突き指テーピング完全ガイド|指の固定から再発予防まで

スポーツ中や日常のちょっとした動作で指先をぶつけ、「曲げるとズキッと痛い」「腫れてリングが抜けない」と慌てた経験はありませんか? 突き指は軽いけがに思われがちですが、適切に固定せず放置すると関節のぐらつきや可動域制限が残ることもあります。

本記事では、突き指と骨折の見分け方から応急処置、テーピングの具体的な巻き方を解説します。再発を防ぐセルフリハビリを理学療法士の現場視点で紹介していますので、指をしっかり守り、早期復帰を実現するためにお役立てください。

突き指とは?症状と骨折との見分け方

突き指が痛そうな女性の画像

指先に垂直方向の衝撃が加わると、関節を包む靱帯や腱が伸びたり部分断裂を起こします。これが突き指で、正式には「指関節捻挫」と呼ばれる外傷です。曲げ伸ばしで鋭い痛みが走り、患部は数時間以内に腫れや内出血で紫色に変色するのが特徴です。

一方で骨折は関節近くの骨に亀裂が入り、強い痛みや指が曲がらない、変形が見られるなどの症状がみられます。治療方針が突き指とは異なるため、まずは症状を観察して受診の必要性を判断しましょう。

参考:突き指と骨折の見分け方を知りたい!症状の違いや対処法、注意点を専門家が解説

突き指が起こるメカニズムと主な症状

バレーボールやバスケットボールなど、ボールが高速で飛んでくる競技では突き指が頻発します。瞬間的に関節が過伸展すると、靱帯が引き伸ばされ関節包内に微細な出血が発生します。

炎症反応として熱感や拍動痛が加わり、軽症なら数日で腫れが引きますが、痛む部位に内出血が広く広がる場合は靱帯損傷が疑われ、病院受診が望ましいサインです。

捻挫?骨折?チェックポイント3つ

  1. 腫脹と変形の有無
    指全体がパンパンに腫れ、関節が明らかに曲がっている場合は骨折の可能性大。
  2. 痛みの場所と強さ
    関節を押して痛む程度なら捻挫が多いですが、骨の中央部を軽く叩くだけで激痛が走るときは骨折を疑いましょう。
  3. 自動運動の可否
    自力で曲げ伸ばしできず、他動でも強い抵抗を感じる場合はレントゲン検査が必要です。

これらのポイントを確認し、腫れていないのに指を曲げると強い痛みが続くケースも骨折リスクがあります。迷ったら整形外科で画像診断を受け、早期に適切な処置を受けることが回復を左右します。

応急処置の基本|RICEとテーピング準備

突き指は発症から24時間以内の対応が回復速度を大きく左右します。ここでは炎症を最小限に抑えるRICE処置のコツと、固定を成功させるためのテーピング準備を解説。ポイントを押さえれば「たかが突き指」と軽視せず、痛みと腫れを最短で沈められます。

参考:突き指を正しい処置で早く治す!骨折との見分け方や対処法を専門家が解説
参考:突き指の治し方を解説!指を曲げると痛い場合の対処法と早く治すポイント

RICE手順で炎症を抑えるコツ

まずはRest(安静)で動きを止め、無理に曲げ伸ばししないこと。続いてIce(冷却)は氷や保冷剤を薄手のタオルで包み、患部全体を10〜15分冷却します。凍傷を避けるため直接肌に当てないのが鉄則です。

Compression(圧迫)では弾性包帯を指の根元から均一な強さで巻き、腫れをコントロール。血流を阻害しないよう、指先が白くならない程度の圧にとどめましょう。最後にElevation(挙上)、手を心臓より高く保つことで静脈還流が促進され、内出血と痛みが和らぎます。

これら4ステップを患部が熱を持つ初期48時間は特に徹底すると、早期回復へつながります。

テーピング前に用意するものと選び方

指を固定するテープは非伸縮と伸縮の2種類を使い分けます。損傷靱帯の代わりに関節をしっかり支えるには非伸縮テープ(38mm幅が目安)が最適です。一方、仕上げに圧迫を調整したいときや皮膚が敏感な人には伸縮テープ(25mm幅程度)を上から重ねるとフィット感が向上します。

