背中の「右だけ痛い」「左の奥が重い」「真ん中が突っ張る」といった痛みは、筋肉や関節の問題だけでなく、内臓の不調が原因となることがあります。40代以上では、姿勢の崩れやストレス、消化器系の負担など複数の要素が重なりやすいため、痛みの原因がわかりづらくなる傾向があるため注意が必要です。
本記事では、背中の痛む位置から原因を判断するための基本ポイントを解説します。最後まで読むことで、自分の症状と照らし合わせることで、必要な対処や受診の目安がわかるようになるでしょう。
背中の痛みは「位置」で原因が大きく変わる理由

背中は複数の筋肉・神経・関節が重なり、さらに肝臓・胃・膵臓・腎臓などの内臓と神経を通じてつながっています。そのため、痛む場所によって疑うべき原因が大きく変わるという特徴があります。
ここでは、まずその仕組みを理解することで、後に続く場所別の原因をより正確に読み取れるようにします。
背中は「姿勢の影響を強く受ける筋肉」が多い
背中には僧帽筋・広背筋・脊柱起立筋など、姿勢を支える大きな筋肉が多数あります。
これらの筋肉はデスクワーク・スマホ操作・車の運転の時間が長いほど硬くなりやすく、 片側の背中だけが張る・痛む といった症状を引き起こしやすくなります。
- 肩甲骨が前にずれる
- 首が前に落ちる
- 片側に体重をかけて座る
こうした姿勢の崩れは、右か左どちらか一方の筋肉に負担を集中させ、痛みを生じさせます。
内臓のトラブルは“関連痛”として背中に現れる
筋肉の痛みとは別に、内臓の不調が背中に痛みを飛ばす「関連痛」という現象があります。これは、内臓と背中が同じ神経ルートでつながっているために起こる症状です。
例として
- 右側 → 肝臓・胆のう・右腎臓
- 左側 → 胃・膵臓・心臓・左腎臓
- 真ん中 → 胃・食道・大動脈
このように、臓器の位置に応じて背中のどこが痛むかが変わるため、場所の特定が原因の推測に大きく役立ちます。
筋肉痛と内臓痛が“区別しにくい”理由
40代以降では、筋肉のコリと内臓の負担が重なりやすく、症状が類似して見えることがあります。
- ストレスや疲労で胃が荒れ、同時に背中の筋肉も緊張
- 食べ過ぎで胆のうが働き、右背部に重さが出る一方、姿勢不良で肩甲骨まわりも固まる
- 呼吸が浅くなり、胸郭が硬くなって背中にハリが出る
このように複数の原因が重なることで、「筋肉か内臓か判断できない」という状態が生まれます。だからこそ、痛みが出た位置と性質を手がかりに原因を切り分けることが重要になります。
右側の背中が痛いときに多い原因
右側の背中が痛む場合、筋肉や姿勢が原因となることが多い一方で、肝臓・胆のう・右腎臓といった右側に位置する内臓の不調が深い痛みとして現れることもあります。
仕事や生活習慣による筋疲労に加え、消化器系や泌尿器系の負担が重なりやすく、筋肉と内臓のどちらが原因なのか判断しづらくなる傾向があります。まずは、痛みが生じやすいパターンとその背景を理解することが重要です。
参考記事:背中の右側の痛みは内臓が原因!?考えられる原因と適切な対処法
① 肩甲骨まわりの筋肉のコリ・姿勢不良
右側の背中痛で最も多いのが、肩甲骨まわりの筋肉が硬くなるケースです。デスクワークやスマートフォンの使用が続くと、肩甲骨が前に引き出され、右側の僧帽筋や菱形筋が緊張しやすくなります。

この状態が続くと、肩甲骨の内側から下のあたりに重さや鋭い張りが生じ、「姿勢を変えると軽くなる」「肩を回すと痛みの位置がわかる」といった特徴が現れます。日中の疲れがたまった夕方ほど痛みが強く出やすく、翌朝になると改善する傾向があるのも筋肉性の特徴です。
