「首を回すとジャリジャリ音がする」
「痛みはないけど音がしてるのは何か異常があるのでは?」
人の首は常に頭を支えており、日常生活でも負担がかかる部分です。そのため、長時間デスクワークやスマホ操作する、重いものを頻繁に持つ機会のある人は、より首への負担が大きくなります1)。
当記事では、あなたが抱えている首から出る音にフォーカスして、原因と改善方法を解説していきます。
最後まで読んでいただければ、きっとあなたの不安を取り除くお役に立てると思います。ぜひお付き合いください。
まずは首の構造を知ろう!
はじめに人の首はどのようになっているか知識を深め、より症状を理解できるようにしましょう。
首は解剖学的に大きく分けて以下の3つから構成されます。
- 骨と椎間板
- 筋肉と靭帯
- 神経
まず、首の骨は頚椎(けいつい)と呼ばれ、椎骨(ついこつ)という7つの骨が連なって形成されています。そして、連なった頚椎の中心には脊柱管(せきちゅうかん)という穴があります。
脊柱管には脊髄という神経が通っており、腰まで繋がっているのです。
また、頚椎を構成する椎骨と椎骨の間には椎間板(ついかんばん)という組織があり、首が前後左右に動くときのクッションの役割をもちます。
人の頭は成人で約4〜6kgの重さがあるため、頭を支える骨や筋肉には大きな負荷がかかっているのです。そのため、日常の悪い姿勢や無理な動きにより首を痛めてしまうこともあります。
首を回すとジャリジャリ音がする原因は?
先ほど、首の構造について説明しました。では、首を回すと「ジャリジャリ」と音がするのはどういった原因からなのでしょうか?
結論からいうと、まだ明確に音が鳴る原因はわかっていません。
ただし、以下の2つが原因ではないかと考えられています。
- 首の周りにある軟部組織がこすれる音
- 関節がポキポキ鳴る音
1つ目の軟部組織(なんぶそしき)とは、筋肉や靭帯などを総称した呼び方です。首周囲にある筋肉などの柔軟性が低下したり、硬くなったりすることで、首を動かした時に骨などの硬い組織と筋肉がこすれることで音が鳴ると考えられています。
しかし、これらの原因は完全に解明されているわけではなく、現在でも研究が進められています。
2つ目に考えられる原因は、関節から鳴る音です。
突然ですが、あなたは「つい指を鳴らしてしまう」という経験や習慣はありますか?
そもそも、指が「ポキポキ」と鳴るのは、指の関節内に空間が形成されるときに鳴る音とされています2)。そのため、首を動かした際にも関節に空間が生まれることで音が鳴る可能性も考えられます。
参考記事:肩甲骨を回すとゴリゴリ鳴る!正体は筋肉のコリ?音の原因や解消法を詳しく解説
参考記事:首の付け根のゴリゴリの正体は?首こり・肩こりの原因となるゴリゴリの解消法を解説!
首のジャリジャリ音は病気なの?
では、首を動かしたときに音が鳴るのは何か病気のサインなのでしょうか?
音が鳴る原因はさまざまですが、それが病気の前触れである可能性は低いと考えられています。しかし、注意するのは音以外に他の症状が現れたときです。
以下の症状が見られたら専門の医療機関を受診しましょう。
- 首に痛みを伴う
- 手のしびれを感じる
- うまく歩けなくなった
- ボタンを止める、箸を持つなど細かい動きができない
これらの症状がある場合は、首の骨が変形し神経を圧迫しているなどの原因が考えられます。
参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介
首のジャリジャリ音が出たら受診が必要?何科が適切?
先ほど解説したように、音が出たからといってすぐに受診する必要はありません。しかし、痛みやしびれを伴う場合は整形外科や神経内科を受診する必要があります。
くれぐれも、痛みがあるからと自己判断でマッサージや首を無理に動かすことは避けましょう。
首のジャリジャリ音が出たら日常生活で気をつけたい3つのポイント
さて、ここまで首を動かしたときに音が鳴る原因や痛みなど、音以外の症状が出ているときは注意が必要であると説明しました。しかし、痛みがなくても音が鳴ることは、多くの人にとって不快感や心理的な不安を引き起こすことがあります。
ここでは、首のジャリジャリ音を少しでも改善するため、日常生活で気をつけるべきポイントを3つ紹介します。
正しい姿勢を心がけて首の負担を減らすそう
デスクワークやスマートフォンの使用など、首に負担をかける生活が多い現代人。実は、パソコンを覗き込むような姿勢は猫背になり、頭が前に出るような姿勢になりやすいのです。
加えて、頭が前にでる姿勢は首への負担が大きくなり、痛みを引き起こしやすくなります1)。そのため正しい姿勢を心がけ、首への負担を軽減することが大切です。
デスクワークでは、目線をパソコンの画面の中央に合わせ、肩の力を抜いてリラックスした姿勢を保つようにしましょう。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
重いものを持つのは控えよう
重い荷物を頻繁に運ぶ作業は首への負担が大きくなります。とくに、中腰や前かがみの姿勢で重いものを持ち上げると、急激な圧迫やねじれによって首に大きなストレスを与えます。
そのため、できるだけ重いものを持たないようにすることが大切です。
しかし、どうしても重たい物を持たなければいけないこともあるかと思います。その際は、以下のポイントを意識して体への負担を減らしていきましょう。
- 腰を丸めない(前屈みにならない)ようにする
- 持ち上げる際は、片膝を着くなどして重心を低くする
- お腹をへこませるようにして、体幹に力をいれる
- 体から遠い位置で物を持たないようにする
首を鳴らすのはやめよう
日頃から、あなたは首を「コキコキ」鳴らしてしまうクセはありますか?ときには長い時間座って作業をしていると、リフレッシュとして首を鳴らしてしまう人もいるかもしれません。
こうした行為は筋肉など周囲の組織を痛めてしまう可能性も高く、症状の悪化を引き起こすケースもあるのです3)4)。
そのため、首の疲れや動かしにくさを感じても首を鳴らすことは避けましょう。
首のジャリジャリ音を改善するストレッチ3選!