  • 非伸縮テープ:関節固定用、38mm幅前後
  • 伸縮テープ:圧迫調整・仕上げ用、25mm幅前後
  • アンダーラップ:皮膚保護と汗吸収
  • ハサミ/テープカッター:端を丸く切ると剝がれ防止
  • 皮膚清浄シート:汗や油分を拭き取り粘着力をキープ

テープはロール状で保管し、使用前に端を丸くカットしておくと剝がれにくくなります。指のサイズに合わせて長さを調整し、余計なたるみや重なりを作らないことが固定成功のポイントです。

基本のテーピング固定3ステップ

指のテーピングをしている画像

テーピングは「動きを止め過ぎず、でもぐらつかせない」絶妙な固定力が要です。ここでは非伸縮テープを使い、第二関節を中心に安定させるベーシックな巻き方を3段階で紹介します。テープ幅や巻き加減を指の太さに合わせて微調整すれば、スポーツ復帰時の安心感がぐっと高まります。

STEP1:アンカーで土台を作る

まず皮膚を保護するためにアンダーラップを一周巻き、テープが直接擦れてかぶれないようにします。次に非伸縮テープを指の付け根に一周巻いて「アンカー」を形成。

ここが土台となり、後から重ねるテープがズレにくくなります。引っ張り過ぎると血行を妨げるので、指先の色をチェックして圧迫が強すぎないか確認しましょう。

STEP2:クロスサポートで関節を安定

アンカーを起点に、テープを指先へ斜め45度で引き上げ第二関節を越え、反対側へクロスさせて再びアンカーに戻します。

この「Xサポート」を2回重ねると、関節を伸ばす方向の可動域が制限され、突き指で緩んだ靱帯をしっかり補強できます。テープが重なる部分にシワが寄らないよう、指を軽く曲げた状態で巻くとフィット感が向上し、固定テーピング特有の食い込みを防げます。

STEP3:サーキュラーで圧迫と仕上げ

最後に指先方向から根元へ向かってテープをらせん状(サーキュラー)に巻き下ろし全体の圧迫バランスを整えます。巻き終わりはラップ状に重ねてテープ同士をしっかり接着し、端が浮かないよう指腹側で押さえて処理すると剝がれにくくなります。

固定後は軽く指を握り、血流が保たれているか指先の温度と色を確認しましょう。違和感があればすぐに巻き直し、適切なテンションを探ることが安全な装着につながります。

部位別テーピング実践ガイド

様々なテーピングの画像

指は一本ずつ形も役割も異なり、固定法も微妙に変わります。ここではスポーツ現場で頻度の高い親指、細くて動きの大きい小指・薬指、キャッチやレシーブ動作が多い人差し指・中指の3パターンを取り上げ、それぞれに最適なテーピング方法を解説します。どの巻き方も「外れにくく動きやすい」を両立させるためのコツを押さえているので、自宅でのケアや試合前のセルフ固定に役立ててください。

親指(母指)を守るフィギュアエイト法

親指は物をつかむ際に最も強い負荷がかかり、突き指後に不安定さが残りやすい部位です。まず付け根のMP関節にアンカーを作り、手のひら中央から親指の腹側へテープを斜めに走らせて付け根をまたぎ、甲側へ回して再びアンカーへ戻す「8の字」を2周重ねます。

これにより伸展方向の動きを制限しつつ、つかむ動作に必要な屈曲は温存できます。巻くときは親指をリラックスさせ、指先から血液が逃げるほど締め込まないのがポイント。最後に伸縮テープを軽く重ねると、汗をかいても剝がれにくくなります。

小指・薬指のバディテープ固定

細い指は単独で固定するとテープのズレが起こりやすいため、隣の指とペアで巻く「バディテーピング」が有効です。小指を例にすると、まず小指と薬指の間に薄いガーゼを挟んで皮膚摩擦を防ぎます。

そのうえで伸縮テープを指の根元、中央、爪の少し下の3カ所で8割程度のテンションで一周ずつ。同じ位置を薬指にも巻いてから、両指をそろえてテープで一気に固定します。2本の指が互いに添え木の役割を果たし、曲げ伸ばしのブレを抑制します。ボール競技で再び強く当ててもダメージを分散できるため、予防テーピングとしても重宝します。

