【保存版】仙腸関節の痛みが悪化するNG行動とは?やってはいけない5つのこと

「骨盤の奥が痛い」「座っているとお尻のあたりがズーンと重だるい」そんな症状が続いているなら、仙腸関節が原因かもしれません。普段あまり意識しないこの関節ですが、実は立つ・座る・歩くといった日常動作に深く関わっています。

本記事では、仙腸関節の基礎知識と痛みの原因、やってはいけない行動、そして正しい対処法までをわかりやすく解説します。最後まで読むことで、痛みを悪化させるNG行動を避けながら、安全に回復を促すセルフケアの方法と、再発を防ぐ生活習慣のポイントがわかります。

 「なぜ痛みが続くのか」「どうすれば改善できるのか」を理解し、今日からできる具体的な対策を身につけましょう。

仙腸関節ってどこ?なぜ痛みが出るのかを簡単に解説

仙腸関節が痛そうな女性の画像

まずは「仙腸関節」とはどこなのか、そしてなぜ痛みが出るのかを、専門知識なしでもわかるように解説します。

仙腸関節の位置と役割

仙腸関節(せんちょうかんせつ)は、腰の少し下、ちょうどお尻の真ん中あたりにある「仙骨(せんこつ)」と、その左右に広がる「腸骨(ちょうこつ)」がつながってできる関節です。両方の骨盤を橋渡しするような位置にあり、背骨と下半身をつなぐ、まさに“体の土台”となる重要な関節です。

仙腸関節を説明した画像

この関節は、股関節や膝のように大きく動く構造ではありません。わずか数ミリの動きしかないものの、その微細な動きによって歩行時の衝撃を吸収したり、姿勢を安定させたりと、私たちが「立つ・座る・歩く」といった基本的な動作をスムーズに行うために欠かせない役割を担っています。

とくに40代以降になると、筋力の低下や生活習慣の変化により、仙腸関節にかかる負担が大きくなり、痛みの原因になることがあります。

なぜ痛くなるのか?主な原因

仙腸関節が痛む理由には、いくつかの要因が重なっているケースが多いです。ここでは代表的な原因を見ていきましょう。

ずれ(仙腸関節の微細なズレ)

仙腸関節は構造上、靭帯(じんたい)でしっかりと固定されていますが、何らかのきっかけで「ほんのわずかにズレる」ことがあります。例えば、急な動き・片側荷重の姿勢・くしゃみ・階段の踏み外しなど、些細な動作でもズレが生じることがあります。

このズレが起こると、関節周辺の神経や靭帯が刺激され、鈍痛や鋭い痛み、座っていられないような不快感が出現します。

炎症(関節や周囲組織の炎症)

長時間同じ姿勢をとる、または運動のしすぎなどで関節に負担がかかると、周囲の組織に炎症が起こることがあります。これが「仙腸関節炎」と呼ばれる状態です。

仙腸関節障害の画像

炎症が起きると、安静にしていても痛みを感じたり、起床時や立ち上がり動作時にピリッと痛むのが特徴です。

不安定性(靭帯や筋肉のゆるみ)

特に女性に多いのが、「関節がゆるみやすくなること」による不安定性です。妊娠・出産を経た女性では、ホルモンの影響で靭帯が緩みやすくなり、仙腸関節の安定性が低下することがあります。

また、加齢に伴う筋力の低下も、仙腸関節のぐらつきを助長しやすく、慢性的な違和感やだるさを引き起こします。

筋力低下(骨盤まわりの筋肉が弱くなる)

仙腸関節は強靭な靭帯と骨盤周辺の筋肉によって支えられています。特に大殿筋(だいでんきん)や中殿筋、腹横筋などのインナーマッスルが弱ると、骨盤の安定性が失われ、仙腸関節にかかる負担が増します。

大殿筋・中殿筋の画像

腹横筋の画像

その結果、少しの動きでも関節にストレスがかかり、慢性化する痛みや再発を引き起こしやすくなるのです。

【要注意】仙腸関節の痛みを悪化させる「やってはいけない5つのこと」

デスクワークで仙腸関節が痛そうな女性の画像

仙腸関節の痛みは、正しい知識がないまま自己流のケアを続けてしまうことで、かえって悪化するケースも少なくありません。一見よさそうに思えるストレッチや姿勢も、実は関節や靭帯に負担をかけてしまうことがあります。

ここでは、多くの人が無意識にやってしまう“NG行動”と、その理由、そして正しい対応法をわかりやすく解説します。知らずに続けている習慣を見直すことで、痛みの悪化を防ぎ、回復を早めることができます。

① 無理なストレッチやひねる動き

仙腸関節まわりに違和感があると、「ストレッチで伸ばせば治る」と考える方も多いでしょう。しかし、実はこれが大きな落とし穴です。

仙腸関節は非常に繊細で、動きも非常に小さいため、過度にひねる・反らす・腰をねじるようなストレッチは逆効果です。とくに“ヨガの開脚ポーズ”や“片足を後ろに引いて腰を回す”などの動きは、関節のズレや靭帯へのストレスを強め、かえって痛みを悪化させる原因になります。

