフチェック】整形外科を受診すべき症状とは

足の付け根に痛みを感じたとき、「病院に行くべきか、それとも様子を見ても大丈夫か」と悩む方は多いでしょう。ここでは、自宅でできるセルフチェックの観点から、整形外科の受診が推奨される具体的な症状について解説します。

日常生活に支障があるときのチェックポイント

まず確認すべきなのは、日常動作にどれだけ影響が出ているかという点です。以下のような状況が続く場合、痛みが軽度でも専門的な評価が必要です。

  • 足の付け根が痛くて歩けない
  • 寝返りや立ち上がりが困難
  • 階段の昇降時に強い痛みが出る
  • 痛みのために睡眠が妨げられる

こうした動作時の強い痛みは、股関節周囲の関節・筋・腱などに明確な損傷や炎症が起きているサインであり、早期の診断と対処が重要です。放置することで症状が悪化し、長引くリスクもあるため注意が必要です。

しびれや感覚異常がある場合

痛みに加えて「しびれ」や「感覚の鈍さ」がある場合は、筋肉や関節だけでなく神経が関与している可能性が高くなります。

たとえば、足の付け根から太ももにかけてピリピリ・ジンジンとしたしびれが広がる場合は、坐骨神経やその周辺の神経が圧迫されている可能性があります。これを放置すると、神経の働きが低下し、感覚異常や筋力低下を引き起こすことも。

特に、片側の足に限定してしびれが現れるケースは、腰椎由来の神経症状が疑われるため、整形外科での画像診断が推奨されます。

1週間以上痛みが続く、悪化する場合

痛みが1週間以上続いている場合や、徐々に強くなっていると感じる場合は、自己判断での放置は避けた方がよいでしょう。慢性化してしまうと、治療に時間がかかるだけでなく、関節の可動域が狭まったり、姿勢や歩行に悪影響を及ぼす可能性もあります。

また、安静にしていても痛みが和らがない、夜間に痛みが増す、発熱や腫れを伴うといった症状がある場合は、炎症や感染症のリスクも考えられます。

自宅でできるセルフエクササイズと対処法

病院に行くほどではないけれど、足の付け根の痛みをなんとかしたい。

そんなときに役立つのが、自宅で行える簡単なセルフケアです。このセクションでは、筋肉をほぐし、股関節まわりの動きを改善するためのストレッチやマッサージ、さらに日常生活で意識したい対処法についてご紹介します。

股関節の可動域を広げるストレッチ

股関節まわりの柔軟性が低下すると、周辺の筋肉に負担がかかり、痛みが出やすくなります。特に「朝起きたときに痛む」「歩き出しに違和感がある」といった症状がある人は、股関節をゆるめるストレッチが効果的です。

内転筋ストレッチ

STEP1:両足の足底を合わせましょう。
STEP2:肘を太ももに当て、体を前方へ傾けましょう。太ももが伸びた状態を保持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。

このストレッチは、内転筋や股関節の可動域を広げるのに効果的で、日常的に続けることで再発予防にもつながります。

筋肉を緩める簡単セルフマッサージ

痛みの原因が筋肉の過緊張や軽度の炎症である場合、マッサージで血流を促進し、筋肉をゆるめることが有効です。

【マッサージの手順】

  1. 椅子に座ってリラックスした状態を作ります。
  2. 手のひらで、足の付け根(股関節の前面や内側)を軽く押さえる。
  3. 円を描くようにやさしく揉みほぐし、1カ所につき20〜30秒程度。
  4. 痛みを感じる箇所は避け、気持ちよく感じる程度の圧で行うことがポイントです。

筋肉のコリがほぐれると、関節の動きもスムーズになり、痛みの緩和が期待できます。お風呂あがりなど、筋肉が温まった状態で行うとさらに効果的です。

冷却・温熱・安静の使い分け

足の付け根がズキズキと痛むとき、「温めた方がいいの?冷やした方がいいの?」と迷う方も多いと思います。基本的には、症状の状態によって使い分けるのがベストです。

【冷やすべきタイミング】

  • 急に痛みが出たとき(捻挫や筋肉の炎症が疑われる場合)
  • 腫れや熱感がある場合
    → 保冷剤や氷をタオルに包み、10〜15分冷却します。

【温めるべきタイミング】

  • 慢性的なこわばりや、朝の痛み・冷えからくる不快感がある場合
    → お風呂や温湿布で血行を促進しましょう。

【安静が必要なケース】

  • 痛みが強く、動かすのもつらいとき
  • 一定の動作で必ず痛みが出るとき
    → 無理をせず、負担をかけない姿勢で休息を取りましょう。

まとめ

足の付け根の痛みは、姿勢のクセや筋肉の疲労、ホルモンバランスの変化など、さまざまな要因が関係しています。特に片側だけの痛みや女性特有の症状は、生活習慣と密接に結びついていることが多く、自宅でのストレッチやマッサージなどのセルフケアで軽減できる場合もあります。

ただし、しびれや強い痛みが続く場合は、自己判断せず整形外科を受診することが大切です。日頃から体に向き合い、無理のないケアを続けることが、予防と再発防止の鍵になります。

【参考文献】
1)Hopayian K, Danielyan A. Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2018 Feb;28(2):155-164. doi: 10.1007/s00590-017-2031-8. Epub 2017 Aug 23. PMID: 28836092.
2)Hicks BL, Lam JC, Varacallo MA. Piriformis Syndrome. [Updated 2023 Aug 4]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK448172/
3)Wootton JR, Cross MJ, Holt KW. Avulsion of the ischial apophysis. The case for open reduction and internal fixation. J Bone Joint Surg Br. 1990 Jul;72(4):625-7. doi: 10.1302/0301-620X.72B4.2380217. PMID: 2380217.
4)大橋清秀:慢性関節リウマチ患者にみられる股関節の変化,整形外科と災害外科 第19巻 第2号,181-183,1970

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。