打ち身は日常生活の中で誰にでも起こりうるケガの一つですが、軽く見て放置してしまうと回復が遅れたり、思わぬ後遺症が残ったりすることもあります。
本記事では、「どんな症状のときに病院へ行くべきか」「どのような対処が正解か」を中心に、打ち身への正しい理解と対応法をわかりやすく解説します。また、自宅でできる効果的なセルフケアや、痛みをやわらげる簡単なストレッチ方法も紹介。正しい知識を身につけて、安心して回復を目指しましょう。
どんなときに病院を受診すべき?判断の目安とチェックポイント
打ち身には軽度なものから重症度の高いものまでさまざまあります。まずは病院に行った方がよいケースを知っておきましょう。
自然に治るケースと治療が必要なケース
打ち身は多くの場合、時間とともに自然治癒します。打った直後に痛みや腫れ、内出血が起こっても、数日から1週間程度で症状は軽減し、色味も薄れていきます。とくに動かせる範囲に問題がなく、日常生活にも支障がなければ、自宅での安静や冷却などで様子を見ても問題ないケースがほとんどです。
しかし、中には注意が必要な打ち身も存在します。例えば「痛みが一向に引かない」「腫れが大きくなる」「内出血が日に日に広がっている」などの症状がある場合、それは単なる打ち身ではなく、筋肉や血管、神経などに深いダメージを負っている可能性があります。
また、「打ち身が治らない」と感じるほど長引くケースでは、骨折や靭帯損傷が隠れていることも。軽視して放置すると、関節の可動域が狭くなったり、慢性的な痛みが残ったりするリスクがあるため、一定のタイミングで医療機関を受診することが大切です。
参考記事:打撲ができたら病院に行くべき?骨折かもしれない危険な症状と対処法を紹介
こんな症状は要注意!病院へ行くべきサイン
ここからは、打ち身でも放置せず、医療機関での診察が必要とされる具体的な症状を紹介します。
内出血が広がり続ける
通常、打ち身による内出血は、受傷後2~3日でピークを迎え、徐々に吸収されていきます。しかし、打った箇所とは関係のない場所まで内出血の色が広がってきた場合、血管や筋肉組織に深部損傷がある可能性があります。とくに広範囲にわたる紫色の変色が数日以上続く場合は、医師による検査が必要です。
腫れが引かない・しこりが残る
打ち身の初期症状として腫れが出るのは自然な反応ですが、数日経ってもまったく引かない、もしくは硬いしこりのようなものが残る場合は注意が必要です。しこりの正体は「血腫」や脂肪の損傷などである可能性があり、放っておくと神経圧迫や慢性化の原因になります。
動作に支障が出る・痛みが増す
歩いたり手を動かしたりするたびに強い痛みを感じる、力が入らない、一定方向に動かせないといった症状がある場合、それは単なる打ち身ではなく、筋肉損傷や靭帯断裂、骨折の可能性もあります。特に「歩けるけど痛い」「関節が動かしづらい」といった症状は自己判断が難しいため、整形外科での検査をおすすめします。
頭部を強打した場合は即受診を
頭を打った場合は、症状の重さにかかわらずすぐに受診しましょう。受傷直後は症状が軽くても、数時間後や翌日に「めまい」「吐き気」「意識のぼんやり」「視界の異常」などが出てくる場合があります。これは脳震盪や脳内出血の可能性もあり、見逃すと命にかかわる重大なケースもあります。
自宅でできる正しい対処法とケアのやり方
初期対応で回復スピードが変わる、正しいケア方法を知りましょう。
打ち身は自己判断で「安静にしていれば治る」と思いがちですが、初期の対応を誤ると治りが遅くなるばかりか、慢性的な痛みに繋がることもあります。ここでは、誰でも簡単に実践できる自宅での正しい打ち身ケアについて、順を追って解説します。
RICE処置の手順
打ち身や捻挫などの外傷に対して、まず最初に行うべきケアとして知られているのが「RICE処置」です。これはRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの頭文字を取ったもので、急性期のケガにおける標準的な初期対応です。
Rest(安静)
まずは患部を動かさず、無理な負荷をかけないようにします。動かすことで内出血や炎症が広がるリスクがあるため、痛みが強い場合はなるべく横になって安静を保ちましょう。
