デスクワークやスマホ操作の後、首が重いと感じたことはありませんか?肩こりとは違う首特有の違和感を覚える方も多いでしょう。
この「首こり」は、首周りの筋肉が凝り固まった状態を指します。首こりが悪化すると、次のような不調を引き起こすことがあります
- 首の後ろがだるい
- 姿勢を保つのが疲れる
- 頭が重く感じる
- 首を動かしにくい
- 頭痛や疲労感
当記事では、首こりの原因や改善策を詳しく解説します。首こりを引き起こす日常の要因を知り、正しいセルフケア方法を取り入れることで、不快な症状を軽減できるでしょう。
ぜひ最後までお付き合いください。
首こりとは?
首こりとは、首の筋肉が過度に緊張した状態を指します。医学的には「頚性神経筋症候群」と呼ばれ、慢性的な症状に悩む方も少なくありません。
一般的な症状には以下が挙げられます
- 首の痛みや重さ
- 肩こりや頭痛
- 慢性的な疲労感
これらの症状は、軽度の「違和感」から、日常生活に支障をきたすレベルの「強い痛み」まで幅広く、個人差が大きいことが特徴です。
首こりの原因
首こりを引き起こす主な原因は、『長時間の悪い姿勢による筋肉疲労』、『頸椎の変形』、『眼精疲労』『精神的ストレスによる自律神経の乱れ』の大きく4つが考えられます。それぞれ解説していきます。
長時間の悪い姿勢による筋肉疲労
日常生活でスマホやパソコンを使う時間が増え、姿勢が悪くなることが首こりの主な原因の一つです。
良い姿勢では背骨が緩やかにカーブし、頭の重さをクッションのように支えます。
しかし、画面を覗き込むような前かがみの姿勢が続くと、このカーブが崩れ、首の筋肉に過度な負担がかかります。
頸椎の変形
首の背骨である頚椎は、7つの骨から構成されており、それぞれの骨に筋肉が付着しています。
これらの筋肉が正しく機能しなければ、首や肩に負担がかかり、首こりを引き起こします。
とくに、首の骨がまっすぐになる「ストレートネック」には注意しましょう。
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説
参考記事:ストレートネック(スマホ首)の治し方〜寝ながら簡単ストレッチとともに解説〜
眼精疲労
眼精疲労とは、簡単に言うと「眼の疲れ」です。
本来、私たちは無意識的に眼の周りの細かな筋肉を動かして、ピントを合わせ視覚のブレをなくしています。
しかし、パソコンやスマホの画面を長時間見続けると、眼の周りの筋肉が緊張し、疲労が蓄積します。
この疲労が首周りの筋肉に影響を及ぼし、首こりを悪化させることがあります。
コロナ禍のリモートワークで眼精疲労と首こりを同時に発症した方は多く、眼精疲労と首こりには強い関係があるようです2)3)。
精神的ストレスによる自律神経の乱れ
現代はストレス社会と言われています。
人間関係、お金、時間…挙げればキリがありませんが、あなたが日常的にストレスを感じることも非常に多いはず。
こういったストレスは、身体の状態をコントロールする「自律神経(じりつしんけい)」に強く影響を与えます。つまり、緊張時に作用する「交感神経(こうかんしんけい)」とリラックス時に作用する「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」のうち、交感神経が過剰に亢進することで筋肉の緊張を招くのです。
最近の研究では、ストレスによる自律神経の乱れが首こりに影響していると考えられています4)。
首こりのセルフチェック
では首こりを起こしやすい人、起こしてしまっている人のためのセルフチェック方法を2つ紹介します。
どちらの方法も無理矢理行わずに、ゆっくりと行ってください。
万歳テスト(Alpha fit test)
まず、万歳テストを紹介します。
- まずは壁に両足の踵をつけてください。
- 前方に一足分両足を離しますが、頭、背中、お尻は壁につけたままです。
- 両手を万歳するように挙げてください。
この時の手の挙がり方で採点します。
5点:手の甲が壁にピッタリとつく→良好(慢性的な首こりの危険性は少ない)
3点:指だけはつく→要注意(慢性的な首こりの可能性あり)
1点:手が壁に全く付かない(改善が必要)
左右両方とも行ってみましょう。
首の回旋テスト
続いて、首の回旋テストを紹介します。
- 椅子に座った状態で首だけ回してください。
- 首が回る角度が60度以上あるか確認します。
首が左右に回る角度は、正常な人で約60度です。
あくまでも参考ですが、首を回した時にはっきりと肩が見えたら60度回旋しています。
- 60度に明らかに達しない
- 明らかな左右差がある
- 痛みを伴う
上記に当てはまる場合、慢性的な首こりである可能性が高いです。5)。
首こりを解消するためのストレッチ・マッサージ3選
首こりの解消には、日常的にストレッチやマッサージを取り入れることが効果的です。ここでは、自宅で簡単にできるおすすめの方法を3つご紹介します。
タオルを使った肋骨マッサージ
肋骨マッサージを行うと、肋骨から首にかけて付着している「斜角筋(しゃかくきん)」という筋肉を柔らかくします。
これにより、首周りの血行が改善され、首こりの緩和が期待できます。
バスタオルがあればできるセルフケアなので、家にいる時間に気軽に実践できるでしょう。