人差し指・中指のスポーツ復帰用テープ

キャッチやレシーブで酷使する人差し指と中指は、完全固定より「可動域を少し制限するサポート型」が適しています。まず第二関節の上下にアンカーを作り、非伸縮テープを指腹側から指背側へ斜めに渡しながらX字を描くように2回クロス。

そのうえで伸縮テープをらせん状に薄く巻き、圧迫感を調整します。これにより伸ばし切る動作が制限され、骨と靱帯にかかる剪断力が低減します。バスケットボールやバレーボールなど、指先への衝撃が多い競技でも痛みなくプレーしやすくなります。仕上げに指先を開閉して血流を確認し、違和感があればすぐに張力を調整してください。

再発予防のセルフリハビリ&生活習慣

手の運動をしている画像

痛みと腫れが落ち着いた後こそ、関節の柔軟性と筋力を取り戻す大切なフェーズです。動かさない期間が長いほど指は硬くなり再負傷のリスクが上昇します。

ここではリハビリの開始タイミングから日常で意識すべき習慣、テーピングの外し時までを順序立てて解説します。忘れがちな小さなケアを積み重ねることで、指は本来の機能と強さを取り戻し、再発の不安から解放されます。

痛みが引いたら始める指関節エクササイズ

炎症が収まったら、指の体操を行っていきましょう。

手指 Six Pack エクササイズ

STEP1:指の付け根の曲げ伸ばしを繰り返し行う
STEP2:第1・2関節の曲げ伸ばしを繰り返し行う
STEP3:グーパーを繰り返し行う。
STEP4:指の開閉を繰り返し行う。
STEP5:人差し指から小指まで順に親指とくっつけてく。

日常でできる予防習慣|ウォームアップとクールダウン

スポーツや家事で指を酷使する前後に、軽いストレッチと温冷ケアを取り入れるだけで再発率は大幅に低下します。準備運動として指一本ずつを反らせるストレッチを10秒ずつ行い、関節包をあらかじめ伸ばしておきましょう。活動後はぬるめの湯で3分ほど温浴し、血流を促進。

その後に冷水を30秒掛けるアイシングを交互に2〜3セット行うと、炎症物質の滞留を防ぎ翌日の腫れが抑えられます。温める時間を長めに、冷やす時間を短めに設定すると、血管がポンプのように働き回復が加速します。

テーピングを外すタイミングと再固定の目安

テーピングは「痛みが完全に消えるまで」ではなく、「関節の不安定感がなくなるまで」が基本指標です。一般的には負傷後10〜14日が目安ですが、指を曲げ伸ばしして違和感がなければ日中のみ外し、衝撃が予想されるスポーツ時に再固定する形へ移行します。

貼り替えは汗や水分で粘着力が落ちたと感じた時点で行い、同じ箇所にテープが当たり続けないよう位置を数ミリずらすと皮膚トラブルを防げます。かぶれや発赤が出た場合は直ちにテープを外し、保湿クリームで肌を整えてから低刺激タイプに変更してください。

まとめ

突き指は軽傷と侮られがちですが、靱帯や腱膜の微細損傷を放置すると関節の不安定や可動域制限が残るリスクがあります。受傷直後はRICEで炎症と腫脹を抑え、24時間以内に適切なテーピングで関節を保護することが回復の第一歩です。

その後は痛みの消失を待って指関節エクササイズや握力強化を取り入れ、靱帯と筋力の再教育を進めましょう。さらにスポーツや作業の前後にウォームアップとクールダウンを徹底し、皮膚トラブルを避けつつテーピングを状況に応じて貼り替えることで、再発率は大幅に低下します。

「固定」「リハビリ」「習慣」の3本柱を継続し、指本来の動きとパフォーマンスを取り戻しましょう。

【参考文献】
1)Avery DM 3rd, Inkellis ER, Carlson MG. Thumb collateral ligament injuries in the athlete. Curr Rev Musculoskelet Med. 2017 Mar;10(1):28-37. doi: 10.1007/s12178-017-9381-z. PMID: 28133709; PMCID: PMC5344852.
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