頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介

「長時間のデスクワークで首が痛い」
「指先にしびれる感覚がある」

頚椎椎間板ヘルニアは、多くの人が悩む首の痛みや肩こり、頭痛、腕の痛みなどの症状を引き起こす可能性も。

治療には手術や薬物療法などがあり、正しいストレッチや筋トレを取り入れることで症状の改善につながることも知られています1)

そこで当記事では、頚椎椎間板ヘルニアの痛みの改善に効果的なストレッチや筋トレを3つ解説していきます。

最後まで読んでいただければ、正しい運動の方法を身につけることができ、痛みの軽減に役立てるはずです。

ぜひ、お付き合いください。

まずは頚椎(けいつい)の働きを知ろう

頚椎とは、首の部分にある7つの椎骨からなる骨の列のことを指します。頚椎は脳と身体をつなぐ大切な役割があり、脳からの指令を伝える神経が頚椎を通って身体に伝わっています。

また、気道や食道、動脈や静脈などの重要な器官や血管も頚椎の近くを通っているのです。

さらに、頚椎は前後左右に大きな可動性を持っており、振り向き動作やうなずきき動作などをスムーズに行うことができます。加えて正しい姿勢を保つために、頚椎の役割は非常に重要です。

頚椎が正しい位置に保たれることで背骨全体が正しい姿勢となり、腰痛や肩こりなどの予防につながる場合もあります2)

頚椎椎間板ヘルニアにおける痛みのメカニズムを解説!

頚椎椎間板ヘルニアによる痛みは、損傷した椎間板が神経組織を圧迫することで引き起こされます。椎間板は、椎体と椎体の間にあるクッションのような役割を果たしています2)

この椎間板は急激な負荷や慢性的な圧迫などによって損傷することがあるのです。そして、椎間板が損傷すると中央のゼラチン状の部分が外側に飛び出し、神経組織を圧迫する可能性があります3)

これが頚椎椎間板ヘルニアによる痛みの原因となります。

頚椎椎間板ヘルニアの病態を解説している図

頚椎椎間板ヘルニアの特徴的な症状

先ほど頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎の椎間板が損傷し神経組織を圧迫することで引き起こされると解説しました。

では神経組織が圧迫されることで、どのような症状が現れるのでしょうか?

特徴的な症状としては以下が挙げられます。

  • 首の痛み:ヘルニアがある場所によって、首の特定の部位から放散的に痛みを感じる
  • 筋力低下:手の動きを制御する神経の圧迫により、腕や手の筋力低下がみられる
  • 感覚異常:神経の圧迫により、腕や手にしびれや刺すような痛みが起こる

上記症状が見られる場合は、専門の医療機関へ受診されることをお勧めします。

頚椎椎間板ヘルニアの痛みの緩和・再発予防に効果的なストレッチ・筋トレ3選

頚椎椎間板ヘルニアの基礎とメカニズムの知識を深めたところで、ここからは痛みの緩和・再発防止に効果的なストレッチを解説していきます。

紹介するストレッチはどれも簡単にできるものなので、空いた時間や寝る前などにリラックスした状態で取り組んでみてください。

大胸筋(だいきょうきん)ストレッチ

大胸筋は胸の前面にある大きな筋肉で、姿勢の悪化や過度の負担によって緊張が高まります。さらに大胸筋が緊張することで肩が前方へ突出し、猫背になりやすくなります。

そのため大胸筋の緊張を緩和するストレッチには、姿勢改善効果があり背骨全体のバランスが改善され、症状も緩和されるのです。

以下の手順を参考に、ぜひ試してみてください。

大胸筋ストレッチ

STEP1:足を前方に出し片方の腕を壁に当てましょう
STEP2:体重を前方へ乗せましょう
STEP3:姿勢を戻しましょう
STEP4:胸の前面が伸びた状態を保持しましょう
※痛みがない範囲で行いましょう

チンインエクササイズ

頚椎ヘルニアの場合、頚部前面の深くにある筋を鍛えることが重要です。頚部の前面にある筋はあごを引く動作を担っており、うなずく動きにも関与しています。

そのため筋力低下が起こるとあごが前に出る姿勢になり、猫背などの悪い姿勢をとりやすくなるのです。これにより悪い姿勢が頚椎への負荷を大きくし、痛みを増大させる可能性があります。

筋力を強化して頚椎への負荷を軽減していきましょう。

上位頸椎屈曲運動

STEP1:両肘をついたうつ伏せ姿勢になりましょう
STEP2:顎を軽く引きましょう
STEP3:頭を後方へ引くイメージで運動を行いましょう
STEP4:繰り返し実施します
※首が丸まらないように注意しましょう

僧帽筋下部(そうぼうきんかぶ)エクササイズ

僧帽筋は肩甲骨と頸椎の間にある筋肉で、肩甲骨を引き寄せたり、安定させる役割を持ちます。

しかし、長時間のパソコン作業やデスクワークなどで姿勢が悪くなると、僧帽筋に筋力低下が起きてしまい長時間の正しい姿勢の保持が難しくなってしまいます。

そのため、僧帽筋の筋力を鍛えることで適切な姿勢を長時間保持できるようにしていくことが大切です。

僧帽筋下部エクササイズ

STEP1:うつ伏せとなり片手を伸ばしましょう
STEP2:伸ばした手を上方へ挙げましょう
STEP3:ゆっくり下ろしましょう
STEP4:可能な限り高く挙げましょう
※肘が曲がらないように注意しましょう