STEP1:バスタオルを用意してください
STEP2:バスタオルの端をお尻の下に入れ固定します
STEP3:背中側を通して、バスタオルを肩に押し付けてください
STEP4:首を反対側に傾けてタオルで肋骨を圧迫しましょう
※痛みに注意しながら行いましょう
ボールマッサージ(小胸筋)
次は「ボールマッサージ」です。
このボールマッサージを行うことで、「小胸筋(しょうきょうきん)」という筋肉を効率よくほぐせます。
小胸筋は肩甲骨につながる筋肉であり、肩甲骨を通じて頸椎の位置を改善する効果があります。
STEP1:小さめのボールを用意してください
STEP2:脇の下にボールを当て内側に寄せるように動かしましょう
STEP3:胸の下の筋肉をほぐすように繰り返し実施しましょう
※痛みに注意しながら行いましょう
背骨の運動(回旋)
最後に背骨の運動です。
この背骨の運動を取り入れることで、丸まった姿勢を正しい姿勢に近づけることができます。
STEP1:両手を胸の前で組みましょう
STEP2:足を閉じたまま体をひねりましょう
STEP3:元の姿勢にもどり、繰り返し行いましょう
STEP4:上半身をなるべく大きくひねりましょう
※足が開かないよう注意しましょう
首こりの方は気をつけよう!日常生活でできる予防法
首こりを根本から改善するには、日常生活の習慣を見直すことが重要です。
以下の方法を実践してみましょう。
日常生活の姿勢改善
首こりの1つの原因は、猫背のような背中が曲がった前屈みの姿勢です。
あなたは、無意識に猫背姿勢になっていませんか?姿勢を改善することが、首こりの予防には大切です。
背筋を伸ばして胸を張り、顎を引いた姿勢を心がけてください。
特にデスクワークが多い方は悪い姿勢になりやすいです。仕事が忙しい時こそ十分注意しましょう。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
長時間の同一姿勢は避けよう
デスクワークや勉強…長時間似たような姿勢で過ごしていませんか?
同じ姿勢を取り続けることは、首こり含めて様々な体の不調を引き起こします。なぜかというと、筋肉が緊張して血流が悪化するからです。
そのため、「30分に一度は意識的に立ち上がる」「背伸びをする・体をひねる」など、こまめな体操を心がけてみてください。
ストレッチの習慣化
ぜひ、ストレッチを行うことを習慣にしましょう。
首こりの原因である不良姿勢や筋肉の硬さは、1度のマッサージやストレッチだけでは改善しません。数か月コツコツ続けることで、徐々に効果が出てくるものです。
まずは、2か月間ストレッチを継続してみてください。なお、仕事の合間やお風呂上がりにストレッチを行うのがおすすめです。
首こりを一瞬で治す方法は存在するのか?
残念ながら、首こりを一瞬で治すことは難しいと言わざるを得ません。
結論として、首こりを一瞬で治す方法は残念ながら存在しません。
首こりは日常的な姿勢や習慣の積み重ねが原因であることが多く、長期的な改善には継続的な努力が必要です。
首こりに悩む方は、紹介したセルフケア方法を取り入れながら、少しずつ症状の改善を目指しましょう。
まとめ
本記事では首こりの主な原因と、有効なエクササイズを紹介してみました。
首こりは自律神経症状とも深く関与しており、多種多様な症状が生じる可能性があります。一見、首とは関係なさそうな不調が、首こりが原因で起こっているケースもあるのです。
ぜひ本文で紹介したエクササイズやセルフケアを継続してみてください。
ですが自己判断による治療は症状を悪化させる可能性があります。
医師の指示のもと、姿勢やエクササイズを取り入れ、改善・再発防止に努めましょう。
それでは当記事が、あなたの首こり改善のお役に立てば幸いです。
参考文献
1)松井 孝嘉(松井病院・東京脳神経センター):Smart Nurse(1883-5376)12巻7号 Page736-737(2010.07)
2)Feldman JM, Cooper J et aL Asthenopia induced by computer-generated fusional vergence targets. Op- 10. tom Vis Sci 69 : 710-716,1992.
3)Sato K, Sakata R, Murayama C, Yamaguchi M,Matsuoka Y, Kondo N: Changes in work and life pat- terns associated with depressive symptoms during the COVID-19 pandemic: an observational study of health app(CALO mama)users. Occup Env Med 2021; 78: 632-7.
4)Matsui, T., Hara, K., Kayama, T. et al. Cervical muscle diseases are associated with indefinite and various symptoms in the whole body. Eur Spine J 29, 1013–1021 (2020).
5)日本整形外科学会雑誌 69,240-250,1995