首は4~6kgの重さがある頭を支えるので、負担がかかりやすい関節です。首筋の痛みは日常生活に支障をきたしやすいので、症状に悩んでいる方も多いでしょう。
また、腕のしびれや激しい頭痛などを伴う場合は病気が潜んでいる可能性もあり、早期に受診し適切な治療を受ける必要があります。
そこで当記事では、首筋の痛みの原因と治し方、ストレッチなどの予防方法について、わかりやすく解説します。
当記事を参考にすることで、普段の生活が少しでも楽になれば幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。
首筋が痛い時に考えられる3つの原因とは?
一般的に首筋とは、「首の後面部分」や「耳の後ろから肩にかけての筋肉部分」を指します。首筋に生じる痛みは、重症化すると日常生活にも大きな支障をきたすので、悩まれている方も多いでしょう。
まずは、首筋に痛みが出る時に考えられる、主な3つの原因について解説します。
寝違えなどによる筋肉の炎症
起床後の寝違えやくしゃみ、あくびの後などに突然、首筋に痛みが出た場合は筋肉の炎症が原因であると考えられます。長時間同じ姿勢をとることで首筋の筋肉が緊張状態となり、起床して急に首を動かすことで痛みが出現してしまうのです。
「頸椎捻挫(けいついねんざ)」や「ぎっくり首」と呼ばれ、痛みの軽度なものから重度なものまで症状もさまざま。重症の場合は安静にしていても痛みがありますが、2~3日経つと落ち着くケースが多いです。
また、交通事故やスポーツ中の衝突などによって首や頭に衝撃を受けることで、首筋の筋肉や神経などが損傷し、首筋の痛みが出現します。いわゆる「むち打ち」と呼ばれるもので、頭痛や吐き気などの症状を伴うこともあります。
参考記事:【首を寝違えたような痛み】突然起きる痛みの原因と対処法を解説!
参考記事:むちうちとは?代表的な症状や首の痛みを治すセルフケアを専門家が解説
姿勢不良による肩・首こり
コロナ禍におけるデスクワークなどで、長時間同じ姿勢が続く場合は、肩・首こりによる筋肉の柔軟性の低下が痛みの原因に考えられます。重さ4〜6kgあると言われる頭を支える首の筋肉が硬くなることで、首筋の痛みだけでなく、頭痛や吐き気を伴う場合もあるのです。
また、近年のスマホやパソコンの普及に伴い、「ストレートネック」に悩む方も増えています。本来、首はゆるやかなカーブを描き、首を動かす際にかかる負担を緩和させます。
しかし、日常的な姿勢不良が原因で首のカーブがなくなると、首に負担のかかりやすい状態となります。
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説
首の痛みを伴う病気が潜んでいる可能性も
首筋の痛みが長引く場合には、病気が潜んでいる可能性も。考えられる主な4つの病気について以下で解説しますので、当てはまる症状がある方は早期に病院を受診しましょう。
参考記事:【辛い】首こりに効果のあるツボはどこ?肩コリや目の疲れにも効くツボを紹介
【頚椎症】腕のしびれや脱力感を伴う
背骨の首部分を指す頚椎(けいつい)は計7個あり、それぞれを連結するために椎間板(ついかんばん)や靭帯などが存在します。頚椎症とは、その椎間板や靭帯が加齢や仕事、生活習慣などにより変形することで、頚椎の中を通る神経が圧迫される病気です。
首筋の痛みに合わせて、腕のしびれや脱力感などを伴い、日常生活にも支障をきたす場合があります。
また、進行することで手足の動かしにくさや、排泄障害などの症状が出現することもあるので、気になる症状がある場合は早急に病院を受診しましょう。
参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
【頚椎椎間板ヘルニア】首を後ろにそらすと強い痛みを生じる
頚椎の間にある椎間板には、首に加わる衝撃を吸収するクッションの役割があります。椎間板ヘルニアとは、加齢などにより椎間板が変形することで、頚椎の中を通る神経が圧迫される病気です。