② 肝臓・胆のう系の痛み(重だるい・鈍痛)
右側の背中の奥深くに、じんわりと重い痛みが広がる場合は、肝臓や胆のうの関連痛が疑われます。特に胆のうは右上腹部に位置し、胆石や胆のう炎があると胆汁の流れが滞ることで痛みが右背部まで波及することがあります。
筋肉痛と違い、姿勢を変えても痛みはほとんど変化せず、深部に沈み込むような鈍さが続くのが特徴です。食後とくに脂っこい食事のあとに痛みが強まる場合は、胆のうが関与している可能性が高くなります。
また、右上腹部の圧痛や軽い吐き気が同時に見られることもあり、筋肉由来の症状とは性質が異なります。夜中に痛みで目が覚める、微熱を伴うといった場合は、内臓の炎症が進んでいることも考えられるため注意が必要です。
③ 右腎臓のトラブル(尿管結石・腎盂腎炎)
右側の背中と脇腹の境目付近に鋭い痛みが走る場合、右腎臓からの関連痛が疑われます。尿管結石では身体の奥深くに強烈な痛みが突き抜け、じっとしていられないほどの激痛になることがあります。痛みが背中から脇腹、さらに下腹部へと移動していく場合は、結石が尿管内を移動している可能性があります。
一方、腎盂腎炎のような炎症性のトラブルでは、発熱や寒気、全身のだるさを伴いやすく、痛みも筋肉の張りとは明らかに異なる熱を帯びた痛みとして現れます。背中を軽く叩くと強い痛みが走る場合は、腎臓への負担が大きくなっているサインです。
左側の背中が痛いときに多い原因
左側の背中痛は、筋肉のこりや姿勢の問題だけでなく、胃・膵臓・心臓といった重要な臓器の関連痛として現れることがあります。
40代以上では消化器・循環器系のトラブルが増えやすく、筋肉の張りと内臓の痛みが重なって症状が複雑になるケースも少なくありません。この章では、左側の背中に痛みが出やすい代表的なパターンを、痛みの特徴とあわせて丁寧に整理します。
参考記事:背中の左側が痛いのは内臓の病気かも?考えられる原因と対処方法を解説
① 肩甲骨内側〜背筋の張り(肩こり・猫背)
左側の背中の痛みで最も多いのが、肩甲骨の内側から背筋にかけての筋肉が硬くなるケースです。パソコン作業で左手だけを多く使う、バッグを左肩にかける、寝るときに左向きが多いなど、日常の癖によって左側に負担が偏ると、僧帽筋や広背筋が緊張しやすくなります。

この筋肉性の痛みは、体勢を変えると痛みが弱くなったり、肩甲骨を寄せると痛みの位置がわかりやすくなったりするのが特徴です。呼吸が浅い人や猫背姿勢の人では、胸郭の動きが制限されて背中の筋肉が余計に硬くなるため、左側の背面が慢性的に張ってしまうことがあります。
② 胃の不調(胃炎・胃潰瘍)
左側の背中にじんわりとした痛みや重さが続く場合、胃の不調が関連していることがあります。胃は身体の左側寄りに位置しており、胃酸過多や胃炎、潰瘍のような状態になると、その刺激が背中側にまで広がることがあります。特にみぞおちの裏側から左背部にかけての“深い痛み”は、胃の炎症と関係することが多い症状です。
食べ過ぎ・ストレス・アルコール・空腹時の痛みなど、日常生活の影響を受けやすいのが胃の痛みの特徴です。また、前かがみの姿勢になると楽になる一方で、反る姿勢では圧迫されて痛みが強まることがあります。胃が原因の背中痛は、筋肉のこりと違って温めても変化が少なく、休んでいても重さが残る傾向があります。
③ 膵臓のトラブル(急性膵炎・膵がん)
左側の背中の深部が“焼けるように痛む”場合は、膵臓のトラブルが疑われます。膵臓は胃の奥に位置し、痛みが背中側に直接響きやすい臓器です。急性膵炎では、みぞおちから背中にかけて強烈な痛みが突き抜けるように広がり、体を丸める姿勢以外では耐えられないほどの痛みに変わることもあります。
