変形性膝関節症は自力で治せる?おすすめの運動とNG動作も解説!

変形性膝関節症は、加齢や使いすぎによって膝の軟骨がすり減り、痛みや腫れ、関節の変形を引き起こす慢性的な疾患です。「もう治らない」と諦めている方も多いかもしれませんが、実は生活習慣適切な運動セルフケアによって進行を抑え痛みを軽減することは十分に可能です。本記事では、変形性膝関節症の進行メカニズムから、自宅で実践できるセルフエクササイズ、避けるべきNG動作までを丁寧に解説します。手術に頼らず、自力で改善したい方はぜひ参考にしてください。

変形性膝関節症とは?進行のメカニズムと症状の段階

まずは、膝の変形がなぜ起こるのか、症状の進行について理解しましょう。

膝軟骨がすり減るメカニズムと年齢的リスク

変形性膝関節症の病態の画像

変形性膝関節症は、膝関節のクッション役を担っている「膝軟骨」がすり減ることで発症する慢性の関節疾患です。軟骨は日常動作による摩耗を徐々に受けていますが、年齢とともに修復機能が低下することで、すり減りが進行しやすくなります。

とくに50代以降になると、軟骨を構成する成分の生成能力が落ち関節の潤滑も減少します。その結果、関節が滑らかに動かなくなり、骨同士が直接ぶつかるような痛みや違和感が生じるのです。

さらに、女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が減少する影響で、骨や関節の劣化が進みやすいことから、発症リスクが高まる傾向にあります。長年にわたる膝への負担や筋力低下も重なり、膝軟骨の摩耗が加速するのです。

変形性膝関節症の初期~末期の症状とサイン

この病気は、進行の段階によって症状の現れ方が異なります。最初のうちは軽い違和感程度ですが、次第に日常生活に支障をきたすようになります。

変形性膝関節症の進行度の画像

変形性膝関節症の進行度の画像

初期段階:なんとなく膝がこわばる・違和感

初期には、長時間歩いた後や階段の昇降時に「膝が重い」「こわばる」といった感覚が出てきます。痛み自体は軽く少し休めば治まるケースが多いため、見過ごされがちです。

しかしこの段階から、すでに膝軟骨の摩耗は始まっており、早期に気づき対処することが重要です。

中期段階:腫れや痛みが日常的に

症状が進むと、関節の炎症によって膝に腫れが出たり、水が溜まる「関節水腫」が見られます。これにより関節の動きが制限され、しゃがんだり正座をするのが困難になります。

特に朝起きた時や長時間同じ姿勢をとった後に、膝を曲げ伸ばしする際の痛みが強くなります。痛みが頻繁に生じるようになり、歩く速度も徐々に遅くなるため、活動量が自然と減っていきます。

参考記事:【膝を伸ばすと痛い】原因となる病気と4つのおすすめ対処法を解説!
参考記事:【膝を曲げると痛い】突然の痛みの原因とあわせ3つのおすすめ対処法を解説!

末期段階:膝の変形と強い痛みが持続

末期になると、関節の隙間ほとんど消失し、骨同士が直接こすれ合うようになります。この段階では、膝が明らかに変形して見え、O脚やX脚のような外観の変化が現れることもあります。

痛みは安静時にも続き、日常の動作がほぼすべて制限されてしまいます。手術以外の保存的な方法では症状の改善が難しくなるケースも多いため、末期まで進行させないよう、初期段階での発見と対策が重要です。

変形性膝関節症は自力で治せる?推奨される改善アプローチ

完全に元通りには戻らなくても、進行を可能か限り止め、痛みを軽減する方法はあります。ここからは一般的に推奨されるアプローチ法について紹介いたします。

保存療法の種類:運動・装具・温熱・薬

変形性膝関節症の治療において、初期から中期にかけて効果的とされているのが「保存療法」です。保存療法とは、手術以外の手段で症状の改善や進行の予防を図る治療法のことで、自力でできる対策の多くがここに含まれます。

最も基本的かつ重要なのが運動療法です。膝の負担を減らすためには、太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)をはじめとする下肢の筋力強化が不可欠です。筋肉を鍛えることで関節への圧力が分散され、痛みの軽減にもつながります。また、関節の動きを滑らかにする柔軟運動も効果的です。