首を後ろにそらすと強い痛みが生じ、頚椎症と同様に腕にしびれや脱力感などの症状が出現します。30~50歳代の比較的若い世代に発症することも多く1)、症状を放置することで悪化しやすい病気なので、疑われる場合は早急に受診しましょう。
参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介
参考記事:上を向くと首が痛いのはなぜ?痛みの原因とすぐ実践できる治し方を解説
【後頭神経痛】左右どちらかの首筋や耳の奥に痛みを生じる
後頭神経痛(こうとうしんけいつう)とは、左右どちらかの首筋から後頭部にかけてや、耳の下あたりにキリキリ、ジンジンとした痛みが出現する病気です。不良姿勢や長時間のデスクワークが原因で、頭を支えるための首の筋肉が緊張し、後頭部を走る神経が圧迫されることで痛みが生じます。
1週間ほどで自然に痛みは消失することが多いので、安静に過ごすことを心がけましょう。また、激しい痛みや症状が長期間続く場合は、ほかの病気の可能性もあるので、医療機関への受診をオススメします。
【椎骨動脈解離】激しい後頭部の痛みを伴う
心臓と脳をつなぎ、生命を維持するための重要な役割がある血管を「椎骨動脈(ついこつどうみゃく)」と言います。その重要な役割のある椎骨動脈が、無理な首の動きなどにより衝撃を受けることで、破れて出血してしまう状態が椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)です。
特徴的な症状として、損傷した血管のある側に突然の激しい後頭部痛を伴うことが挙げられます。ただし、症状が軽い場合は寝違えなどと勘違いするケースも多く、症状を放置することで脳梗塞などの命に関わる病気に進行する場合もあるので注意が必要です。
首筋の痛みがある時は何科を受診する?
前項で解説した病気の症状で当てはまるものがある場合は、早急に病院を受診しましょう。ここからは、首筋の痛み以外に出現している症状に合わせて、受診するべき診療科について解説します。
腕のしびれや脱力感がある場合は整形外科病院を受診しよう
首筋の痛みの他に、腕のしびれや脱力感などがみられる場合は、整形外科病院を受診するとよいでしょう。受診しレントゲンやMRIなどの検査を受けることで原因が特定でき、投薬やリハビリなどの適切な治療を受けられます。
頭痛を伴う場合は脳神経外科病院を受診しよう
激しい頭痛や長期間続く頭痛を伴う場合は、早急に脳神経外科病院を受診しましょう。痛みを放置することで、脳梗塞や脳出血などの命に関わる病気へと進行してしまう可能性もあるので、十分に注意する必要があります。
【首筋の痛みに効果的】自分で行える対処法を紹介
ここからは、首筋の痛みに効果のある対処法を紹介します。自分で簡単に行えるものを紹介するので、ぜひ無理のない範囲で試してみてください。
痛みが出た直後1~2日は安静が第一
首筋に痛みを感じた直後である1〜2日の間は急性期と呼ばれ、炎症症状が強く出る時期なので、できる限り安静にすることが重要です。さらに、炎症症状を落ち着かせるためには、保冷剤などを使用して、10~15分程度患部を冷やす「アイシング」を行うとよいでしょう。
3日以上続く慢性的な痛みには温めると楽になることも
3日以上痛みが続くような、肩こりや首こりなどの慢性的な痛みの場合は、温めると楽になることがあります。たとえば痛みのある場所に蒸しタオルを当てたり、ゆっくりと湯船につかったりすることで、首筋の筋肉の血流が改善し、痛みの緩和へとつながります。
肩こり・首こりなどの硬さを感じる場合はストレッチを行う
長時間のデスクワークが多い方は、肩や首周りの筋肉の柔軟性を高め、血行を良くするためにストレッチを行うとよいでしょう。ただし、痛みが強い場合は悪化する可能性もあるので、痛みの程度を確認しながら無理のない範囲で行ってください。
参考記事:つらい首こりの原因と解消法!おすすめストレッチを専門家が解説!
【首筋の痛みの治し方】簡単にできるストレッチ3選!