膵臓由来の痛みは脂っこいものを食べたあとに強まりやすく、吐き気や発熱、冷や汗を伴うことがあります。また、膵がんの場合は慢性的な背中痛として現れ、長期間続く鈍痛が特徴です。筋肉を動かしても痛みが変化しない、深く押されるような痛みが続く、といった感覚があれば注意が必要です。
④ 心臓の病気(狭心症・心筋梗塞)
左側の背中に痛みが出る原因として、心臓のトラブルは見逃せません。狭心症や心筋梗塞では、胸の圧迫感や息苦しさとともに、左背部や肩甲骨の周辺に痛みが走ることがあります。痛みは「締め付けられる」「重く押される」と表現されやすく、肩や腕にまで広がることもあります。
特徴的なのは、運動したときや歩行時に悪化し、安静にすると少し落ち着くというパターンです。筋肉の痛みと違い、体をひねっても痛みが変わらないため、動作との関連が少ないと感じたら心臓の可能性を疑う必要があります。特に息苦しさ、冷や汗、胸の違和感が同時に起きた場合は、緊急性が高い状態と考えられます。
背中の真ん中・肩甲骨の間が痛いときに多い原因
背中の真ん中や肩甲骨の間は、姿勢の影響が特に出やすい部位です。しかし同時に、胃や食道、大動脈といった内臓の関連痛が集中しやすい場所でもあり、痛みの幅が非常に広いのが特徴です。40代以降では、胸郭の硬さやストレスによる自律神経の乱れが重なり、筋肉のこりと内臓由来の痛みが混在しやすいため、痛みの性質と出るタイミングを丁寧に観察することが重要です。
① 姿勢由来の背筋・僧帽筋の緊張
背中の真ん中の痛みで最も多い原因が、姿勢による筋肉の緊張です。特に胸を丸めて作業する時間が長い方は、肩甲骨が外側に開き、背骨に沿う筋肉(脊柱起立筋)や肩甲骨の間の筋肉(菱形筋)が引っ張られ続けます。その結果、左右の肩甲骨の間が突っ張るように痛む、深呼吸で背中が張るといった症状が起きやすくなります。

特徴としては、次のようなパターンが多く見られます。
- 長時間座ったあとに痛みが強くなる
- 反り返る動作や腕を後ろに引くと背中が軽くなる
- 朝は軽く、夕方〜夜にかけて重くなる
筋肉が原因の場合は、姿勢を変えると痛みが変化しやすく、温めると改善しやすいのがポイントです。肩甲骨を軽く動かしただけで「痛いところが動く」感覚があれば、筋肉のこりが最も疑われます。
② 胃・食道・大動脈の関連痛
背中の真ん中の痛みは、内臓の関連痛として現れることもあります。特に胃や食道は背中側と神経でつながっており、炎症や逆流があると背中の中心に違和感が広がります。胃に負担がかかっている場合はみぞおちの痛みとセットで現れることが多く、食後の背中痛として現れることがあります。
食道炎や逆流性食道炎の場合は、
- 胸の焼ける感じ
- のどの違和感
- 横になったときの背中の張り
といった症状を伴うことがあり、筋肉の痛みと混同しやすくなります。
さらに注意すべきなのが、大動脈解離などの血管系のトラブルです。突然の強烈な痛みが背中の中心を走るように現れ、短時間で悪化するのが特徴です。以下の症状がある場合は、緊急性が高いため直ちに医療機関を受診すべきです。
- 発症が突然
- これまでに経験のない激痛
- 冷や汗・吐き気・脱力感を伴う
通常の肩こりや筋肉性の痛みでは考えにくい症状なので、強烈な痛みが続く場合は注意が必要です。
③ 帯状疱疹(片側のチクチク痛み)
背中の真ん中周辺の痛みで見落とされがちなのが帯状疱疹です。帯状疱疹はウイルスの再活性化によって神経が炎症を起こし、皮膚に発疹が出る前の段階でも痛みだけが続くことがあります。この痛みは筋肉の張りとは異なり、皮膚の表面やその少し奥が「チクチクする」「ピリピリする」という神経痛特有の感覚を伴います。
