急に肩が痛くなった!片方だけの痛みで考えられる病気と治し方

朝起きた瞬間、片方の肩に鋭い痛みを感じて腕が上がらない…。

特に何もしていないのに右肩または左肩だけに痛みが出ると、誰しも不安になるものです。肩の痛みは筋肉や関節の問題だけでなく、神経や内臓の異常など様々な原因により、引き起こされます。

本記事では、片方の肩に急な痛みが出る主な原因や症状ごとの対処法、病院に行くべき目安をわかりやすく解説します。片方の肩の痛みに悩まされている方はぜひ、参考にしてみてください。

急に片方の肩が痛くなる主な原因

肩を痛がる女性の画像

朝起きたら片方の肩が動かせない、洗濯物を干そうとしたら急に肩がズキッと痛んだ…。

このように、特別な怪我をしていないのに肩の片側だけに痛みが出ることは珍しくありません。原因は多岐にわたり、筋肉の疲労から深刻な病気までさまざまです。ここでは代表的な4つの原因を解説します。

1.肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)による痛み

肩関節周囲炎は、肩関節を包む関節包や周囲の靭帯・腱が炎症を起こして発症します。40〜60代に多く、肩の動きが制限される「可動域制限」が特徴です。

肩関節周囲炎の画像

特に夜間痛が強く、寝返りを打つたびに目が覚めてしまうこともあります。急に痛みが出たように感じても、実際には数週間〜数か月かけて炎症が進行しているケースが多いです。

参考記事:四十肩・五十肩にストレッチは有効?時期や注意点・筋肉の伸ばし方を詳しく解説

2.腱板損傷や石灰沈着性腱板炎

腱板は肩を動かすための重要な筋肉群で、スポーツや日常動作での酷使によって損傷します。特に腕を上げる・後ろに回すといった動作で鋭い痛みが走ります

肩関節の腱板の画像

また、腱板にカルシウムが沈着する石灰沈着性腱板炎では、突然の激痛とともに肩が動かせなくなることが特徴です。発症初期は炎症が強いため、安静と冷却が重要になります。

3.頸椎のトラブルによる神経痛

頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアでは、首から肩、腕にかけて走る神経が圧迫され、鋭い痛みやしびれが生じます。この場合、肩自体には異常がなくても痛みを感じるのが特徴です。

頸椎椎間板ヘルニアの画像

さらに、頭を後ろに反らすと痛みやしびれが強くなることもあります。デスクワークや長時間のスマホ操作で首への負担が蓄積し、発症するケースも多いです。

参考記事:頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは?症状チェックや対処法も解説

4.内臓疾患からくる肩の痛み

肩の痛みは、肩以外の臓器の病気によっても引き起こされることがあります右肩の痛みは胆石症や肝臓疾患左肩の痛みは狭心症や心筋梗塞の可能性があります。

これは「関連痛」と呼ばれ、内臓の異常が神経を通じて肩に痛みとして現れる現象です。胸の圧迫感や息切れ、発熱などを伴う場合は、救急受診が必要になることもあります。

右肩だけ痛い・左肩だけ痛いときの特徴

肩の痛みが片側だけに出る場合、その原因は左右で異なることがあります。特に内臓疾患に由来する「関連痛」では、左右で関係する臓器が異なるため、症状の背景を正しく理解することが大切です。ここでは右肩だけ、左肩だけに痛みが出る場合の特徴を解説します。

右肩だけ痛い場合に考えられること

右肩だけの痛みは、肩関節や周囲の筋肉・腱のトラブルによるものが多いですが、内臓疾患のサインである場合もあります。

例えば胆石症や肝臓疾患では、右肩や肩甲骨付近に痛みが出ることがあります。運動時や一定の動作でのみ痛む場合は整形外科的原因が、安静時や食後などに痛みが出る場合は内科的原因が疑われます。

参考記事:右肩だけ痛い時に考えられる原因は?要注意な病気や簡単なセルフケアを解説

左肩だけ痛い場合に考えられること

左肩の痛みで注意すべきなのは心疾患です。狭心症や心筋梗塞では、胸の締め付け感や息苦しさとともに左肩〜腕にかけて痛みが広がることがあります。

この場合、肩自体に異常はないことも多く、整形外科ではなく循環器科の受診が必要です。また、左肩関節周囲炎や腱板損傷など整形外科的な疾患でも片側の痛みは起こりますが、痛みの発症状況や伴う症状で見分けることが大切です。

