あなたは「手がビリビリする」「手や指に違和感がある」といった症状を経験したことはありますか?
手にしびれが出た場合、放置してもよいものなのか、治す方法はないのかなど心配になりますよね。
そこで当記事では手のしびれの原因と、症状別に効果的なストレッチをわかりやすく解説していきます。
当記事を参考にすることで、手のしびれが解決できれば幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。
手のしびれとは?一般的な症状を解説
しびれとは「ビリビリ、ジンジンするような感覚」と表現され、神経による痛みの症状の一つを指します1)。正座をした後に起こる感覚を想像すると良いでしょう。
さらに、感覚が鈍くなる場合や、チクチクするような感覚の異常を表すことも。
また、手のしびれが起こる原因は「首の神経が影響しているもの」と「背骨から出ている末梢(まっしょう)神経が影響しているもの」に分けられます。
首の神経が影響している場合には、首を動かすことによってしびれや痛みなどの症状を増悪させるケースが多いです。
そして、末梢神経の圧迫が影響している場合には、圧迫箇所によって症状の出る部位が異なったり、手首の運動を行うことで症状が悪化したりすることもあります。
手がしびれる原因は?考えられる5つの病気
先ほど手のしびれの原因には、首の神経が影響しているものと末梢神経が影響しているものの2通りがあるとお伝えしました。
ここからは、主なしびれの原因として考えられる病気を5つ解説します。チェック方法も解説しているので、ご自身の症状と比べながら読み進めてください。
①首を反らすとしびれが出る頸椎症
頸椎症(けいついしょう)とは、加齢とともに首の背骨(頸椎)のクッションである椎間板が変形してきたり、靭帯の厚みが増したりすることで、神経が圧迫される疾患です2)。
そして頸椎症は、神経が圧迫される場所によって「頸椎症性脊髄症(せきずいしょう)」と「頸椎症性神経根症(しんけいこんしょう)」に分かれます。
それぞれの病気の神経圧迫箇所は以下の通りです3)4)。
- 頸椎症性脊髄症:首の背骨(頸椎)の中を通る神経(脊髄)が圧迫される
- 頸椎症性神経根症:首の背骨(頸椎)の中を通る神経(脊髄)から出る枝が圧迫される
さらに頚椎症によって首の神経が圧迫されることで、以下のような症状が現れます。
- 首を斜め後方に反らすと手のしびれが出現する(頸椎症性脊髄症は両側、頸椎症性神経根症は片側にしびれが出現)
- 手のしびれの他に首の痛みも伴う
- 排尿・排便の異常や歩きにくさを生じる(重度な頸椎症性脊髄症のみ)
首の神経が影響してしびれなどの症状が起きている場合は、かなり重度で日常生活に支障をきたす場合もあります。心当たりがある方は、医療機関で詳細な検査を受けましょう。
参考記事:頚椎症に効果があるストレッチ3選!しびれ・首の痛みを改善しよう!
②継続的に手をあげ続けるとしびれが強くなる胸郭出口症候群
胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群は、鎖骨の周りで腕の神経や動脈・静脈が圧迫されることで、腕から手にかけて痛みやしびれを生じるものです5)6)。
特に20〜50代の女性に多く、なで肩の方や重いものを運ぶ重労働者で発症しやすいと言われます7)。
以下のような症状がある場合は、胸郭出口症候群が原因となっている可能性があります。
- 長時間にわたり手をあげていると、痛みやしびれが悪化(逆に手をあげると楽になる場合もある)
- 鎖骨のあたりを指で圧迫すると痛みやしびれが悪化
- ボールを投げる、または投げた後に腕がしびれる
参考記事:鎖骨の下が痛いのは胸郭出口症候群なの?痛みの原因と簡単なセルフケア方法を紹介
参考記事:なで肩がひどい時の3つの対処法 〜肩こりもこれで改善!〜
③スマホを使っているとしびれが出る肘部管症候群
肘部管(ちゅうぶかん)症候群とは、腕の内側から薬指・中指までを走る尺骨神経(しゃっこつしんけい)が、肘(ひじ)で圧迫されたり引っ張られることにより、しびれや痛みを生じるものです。
肘を曲げた状態で作業やスポーツを繰り返し行い、尺骨神経が骨と擦り付けられると起こるケースが多いです。また、骨折や年齢とともに起こる肘の骨の変形が原因で、神経が圧迫されて症状が出現することも8)。
以下のような症状がある場合は、肘部管症候群が原因となっている可能性があります。
- 肘から下の腕の内側、薬指・小指にしびれや痛みがある
- 薬指・小指の細かい動きができない
- 薬指・小指がしっかりと伸びない、筋肉が痩せてきている
④腕枕をした後にしびれが出る橈骨神経麻痺
寝起きに「手の甲がしびれる」「手がだらんと下がり、力が入りにくい」という場合は、橈骨(とうこつ)神経麻痺かもしれません。腕枕などをして寝てしまい、腕から肘にかけて走っている神経(橈骨神経)が圧迫されることで、しびれにつながるのです。