次に、膝への負担をサポートするための「装具」の活用も推奨されます。サポーターや足底板(インソール)関節の動揺を抑え膝への負担を軽減してくれます。とくに歩行時の安定性を高めたい方に適しています。

温熱療法」も痛みを和らげる手段として有効です。入浴やホットパックを用いて膝を温めることで血流が促進され、関節周囲の筋肉が柔らかくなり、動かしやすくなります。

加えて、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)などの内服薬や外用薬一時的な痛みのコントロールには効果を発揮します。ただし、薬物療法はあくまで補助的な位置づけであり、根本的な改善を目指すには運動や生活習慣の見直しが欠かせません。

再生医療やヒアルロン酸注射との違い

病院での治療を検討する場合、ヒアルロン酸の関節内注射再生医療といった非手術療法が選択肢に入ってきます。

ヒアルロン酸注射は、関節の潤滑性を高めることで軟骨の摩耗による痛みや引っかかりを一時的に改善します。注射直後は症状の緩和を感じることも多いですが、効果は数週間~数ヶ月と一時的で、継続的に注射を受ける必要があります。

一方、再生医療では、幹細胞やPRP(多血小板血漿)といった生体由来の物質を膝に注入し、傷んだ組織の修復を促すことを目的としています。これは比較的新しい治療法で、根本的な改善を目指すものですが、自由診療であるため費用が高額になりやすいという難点があります。

これらと比較して、自力での運動療法や生活習慣の見直しは、経済的負担が少なく、長期的に取り組みやすいというメリットがあります。もちろん即効性は高くありませんが、継続することで関節の安定性や痛みの軽減につながります。

重要なのは、痛みの程度や関節の状態に合わせて、適切な保存療法と医療的ケアを組み合わせることです。症状が軽い段階で取り組めば、自力での改善も十分に可能なのです。

おすすめのセルフエクササイズ|自宅でできる簡単トレーニング

ここからは痛みを悪化させずに筋肉を鍛える、安全で効果的なエクササイズをご紹介します。自宅でも簡単に行える方法なのでぜひお試しください。

参考記事:【膝が痛い時の対処法】自宅で簡単!辛い痛みを改善するストレッチ3選

太もも(大腿四頭筋)を鍛えるチェアスクワット

変形性膝関節症の進行を食い止める上で、特に重要なのが「太もも前側の筋肉=大腿四頭筋」の強化です。この筋肉がしっかり働くことで、膝関節への直接的な負担を軽減でき、痛みの緩和や歩行の安定性につながります。

大腿四頭筋とハムストリングスの画像

自宅で簡単にできる「チェアスクワット」は、膝に優しく効果的なトレーニング方法です。やり方は以下の通りです。

チェアスクワット

STEP1:椅子に浅く腰を掛け、足をひらく
STEP2:体を前に倒す
STEP3:反動をつけずに立ち上がる。その後、お辞儀をしながらゆっくり座る
注意点:膝が内側に入らないように注意する

痛みがある日は回数を減らして構いません。大切なのは、正しいフォームで無理をせず継続することです。膝を深く曲げすぎないように注意し、痛みが強まるようなら中止してください。

膝まわりの柔軟性を高めるストレッチ

筋力強化と並んで欠かせないのが、関節周囲の柔軟性を保つことです。筋肉が硬くなると関節に余計な負荷がかかり、症状の悪化につながります。特に太もも裏のハムストリングスふくらはぎ膝周辺の筋肉を柔らかく保つことが重要です。

下腿三頭筋の画像

以下のストレッチは、座ったままでもできるため、膝に不安がある方でも安心です。

ハムストリングスストレッチ

STEP1:椅子に座り、片脚を前に出しましょう。
STEP2:上体を真っ直ぐし、体を前へ倒しましょう。太ももの後ろが伸びた状態を維持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を丸めないように注意しましょう。

腓腹筋ストレッチ

STEP1:タオルをつま先にかけましょう。
STEP2:タオルを引っ張り足首を反らせましょう。
STEP3:力をゆるめましょう。
STEP4:繰り返し実施しましょう。

