転んだあとにズキズキ痛む、ぶつけた場所がどんどん腫れてくる、力を入れると激痛が走る。「これ、骨折かも…」と思っても何科に行けばいいのか迷う方もいるのではないでしょうか?
骨折は、受診の遅れ=固定や治療の遅れにつながり、治りが長引いたり、ズレたままくっついて後悔する原因になることもあります。だからこそ、迷ったときにすぐ動ける「受診先のルール」を知っておくことが大切です。
本記事では、骨折が疑われるときの基本となる受診先を押さえたうえで、部位や症状によって例外的に他科が優先されるケース、受診前に確認したい骨折のサイン、そして迷ったときの受信の目安まで解説します。最後まで読むことで、あなたの状況で今どこに行くべきかがすぐ判断でき、受診の遅れによるリスクを避けられます。
骨折の可能性があるときは何科を受診すればいい?

「もしかして骨が折れたかも…?」そんなときに適切な診療科をすぐに選べるかどうかで、その後の回復スピードや後遺症のリスクが大きく変わります。
基本的には整形外科で対応可能ですが、顔や鼻、内臓が関係する場合など、例外的に他科が優先されるケースもあります。まずは「どんなときに整形外科を選ぶべきか」、その基本から整理していきましょう。
整形外科が基本!その理由とは

「骨が折れているかも」と感じたとき、まず頭に浮かぶのが整形外科ではないでしょうか。実際、多くの骨折は整形外科で適切に診断・治療することができます。
ここでは整形外科が骨折診療の“基本”とされる理由と、対応できる部位について詳しく解説します。
整形外科の専門領域と診断・治療内容
整形外科は、骨・関節・筋肉・神経など運動器の障害や外傷を専門とする診療科です。骨折や脱臼、捻挫、靭帯損傷などに対する初期診断から治療、リハビリまで一貫して対応します。
■骨折の診断:レントゲン・CT・MRIで確認
整形外科では、以下のような検査を用いて骨折の有無や程度を正確に評価します。
- X線(レントゲン)検査:最も基本的で迅速に骨の異常を発見できる
- CT検査:立体的な画像で複雑な部位(顔・骨盤など)の骨折も詳細に確認できる
- MRI検査:骨だけでなく、筋肉や靭帯、神経の損傷まで把握できる
このように、受傷の状況に応じた適切な画像検査を組み合わせて判断する力が整形外科には備わっています。
■治療の流れ:固定・整復・手術まで
骨折の種類や重症度に応じて、整形外科では以下のような治療が行われます。
- 固定:ギプスやシーネで骨を動かさず安定させる
- 整復:ずれた骨を元の位置に戻す処置(徒手整復や手術)
- 手術:プレートやボルトを使って骨を安定化させる外科的処置
また、骨が治るまでの期間には適切なリハビリ指導も行われ、回復を早めるサポートが受けられます。
整形外科で対応できる主な骨折部位
基本的に、全身の骨折の大多数は整形外科で対応可能です。以下に代表的な部位を紹介します。
■上肢(腕・手)
- 手首や前腕(橈骨・尺骨)の骨折
- 上腕骨(肩〜ひじ)
- 指の骨折や脱臼
これらは転倒やスポーツ時のケガでよく見られ、整形外科での対応が標準です。
■下肢(脚・足)
- 足首やすね(脛骨・腓骨)の骨折
- 大腿骨(もも)や股関節周辺の骨折
- 足の指やかかとの骨折
とくに高齢者では、転倒による大腿骨近位部骨折が非常に多く、早期手術が重要です。
■肋骨・背骨など体幹の骨折
- 肋骨骨折:咳やくしゃみ、打撲などで発生しやすい
- 胸椎・腰椎圧迫骨折:骨粗しょう症の高齢者に多い
肋骨骨折も整形外科で診断・対処できますが、呼吸器症状が強い場合は内科・外科の連携が必要になることもあります。
■顔・頭部に近い部位(一部は例外)
- 鼻骨や眼窩(目の周囲)、顎の骨などは整形外科の対応外になることがあります(次セクションで詳述)
外科・形成外科・口腔外科…例外的に受診するケースとは

