首の痛みやこり、さらには頭痛やめまいの原因となる「胸鎖乳突筋」。
スマホやパソコンの長時間使用、ストレス、姿勢の乱れなどで負担がかかりやすいこの筋肉のトラブルを放置すると、症状が慢性化することもあります。
この記事では、胸鎖乳突筋の役割や痛みの原因を詳しく解説するとともに、自宅で簡単にできるセルフケア方法や予防策をご紹介します。
首や肩の不調を感じる方は、ぜひチェックしてみてください!
胸鎖乳突筋とは?役割と痛みが発生する理由
胸鎖乳突筋は、首の両側にある筋肉で、頭を支えたり回したりする重要な役割を担っています。
この筋肉が過度に緊張すると、首の痛みやこりだけでなく、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状を引き起こすことがあります。特に、スマートフォンやパソコンを長時間使用する現代人にとって、胸鎖乳突筋の緊張は避けがたい問題となっています。
痛みの主な原因としては、姿勢の乱れ、ストレス、筋肉の使いすぎが挙げられます。これらの要因が重なることで、筋肉が硬くなり、血行が悪化し、トリガーポイント(筋肉の硬結)が形成されることがあります。参考:首こりの原因と改善法|おすすめストレッチで辛い症状を和らげる
胸鎖乳突筋が痛む主な原因
胸鎖乳突筋の痛みは、日常生活のさまざまな要因によって引き起こされます。ここでは、胸鎖乳突筋に負担をかける主な要因について詳しく解説します。
長時間の不良姿勢による負担
デスクワークやスマートフォンの使用時に、前傾姿勢が続くと、胸鎖乳突筋に負荷がかかります。特に、頭が前に突き出た状態(ストレートネック)は、筋肉の緊張を強め、痛みの原因となります。
参考:ストレートネック(スマホ首)の治し方〜寝ながら簡単ストレッチとともに解説〜
ストレスや緊張による影響
精神的なストレスが蓄積すると、無意識のうちに肩や首の筋肉が緊張します。これにより、胸鎖乳突筋が硬くなり、血流が滞り、痛みが発生しやすくなります。
過度な運動や片側の負荷
一方の肩ばかりでバッグを持つ、寝るときに片側ばかり向くなど、左右非対称の動作を続けると、胸鎖乳突筋にアンバランスな負荷がかかります。
また、スポーツや筋トレで過剰に首の筋肉を使いすぎることも、痛みを引き起こす要因となります。例えばトレーニングジムでベンチプレスなどを行なっている場合、顎を胸に近づけながら重量を上げてしまうと、胸鎖乳突筋が過剰に収縮してしまい痛みを引き起こしてしまう原因となります。
冷えや血行不良
寒い環境で首周りが冷えると、筋肉がこわばりやすくなります。血行が悪くなることで老廃物が蓄積し、痛みや不快感が増すことがあります。
特に冬場や夏場のエアコンの効いた部屋では、首元を温める工夫が必要です。
胸鎖乳突筋の痛みを和らげるセルフケア方法
胸鎖乳突筋の痛みを和らげるためには、筋肉の緊張をほぐし、血流を改善することが大切です。マッサージやストレッチ、温めるケアを取り入れることで、痛みの軽減や予防につながります。
ここでは、自宅で簡単にできるセルフケア方法を詳しくご紹介します。首や肩の不調を感じたら、ぜひ試してみてください!