帯状疱疹では通常、痛みは身体の右か左、どちらか片側に限定されます。皮膚症状が出る前に気づくのは難しいのですが、次の特徴があれば疑う価値があります。
- わずかな刺激で痛みが強まる
- 衣服が触れるだけで不快感がある
- 痛みが一定のラインに沿って広がる
発疹が現れれば診断は容易ですが、早期治療のほうが神経痛の後遺症が残りにくいため、皮膚はまだ何もないのにチクチク痛む状況が続く場合は早めの受診が大切です。
筋肉・姿勢の背中痛と内臓由来の痛みの違い
背中の痛みは大きく「筋肉・姿勢が原因の痛み」と「内臓からくる痛み」に分けられます。しかし、40代以上になると筋肉のこり・自律神経の乱れ・消化器系の負担が重なり、両者の境界がわかりにくくなることが多いのが実情です。この章では、痛みの出方や性質、伴う症状などから両者を見分けるポイントを整理し、読者が自分の状態を判断できるように解説します。
① 痛みの出方(動かすと痛い=筋肉/安静でも痛い=内臓)
筋肉や姿勢が原因の背中痛は、体を動かしたときに痛みの強さが変化するのが大きな特徴です。例えば、ひねる、前にかがむ、肩甲骨を寄せるといった動作で「痛い場所が動く」「痛みが強くなる」と感じる場合は、筋肉の緊張や関節の動きが関連しています。これは筋肉が張ったり、関節や腱が引っ張られたりすることで痛みが誘発されるため起きる現象です。
一方、内臓由来の痛みは体勢を変えても痛みが大きく変動せず、安静にしていても一定の深い痛みが続きます。特に胃・胆のう・腎臓などからの関連痛はズーンと重く沈むような痛みとなりやすく、体をひねっても痛みの性質が変わらないのが特徴です。夜間や食後、発熱時など、体内の状態によって痛みが変わる場合は内臓性の可能性が高まります。
② 部位の特徴(右は胆のう・肝臓/左は胃・膵臓・心臓)
背中の痛む位置は、原因を推測するうえで非常に重要です。背中は神経の走行上、臓器と深くつながっているため、痛む側によって疑うべき内臓がある程度絞り込めます。
右側の背中痛は、肝臓や胆のう、右腎臓の関連痛としてよく現れます。特に食後に右背部が重くなる場合は胆のう系のトラブルが典型的です。これに対し、左側の背中痛は胃・膵臓・心臓など、生命維持に関わる臓器のサインとして現れることがあります。胸の圧迫感や息苦しさを伴う左背部の痛みは、心臓のトラブルを見逃してはいけない重要な症状です。
真ん中が痛む場合は、姿勢による筋肉のこりのほか、胃や食道、大動脈の関連痛も含まれるため、痛みの性質を慎重に観察する必要があります。位置と症状が一致するかどうかが、筋肉性か内臓性かを見極める大きなヒントになります。
③ 伴う症状(吐き気・発熱・息苦しさ → 内臓)
背中の痛みの他にどんな症状が一緒に起きているかも、原因を見極めるポイントになります。筋肉性の背中痛では、肩や首のこり、姿勢の崩れ、長時間同じ姿勢で過ごした後の張りなどが伴いやすく、全身症状が強く出ることはあまりありません。
動くと痛みが悪化する一方、温めたり軽く動かしたりすると改善することが多い点も特徴です。
内臓由来の背中痛では、次のような症状が同時に現れやすくなります。
- 吐き気・食欲不振(胃・膵臓・胆のう)
- 発熱・悪寒(腎盂腎炎・胆のう炎)
- 息苦しさ・胸の圧迫感(心臓)
- 冷や汗・倦怠感(深刻な内臓疾患全般)
これらは筋肉のこりでは起こりにくいため、症状の組み合わせを観察することで内臓由来の痛みを早期に疑うことができます。筋肉・姿勢が原因の背中痛は日常の動作で変化しやすく、対処もしやすい一方で、内臓由来の痛みは生活の中で悪化し、深い部分に重く残るのが大きな違いです。