先ほど解説した通り、肩こりや首こりなどで筋肉の硬さを感じる場合は、ストレッチを行うことで痛みの改善に効果があります2)。簡単にできる3つのストレッチを紹介するので、ぜひ痛みのない範囲で試してみてください。
首の後ろのストレッチ
まずは首の後ろにつく筋肉を伸ばすストレッチです。首の後ろにつく筋肉には、頭の重みを支えて首を安定させる役割があります。
長時間のデスクワークや下を向く作業などによって、緊張しやすい筋肉です。座りながら簡単にできるストレッチなので、デスクワークが多い方はぜひ毎日継続して行ってください。
STEP1:両手を頭の後ろで組みましょう
STEP2:首を前方に傾けましょう
STEP3:数秒間姿勢を保持しましょう
STEP4:姿勢を元に戻しましょう
STEP5:首の後面が伸びるのを感じましょう
胸郭回旋ストレッチ
次に、背骨の胸の部分に位置する、胸椎(きょうつい)の動きを改善するストレッチを紹介します。胸椎は比較的動きが少ないので柔軟性が低下しやすく、硬くなることで猫背の原因となるのです。
猫背のような不良姿勢を続けることで、体がバランスをとるために首の筋肉を緊張させ、首への負担が増加してしまいます。胸椎の柔軟性を向上させることで、姿勢改善につながるでしょう。
STEP1:正座の姿勢となり両手の甲を地面につけましょう
STEP2:片手を頭の後ろへ回します
STEP3:肘を外側へ開きながら上半身を捻りましょう
STEP4:肘を内側へ閉じましょう
STEP5:繰り返し実施しましょう
STEP6:目線は肘の方へ向けましょう
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
上位頸椎屈曲運動
首の前側につく筋肉は、重さ4〜6kgある頭を支えて、首を安定化させる働きがあります。この筋肉が弱ってしまうことで、不良姿勢へとつながり、首筋の痛みを引き起こす原因となります。
痛みのない範囲で上位頚椎屈曲運動を行い、筋力をつけることで、首への負担を軽減させましょう。
STEP1:座った状態で指先を顎につけましょう
STEP2:指先から顎を離すように引きましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:後頭部を後方へ動かすように意識しましょう
※頭を下げないように注意しましょう
参考記事:ストレートネック(スマホ首)の治し方〜寝ながら簡単ストレッチとともに解説〜
【再発防止】首筋の痛みを予防する方法とは?
首筋の痛みの再発を防止するために、ストレッチなどの運動に合わせて、日常生活で気を付けたい2つのポイントについて解説します。
日常的に良い姿勢を心がけよう
普段から良い姿勢を意識することで、首への負担を減らせます。とくに、パソコンやスマートフォンを長時間同じ姿勢で見ることが多い方は、姿勢が崩れやすいので注意しましょう。
しかし、良い姿勢を心がけると言っても、何を注意すればよいかわからないという方も多いでしょう。まずは、「顎(あご)を後ろに引く姿勢」と「長時間同じ姿勢を続けない」の2点を普段から意識してみてください。
この2点を意識するだけでも良い姿勢を保つことにつながり、首への負担を軽減できます。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
首に負担のかからない寝具がオススメ
起床後によく首筋に痛みが出る方は、普段使用している寝具が自分の体に合っていない可能性があります。心当たりがある方は、以下の2つを確認してみてください。
- 首が過度に曲がらない高さの枕を使用しているか
- 体が沈み込まない適度な硬さのあるマットレスを使用しているか
寝具が自分の体に合わないことで睡眠の質が低下し、精神的なストレスにもつながります。毎日使うものだからこそ、ぜひ一度確認してみましょう。
まとめ
首筋の痛みの原因は、姿勢不良や長時間同じ姿勢をとることによる、筋肉の硬さであることが多いです。ただし、腕のしびれや激しい頭痛などの症状を伴う場合は、病気が潜んでいる可能性も高いので、早急に病院を受診して適切な治療を受けましょう。
ストレッチや良い姿勢を心掛けることで、痛みの改善や予防にもつながるので、ぜひ今回の記事を参考に試してみてください。
それでは、当記事があなたの痛みの緩和に役立つことを願っています。
参考文献
1)Sharrak S, Al Khalili Y. Cervical Disc Herniation. [Updated 2022 Aug 29]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan-.
2)葉 清親,対馬 栄輝,他:頸椎変性疾患患者における理学療法の効果.理学療法学:2020;47,153-165