Ice(冷却)
受傷直後の48時間は患部を冷やすことが大切です。氷のうや保冷剤などをタオルに包み、1回15〜20分程度を目安に冷却を行います。これにより、炎症や腫れ、痛みを抑える効果が期待できます。ただし、長時間の冷却は凍傷のリスクがあるため、適切な時間を守るようにしてください。
Compression(圧迫)
弾性包帯などを使って軽く圧迫することで、内出血の広がりを抑えることができます。ただし、きつく巻きすぎると血流が悪くなる恐れがあるため、痛みやしびれを感じた場合はすぐに緩めましょう。
Elevation(挙上)
打ち身をした部位が手足などであれば、心臓より高い位置に保つようにします。これにより血流が緩やかになり、腫れの軽減が期待できます。就寝時にはクッションなどを利用するとよいでしょう。
この4つの処置は、ケガをしてからすぐに行うことで症状の悪化を防ぎ、回復までの時間を短縮する鍵となります。
湿布はいつまで?冷やす・温めるのタイミング
よくある疑問に「冷やすのは何日まで?」「湿布はいつまで貼るのが良い?」という声があります。これらは回復のステージに応じて使い分けることが大切です。
急性期(受傷~48時間)
この期間は冷却が基本です。冷湿布を使用するか、氷のうでの冷却をメインに行いましょう。湿布は1日数回、貼り替えながら使用するのがおすすめです。
亜急性期(3日目以降)
腫れや炎症が落ち着いてきたら、今度は温めるケアへ移行します。血行を促進することで、損傷組織の修復を助け、痛みの軽減にもつながります。温湿布や蒸しタオル、入浴などが効果的です。ただし、腫れや内出血が強く残っている場合は、冷却期間を延ばす方がよいケースもあります。
湿布の使用目安
冷湿布・温湿布ともに1回2〜3時間以内を目安にし、肌がかぶれないよう注意しましょう。使用後は必ず患部の状態をチェックし、皮膚の変色やかゆみが出たら使用を中止してください。
このように、打ち身に対するケアは「早期」「正確」がカギです。自己流で処置してしまうと悪化の原因にもなりかねないため、ぜひこのRICE処置と湿布の使い分けを習得して、適切なセルフケアを行いましょう。
セルフエクササイズで回復をサポート!痛みを和らげる簡単ストレッチ
痛みが和らいだら、無理のない範囲で筋肉の柔軟性を回復させましょう。
打ち身の痛みが落ち着いてきたら、回復期に入ったサインです。ここからは、固まった筋肉の緊張をほぐし、血流を促進することが大切になります。無理のない範囲で行える軽めのストレッチや筋膜リリースを取り入れることで、痛みの再発を防ぎながらスムーズな回復が期待できます。
太もも・ふくらはぎに効く軽めのストレッチ
打撲を受けやすい太ももやふくらはぎは、筋肉量が多く、硬直しやすい部位です。ここでは、患部を刺激しすぎず、やさしく動かせるストレッチをご紹介します。
太もも前面ストレッチ
STEP1:片足を後方でつかみましょう。
STEP2:つかんだ足を後方に引っ張りましょう。太もも前面が伸びた状態を保持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を反らさないように注意しましょう。
腓腹筋ストレッチ
STEP1:壁に手をつき片足を前方に出しましょう。
STEP2:前方の膝を曲げ、体重をかけましょう。
STEP3:踵を浮かさないように注意す元の姿勢に戻りましょう。
注意点:踵が浮かないように注意しましょう。
これらのストレッチは、筋肉の血行を良くし、酸素や栄養素の巡りを助ける効果があります。痛みが強い場合は無理をせず、痛気持ちいい範囲で止めることが大切です。
血流を促進するリハビリ的エクササイズ
軽い運動を取り入れることで、患部周辺の血流を促進し、自然治癒力を高めることが期待できます。ここでは、室内で簡単にできるリハビリ的エクササイズを紹介します。
- 足首回し
座った状態で足を少し浮かせ、ゆっくりと円を描くように足首を回します。右回り・左回りを各10回ずつ行うことで、ふくらはぎや足の筋膜が刺激され、全体の循環が良くなります。 - 軽いウォーキング