以下のような症状がある場合は、橈骨神経麻痺が原因となっている可能性があります。
- 親指から薬指の半分(手の甲側)にしびれがある
- 手首を反らす動きができない
- 指の付け根が伸ばせない
⑤女性に多い手根管症候群
手根管(しゅこんかん)症候群では、腕から手にかけて走る神経(正中神経)が手の中で圧迫され、しびれや痛みを生じるものです。ほとんどの場合は原因不明で、妊娠や出産、更年期などで女性ホルモンの乱れが起こると発症しやすいと言われます。
以下のような症状がある場合は、手根管症候群が原因となっている可能性があります9)10)。
- 夜間や早朝、また手を使う時に症状が悪化する
- 親指〜中指にしびれがある
- 母指球の筋肉が痩せてきている
- 両手の甲を合わせて1分以内に症状が強くなる
- 親指と人差し指でOKサインをつくりにくい
参考記事:手根管症候群の痛みを自分で治すには?効果的なストレッチ方法を専門家が解説
手のしびれがある時の対処法・治し方
手にしびれがあると日常生活に支障をきたしてしまったり、長引いてしまうとそのまま放置しても良いのか気になるところ。次に、手のしびれがある時の対処法を紹介します。
時期や症状によって対処法も異なるので、ご自身の状況と比べながら対処していきましょう。
症状が重度の場合は自己判断せずに受診しよう
しびれは時に重大な病気を知らせるサインになります。
先ほど紹介した首や腕、手の神経が原因の場合は、放置して重症化すると手術が必要になる場合があります。さらには、脳卒中や糖尿病など他の病気が隠れている可能性も。
症状が重度の場合や、以下に当てはまる場合には、自己判断せず受診することを推奨します11)。
- 思い当たる節がない突然の手のしびれ
- 手に力が入りにくい
- 両手・両足にしびれを感じる
- 徐々にしびれが出現し、数週間〜数ヶ月に渡り様子を見るも改善しない
まずは安静第一
しびれが出てすぐの時期に首や腕、手首を無理に動かしてしまうと、症状を悪化させる危険性があります。
過去の報告によると、神経が一時的に圧迫されて症状が出た場合は、2週間程度で改善し始める方が80%以上と言われています12)。そのためしびれや痛みの程度が軽度の場合は、無理に動かさず安静にすることも治療の一つです。
やみくもにストレッチやマッサージなどの対処をしたくなってしまいますが、症状が落ち着いてからにしましょう。
筋肉が硬くなっている場合はストレッチ
症状が落ち着いてからはストレッチを行うことで、しびれを改善できる場合があります。とくに、筋肉が硬くなっていることで神経を圧迫したり、神経自体の伸びや滑りが悪くなることで症状が出ているケースには効果的です。
ストレッチの方法は、それぞれ原因となっている症状により異なります。下記に症状別のストレッチ方法について解説していますので、ぜひ確認しながら行いましょう。
【症状別】手のしびれを改善させる効果的なストレッチ
症状により原因が異なるため、効果的なストレッチの方法も異なります。ご自身の原因にあったストレッチを選択し、取り組んでいきましょう。
頚椎が原因の場合は背骨のストレッチを
胸の背骨(胸椎)が硬くなると、隣り合わせの関節である首の背骨(頸椎)にも負担が掛かります。
背骨をしなやかに動かし頸椎の負担を軽減することで、神経が圧迫されるリスクを軽減させましょう。
STEP1:仰向けとなり両手を真横へ広げましょう
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※肩が床から離れない様に注意しましょう!
胸郭出口症候群には肩甲骨周りの運動がオススメ
胸郭出口症候群の方の多くは、姿勢が悪く肩甲骨周りの筋肉が弱くなっています。その結果、肩甲骨の位置に乱れが生じ、神経を圧迫するのです。
よって、肩甲骨周りの筋肉(僧帽筋下部)を強化し、肩甲骨の位置を適切な場所に戻しましょう。
STEP1:うつ伏せとなり片手を伸ばしましょう
STEP2:伸ばした手を上方へ挙げましょう
STEP3:ゆっくり下ろしましょう
STEP4:繰り返し実施します
※肘が曲がらない様に注意しましょう!
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
肘部管症候群には腕のストレッチが効果的
肘部管症候群では、腕の前側にある筋肉が硬くなり、神経を圧迫することでしびれを伴います。
よって腕の前面にある筋肉をストレッチし、筋肉の柔軟性を改善することでしびれの軽減につながるのです。
STEP1:手を前方に伸ばし手の平を上に向けましょう
STEP2:反対側の手を添えます
STEP3:手を手前に引きましょう
STEP4:元の姿勢に戻りましょう
※手首に痛みがある場合は肘を曲げてもOK!
