背中の真ん中が突然痛い原因は?内臓・筋肉・ストレスの見分け方と対処法

突然、背中の真ん中に強い痛みを感じると「内臓の病気?」「ただの筋肉痛?」と不安になりますよね。原因が分からないまま放置すると悪化する可能性もあります。

本記事では、背中の痛みを筋肉・内臓・ストレスに分けて見分け方を解説し、自宅でできる対処法や受診の目安をわかりやすく紹介します。日常生活の質を守るためにも、正しい知識を持ち適切に対応していきましょう。

背中の真ん中が痛くなる3つの主な原因

背中が痛そうな女性の画像

突然の背中の痛みには、筋肉・内臓・ストレスの3つの要素が関与していることが多く、それぞれで対処法が異なります。ここでは代表的な3つの原因について解説します。

1. 筋肉や骨格由来の痛み

背中の真ん中の痛みで最も多いのが、筋肉や骨格の不調によるものです。長時間のデスクワークや姿勢の崩れ、急な動作で筋肉に過度の負担がかかると、背中中央の筋肉が硬直し痛みを引き起こします。特に肩甲骨の間にある「菱形筋」や背骨に沿った「脊柱起立筋」は、日常的に酷使されやすい部位です。

菱形筋の画像

脊柱起立筋の画像

また、姿勢不良による背骨や肋骨周辺の関節へのストレスも、鋭い痛みや鈍い痛みの原因となります。例えば「深呼吸すると背中が痛い」と感じる場合は、肋間の筋肉や関節に負担がかかっている可能性が高いでしょう。

このタイプの痛みは、動かすと強くなり、安静にすると和らぐ特徴があります。痛みが一時的なものであれば、湿布やストレッチで改善することが多いですが、繰り返す場合は骨格の歪みが影響している可能性もあり、専門家による評価が必要です。

参考記事:背中に筋肉痛のような痛み?考えられる原因と今すぐできる対処法

2. 内臓疾患による関連痛

一方で、筋肉を動かさなくても背中の真ん中が痛む場合は、内臓由来の「関連痛」を疑う必要があります。関連痛とは、内臓の異常が筋肉や皮膚の痛みとして現れる現象です。

例えば、胃や膵臓、心臓、大動脈などの疾患が背中の痛みとして現れることがあります。特に膵炎や心筋梗塞、大動脈解離といった重篤な病気では、前触れなく強い背中の痛みを感じることがあります。この場合、安静にしていても痛みが続き、体位を変えても改善しないことが特徴です。

また、肝臓や腎臓の不調でも、背中の鈍い痛みや違和感が生じることがあります。これらは進行するまで気づきにくいため、急な痛みが出た場合や長引く場合には注意が必要です。息苦しさ、発熱、吐き気、体重減少などが伴うなら、すぐに医療機関を受診することが勧められます。

3. ストレス・自律神経の乱れ

筋肉や内臓に明らかな異常が見つからなくても、ストレスや自律神経の乱れが背中の痛みとして現れることがあります。精神的な緊張や疲労が続くと、自律神経がバランスを崩し、筋肉の過緊張を引き起こします。その結果、肩甲骨の内側から背中の真ん中にかけて、重だるさや締め付けられるような痛みを感じるのです。

このタイプの痛みは、リラックス時や休養後に軽快する傾向があります。また「検査をしても異常がないのに痛みが続く」といったケースでは、自律神経の乱れが隠れた要因であることが少なくありません。

対処法としては、深呼吸や軽いストレッチ、入浴などで身体を緩めることが効果的です。ストレス性の痛みは放置すると慢性化しやすいため、生活習慣の改善や心身のケアが欠かせません。

症状別チェックポイント|あなたの背中の痛みはどのタイプ?