運動はしていい?頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと

頚椎椎間板ヘルニアは、首の痛みや腕のしびれ、筋力低下などを引き起こす疾患です。結果、特定の動作や姿勢をとることで痛みが出てしまい生活に大きな支障をきたしてしまうことも。

しかし軽症の場合は、日常生活ではさほど痛みがなく不便を感じない場合もあります。

こういった軽症例では症状が軽いからと言って、首に負担のかかるようなことを行ってしまう方もいらっしゃるでしょう。

そこで頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことについて、いくつか注意事項を解説していきます。

運動は必ず休止しよう

頚椎椎間板ヘルニアはスポーツなどの外傷や負荷でも発症・悪化してしまいます。頚部や腕のしびれ、痛みなどの症状がみられる場合にはスポーツや運動を中止しましょう。

「このくらいの痛みなら・・・」

と自己判断でスポーツや運動を続けると、当然ながら症状を悪化させることにつながります。

そのため痛みや症状を感じたら、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

重たい荷物の運搬は避けよう

重いものを持つ女性の写真

重い荷物を頻繁に運んだり、同じ姿勢で長時間の事務作業は首への負担も大きくなります。とくに、中腰や前かがみなど適切ではない姿勢で重いものを持ち上げると、急激な圧迫やねじれによって頚椎に損傷を与えることがあります。

そのため頚椎ヘルニアの方は、できるだけ重いものを持たないようにすることが大切です。

日常生活の悪い姿勢に注意しよう

スマホを操作して姿勢が悪くなっている女性の写真

日常生活の悪い姿勢や長時間にわたる同じ姿勢での作業は、首への負担が大きくなり、頚椎ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。

とくにパソコンやスマートフォンを使用する際は、猫背のようなあごが前に出る姿勢を引き起こしやすいものです4)5)

まずは、鏡などで自身の姿勢を確認し「耳・肩・腰・膝・くるぶし」が一直線になるよう気をつけてみましょう。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

自分で治そうとするのは危険

頚椎ヘルニアを自分で治そうとするのは非常に危険です。頚椎ヘルニアは神経や脊髄が圧迫されることで、痛みやしびれが引き起こされます。

そのため、自己判断でストレッチやマッサージを行うと症状が悪化する可能性もあるのです。

手にしびれが出ているなど特徴的な症状がでている際は、必ず医師に相談し適切な治療を受けるようにしましょう。

まとめ

今回は、頚椎椎間板ヘルニアによる痛みのメカニズムと、改善に効果的なストレッチを解説しました。

頚椎ヘルニアは首の痛みやしびれ、手足のまひなどの症状を引き起こす疾患であり、スポーツや長時間同じ姿勢での作業などが原因となることが多いです。また、頚椎は脳や身体をつなぐ重要な役割があるため、自己判断による治療は症状を悪化させる可能性が高いです。

そのため医師の指示のもと、日常の正しい姿勢を意識することや無理のないストレッチを行い、改善・再発防止に努めましょう。

それでは当記事が、あなたの痛み改善のお役に立てば幸いです。

参考文献
1)Anderson BG, Benzinger B, Chickness J, Hietanen C, Hill K, Lucas JP, Tuck J, Ghassibi M. Effects of Cervical Spine Exercise Protocol on Neck Pain, Pericervical Muscle Endurance, and Range of Motion in Medical Students: A Prospective Study. Cureus. 2022 Jul 22;14(7):e27160. doi: 10.7759/cureus.27160. PMID: 36017270; PMCID: PMC9393318.
2)Sharrak S, Al Khalili Y. Cervical Disc Herniation. [Updated 2022 Aug 29]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan-.
3)Karic-Skrijelj M, Talic A, Masic I, Vavra-Hadziahmetovic N, Pandza H, Suljic-Mehmedika E. Cervical pain syndrome as consequence of computer use in daily practice. Acta Inform Med. 2008;16(1):25-8. doi: 10.5455/aim.2008.16.25-28. PMID: 24109153; PMCID: PMC3789159.
4)Xia W, Liu C, Duan S, Xu S, Wang K, Zhu Z, Liu H. The influence of spinal-pelvic parameters on the prevalence of endplate Modic changes in degenerative thoracolumbar/lumbar kyphosis patients. PLoS One. 2018 May 15;13(5):e0197470. doi: 10.1371/journal.pone.0197470. PMID: 29763470; PMCID: PMC5953463.
5)Lee KJ, Han HY, Cheon SH, Park SH, Yong MS. The effect of forward head posture on muscle activity during neck protraction and retraction. J Phys Ther Sci. 2015 Mar;27(3):977-9. doi: 10.1589/jpts.27.977. Epub 2015 Mar 31. PMID: 25931773; PMCID: PMC4395757.