首のジャリジャリ音は、同じ姿勢で長時間作業するなど、筋肉に負担が掛かることでも引き起こされます。そのため、ジャリジャリ音が気になる場合は首のストレッチや運動を行うことで改善する可能性があるのです。
ここでは、首を動かした時に鳴る音の治し方としておすすめのストレッチを紹介します。
首の周りの緊張を和らげる胸鎖乳突筋ストレッチ
「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」は首を支えるうえで大切な筋肉の1つです。ある研究では、首が下がることで首を支える筋肉への負荷が大きくなり、姿勢を正すことで負荷が減るとされています5)。
そのため、長時間のデスクワークなど目線が下がり前屈みになる姿勢が続いたときは、休憩時間の間に簡単なストレッチを行ってみましょう。
また、首の骨がまっすぐになってしまう「ストレートネック」の改善にも効果を発揮するため、スマホを良く使う人にもおすすめです。
STEP1:片手で肩を抑えましょう
STEP2:首を斜め後方へ反らせましょう
STEP3:数秒間姿勢をキープしましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※首の前面が伸びるのを感じましょう
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説
肩甲骨周りの緊張を和らげる肩甲挙筋ストレッチ
「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」は肩の動きを良くする働きや、首を後ろに反らす役割を担っています。そのため、デスクワークや前屈みの姿勢が続く作業では、首が前屈みになりやすいため、肩甲挙筋が首を後ろに戻そうと過剰に働きやすくなるのです6)。
また、首の痛みがある人は肩甲挙筋の緊張が強くなる傾向にあります。そこで簡単にできるストレッチで、肩甲挙筋の緊張を改善していきましょう。
STEP1:両手を後ろで組みましょう
STEP2:首を前方へ傾けましょう
STEP3:そのまま斜め下へひねりましょう
STEP4:姿勢を戻しましょう
※首の後ろが伸びるのを感じましょう
正しい姿勢を身につける胸張り運動
「胸張り運動」は、肩甲骨を内側に引き寄せる働きのある「僧帽筋中部線維(そうぼうきんちゅうぶせんい)」を鍛える運動です。デスクワークなど悪い姿勢を長時間続けることは、首や肩に大きな負荷をかけるとされています7)。
そのため、胸張り運動を行うことで、僧帽筋中部繊維を鍛え正しい姿勢に戻す・首にかかる負荷を軽減するといった効果が期待できるのです。
STEP1:仰向けとなり両手を真横へ広げましょう
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:腰の伸びを感じながら実施しましょう
※肩が床から離れないように注意しましょう
まとめ
今回は、首を動かした際に「ジャリジャリ」と音が鳴る原因と改善方法について解説してきました。
首を動かして音が鳴るのは、筋肉や関節の影響が考えられます。そのため、症状が音だけであればすぐに医療機関を受診する必要はありません。
しかし、音の他に手のしびれや足の動かしにくさ、細かい作業ができなくなるなどの身体的症状が現れた場合は、すぐに整形外科や神経内科など専門の医療機関を受診しましょう。
また症状が音だけでも、日常の姿勢を見直してみたり、お伝えしたストレッチやエクササイズを行うことで改善する可能性があります。
それでは、当記事があなたのお役に立ちますことを願っております。
参考文献
1)Lee KJ, Han HY, Cheon SH, Park SH, Yong MS. The effect of forward head posture on muscle activity during neck protraction and retraction. J Phys Ther Sci. 2015 Mar;27(3):977-9. doi: 10.1589/jpts.27.977. Epub 2015 Mar 31. PMID: 25931773; PMCID: PMC4395757.
2)Kawchuk GN, Fryer J, Jaremko JL, Zeng H, Rowe L, Thompson R. Real-time visualization of joint cavitation. PLoS One. 2015 Apr 15;10(4):e0119470. doi: 10.1371/journal.pone.0119470. PMID: 25875374; PMCID: PMC4398549.
3)Brodeur R. The audible release associated with joint manipulation. J Manipulative Physiol Ther. 1995 Mar-Apr;18(3):155-64. PMID: 7790795.
4)Reggars JW. The therapeutic benefit of the audible release associated with spinal manipulative therapy. A critical review of the literature. Australas Chiropr Osteopathy. 1998 Jul;7(2):80-5. PMID: 17987158; PMCID: PMC2050802.
5)Yu, Ji Yeon, et al. “Working Posture and Muscle Tension according to Screen Position during VDT Operation.” Journal of the Korean Academy of Rehabilitation Medicine 24.4 (2000): 765-775.
6)Taş, Serkan, Feza Korkusuz, and Zafer Erden. “Neck muscle stiffness in participants with and without chronic neck pain: a shear-wave elastography study.” Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics 41.7 (2018): 580-588.
7)Young JL, Snell MG, Robles O, Kelso JE, Kammitsis AM, et al. (2022) Effects of Electronic Usage on the Musculoskeletal System in Adolescents and Young Adults: A Systematic Review. J Musculoskelet Disord Treat 8:114. doi.org/10.23937/2572-3243.1510114