ストレッチは毎日継続することが効果を高めます。入浴後など身体が温まっているタイミングに行うと、筋肉もほぐれやすくなり、膝の可動域も広がります。

高齢者にも安心な寝ながら運動

高齢の方や、痛みが強く立っての運動が難しい場合には「寝ながらできるトレーニング」がおすすめです。無理なく膝周囲の筋肉を刺激でき、運動習慣の第一歩としても有効です。

寝ながら脚上げ運動

STEP1:仰向けになり片膝を曲げる
STEP2:反対側の足を持ち上げる
STEP3:床の近くまでゆっくりと下ろします。繰り返し実施しましょう。
注意点:膝を曲げない様に注意しましょう。

 

この運動は大腿四頭筋を刺激し、膝関節を直接動かさずにトレーニングが可能です。腰に負担をかけないため、体力に自信のない方にも適しています。

【運動のポイント】

  • 運動前に膝の痛みがある場合は中止
  • 運動中に息を止めない
  • 急激な動作を避け、ゆっくり行う

このように、症状や体力レベルに合わせてエクササイズを選ぶことで、無理なく膝の健康を守ることが可能です。運動は即効性こそないものの、続けることで確実に関節機能の維持・改善に繋がります。

変形性膝関節症でやってはいけないNG動作とは?

よかれと思ってやっている動作が、実は膝の悪化を招いているかもしれません。症状をひどくしないためにもやってはいけないことを確認していきましょう。

膝に負担をかけるNGな歩き方・座り方

膝関節にかかる負担は、普段何気なく行っている「歩き方」や「座り方」によって大きく左右されます。変形性膝関節症の方にとって、誤った動作は症状を進行させる原因となるため注意が必要です。

まず、歩き方のNG例として多いのが「すり足歩行」や「片足重心での歩行」です。これらは筋力の低下や痛みの回避行動からくることが多いのですが、膝関節に不均等な負担をかけ、軟骨の摩耗を早めます。また、猫背で歩く姿勢も膝に体重がかかりやすく、痛みの悪化を招く原因になります。

一方、座り方にも注意が必要です。和式トイレのような深く膝を曲げる動作や、床にあぐらや正座で座る習慣は膝関節に大きな圧力がかかり、炎症や変形を進行させてしまう可能性があります。洋式トイレの使用や、イス中心の生活スタイルに切り替えることが予防の一環となります。

避けるべき日常動作と生活習慣

日常生活の中には、無意識に膝へダメージを与えている行動が潜んでいます。階段の上り下りや長時間の立ち仕事など、膝に繰り返し負荷がかかる動作は、症状を悪化させる原因のひとつです。

特に階段の下りは要注意です。上りよりも関節にかかる衝撃が大きく、変形が進んだ膝には強い刺激となります。無理をせず、エレベーターやエスカレーターの活用を心がけるのが賢明です。

また、重い荷物を持ちながらの移動や、立ちっぱなし・座りっぱなしの姿勢も関節の血流を悪くし、炎症や痛みを引き起こします。1時間ごとに休憩を取り軽くストレッチをするなど、こまめな体勢の変化を意識すると膝への負担が軽減できます。

さらに、冷えも膝関節に悪影響を及ぼします。関節周辺の筋肉が硬くなりやすく、可動域が狭くなるため、特に冬場は膝を冷やさないよう保温を心がけましょう。

痛みがある時にやってはいけない運動

運動は良い」とされる一方で、間違ったタイミングや内容で行えば逆効果になることもあります。特に、痛みが強い日や炎症が出ている時には、無理なトレーニングは厳禁です。

例えば、膝に強い衝撃がかかるランニングやジャンプ系のスポーツ(バスケットボール、バドミントンなど)は、軟骨をさらにすり減らす原因になります。また、筋トレでも深くしゃがみ込むようなスクワットは、膝への圧力が高く、痛みを悪化させやすいため注意が必要です。

水泳やウォーキングなど、膝に負担をかけにくい「低負荷の有酸素運動」が推奨されますが、これも痛みがない状態で行うのが前提です。運動後に痛みが悪化するようであれば、その内容や強度を見直す必要があります。

