首の後ろが痛い原因とは?考えられる病気とストレッチなどの適切な対処法を解説

首は重さ6~8kgあると言われる頭を支え、さまざまな動作に対応するため、負担のかかりやすい関節です。とくに、デスクワークなどで長時間続く同じ姿勢や、猫背などの不良姿勢をとることは首の後ろに痛みが出現する原因となってしまいます。

さらに、場合によっては命にも関わるような危険な病気が潜んでいる可能性もあるので、注意しなければなりません。

そこで今回の記事では、首の後ろに痛みが出る原因や考えられる病気、予防にもなるストレッチや運動を解説します。最後まで読んでいただければ、痛みの改善にお役立ちいただけますので、ぜひお付き合いください。

首の後ろが痛くなる4つの原因とは?

首を押さえる女性の写真

首の後ろが痛む場合は、主に4つの原因が考えられます。一番多く挙げられるのは姿勢不良や加齢によるものですが、場合によっては命にも関わるような危険な病気が潜んでいる可能性も。

痛みに対して正しく対処ができるよう、まずは首の後ろの原因について詳しく解説します。

交通事故などによる過度な負担

交通事故によるむち打ちを説明したイラスト

交通事故やスポーツ中の衝突による、首や頭への過度な負担は痛みの原因となります。負担がかかることで、首の周りにある筋肉が緊張してしまい、いわゆる「むち打ち」の状態になってしまうのです。

さらに、普段から首に負担がかかっている場合は、くしゃみや寝返りなどのちょっとした動作で痛みが出てしまうこともあります。長時間のデスクワークをする方や、ジムなどで高負荷の筋トレをされる方は注意が必要です。

また、交通事故などの物理的な負担のみではなく、日常的にかかる体や心へのストレスが原因になることもあります。ストレスによって自律神経が乱れ、体がこわばってしまうことで痛みが出現してしまうのです。

参考記事:首のむちうちの治し方|必ず押さえておきたい対処法をポイント解説!

加齢による椎間板のクッション性低下

首は7つの頸椎(けいつい)という骨で構成されており、7つそれぞれの間にある椎間板はクッションの役割を担います。椎間板は年齢を重ねることで水分が減少し、衝撃をうまく緩和できなくなってしまい、首の後ろに痛みが生じます。

姿勢の悪さによる筋肉の血行不良

首の周りにある筋肉は、6〜8kgある頭の重みを支える必要があるので、日ごろから大きな負担がかかります。冒頭で伝えたように、頭が体より前に出るような猫背の姿勢や、長時間同じ姿勢で行うデスクワークなどの姿勢不良を日常的にとることで、さらに首の周りにある筋肉が緊張してしまいます。

首周りの筋肉の血行不良が起こることで、首の痛みの原因となってしまうのです。

正常な首とストレートネックを比較したイラスト

首の骨である頸椎は通常の場合、横から見るとS字のカーブを描いています。しかし、姿勢不良を続けることによりカーブが減少し、「ストレートネック」と呼ばれる状態になってしまうのです。

重症の場合は首の痛みだけではなく、しびれや吐き気、頭痛などの症状が出現するので注意が必要です。

さらに、姿勢不良による首の痛みは、起きているときだけが原因ではありません。就寝時のマットや枕などの寝具が自分の体に合っていないことで窮屈な姿勢となり、首の周りにある筋肉の血行不良へとつながることもあります。

参考記事:ストレートネック(スマホ首)の治し方〜寝ながら簡単ストレッチとともに解説〜

病気が潜んでいる可能性も

上記の原因に当てはまるものがない方は、危険な病気が潜んでいることも考えられます。急激な痛みの場合は、早急な治療が必要となる病気の可能性もあるので、自己判断せずに、すぐに医療機関へ受診するとよいでしょう。

【要注意】首の後ろが痛い場合に考えられる5つの病気

ここからは、首の後ろに痛みが出現する場合に考えられる5つの病気について、詳しく解説します。

【頸椎症】腕に神経痛やしびれを伴う

頚椎症の病態を解説したイラスト

首の骨である頸椎が、加齢や生活習慣などが原因で変形することで、頸椎の中を走る神経が圧迫されてしまう病気を「頸椎症(変形性頸椎症)」と言います。神経が圧迫されることで、首の後ろの痛みや腕がピリピリと痛む神経痛やしびれなどの症状が出現し、進行することで日常生活に支障をきたす場合もあります。