歩ける程度に回復していれば、家の中でゆっくり歩くことから始めましょう。10分程度のウォーキングでも、血流改善や関節の動きのリハビリに効果的です。階段の昇り降りなど負荷のかかる動きは、痛みが完全に引いてからにしましょう。 - 筋膜リリース(フォームローラーの活用)
フォームローラーやテニスボールを使って、太ももやふくらはぎを優しく圧迫・転がすことで、筋膜の癒着を解きほぐします。体重をかけすぎず、ゆっくり動かすのがコツです。痛みのある部位は避け、周辺の筋肉をほぐすように使いましょう。
セルフエクササイズは、打ち身による筋肉のこわばりを和らげ、再び日常動作をスムーズに行えるようにするための大事なプロセスです。ただし、エクササイズはあくまで補助的なものであり、痛みが強い場合や腫れが引かない場合は控え、まずは安静を優先しましょう。
整骨院での施術と市販薬の使い分け方
セルフケアでは不安な方は、整骨院や市販薬も活用しましょう。打ち身がなかなか良くならない、痛みや腫れが引かない…そんなときには、セルフケアだけに頼らず、整骨院での施術や市販薬を併用するのも一つの方法です。ただし、これらは正しく使い分けることが大切です。ここでは、整骨院で受けられる主な施術内容と、自宅で使える市販薬の選び方について詳しく解説します。
整骨院で行われる主なアプローチ法
整骨院では、打ち身に対して専門的な視点で痛みの原因を分析し、症状に応じた施術を行ってくれます。以下は、打ち身の施術でよく用いられる主な方法です。
ハイボルト療法
高電圧の電気刺激を深部の筋肉や神経に届かせることで、痛みの軽減や炎症の抑制を図る治療法です。急性の痛みに即効性があるとされており、打撲による深部損傷に対して特に効果的といわれています。
テーピング
患部の動きを制限し、負担を軽減する目的でテーピングを行います。痛みがある部位にかかる負荷を抑えつつ、可動域を維持しながら生活がしやすくなるようサポートします。テーピングには筋肉の緊張を和らげる効果もあります。
温熱療
慢性化してきた打ち身や、回復期の硬くなった筋肉に対しては、温熱療法で血行を促進します。ホットパックや超音波などを使って体内をじんわり温めることで、老廃物の排出を促し、回復を早めます。
これらの施術は、自己流では行えないものばかり。特に「打った後しばらくしてから痛みが強くなってきた」「患部が腫れていて動かしにくい」などの場合には、整骨院での施術が有効な選択肢となるでしょう。
市販薬や湿布の選び方と注意点
薬局で手に入る市販薬や湿布も、打ち身の痛みや腫れを和らげるのに役立ちますが、症状や使用時期に応じた使い分けが必要です。
冷湿布と温湿布の違い
受傷直後には冷湿布を使用して患部を冷やし、炎症を抑えます。一方で、痛みが慢性化した場合や筋肉のこわばりが気になる場合には、温湿布で血流を促すのが効果的です。ただし、どちらも貼りっぱなしはNGで、使用時間や回数には注意が必要です。
塗り薬の活用方法
打ち身に使用できる塗り薬には、ロキソニンテープやフェルビナクなどの消炎鎮痛成分を含むものがあります。貼るタイプだけでなく、塗るタイプやジェル状の製品もあり、使いやすさや患部の状態に応じて選べます。
使用時の注意点
市販薬を使用する際は、患部の皮膚状態をよく観察しましょう。かぶれや赤みが出た場合はすぐに使用を中止し、必要に応じて皮膚科を受診してください。また、広範囲への使用や長期間の連用は避け、症状が改善しない場合は医師や薬剤師に相談しましょう。整骨院での専門的なケアと、市販薬によるセルフケアを上手に組み合わせることで、よりスムーズに打ち身からの回復を目指すことができます。自分の症状と生活スタイルに合ったケアを見つけ、無理のない範囲で取り入れてみてください。
まとめ
打ち身は多くの場合、適切な初期対応と安静で自然に回復しますが、痛みや腫れが長引く場合は、医療機関での診察が必要なこともあります。RICE処置を中心としたセルフケアで経過を見ることは可能ですが、「内出血が広がる」「しこりが残る」「頭を打った」などの症状があれば、自己判断せず早めに受診しましょう。
痛みが和らいだ後は、軽いストレッチや血流促進の運動を取り入れることで回復がスムーズになります。整骨院での施術や市販薬も正しく使い分けることで、安心して治療を進めることができます。
【参考文献】
1)救急受診ガイド 総務省
2)骨折 日本整形外科学会