特に「安静でも痛い」「伴う症状が強い」「いつもと違うタイプの痛みが続く」といった場合は、早めに専門機関を受診するようにしましょう。自身の状況と照らし合わせながら、痛みの性質を慎重に見極めていくことが大切です。
背中の痛みに今すぐできるセルフケア
背中の痛みは、筋肉のこり・姿勢の乱れ・呼吸の浅さが重なることで悪化しやすく、日常のちょっとした習慣で症状が軽減することが多いのが特徴です。
この章では「今すぐできる」「自宅で完結する」「安全性が高い」という3点を満たしたセルフケアを紹介します。
参考記事:背中の痛みをストレッチで改善!体の硬さチェックから対策方法を紹介
① 胸張り運動
このストレッチは、肩甲骨まわりの筋肉が硬くなって生じる背中痛に特に効果があります。デスクワークが長い方や、背中の片側だけが張るような痛みを感じている方に適しています。
胸張り運動
STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
② 胸郭回旋運動
ストレスや長時間の集中姿勢が続くと呼吸が浅くなり、肋骨の動きが硬くなって背中に張りが出ます。この方法は、背中の広い範囲が重い・息を吸うと背中が痛む、といった症状に役立ちます。
胸郭回旋運動
STEP1:横向きに寝た状態で片膝を曲げて床につけます。両手を前方に伸ばしましょう。
STEP2:体を捻りながら腕を開きましょう(目線は指先へ向けましょう)
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻りましょう。繰り返し実施しましょう。
注意点:膝が床から離れないように注意しましょう。
③ 腹式呼吸
猫背姿勢が続くと背中の筋肉が常に伸ばされた状態になり、慢性的な痛みにつながります。体幹を軽く動かすことで、姿勢を支えるインナーマッスルが働きやすくなり、背中への負担を減らせます。
腹式呼吸
STEP1:椅子に座った状態で腰に触れ収縮を感じましょう。
STEP2:鼻から息を吸いお腹を膨らませましょう(3秒間)
STEP3:口から息を吐きお腹に力を入れましょう(6秒間)
注意点:腰は動かさないように注意する
病院に行くべき背中の痛み|危険サイン
背中の痛みは筋肉のコリや姿勢の乱れで起こることが多いものの、中には放置すると危険な疾患が隠れているケースもあります。この章では、日常の筋肉痛とは明らかに性質が異なる“危険信号”をわかりやすく整理し、早めに受診すべきケースを具体的に解説します。
① 発熱・冷や汗・強い吐き気を伴う
背中の痛みに加えて発熱や冷や汗、強い吐き気が現れている場合は、筋肉や姿勢の問題ではなく、内臓の炎症や感染症が原因になっている可能性が高い状態です。特に胆のう炎や腎盂腎炎では、背中の深い部分にズキズキとした痛みが広がり、それに発熱がセットで現れます。痛みの出方も筋肉痛とは異なり、温めても改善しないどころか、むしろ悪化するケースもあります。
冷や汗を伴う痛みは、身体が危険を察知して自律神経が過剰に働いているサインでもあります。普段感じないような強い吐き気や、立っていられないほどの全身倦怠感がある場合は、速やかに医療機関を受診するべき状態です。
② 片側に激痛が走り、動けない(腎臓・胆のう)
右または左のどちらか片側に集中して突然激痛が起こり、体を動かすことすら困難になる場合は、腎臓の尿管結石や胆のうの急性トラブルが疑われます。特に尿管結石では「人生で最も痛い」と表現されるほどの鋭い痛みが、背中から脇腹、さらに下腹部へと波のように移動します。この痛みは姿勢を変えてもほとんど軽減せず、安静にしていても強いまま続きます。