運動を継続する場合は「痛みのない範囲で、正しいフォームで、無理せず継続的に」を守ることが重要です。また、運動の前後には必ずウォームアップとクールダウンを行い、関節と筋肉を整えてから取り組みましょう。

変形性膝関節症を悪化させないために、日常でできる予防のコツ

予防の鍵は「膝を守る生活」にあります。続けられる工夫が大切です。生活の中で意識できることを紹介していきます。

体重コントロールと食生活のポイント

膝関節にかかる負担は体重に大きく左右されます。体重が1kg増えると歩行時にはその約3倍の力が膝にかかるとされており、たった数kgの増加でも膝には深刻な影響を与えるのです。

そのため、体重の適正化は変形性膝関節症の予防および進行抑制において非常に重要です。特にBMI(体格指数)が25を超えている方は、食生活の見直しと適度な運動で、無理なく体重をコントロールしていくことが求められます。

具体的には、脂質や糖質の過剰摂取を控え、たんぱく質を意識的に摂取することがポイントです。たんぱく質は筋肉の維持・修復に欠かせない栄養素であり、膝を支える筋肉を健康に保つうえで不可欠です。また、抗炎症作用のある食品(青魚に含まれるEPA・DHA、緑黄色野菜に含まれる抗酸化成分など)も積極的に取り入れましょう。

暴飲暴食を避けゆっくりよく噛んで食べるだけでも、満腹中枢が刺激されて過食を防ぐことができます。まずは、1日3食を規則正しく食べるところから始めるのがおすすめです。

膝の保護につながる歩き方と靴の選び方

正しい歩き方を身につけることも膝を守るためには非常に大切です。足裏全体を使いかかとから着地して、つま先で蹴り出すという基本を守ることで、膝関節への過剰な負担を減らすことができます。

膝が痛むと、無意識に歩き方が不自然になり、逆に関節や筋肉に負担をかけてしまうケースも多いため、可能であれば専門家によるフォームチェックを受けるのも有効です。

また、靴の選び方も予防に直結します。ヒールの高い靴や底の硬い靴は関節への衝撃が強くなりがちですので、クッション性が高く足にしっかりフィットするスニーカーなどを選ぶと良いでしょう。中敷き(インソール)で調整することも膝への負担軽減に役立ちます。

日々のウォーキングを習慣にする場合は、無理のない距離から始め、膝に痛みが出ない範囲で徐々に負荷を増やしていくのが理想です。週に3〜5回1回20分程度を目安に継続できると、膝周囲の筋肉強化と関節の安定に大きく貢献します。

痛みのサインを無視しないことが大切

変形性膝関節症は、初期の段階では症状が軽く、つい見過ごしてしまいがちです。しかし「ちょっとした違和感」「朝だけ膝がこわばる」といったサインも、実は膝からの重要な警告です。

その小さなサインを無視し続けると、炎症や軟骨摩耗が進み、やがて痛みや腫れといった明確な症状が現れてしまいます。違和感を感じたら、まずは安静を心がけるとともに、痛みが続く場合には早めに整形外科を受診することが勧められます。

また、気候の変化や冷えによって症状が悪化することもあります。特に冬場は膝を冷やさないよう防寒対策をしっかりと行い、就寝時にはひざ掛けやレッグウォーマーを使うのも効果的です。

普段の生活の中で「無理をしない」「違和感を放置しない」という意識を持つことが、症状の進行を防ぎ、日常生活の質を保つための第一歩となります。

まとめ

変形性膝関節症は年齢や生活習慣の影響誰にでも起こり得る身近な関節疾患です。

しかし、早期に気づき適切な対策を講じれば、進行を抑えて日常生活への支障を最小限にとどめることができます。運動やストレッチ、体重管理、膝に優しい生活習慣の継続が、自力での改善や痛みの軽減につながります。

また、膝への負担を避ける歩き方や動作を身につけることも大切です。何より重要なのは、小さな違和感を放置せず、こまめにケアを重ねること。今日からできるセルフケアで、健康な膝と快適な毎日を守っていきましょう。

【参考文献】
1)膝関節機能障害 理学療法ガイドライン 第2版
2)変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン,理学療法学,43-2,204-209,2016
3)変形性膝関節症 日本整形外科学会