骨折といえば整形外科、というイメージが強いですが、すべての部位を整形外科が対応するわけではありません。とくに顔まわりや頭部、内臓への損傷が疑われる場合は、他の診療科の方が専門性が高く、より適切な処置が受けられます。
ここでは、整形外科以外を選ぶべき代表的なケースをわかりやすく紹介します。
鼻や顔・眼窩などの骨折は形成外科や口腔外科へ
顔面の骨折は、その構造の複雑さや、見た目・機能への影響を考慮して、形成外科・口腔外科・耳鼻咽喉科などが担当することが一般的です。
■形成外科が対応する顔の骨折例
- 鼻骨骨折:転倒や打撲で鼻が曲がった、腫れて呼吸がしにくいなど
- 頬骨・眼窩底骨折:ボールや事故で顔面を強打し、頬が腫れる、視界が歪むといった症状がある
- 顔面多発骨折:交通事故や高所からの転落など、大きな衝撃が加わった場合
形成外科では、整容(見た目)と機能(呼吸や嚥下、視野など)の回復を両立させる高度な治療が行われます。
特に美観に関わる部分では、外見への配慮を含めた専門的な対応が必要です。
■口腔外科や耳鼻科が対応する例
- 上顎や下顎の骨折:噛みにくい、口が開けづらいといった症状
- 歯のぐらつきや脱落を伴う顎骨骨折
- 鼻骨骨折に伴う出血や鼻詰まり(耳鼻咽喉科)
これらは、口腔外科や耳鼻咽喉科が中心となって診療に当たることが多く、整形外科では対応が難しい部位です。
頭部・内臓損傷が疑われる場合は外科や救急外来も検討
転倒や事故で頭や背中、腹部を強打した場合、骨折だけでなく脳や内臓の損傷を伴う可能性があるため、整形外科単独ではなく外科や救急科の受診が必要になります。
■外科・脳神経外科の受診が必要な例
- 頭部を打って意識がもうろうとする、吐き気や嘔吐がある → 脳震盪や脳出血のリスク
- 胸部・背部の激しい打撲で呼吸が苦しい → 肋骨骨折に加えて肺挫傷の可能性
- 腹部の腫れ・内出血が見られる → 内臓損傷(肝臓、脾臓など)
これらは命に関わることもあるため、まずは救急外来(ER)での全身評価が優先されます。救急でCTや血液検査を行い、適切な診療科へ振り分けられることもあります。
専門医の連携体制が整っている病院を選ぶのも安心
顔・頭・内臓などの複雑な外傷がある場合は、複数の診療科が連携できる総合病院や大学病院を選ぶと安心です。
1つの診療科だけでなく、形成外科・外科・口腔外科・整形外科などが連携して診療にあたるため、より的確な治療が受けられます。
受診前にチェックしたい骨折の主な症状

「骨折かも」と感じても、見た目でははっきりとわからないこともあります。実際にはヒビ(不全骨折)や、腫れや痛みだけで骨折を疑うケースも多く、受診の判断が難しい場面も少なくありません。
ここでは、病院に行く前にセルフチェックしておきたい「骨折のサイン」や、「ヒビ」との違いについて解説します。
よくある骨折のサイン
骨折を疑うべき症状は、打撲や捻挫と似ている部分もありますが、いくつかの特徴的なサインがあります。
■強い痛みと腫れ
骨折した直後から鋭い痛みが走り、しばらくしてから患部が腫れてくるのは非常に典型的なサインです。特に、安静にしていてもズキズキと痛む、体重をかけられない、触れるだけで激痛がある場合は、打撲やねんざより重度の損傷が疑われます。
■変形や動かせない状態
- 関節の向きがおかしい
- 通常ではありえない角度に曲がっている
- まったく力が入らない、動かせない
これらは明らかな骨のズレや脱臼・骨折のサインであり、緊急の整復処置や固定が必要です。
■異音がした・骨がぐらつく感覚
骨折時には、「ポキッ」「バキッ」といった音が聞こえることがあります。また、骨折部位を軽く動かしたときに異常な動きやぐらつきがある場合、骨がつながっていない可能性が高いです。
■内出血・皮下出血が広がる
打撲と異なり、広範囲に青紫の内出血が出ている場合は、骨の損傷と周辺の血管損傷が同時に起きていることが考えられます。特に時間が経つにつれて内出血が広がる場合は注意が必要です。
