「背中の奥がズキッと痛む…」「呼吸や動作のたびに肩甲骨の下が気になる。」そんな突然の背中の痛みに、不安を感じていませんか?
とくに40代以降になると、筋肉のこわばりや姿勢の乱れ、内臓の不調など、さまざまな要因が重なって症状が現れやすくなります。
本記事では、肩甲骨下の痛みの原因を左右別にわかりやすく解説し、自宅で今すぐできるセルフケア方法を紹介します。
最後まで読むことで、「病院に行くべき症状」と「自分で改善できる痛み」の見極め方がわかり、再発を防ぐ日常ケアまで身につけられます。背中の痛みに悩まされない体づくりの第一歩として、ぜひ参考にしてください。
突然の肩甲骨下の痛み…考えられる主な原因とは?
ふとした動作で肩甲骨の下に「ズキッ」と走る痛み。一瞬のことでも、「何かの病気かもしれない」と不安になる方も多いでしょう。
肩甲骨下の痛みは、筋肉のこわばりや姿勢の乱れ、内臓の不調など、原因によって対処法が大きく異なります。まずは考えられる主な原因を正しく把握し、自分の痛みがどのタイプに当てはまるのかを見極めましょう。
参考記事:肩甲骨周りが痛い原因とは?肩・首こり解消にもオススメのストレッチを紹介!
筋肉の緊張やこわばりによる痛み
肩甲骨の下の痛みの原因としてまず疑われるのが、「筋肉の緊張やこわばり」です。肩甲骨周辺には肩甲挙筋や菱形筋、広背筋などがあり、これらの筋肉が疲労やストレスで硬くなると、動作のたびに痛みが出やすくなります。
たとえば、重たい荷物を持ち上げたときや、急に腕を伸ばしたときなど、筋肉に急激な負荷がかかることで痛みが発生するケースもあります。このような痛みは、動かした瞬間に「ズキッ」と鋭く現れることが特徴で、安静にしていれば徐々に軽快していく傾向があります。
長時間の不良姿勢(デスクワーク・スマホ使用)
最近増えているのが、長時間のデスクワークやスマホの使用による不良姿勢が引き金となるケースです。背中を丸めた姿勢や、首が前に突き出るいわゆる「猫背」の状態は、肩甲骨周辺の筋肉に持続的な負担をかけてしまいます。
とくに、肩甲骨の下に位置する筋肉が常に引っ張られるような形になり、血行不良や筋疲労が進行しやすくなります。これにより、何気ない動作で突然痛みが出る、あるいは、夕方になると肩甲骨のあたりがジンジンと痛むといった症状が現れることがあります。
ストレスや疲労の蓄積
意外かもしれませんが、精神的なストレスや全身の疲労も肩甲骨下の痛みと関係があります。ストレスがかかると、身体は無意識に筋肉を緊張させ、防御姿勢を取ろうとします。とくに背中や肩周りの筋肉はその影響を受けやすく、慢性的なこわばりへとつながります。
さらに、睡眠不足や栄養の偏りなどで身体の回復力が落ちていると、筋肉の疲労が抜けにくくなり、痛みとして現れやすくなります。こうした場合の痛みは、「朝起きたときに痛む」「何もしていなくても重だるい」といった特徴があることが多いです。
内臓からの関連痛
肩甲骨の下の痛みが、実は内臓の不調から来ていることもあります。たとえば、右側に痛みがある場合は肝臓や胆のうのトラブル、左側の場合は心臓や胃の不調が関係していることがあります。
このような「関連痛」は、肩甲骨の動きに関係なく持続的に痛むことがあり、身体の深部から重く響くような感覚を伴います。また、発熱や吐き気、息苦しさなどを伴う場合は、すぐに医療機関での診察を受けるべきサインです。
その他の重大な疾患の可能性
中には、緊急性の高い疾患が隠れている場合もあります。たとえば、心筋梗塞では左肩甲骨の奥に重く圧迫されるような痛みを感じることがありますし、膵炎や胆のう炎では背中側に強い痛みが放散することもあります。
また、帯状疱疹の初期症状として、皮膚症状が出る前に神経痛のような痛みが肩甲骨周辺に現れることもあります。皮膚に異変がなくても、ピリピリとした痛みが続く場合は注意が必要です。
右と左で異なる?肩甲骨下の痛みの違いを見極める
肩甲骨の「右側」か「左側」かによって、原因が異なるケースがあります。
右側が痛い場合に考えられる原因