参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説

【頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア】上を向くと首に痛みが出る

頸椎椎間板ヘルニアを説明したイラスト

加齢などが原因でクッションの役割のある椎間板が変形し、頸椎の中にある神経を圧迫してしまう病気が「頸椎椎間板ヘルニア」です。上を向く姿勢で首に強い痛みを生じることが多く、その他にも首から肩にかけたしびれや、脱力症状によってうまく手を使えないなどの症状が現れます。

【緊張性頭痛】後頭部が締め付けられるように痛む

頭痛には片頭痛や群発頭痛などのさまざまな種類があります。その中でも最も多いとされているものが、後頭部の痛みが特徴である「緊張性頭痛」です。緊張性頭痛は首の周りにある筋肉の血行不良、いわゆる肩こりなどが原因で起こる頭痛を指し、「肩こり頭痛」や「筋収縮性頭痛」と呼ばれることもあります。

肩こりがひどくなることで、首の後ろや後頭部にズキズキとした痛みが出現します。人によって痛みの感じ方はさまざまで、頭が締め付けられるように痛いという方や、頭が重く感じる方も。

最も悩む方が多い頭痛と言われる緊張性頭痛ですが、テレワークの増加により長時間同じ姿勢でデスクワークを行う方が増え、発症する方が増加していると言われています。さらに、熱中症対策で冷房を効かせた屋内にいることも、首の筋肉の緊張を高めてしまうので注意が必要です。

【椎骨動脈解離】首が急激に痛む

首を前から見て椎骨動脈を説明したイラスト

心臓から脳に向かう4つの血管のうち、首の中を通って脳に向かう2つの血管を椎骨動脈(ついこつどうみゃく)と言います。椎骨動脈は、生命の維持に大きくかかわる重要な血管です。

この椎骨動脈に首への衝撃などによって血管内の壁に傷がつき、血管が裂けてしまうことで、脳に血液が回らなくなってしまう状態を「椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)と言います。

椎骨動脈解離の特徴的な症状の一つとして、急激な後頭部と首の痛みが挙げられます。ただし、症状の軽い場合は寝違えや肩こりと考えてしまうケースも多く、症状を放置することで命に関わる状態まで病気が進行してしまうこともあるので、注意しなければなりません。

【くも膜下出血や脳梗塞】激しい頭痛を伴う

椎骨動脈解離が進行すると、くも膜下腔と呼ばれる脳を取り囲む層内で出血が起こる「くも膜下出血」や、脳内の血管が詰まってしまう「脳梗塞」を引き起こしてしまいます1)。典型的な症状として、今まで経験したことのないような激しい頭痛が挙げられ、吐き気や嘔吐を伴うことも多いです。

重症度によって緊急度は異なりますが、以下の症状が見られる場合は命に関わる場合が多いので、迷わず救急要請を行いましょう。

  • 意識や注意力、判断力の低下
  • 吐き気や嘔吐
  • めまい
  • 体のしびれ
  • 視力の低下などの視力変化

首の後ろが痛いときの対処法とは?

自分の症状に当てはまる原因は見つかりましたでしょうか?ここからは、首の後ろに痛みがあるときの対処法について解説します。

病気が疑われる場合はすぐに病院を受診しよう

日常生活で支障をきたさない程度の、特定の動きのみで出現する軽い痛みであれば、時間が経つと自然に治る場合もあります。しかし、急激な痛みや首を動かしていない状態でも痛みが続く場合や、しびれや吐き気などの他の症状があるなどの病気が疑われる場合は、すぐに病院を受診しましょう

何科を受診するのが適切か?

主治医に相談が前提になりますが、首を動かすと痛みが出現する場合や、腕にしびれや脱力感がある場合は、整形外科を受診するとよいでしょう。受診しレントゲンやCTなどの検査を行うことで、痛みの原因を特定でき、必要に応じて痛み止めの処方やリハビリなどの適切な治療を受けられます。

また、急激な首の痛みや吐き気めまいなどの症状がある場合は、脳神経外科を受診しましょう。治療が遅れると重度な後遺症が残ったり、最悪の場合は命を落としたりするケースもあるので、意識の低下や嘔吐など危険を感じたときは、迷わず救急要請を行うことが重要です。

1~2週間以上痛みが続いている場合は患部を温めると効果的

生活に支障がない程度の首の痛みが1〜2週間続いている場合は、患部を温めることが良いと言われています。患部を温めることで血行が良くなり、首の周りにある筋肉の緊張の緩和につながるでしょう。