橈骨神経麻痺は手首の筋力強化を
橈骨神経麻痺の方は、しびれだけでなく手をそらす筋肉が弱くなる症状を併発していることがあります。
そのため以下では、落ちてしまった手首の筋力を戻すためのエクササイズを紹介します。
STEP1:水の入ったペットボトルを持ちましょう
STEP2:肘を伸ばし手の平を床に向けます
STEP3:反対の手で支えながら手首を反らせます
STEP4:ゆっくり時間をかけて下ろします
STEP5:2つの動きを繰り返し実施します
※痛みがある場合は肘を曲げて行うか、ペットボトルなしでもOK!
手根管症候群には手首の運動が効果的
手根管症候群は、手にあるトンネルのような筒状の中に通っている神経が何らかの原因により圧迫されることで起こります。
手根管の腱の滑走性(すべり)をよくすることで、しびれを改善していきましょう。
STEP1:指の第1・第2関節を曲げて戻します
STEP2:指の付け根の関節を曲げて戻します
STEP3:第1関節を伸ばし、その他の関節を曲げて戻しましょう
STEP4:全ての関節を曲げてグーをし、戻します
STEP5:4つの動きを繰り返し実施しましょう
日頃から意識したい!手のしびれを予防する方法
症状が出る原因は様々ですが、日頃から意識することで予防できるものもあります。日常生活の中でできる予防法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
正しい姿勢を意識する
姿勢の悪さは、骨の位置の乱れを引き起こします。骨の位置が崩れることで、神経を圧迫するケースも。とくに、なで肩や猫背になっている場合は、頚椎症や胸郭出口症候群などを引き起こしやすくなるため注意が必要です。
手のしびれを予防するために意識したい姿勢のポイントは以下の通りです。
- 鎖骨の外側が内側よりも下がっていない
- 肩が両鎖骨間のくぼみよりも下がっていない
- 横からみた時に肩と耳が一直線上にある
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
腕や手の使いすぎに注意する
「PCやスマホを長時間にわたり使用する」「重い荷物を持つ」など腕や手を使いすぎると、手の筋肉が硬くなったり、筋肉の付け根(腱)が腫れたりすることがあります。その結果、硬くなった筋肉や腫れた組織が神経を圧迫するのです。
よって腕や手の使いすぎは、しびれにつながるため注意が必要です。
腕や手を使いすぎていると感じたらこまめに休憩をとったり、重い荷物はリュックを使用したりするなどの工夫をすることで、負担を軽減させていきましょう。
ストレッチ習慣を身につける
腕の筋肉が硬くなると神経を圧迫したり、神経自体の伸びが悪くなったりするため、しびれにつながりやすくなります。先ほど紹介したストレッチはしびれの改善だけでなく、予防にも効果があるのでぜひ日頃から取り組んでみてください。
お風呂上がりなどの血流がよくなっているタイミングで行うと、より効果的に柔軟性が向上します。
まとめ
今回は、手のしびれの原因と解決方法について解説していきました。
手のしびれは、腕から手にかけて走っている神経が圧迫され、起こることがわかりましたね。
症状はさまざまですが、どのような原因であっても、しびれを放置すると重症化して手術になることがあります。そのため、しびれが続く場合は必ず受診をするようにしましょう。
さらに、それぞれの症状別に効果的なストレッチも紹介しました。ぜひ習慣化して取り組むことで、改善や再発の防止に努めましょう。
それでは本記事が、あなたの手のしびれを改善するのにお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
1)神経障害性ガイドライン
2)社団法人日本整形外科学会「頸椎症」
3)社団法人日本整形外科学会「頸椎症性神経根症」
4)社団法人日本整形外科学会「頸椎症性脊髄症」
5)Demondion X, Herbinet P, Van Sint Jan S, Boutry N, Chantelot C, Cotten A. Imaging assessment of thoracic outlet syndrome. Radiographics. 2006 Nov-Dec;26(6):1735-50.
6)社団法人日本整形外科学会「胸郭出口症候群」
7)Jones MR, Prabhakar A, Viswanath O, Urits I, Green JB, Kendrick JB, Brunk AJ, Eng MR, Orhurhu V, Cornett EM, Kaye AD. Thoracic Outlet Syndrome: A Comprehensive Review of Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment. Pain Ther. 2019 Jun;8(1):5-18.
8)社団法人日本整形外科学会「肘部管症候群」
9)社団法人日本整形外科学会「手根管症候群」
10)Middleton SD, Anakwe RE. Carpal tunnel syndrome. BMJ. 2014 Nov 6;349:g6437
11)福武 敏夫.神経症状の診かた・考えかた 第2版:General Neurology のすすめ. 医学書院,2017.
12)Han BR, Cho YJ, Yang JS, Kang SH, Choi HJ. Clinical features of wrist drop caused by compressive radial neuropathy and its anatomical considerations. J Korean Neurosurg Soc. 2014 Mar;55(3):148-51.