右の肩甲骨下に痛みが出る場合、まず考えられるのは筋肉疲労や姿勢の偏りです。右利きの人は日常的に右腕を多く使う傾向があり、片側だけに負荷がかかりやすいです。パソコンのマウス操作やスマートフォンの片手使用なども、右肩甲骨周辺の筋肉を酷使する原因になります。
また、内臓からの関連痛も見逃せません。特に注意したいのは、肝臓や胆のうのトラブルです。肝臓の炎症や脂肪肝、胆石などが進行すると、右背中に鈍い痛みや違和感を感じることがあります。食後に痛みが強くなる、右の肩や背中まで痛みが放散する場合は、内臓疾患の可能性も視野に入れましょう。
右側の痛みが繰り返し起こる、または安静時にも続く場合は、整形外科だけでなく内科的な検査も受けるのが安心です。
左側が痛い場合に考えられる原因
一方、左の肩甲骨下に痛みが出る場合、心臓や胃などの不調が隠れていることがあります。とくに心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患では、胸の痛みだけでなく、左肩甲骨周辺に「押されるような」圧迫感を感じることがあります。
このような痛みは、動悸や息苦しさ、冷や汗を伴うことが多く、緊急性が高いため、違和感を覚えたらすぐに医療機関を受診すべきです。また、胃潰瘍や逆流性食道炎などの消化器疾患も、左背中に鈍い痛みを引き起こすことがあります。
もちろん、筋肉由来の痛みであるケースもあります。片側だけにカバンをかける、子どもを左腕で抱える習慣などが続くと、筋肉のアンバランスが生じ、左肩甲骨の下が張ってくることがあります。
病院に行くべき?判断ポイントと症状のチェックリスト
肩甲骨下の痛みは「一時的な筋肉のこわばり」であることが多いですが、放置すべきでないケースもあります。以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
- 呼吸時に胸や背中が痛む
- 安静にしていてもズキズキ痛む
- 発熱、吐き気、冷や汗を伴う
- 痛みが左右どちらか一方に集中している
- 痛みが繰り返し起こる、日に日に強くなる
特に、「左側の背中が痛くて息がしづらい」「右背中が鈍く重く感じ、食欲がない」といった症状は、心臓や消化器系の不調が関係している可能性があります。症状が明確でなくても、違和感が長引く場合は、自己判断を避けて医師の診断を仰ぐことが大切です。
自宅でできる!肩甲骨下の痛みを和らげるセルフケア
軽度の痛みや一時的な症状であれば、自宅でのセルフケアが効果的です。無理に我慢したり、すぐに薬に頼ったりする前に、まずは日常の中でできるケアを試してみましょう。
肩甲骨まわりの筋肉をやさしくほぐしたり、血流を促すだけでも痛みの軽減につながることがあります。ここでは、専門知識がなくても安全に行えるセルフケアの方法をわかりやすく紹介します。
肩甲骨まわりをほぐすストレッチ3選
肩甲骨周辺の筋肉をやさしくほぐすことで、血流が促進され、痛みの軽減につながります。以下のストレッチは、道具を使わず簡単に行えるため、朝や就寝前に取り入れるのがおすすめです。
胸張り運動
STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
この動作は肩甲骨周囲の血流を促し、猫背姿勢で固まった筋肉をほぐすのに有効です。
広背筋ストレッチ
STEP1:両手を頭の上で組みましょう。
STEP2:体を真横に傾け、背中・脇腹を伸ばしましょう。数秒間姿勢を保持しましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
注意点:傾ける方向と反対側へ重心を移動させましょう。
背中の広背筋や肩周りの緊張緩和に効果的です。
菱形筋ストレッチ
STEP1:両手をつなぎ前方へ出しましょう。
STEP2:お臍を覗き込みながら背中を丸めましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。
STEP4:繰り返し実施しましょう。
肩甲骨内側に付く「菱形筋」が伸ばすことができ、「肩こり」や「猫背」の改善が期待できます。
温める vs 冷やす…どちらが効果的?