背中を見せている女性の画像

痛みのタイミングや性質を観察することで、原因をある程度見極めることが可能です。ここでは具体的な症状の違いを整理しながら、自分の痛みのタイプを確認できるよう解説します。

動かすと痛い vs 動かさなくても痛い

背中の真ん中が痛むとき、まず注目すべきは「動かすと痛むかどうか」です。

動かすと痛む場合は、筋肉や関節由来の可能性が高いといえます。例えば腕を上げる、体をひねる、深呼吸するなどの動作で痛みが強まるなら、筋肉の炎症や関節の硬さが関与していることが多いです。この場合、安静にしたりストレッチを加えることで改善することが少なくありません。

一方で、体を動かさなくても常に痛みが続いている場合は、内臓疾患や神経痛の可能性を考慮する必要があります。例えば夜寝ていても痛む、安静時にもじわじわ続く、といった場合は単なる筋肉痛ではないかもしれません。特に、内臓の不調が関与する場合は、姿勢や運動と無関係に痛みが生じることが特徴です。

息苦しさ・発熱・体重減少を伴う痛み

背中の痛みとともに「息苦しい」「発熱がある」「体重が減ってきた」といった症状がある場合は、注意が必要です。

例えば急に息苦しさを伴う痛みが出た場合、心臓や大動脈の疾患の可能性があります。特に心筋梗塞や大動脈解離などは命に関わるため、早急な受診が欠かせません。また、発熱を伴う痛みは、肺炎や腎盂腎炎といった感染症のサインである場合があります。

さらに、数週間から数か月にわたり体重が減少しながら背中の痛みが続く場合は、消化器系の疾患や腫瘍など、慢性的で深刻な病気が関与している可能性も否定できません。こうした場合は「様子を見よう」と考えるのは危険で、医療機関での早めの検査が必要です。

ストレスが原因の場合の特徴

検査をしても異常が見つからないのに背中の真ん中が痛い、というケースでは、ストレスや自律神経の乱れが原因となっている可能性があります。

ストレスによる背中の痛みは、特徴的に「だるさ」「重さ」「締め付けられる感じ」として現れることが多く、明確なきっかけがないまま発症するのが一般的です。また、仕事中や緊張時に強まり、休日やリラックス時に和らぐ傾向があります。

自律神経が乱れると筋肉が常にこわばり、血流も悪化してしまいます。その結果、背中の中央部に鈍い痛みが広がるのです。この場合は、ストレッチや深呼吸、入浴など「心身をほぐす行為」が改善に役立ちます。

ただし「ストレスが原因だから大丈夫」と自己判断するのは危険です。まずは内臓疾患など重大な病気の可能性を除外したうえで、生活習慣やメンタルケアを取り入れることが安心につながります。

今すぐ試せる!自宅でできる背中のセルフエクササイズ

筋肉由来の痛みであれば、自宅での簡単な運動やストレッチが効果的です。無理のない範囲で体を動かすことで、血流を促し筋肉のこわばりを和らげることができます。ここでは特に背中の真ん中の痛みに役立つ3つのエクササイズを紹介します。

参考記事:背中の痛みをストレッチで改善!体の硬さチェックから対策方法を紹介

1. 胸張り運動

背中の中央部の筋肉は、肩甲骨の動きと密接に関係しています。長時間のデスクワークや前かがみの姿勢が続くと、肩甲骨が外側に広がり、背骨に沿った筋肉に負担がかかります。胸張り運動は、この状態をリセットするのに効果的です。

胸張り運動

STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。

この運動により、背中の筋肉がポンプのように働き、血流が改善。コリや重だるさが和らぎやすくなります。特に午後になると背中が重くなる人にはおすすめです。

2. 菱形筋ストレッチ

背中の痛みは、筋肉だけでなく筋膜のこわばりが関与していることもあります。筋膜は体全体を覆っているため、一部が硬くなると周囲の動きにも悪影響を与えます。菱形筋ストレッチは、筋膜をやさしく伸ばす効果があります。

菱形筋ストレチ

STEP1:両手をつなぎ前方へ出しましょう。
STEP2:お臍を覗き込みながら背中を丸めましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。
STEP4:繰り返し実施しましょう。

この運動は、背中の真ん中から腰にかけての緊張を解消し、筋膜の癒着を防ぎます。朝起きたときや入浴後に行うと効果が高まります。

3. 腹式呼吸で自律神経を整える

ストレスや緊張で背中が痛む場合は、自律神経の乱れが関係していることが多いです。そのため、筋肉を動かすだけでなく、呼吸を整えることも重要です。

腹式呼吸

STEP1:椅子に座った状態で腰に触れ収縮を感じましょう。
STEP2:鼻から息を吸いお腹を膨らませましょう(3秒間)
STEP3:口から息を吐きお腹に力を入れましょう(6秒間)
注意点:腰は動かさないように注意する

この方法は道具も必要なく、仕事の合間や寝る前にも取り入れやすいのが魅力です。「背中の痛みはストレスかもしれない」と感じたときには、まず深呼吸を意識してみましょう。

受診の目安|病院に行くべき症状とは?