ヒビ(不全骨折)との違いに注意
「ヒビ」=軽傷という印象を持っている方も多いですが、ヒビ(不全骨折)も立派な骨折の一種です。適切な治療をしなければ、完全な骨折へと進行したり、ずれた状態でくっついてしまうリスクがあります。
■ヒビの症状の特徴
- ズキズキするが我慢できるレベルの痛み
- 腫れはあるが、目立った変形はない
- ある程度は動かせるが、動かすと痛い
このように、ヒビは見た目ではわかりづらいのが特徴で、自己判断では「打撲」と混同されがちです。しかし、レントゲンを撮ってみるとしっかりヒビが入っていた、というケースは非常に多く見られます。
■ヒビでも放置は禁物
ヒビは自然に治る場合もありますが、それには正確な診断と、適切な固定期間が必要です。動かし続けたり、体重をかけてしまうと、ヒビが広がって完全骨折へ悪化するリスクがあります。
違和感程度でも、「少しおかしい」と思ったら早めの受診が安全です。
病院での診断・治療の流れ
「骨折かも」と思って病院に行くのは、少しハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、実際には初期診断から治療まで、ほとんどの流れがシンプルに構成されています。ここでは、病院で実際にどのような検査・診療が行われるのか、具体的なステップに沿って解説します。
参考:骨折を早く治す方法とは?骨折が治るしくみや治癒に必要な期間について解説
問診・触診・画像検査で骨の状態を正確に確認
まず最初に行われるのが、「問診」と「触診」です。受診者の話を聞きながら、痛みの部位・動きの有無・過去のけが歴・持病などを確認し、続けて医師が患部を直接触って状態をチェックします。
■問診・触診の主な内容
- いつ、どんなふうに痛めたか(転倒、衝突など)
- どの動きで痛みが強くなるか
- 過去にも同じ部位を痛めたことがあるか
- 腫れ、変形、熱感の有無
その後、必要に応じて画像検査に進みます。ここで骨折の有無や損傷の程度を可視化して診断を確定させます。
■主な検査方法
- レントゲン(X線):もっとも一般的で、骨のずれやヒビを確認できる
- CTスキャン:複雑な部位(骨盤・顔面など)や小さな骨の損傷を詳細に評価
- MRI:筋肉や靭帯、神経の損傷の有無を確認(骨折が見えにくい場合に併用)
とくにヒビや圧迫骨折など、目立った変形がない場合でも画像診断によって初めて骨折が確認されるケースは多くあります。
治療方法|固定・整復・手術の違いと役割
骨折と診断されたら、次は治療へと進みます。治療の選択は、骨折の種類、ずれの有無、患者の年齢や生活状況などによって異なります。
■1. 固定(保存療法)
ズレのない骨折やヒビの場合は、ギプスやシーネ(副木)を使って骨を動かさないように固定します。
これにより自然治癒を促し、数週間〜数ヶ月で骨がくっつくのを待ちます。
- 使用器具:ギプス、サポーター、テーピングなど
- 固定期間:部位によるが、おおよそ2〜8週間
- 目的:骨のズレを防ぎ、炎症を抑えながら回復を促進
■2. 整復(ずれた骨を元の位置に戻す処置)
骨がずれている場合は、手で元の位置に戻す「徒手整復」という処置が行われることがあります。
これは麻酔を用いて行うこともあり、処置後に再び固定を施します。
- 適応例:手首や指などの骨折で、軽度のずれがある場合
- 注意点:整復後も再びズレるリスクがあり、経過観察が重要
■3. 手術(骨を固定するための外科的治療)
重度の骨折や複雑な部位の場合は、金属のプレート・ボルト・釘などを用いて骨を内側から固定する手術が必要になります。
- 主な対象:大腿骨骨折、関節内骨折、多発骨折など
- 入院期間:約1〜2週間(術式や部位により異なる)
- 手術後:リハビリや通院によるフォローアップが必要
迷ったときの受診先の選び方と注意点