症状がある時期には、「伸ばす」よりも「休める・安定させる」ことが重要です。

② 痛みを我慢して運動や歩きすぎる

「動いた方が回復が早い」「筋肉をつければ治る」と思って、痛みを無視して運動やウォーキングを続けるのも危険です。

仙腸関節の痛みは、微細なズレや炎症によって生じるものです。その状態で長時間歩いたり、ランニングや筋トレをしてしまうと、関節にさらに負担がかかり、炎症が悪化することがあります。

とくに「痛みを感じるが我慢できる程度だから」と続けてしまう人は要注意。慢性化や広範囲の痛みにつながるリスクがあるため、一度痛みが出たら、いったん運動は中止し、医師や専門家の指示を仰ぎましょう。

③ 長時間の同じ姿勢(座りっぱなし/立ちっぱなし)

デスクワークや立ち仕事など、長時間同じ姿勢を続ける生活も、仙腸関節に大きな負担をかける要因です。とくに座りっぱなしの状態では、骨盤が後傾して関節に圧力がかかり、痛みが出やすくなります。

また、立ちっぱなしも仙腸関節の靭帯を引っ張る姿勢になりやすく、炎症を悪化させることがあります。適度に動くことが大切ですが、症状があるときは“無理なくこまめに姿勢を変える”ことを心がけましょう。

仕事中であっても、1時間に1回は立ち上がって軽く歩く、または姿勢を変えるようにすると、負担の蓄積を防ぐことができます。

④ 強いマッサージや押しすぎ

痛みがあると、つい「押してほぐせば楽になるかも」と思ってしまう方も少なくありません。しかし、仙腸関節周辺は神経が密集しており、強い刺激は逆効果になることがあります

とくに、関節のズレや炎症がある状態で、ぐいぐいと押すようなマッサージを受けると、痛みが悪化したり、別の部位にまで放散痛が広がることも。整体やマッサージを受ける場合も、仙腸関節へのアプローチに慣れている施術者を選ぶことが重要です。

セルフケアでマッサージを行う際は、「押す」よりも「さする・温める」など、やさしい刺激にとどめておきましょう。

⑤ 高すぎ・柔らかすぎの寝具の使用

実は、寝具の選び方も仙腸関節の状態に大きく影響します。枕が高すぎたり、マットレスが柔らかすぎると、寝ている間に骨盤が不安定な状態となり、仙腸関節にじわじわと負担がかかります。

また、柔らかい寝具では身体が沈み込みやすく、寝返りがうちにくくなるため、同じ姿勢が続いて関節や筋肉のこわばりが起こりやすくなります。

おすすめは、やや硬めで体をしっかり支えるマットレスと、高さ調整できる枕。寝ている時間は1日の3分の1を占めるため、睡眠環境の見直しは再発予防にも直結します。

NG行動を避けたうえで効果的なセルフケア方法

仙腸関節の痛みは、間違ったケアや無理な動作によって悪化してしまうことがありますが、正しい方法を知れば自宅でも十分に改善を目指せます。

ここでは、関節に負担をかけずに行えるやさしいストレッチやエクササイズ、筋肉を緩める具体的な方法を紹介します。

「何をしてはいけないか」と「何をすればよいか」の両方を理解することで、痛みを抑えながら回復を促すセルフケアが実践できるようになります。

負担の少ないストレッチ・エクササイズ3選

仙腸関節のセルフケアは、「強く動かす」よりも「やさしくほぐす」ことが大切です。ここでは、自宅で安全に行える、寝ながらでもできる軽いストレッチや運動を紹介します。

膝抱えストレッチ

STEP1:仰向けに寝て両膝を抱えましょう
STEP2:腰を丸めるようにお腹に引き寄せます。腰の伸びを感じましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
STEP4:さらに伸ばしたい場合は、腰の下に丸めたタオルを入れましょう。

骨盤周辺の筋肉をやさしく緩め、仙腸関節の圧力を軽減できます。

仙腸関節モビライゼーション

STEP1:小さいボールを2つくっつけた物を準備しましょう。
STEP2:仙骨にボールを当てましょう。
STEP3:骨盤を前方へ動かしましょう。
STEP4:骨盤を後方へ動かしましょう。繰り返し実施します。

硬くなった仙腸関節周りの組織を緩めるのに効果的なエクササイズです。

腹式呼吸

STEP1:椅子に座った状態で腰に触れ収縮を感じましょう。
STEP2:鼻から息を吸いお腹を膨らませましょう(3秒間)
STEP3:口から息を吐きお腹に力を入れましょう(6秒間)
注意点:腰は動かさないように注意する

インナーマッスルを刺激し、骨盤の安定に役立ちます。

骨盤まわりの筋肉をほぐす方法

仙腸関節に直接アプローチするのは難しいため、周囲の筋肉を緩めて間接的に負担を軽くするのがセルフケアの基本です。とくに重要なのが、梨状筋・腸腰筋・大殿筋などの骨盤を支える筋肉群です。