「このまま様子を見ても大丈夫?」と迷う方は多いでしょう。背中の痛みの多くは一過性の筋肉疲労や姿勢の乱れから起こりますが、中には病院での早急な診断が必要なケースもあります。ここでは受診を検討すべき具体的な症状を紹介します。

48時間以上続く痛み

筋肉のこわばりや一時的な疲労による背中の痛みであれば、通常は1~2日で軽快することが多いです。しかし、48時間以上経っても痛みが改善しない場合は注意が必要です。

慢性的に続く痛みは、筋肉や関節の炎症だけでなく、内臓の異常が関わっている可能性があります。特に、痛みが強まる一方である場合や、鎮痛薬や湿布でほとんど変化がない場合は早めに医療機関を受診すべきです。

「そのうち治るだろう」と放置すると、原因となっている疾患の発見が遅れ、治療が難しくなることもあります。痛みが長引く場合は、自己判断せずに医師の診察を受けるのが安心です。

夜中・朝方に痛みが強くなる

背中の痛みが夜中や朝方に強まるのも、病院受診を考えるサインの一つです。

夜間に痛みが出る場合、内臓や神経の疾患が関与している可能性があります。例えば膵臓や胃の異常は、横になると圧迫や血流の変化により痛みが強くなることがあります。また、心臓や大動脈の病気も夜間に突然痛みを引き起こすことがあります。

一方で、朝起きた直後に強い痛みがある場合は、寝具や睡眠中の姿勢による影響も考えられますが、関節炎や慢性的な内臓疾患が背景にあることも少なくありません。

「横になると痛い」「朝方に痛みで目が覚める」といった症状がある場合は、単なる筋肉疲労では片付けられない可能性があります。特に繰り返す場合は必ず受診しましょう。

咳・発熱・吐き気などを伴う場合

背中の痛みに加えて、咳や発熱、吐き気、食欲不振など全身症状を伴うときは、内臓疾患や感染症を疑う必要があります。

例えば、肺炎や胸膜炎では咳や発熱とともに背中の痛みが現れることがあります。腎盂腎炎では背中から腰にかけての痛みに加え、発熱や悪寒が伴うのが典型的です。また、消化器系の疾患では吐き気や食欲不振とともに、背中に鈍い痛みが広がることがあります。

さらに、女性の場合は婦人科系の病気、男性の場合は泌尿器系の病気が背中の痛みとして現れることもあります。これらは市販薬で対応できるものではなく、放置すると重症化する危険があります。

背中の痛みが単独でなく、全身の症状と組み合わさっている場合は、早めに医師の診察を受けることが安全です。

まとめ

背中の真ん中の痛みは、筋肉の疲労から内臓疾患、ストレスまで原因は多様です。動かすと痛むのか、安静でも続くのか、伴う症状はあるのかを観察し、必要なら早めに受診することが大切です。軽度であればストレッチや深呼吸で改善が期待できますが、「長引く」「強い」「全身症状を伴う」場合は迷わず医療機関へ。放置せず行動することが健康を守る第一歩です。

【参考文献】
1)Park S, Kim H et al. Longer sitting time and low physical activity are closely associated with chronic low back pain in population over 50 years of age: a cross-sectional study using the sixth Korea National Health and Nutrition Examination Survey. Spine J, 18(11), 2051 – 2058, 2018.
2)緊急受診ガイド 総務省消防庁
3)Wilke HJ, Neef P, Caimi M, Hoogland T, Claes LE. New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life. Spine (Phila Pa 1976). 1999 Apr 15;24(8):755-62. doi: 10.1097/00007632-199904150-00005. PMID: 10222525.

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。