「骨折かもしれないけど、どの科に行けばいいか分からない」「近くに整形外科がないけど、どうすればいい?」そんなときに役立つのが、診療科の選び方の基本ルールと、地域医療の実情を踏まえた判断です。ここでは、受診先に迷ったときの対処法と、知っておくと安心なポイントを紹介します。
まずは整形外科、例外は部位や症状で判断
基本的なルールとして、骨折を疑う場合はまず整形外科へ、これが原則です。ただし、部位によっては例外的に他の診療科のほうが適切なこともあります。
■整形外科が第一選択となるケース
- 腕・足・手首・足首・指・肋骨など、四肢や体幹の骨折疑い
- 転倒やぶつけたあとに強い腫れや痛みが出ている
- 見た目で明らかな変形がある
これらは、整形外科でのレントゲン検査・固定処置・必要に応じた整復や手術対応が可能です。
■整形外科以外を考慮すべきケース
- 顔や鼻を強く打った場合:形成外科、口腔外科、耳鼻科へ
- 顎や口まわりに違和感がある場合:歯科口腔外科へ
- 頭や胸、腹部に打撲がある、意識がもうろうとする場合:外科または救急外来へ
「顔の骨折でも整形外科でいいのか?」「鼻の骨が折れた気がするが耳鼻科?」など、部位と症状をもとに最適な科を判断することが大切です。
また、近年は医療機関のWebサイトに「対応症状」や「診療可能な外傷部位」が掲載されていることも多いため、事前確認も有効です。
地域によって診療科の名称や対応範囲が異なることも
日本全国すべての地域に、十分な医療体制が整っているわけではありません。特に地方や離島では、整形外科の専門医が常勤していない医療機関も珍しくありません。
■診療科の「名称」に惑わされない
- 「外科」しかない病院でも、整形外科的な処置を行っている場合あり
- 「総合診療科」や「初期診療科」で一次対応し、必要に応じて紹介してもらえる体制もある
このため、「整形外科がなさそうだから行かない」ではなく、まず最寄りの医療機関に相談する姿勢が大切です。
■救急外来は判断・振り分けの窓口として有効
特に夜間や休日など、診療科が閉まっている時間帯は、迷わず救急外来(ER)を受診しましょう。骨折か打撲か、整形外科か他科か、自分で判断するのは難しいため、専門的なトリアージ(振り分け)を受けることが重要です。
まとめ
「これって骨折かも?」と感じたら、まずは整形外科への受診を検討しましょう。顔や頭、内臓まわりの外傷は他科が適切な場合もあるため、部位と症状をもとに判断することが大切です。 迷ったときは総合病院や救急外来に相談を。
痛みが軽くても、骨折やヒビを見逃すと後遺症や治癒遅れにつながるリスクがあります。大切なのは、「ためらわずに受診すること」です。早期の対応が回復への近道です。
【参考文献】
1)Kazuya Nishino MD,Koji Tamai MD PhD:Heated Tobacco Products Impair Cell Viability, Osteoblastic Differentiation, and Bone Fracture-Healing,The Journal of Bone and Joint Surgery103(21),2021
2)Klotzbuecher CM, Ross PD, Landsman PB, Abbott TA 3rd, Berger M. Patients with prior fractures have an increased risk of future fractures: a summary of the literature and statistical synthesis. J Bone Miner Res. 2000 Apr;15(4):721-39. doi: 10.1359/jbmr.2000.15.4.721. PMID: 10780864.
3)日本整形外科学会:骨折