・梨状筋:お尻の奥にある筋肉

ストレッチ例:仰向けで片足を反対の膝に乗せ、脚を抱える
→ お尻の奥に心地よい伸びを感じたらOK

参考記事:梨状筋症候群でやってはいけない行動リスト|悪化を防ぐ5つのポイント

・腸腰筋:背骨と股関節をつなぐ深部筋

ストレッチ例:片膝立ちで前足に体重をかける(骨盤を前に押し出す)
→ 腰を反らさず、ゆっくり行うことがポイント

・大殿筋:お尻の大きな筋肉群

ストレッチ例:椅子に座った状態で片足を反対の膝に乗せ、引き寄せる
→ 腰を丸めずに行うことがポイント

これらの筋肉が柔らかくなることで、仙腸関節の可動がスムーズになり、痛みの緩和や再発防止につながります。

日常生活での姿勢と歩き方のコツ

セルフケアを効果的にするには、日常の動作も見直すことが大切です。

立つとき

  • 足を肩幅に開き、片側に体重が偏らないよう意識
  • 片足重心・前のめり姿勢は避ける

座るとき

  • 骨盤を立てて座る(腰が丸まらないように)
  • 深く座り、背もたれに軽くもたれると安定しやすい

歩くとき

  • 一歩一歩を「後ろ足で地面を蹴る」意識で歩く
  • 歩幅は広げすぎず、リズムよく歩くのがポイント

これらの姿勢や動作は、日々の小さな意識で改善できます。自分の「クセ」を知ることが、仙腸関節への負担軽減に直結します。

仙腸関節の痛みが長引く場合は?病院受診の目安と治療法

仙腸関節の痛みは一見軽いように感じても、放置することで慢性化したり、腰痛や坐骨神経痛など別の症状へ発展することがあります。

坐骨神経痛の画像

早い段階で原因を特定し、適切な治療を受けることで、回復までの時間を大きく短縮できるケースも多いです。ここでは、病院に行くべきタイミングや主な検査・治療の内容をわかりやすく解説します。

「どの段階で受診すべきか」「どんな治療が行われるのか」を知ることで、安心して次の一歩を踏み出せるようになります。

参考記事:坐骨神経痛が楽になる座り方は?日常の注意点や簡単にできるストレッチも解説

受診すべきタイミング

仙腸関節の痛みは、軽度であれば自然に回復するケースもありますが、以下のような症状がある場合は、放置せず医療機関を受診するのが賢明です。

こんな症状があれば受診を検討

  • 1週間以上痛みが続く・悪化している
  • 座っていられないほどお尻や腰が痛む
  • 朝起きたときに痛みが強く、動き出すと少し楽になる
  • 痛みが脚の方まで放散している(坐骨神経痛のような症状)
  • 自宅ケアや市販薬で改善が見られない

「まだ大丈夫」と思って無理を重ねると、症状が慢性化し、治りにくくなるケースも少なくありません。早期に原因を特定し、適切な対処を取ることが、長引かせないための近道です。

主な診断方法と病院での検査

医療機関では、まず問診と触診を中心に、痛みの部位や症状の出方を詳しく確認します。そのうえで、必要に応じて画像検査を行い、仙腸関節由来か他の原因かを見極めます。

よく使われる検査方法

  • ニュートンテスト:患者の骨盤を押すことで、仙腸関節に痛みが誘発されるかを確認
  • Gaenslenテスト/FABERテスト:脚の動きで関節に負荷をかけ、痛みをチェック
  • レントゲン:骨の形や変形を確認(ただし仙腸関節の詳細は映りにくい)
  • MRI:関節や周囲組織の炎症を評価できるため、より精密な診断に有効

仙腸関節の診断はやや専門性が高いため、整形外科の中でも「腰痛や骨盤障害に詳しい医師」に相談するのが理想です。

整形外科や整骨院での治療アプローチ

仙腸関節の痛みへの治療は、痛みの程度や原因に応じて段階的に行われます。医療機関でよく行われる治療は以下の通りです。

保存療法(まずはこれが基本)

  • 痛み止め(消炎鎮痛剤)や湿布
  • 物理療法(電気治療・温熱療法)
  • コルセットの装着(骨盤を安定させる目的)

症状が軽度〜中等度であれば、この保存療法で数週間以内に改善するケースが多いです。

ブロック注射

痛みが強く、保存療法だけでは改善しない場合には、仙腸関節に局所麻酔を注射する「関節ブロック注射」が行われることもあります。即効性があり、炎症を抑える効果が期待できます。

まとめ

仙腸関節の痛みを悪化させないためには、「何をしないか」がとても重要です。無理なストレッチや運動、姿勢の放置はかえって痛みを長引かせる原因になります。

まずはNG行動を避け、やさしいセルフケアや姿勢の見直しを続けることが回復への第一歩です。それでも改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診し、正しい診断と治療を受けましょう。体のサインに耳を傾け、自分の身体を守る習慣を大切にしてください。

【参考文献】
1)森本 大二郎,井須 豊彦,他:仙腸関節障害の治療経験.脊髄外科,2010,24-1,p6-11
2)白崎 芳夫,三浦 啓志,他:仙腸関節の力学的特性と内部構造.日本バイオレオロジー学会誌,2005,19-2,p34-40
3)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。