ただし、事故やスポーツ中の衝突などによる過度な負担が原因の場合は、重症度によっては1か月ほど患部に熱をもった炎症状態が続く場合もあります。一般的には、熱を持っている場合は、炎症症状を落ち着かせるために冷やす方が良いので、症状に合わせて適切に対処してください。

長時間の同じ姿勢や作業後に痛みを感じる場合はストレッチや運動を行う

デスクワークなどの長時間同じ姿勢を続けた後に痛みを感じる場合は、首周りの筋肉の血行を高めるためにストレッチや運動2)を行いましょう。次項で首の後ろが痛い時に効果的なストレッチを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

ただし、強い痛みがある場合は、逆効果となってしまう可能性もあるので注意が必要です。症状を見ながら、痛みのない範囲で行いましょう。

【予防にもオススメ】首の後ろが痛い時に効果的なストレッチを紹介!

最後に、首の後ろに痛みがある時に効果的な、3つのストレッチを紹介します。自宅や仕事の合間でも簡単にできるので、ぜひ痛みのない範囲で試してみてください。

頸部伸展筋ストレッチ

猫背の方や長時間同じ姿勢でいることが多い方は、頭を支えるために首の後ろにつく筋肉が過剰に緊張しています。筋肉の血行不良によって痛みを生じている場合が多いので、ストレッチを行って筋肉の緊張を緩和させるとよいでしょう。

頸部伸展筋ストレッチ

STEP1:両手を頭の後ろで組みましょう
STEP2:首を前方へ傾けましょう
STEP3:数秒間姿勢を保持しましょう
STEP4:姿勢を元に戻しましょう
STEP5:首の後面が伸びるのを感じましょう

胸張り運動

デスクワークなどの長時間連続した同じ姿勢や、猫背などの不良姿勢をとることは、首や肩に大きな負担がかかります3)

胸張り運動は肩甲骨を内側に引き寄せることで、背中の筋肉を鍛えられる運動です。肩甲骨を正しい位置に戻す胸張り運動を行うことで猫背の改善へとつながり、首にかかる負担の軽減につながります。

長時間同じ姿勢をとらないよう、デスクワークの合間などに30分に一度は胸張り運動を行うなど、時間を決めて実施するとよいでしょう。

胸張り運動

STEP1:両手を前方へ伸ばしましょう
STEP2:胸を張りながら肩甲骨を内側へ寄せましょう
STEP3:背中を丸めながら両手を前方へ伸ばしましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
STEP5:あごを引きながら運動を行いましょう

上位頸椎屈曲運動

首の前面につく筋肉は、重さ6~8kgあると言われる頭を支える役割があります。この筋肉が弱ってしまうことで、顎が前に出てしまうような不良姿勢となり、首への負担が大きくなります。

首の筋力を鍛えて、首にかかる負担を軽減させるとよいでしょう。

上位頸椎屈曲運動

STEP1:座った状態で指先を顎につけましょう
STEP2:指先から顎を離すように引きましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:後頭部を後方へ動かすように意識しましょう
※頭を下げないように注意しましょう

まとめ

今回の記事では、首の後ろに痛みが出る原因や考えられる病気、予防にもなるストレッチや運動について解説しました。

首の後ろが痛む時は姿勢不良や加齢などによる、首周りの筋肉の血行不良が原因となることが多いです。日ごろから猫背などの不良姿勢や、長時間同じ姿勢が続かないように気を付けましょう。

しかし、中には危険な病気が潜んでいる場合もあるので、注意しなければなりません。少しでも気になる症状があるときは、迷わず病院を受診してください

それでは当記事が、あなたの痛み緩和に役立つことを願っています。

参考文献
芦田 真士,永金 義成,牧野 雅弘,他:椎骨動脈から後大脳動脈におよぶ動脈解離をきたした脳伷塞の1例,臨床神経 2017;57:446-450八木茂典 :シンスプリントの重症度分類と治療,Sportsmedicine 2010 NO.126,p21-22
2)葉 清規,対馬 栄輝,村瀬 正昭,他:頸椎変性疾患患者におけるMcKenzie法に基づく運動療法の効果とそれに関連する因子,2016;理学療法学第43巻第2号p107-111

3)加藤 剛平,岩本 幸英,豊永 敏宏:勤労者の肩こり症状に関連する因子の検討,日本職業・災害医学会会誌;JJOMT第67巻第2号p87-94