胆石による痛みも同様に鋭く、息を深く吸うと右背部や脇腹に鋭い違和感が走ることがあります。これらの痛みは筋肉が原因で起こるものとは大きく異なり、痛む場所が深い、動ける姿勢がないといった共通点があります。痛み止めで一時的に軽くなっても、根本原因は改善しないため、早期受診が重要です。
③ 胸の圧迫感・息苦しさを伴う(心臓)
左側の背中痛に加えて胸の圧迫感や息苦しさ、左腕のだるさが伴う場合は、心臓のトラブルを疑う必要があります。狭心症や心筋梗塞では、胸の前面だけでなく背中側に痛みが響くことが多く、「重く押されるような感覚」「締め付けられるような痛み」が特徴的です。
心臓由来の痛みは、体をひねっても痛みが変わらず、運動中や歩行時に悪化し、安静にすると少し軽くなるという傾向があります。特に、
- 歩くと胸と背中が重くなる
- 深い呼吸ができない
- 不安を感じるほどの動悸がある
といった症状が重なる場合は非常に危険です。心筋梗塞の初期症状は背中や肩の痛みから始まることもあるため、“胸が痛くないから大丈夫”とは言えません。迷わず救急相談窓口や医療機関に連絡するべき状況です。
④ 皮膚にチクチク・発疹(帯状疱疹)
背中の片側にチクチク・ピリピリする痛みがあらわれ、その後に赤い発疹が帯状に広がってきた場合は、帯状疱疹が疑われます。帯状疱疹は、発疹が出る前の段階でも神経痛だけが先に出ることがあるため、“皮膚は何も変わっていないのに痛い”という状態が数日続くケースも珍しくありません。
特に40代以降では免疫力の低下によって発症しやすく、痛みが強い場合は早期に治療を始めることで後遺症(帯状疱疹後神経痛)を防ぐことができます。片側に限局したチクチクした痛みが続く場合は、皮膚症状の有無に関わらず早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
背中の痛みは、筋肉のこり・姿勢・内臓の不調が複雑に関わるため、まず「痛む場所」と「伴う症状」を確認することが大切です。
動かすと痛むなら筋肉性、安静でも深く痛む場合は内臓性の可能性が高まります。食後の痛み、発熱、息苦しさ、片側の激痛などは早めの受診が必要です。日常の小さな変化を手がかりに、無理せず適切な対処を行いましょう。
【参考文献】
1)Carroll LJ, Hogg-Johnson S, van der Velde G, Haldeman S, Holm LW, Carragee EJ, Hurwitz EL, Côté P, Nordin M, Peloso PM, Guzman J, Cassidy JD; Bone and Joint Decade 2000-2010 Task Force on Neck Pain and Its Associated Disorders. Course and prognostic factors for neck pain in the general population: results of the Bone and Joint Decade 2000-2010 Task Force on Neck Pain and Its Associated Disorders. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Feb 15;33(4 Suppl):S75-82. doi: 10.1097/BRS.0b013e31816445be. PMID: 18204403.
2)厚生労働省:帯状疱疹ワクチン
3)厚生労働省:脳梗塞・くも膜下出血・心筋梗塞・不整脈など