急な肩の痛みへの応急処置とセルフケア

肩の痛みが和らいでいる女性の画像

突然の肩の痛みは、原因によっては早急な対応で悪化を防ぐことができます。ここでは、痛みの程度や経過に応じた自宅でできる応急処置と、回復を早めるセルフケア方法を紹介します。ただし、強い腫れや熱感、しびれを伴う場合は自己判断せず医療機関を受診しましょう。

痛みが強いときの安静と冷却

痛みが出た直後や動かすと鋭い痛みが走る場合は、炎症が起きている可能性があります。まずは患部を安静に保ち、氷や冷却パックをタオルに包んで10〜15分ほど冷やしましょう。冷却は1〜2時間おきに行い、炎症と腫れを抑えることが目的です。無理に動かすと症状が悪化するため注意が必要です。

痛みが和らいできたときの温熱療法とストレッチ

炎症のピークを過ぎ、痛みが落ち着いてきたら温めて血流を促すことで回復をサポートします。蒸しタオルや温熱パッドを使って肩周囲を温め、その後に軽いストレッチを取り入れると効果的です。ストレッチは痛みのない範囲で行い、胸張り運動やタオルを使った腕の引き寄せ運動などがおすすめです。

胸張り運動

STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。

結滞エクササイズ

STEP1:タオルを背中へ回し両手で持ちましょう。
STEP2:片手でタオルを上方へ引っ張りましょう。肩の前面が伸びるのを感じましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう。

再発を防ぐための生活習慣改善

肩の痛みは、姿勢や日常動作のクセによって再発しやすくなります。長時間同じ姿勢を避け、作業の合間に肩を回す習慣をつけましょう。また、重い荷物を片側だけで持たず、肩や首に負担をかけないようバランスよく動作することが大切です。就寝時は枕の高さを見直し、首や肩に無理のない寝姿勢を心がけましょう。

病院を受診すべき危険な症状

急な肩の痛みの中には、放置すると命に関わる病気や、早期治療が必要な疾患が隠れている場合があります。単なる筋肉疲労や肩こりだと思って放置すると、症状が進行して治療が難しくなることもあります。ここでは、できるだけ早く医療機関を受診すべき危険な症状を解説します。

強い痛みや腫れ、熱感がある場合

炎症や感染症、関節の損傷が疑われるケースです。例えば化膿性関節炎は急激な腫れと高熱を伴い、放置すると関節機能が失われる危険があります。また、骨折や脱臼の場合も腫れや熱感が出ることがあります。こうした症状があるときは、速やかに整形外科を受診しましょう。

動かせないほどの痛みやしびれがある場合

神経や血管が圧迫されている可能性があります。頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症性神経根症では、肩から腕、手にかけてしびれや感覚の異常が出ることがあります。さらに、心筋梗塞や狭心症など循環器系の病気では、左肩や腕に強い痛みが突然出ることもあります。このような場合は、ただちに医療機関を受診してください。

まとめ

急に片方の肩が痛くなる原因はさまざまです。肩関節周囲炎や腱板損傷といった整形外科疾患から、内臓疾患、神経系疾患など多岐にわたります。痛みの性質や発生状況や併発している症状をしっかり観察することで、自己ケアで様子を見られるケースと、早急に病院を受診すべきケースを見極めやすくなります

日常生活では、肩や首に負担をかけない習慣を心がけることが再発予防につながるので、できるだけ正しい姿勢でいることを心がけてください。早めの対処と予防で、健康な肩の動きを取り戻しましょう

【参考文献】
1)Iyer S, Kim HJ. Cervical radiculopathy. Curr Rev Musculoskelet Med. 2016 Sep;9(3):272-80. doi: 10.1007/s12178-016-9349-4. PMID: 27250042; PMCID: PMC4958381.
2)Mark R. Jones,corresponding author1 Amit Prabhakar,2 Omar Viswanath,3,4,5 Ivan Urits,1 Jeremy B. Green,6 Julia B. Kendrick,6 Andrew J. Brunk,6 Matthew R. Eng,6 Vwaire Orhurhu,1 Elyse M. Cornett,7 and Alan D. Kaye6:Thoracic Outlet Syndrome: A Comprehensive Review of Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment
3)日本整形外科学会 頚椎椎間板ヘルニア

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。