肩甲骨下の痛みを感じたとき、温めるべきか冷やすべきか迷う方は多いでしょう。基本的な目安は以下の通りです。
- 急性の痛みや腫れがある場合:冷やす(保冷剤や冷湿布で10〜15分)
- 慢性的なこわばりや筋肉疲労の場合:温める(ホットパックや入浴)
特に、長時間のデスクワーク後や寒い季節に感じる痛みは「血流不良」が原因のことが多いため、温めて筋肉をやわらげる方が効果的です。一方、スポーツ後の鋭い痛みには冷却が有効です。状況に応じて適切に使い分けましょう。
正しい姿勢を意識する習慣化のコツ
ストレッチや温熱ケアをしても、普段の姿勢が悪いままだと再発リスクは高まります。とくに重要なのが「座り方」と「スマホの見方」です。
姿勢改善のポイント
- 椅子に深く腰かけ、骨盤を立てて座る
- モニターの高さは目線の正面に設定
- スマホは目の高さに持ち上げ、うつむかない
また、「1時間に1回は立ち上がって肩を回す」など、こまめなリセット習慣を設けることも、肩甲骨下の痛みの予防に直結します。最初は意識的に取り組む必要がありますが、習慣化すれば自然と姿勢も改善され、身体への負担も軽減されます。
再発を防ぐ!肩甲骨周辺の痛みを予防する生活習慣
一度痛みが和らいでも、再発予防が重要です。そのまま放置してしまうと、同じ姿勢や生活習慣が原因で再び痛みがぶり返すことも少なくありません。
肩甲骨下の痛みを根本から改善するためには、日常の動作や環境を整えることが欠かせません。ここでは、無理なく続けられる生活習慣の見直しポイントをわかりやすく紹介します。
1日3分のリセット習慣
慢性的な肩甲骨下の痛みは、「動かさない時間の長さ」が一因になっていることが少なくありません。とくにデスクワークやスマホ操作など、前かがみ姿勢を長時間続ける生活は、筋肉や関節に常時負担をかけています。これを防ぐために、1日3分でできる「リセット習慣」を取り入れましょう。
簡単なリセット方法
- 肩甲骨まわりの深呼吸:両手を広げて、ゆっくり鼻から吸って口から吐く(3セット)
- タオルを使った肩甲骨の引き寄せ運動:椅子に座って行える簡単な動作
- 立ち上がって肩を大きく回すだけでも効果的
ポイントは「無理なく毎日続けられること」で、回数よりも“継続”がカギです。
寝具や椅子の見直しで姿勢改善
就寝中や作業中の姿勢が悪いと、どんなにストレッチや運動をしても根本的な改善にはつながりません。そこで注目したいのが、日常的に使う寝具や椅子の「フィット感」です。
寝具の見直しポイント
- マットレスの硬さ:柔らかすぎると背中が沈みすぎて姿勢が崩れる
- 枕の高さ:高すぎても低すぎても首や背中に負担
椅子の見直しポイント
- 座面の高さと腰の位置が合っているか
- 背もたれにしっかり背中がフィットしているか
とくに在宅ワークが増えた昨今、「ダイニングチェアで作業している」という人は注意が必要です。腰や肩甲骨周辺に負担が集中してしまう場合があります。
水分・栄養・睡眠も見直そう
体の回復力を高めるには、ストレッチや姿勢改善だけでなく、「内側からのケア」も欠かせません。
水分不足と筋肉の関係
水分が不足すると、筋肉の柔軟性が低下し、疲労物質もたまりやすくなります。特に40代以降は喉の渇きを感じにくくなるため、意識してこまめに水をとる習慣が重要です。
栄養バランス
- ビタミンB群やマグネシウム:筋肉の修復と神経伝達に関与
- タンパク質:筋肉の再生に必須
コンビニ食や外食が多い方は、サプリメントで補うのも一案です。
質の高い睡眠
睡眠中は身体が修復モードに入る大事な時間。寝返りを打ちやすい環境や、就寝前のスマホ断ちなど、小さな工夫で睡眠の質は大きく変わります。
まとめ
肩甲骨下の突然の痛みは、筋肉疲労や姿勢の乱れ、ストレスによるものから、内臓疾患といった深刻な原因まで多岐にわたります。
軽度であれば、ストレッチや温熱、姿勢改善などのセルフケアで改善が見込めますが、痛みが強まる、長引く、左右差がある、内臓症状を伴うといった場合は放置せず、早めの受診が必要です。日々の体のサインを見逃さず、予防と観察を習慣にして再発を防ぎましょう。
【参考文献】
1)Peter Edwards, MSc,1 Jay Ebert, PhD,1 Brendan Joss, PhD,1 Gev Bhabra, FRCS,3 Tim Ackland, PhD,1 and Allan Wang, PhD, FRACS:EXERCISE REHABILITATION IN THE NON-OPERATIVE MANAGEMENT OF ROTATOR CUFF TEARS: A REVIEW OF THE LITERATURE
2)Joseph D Zuckerman 1, Andrew Rokito:Frozen shoulder: a consensus definition
3)Alexis Dang , Michael Davies:Rotator Cuff Disease: Treatment Options and Considerations