1. マッサージで筋肉をほぐす
胸鎖乳突筋の緊張を緩和するために、自分でできるマッサージを取り入れるのがおすすめです。
マッサージの手順
- 首を軽く横に向け、鎖骨から耳の後ろにかけて浮き出ている筋肉を確認する。
- 指の腹を使って、筋肉を軽くつまむようにしながら、ゆっくりとほぐす。
- 痛みがある部分を中心に、円を描くように優しく押す。
- 片側1〜2分程度行い、反対側も同様にケアする。
ポイントは、強く押しすぎないことです。心地よい圧でほぐすことで、血流が促進され、痛みが和らぎます。
2. ストレッチで柔軟性を高める
胸鎖乳突筋が硬くなると、首や肩周りの可動域が狭くなり、痛みを引き起こしやすくなります。ストレッチを行い、柔軟性を高めることで、痛みを軽減できます。
胸鎖乳突筋ストレッチ
STEP1:片手で肩を抑えましょう。
STEP2:首を斜め後方へ反らせましょう。首の前面が伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
3. 温めて血流を促す
筋肉の緊張が原因で痛みが出ている場合は、温めることで血流が良くなり、痛みが和らぐことがあります。
温める方法
- 蒸しタオル:タオルをお湯で濡らして軽く絞り、電子レンジで温めた後、首に当てる。
- 入浴:シャワーよりも湯船につかることで、首周りの筋肉をリラックスさせる。
特に、寒い季節やエアコンの効いた部屋にいる時間が長い場合は、首を冷やさないように注意しましょう。
4. 日常生活での予防策
セルフケアだけでなく、日常生活の習慣を見直すことも重要です。
- 姿勢を意識する:長時間のスマホやパソコン作業では、こまめに姿勢を正し、首に負担をかけないようにする。
- 適度な運動を取り入れる:肩回しやストレッチを習慣にし、首周りの筋肉を適度に動かす。
- 枕の高さを調整する:高すぎる枕は首に負担をかけるため、自分に合った高さの枕を選ぶ。
胸鎖乳突筋の痛みを防ぐための予防策
胸鎖乳突筋の痛みを繰り返さないためには、日常生活の中での姿勢や習慣を見直すことが重要です。適切なケアを継続することで、筋肉の緊張を防ぎ、痛みの発生を抑えることができます。
1. 正しい姿勢を維持する
姿勢の乱れが胸鎖乳突筋の負担を増やす主な原因の一つです。特に、スマートフォンやパソコン作業中に前かがみになると、首の筋肉に過剰なストレスがかかります。
正しい姿勢のポイント
- 背筋を伸ばし、顎を引いて、耳・肩・腰が一直線になるように意識する。
- デスクワーク時は、画面の高さを目の高さに合わせ、首を前に突き出さないようにする。
- 長時間同じ姿勢を続けないようにし、1時間に1回はストレッチや軽い体操を行う。
参考:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
2. 首や肩の筋肉をバランスよく鍛える
筋力が低下すると、首周りの負担が増し、胸鎖乳突筋の痛みが発生しやすくなります。特に、肩甲骨周りや背中の筋肉・首の深層の筋肉を強化することで、負担を軽減できます。
僧帽筋下部エクササイズ
STEP1:うつ伏せになり片手を伸ばしましょう。
STEP2:肩甲骨を内側に寄せ腕を持ち上げましょう。
STEP3:ゆっくり下ろしましょう。
注意点:肘が曲がらない様に注意しましょう。
上位頸椎屈曲運動
STEP1:両肘をついたうつ伏せ姿勢となりましょう。
STEP2:頷くように顎を軽くひきましょう。
STEP3:ゆっくりと戻します。繰り返し実施しましょう。
注意点:首を丸めないように注意しましょう。
3. 冷えを防ぎ、血流を促す
首周りが冷えると血流が悪くなり、筋肉がこわばりやすくなります。冷えを防ぐことで、痛みの予防につながります。
冷えを防ぐポイント
- 冬場やエアコンの効いた室内では、首元をマフラーやネックウォーマーで保温する。
- 就寝時に首を冷やさないように、寝具を調整する。
- 温かい飲み物や入浴で、全身の血行を促進する。
4. 睡眠環境を整える
枕の高さや寝る姿勢によっては、首に余計な負担がかかることがあります。適切な睡眠環境を整えることで、胸鎖乳突筋への負担を軽減できます。
良い睡眠環境を作るためのポイント
- 高すぎず低すぎない、自分に合った枕を使用する。
- 仰向けで寝る際は、首が自然な角度になるように調整する。
- 横向きで寝る場合は、肩と頭の高さが合うようにクッションなどを活用する。
5. ストレス管理をする
精神的なストレスは、無意識のうちに首や肩の筋肉を緊張させる原因になります。リラックスする時間を確保し、ストレスをうまく管理することも予防策の一つです。
ストレスを軽減する方法
- 深呼吸や瞑想を取り入れ、心身をリラックスさせる。
- 適度な運動を行い、心身の緊張をほぐす。
- 趣味や好きなことに時間を使い、気分転換をする。
まとめ:胸鎖乳突筋の痛みを防ぎ、健康な首を保とう
胸鎖乳突筋の痛みは、姿勢の乱れや筋肉の緊張、ストレスなど、さまざまな要因によって引き起こされます。
しかし、日常生活の中で適切なセルフケアを行うことで、痛みを和らげるだけでなく、再発を防ぐことも可能です。
また、胸鎖乳突筋痛みは放置すると慢性化することもあるため、早めの対策が重要です。日々のケアを継続し、首の健康を守りましょう。
【参考文献】
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