咳が続いたあと、肋骨やあばらのあたりがズキズキ痛んでくると、「咳しすぎて筋肉痛になっただけかな」と思って様子を見る方は多いのではないでしょうか。確かに、激しい咳は肋間筋に大きな負担をかけるため、筋肉痛のような痛みが出ることは珍しくありません。
本記事では、咳のしすぎで肋骨が痛くなる原因を整理したうえで、筋肉痛と骨折の見分け方、病院を受診すべきサイン、そして自宅でできる正しい対処法と予防ケアまでを専門的な視点でわかりやすく解説します。
最後まで読むことで、「この痛みは様子見でいいのか」「今すぐ受診すべきか」が判断でき、不要な悪化を防ぐ行動が取れるようになります。
咳で肋骨が痛くなるのはよくあること?

激しい咳が続いたあとに肋骨の周辺が痛くなるのは、実は珍しいことではありません。咳をする際には、肋間筋と呼ばれる筋肉に強い圧力がかかり、過度な負荷が筋肉や骨にダメージを与えることがあります。
とくに年齢を重ねた方や骨密度が低下している方では、軽い咳でも痛みが出ることがあり、注意が必要です。痛みが続く場合は軽視せず、正しい見極めと対応が大切です。
筋肉痛と骨折の違いは?セルフチェックポイント
咳をした後に肋骨が痛むと、「筋肉痛だろう」と思い込んでしまいがちですが、実は肋骨の疲労骨折やひびであることも。とくに痛みが長引く、深呼吸で鋭く痛むといった症状は見逃せません。
本章では、咳のしすぎによって起きる肋骨まわりの痛みについて、筋肉痛との違いや見分けるポイントをわかりやすく解説します。セルフチェックの視点から、受診すべきかどうかの判断材料としても役立ちます。
参考記事:肋骨のひび(不全骨折)を早く治す方法はある?安静期間における食べ物や寝方の工夫を解説
① 筋肉痛の特徴と痛みの部位
咳をしすぎたあとに感じる筋肉痛は、主に「肋間筋」と呼ばれる肋骨と肋骨の間にある筋肉に起こります。痛みはズーンと重く、押すとやや響くような感覚で、呼吸や軽い動作ではそれほど鋭くは感じません。
一般的に筋肉痛は、咳が落ち着いたあと2〜3日以内に徐々に改善する傾向があり、深呼吸やくしゃみで「なんとなく痛い」程度にとどまります。広範囲に鈍く痛む、押さえるとじんわり痛むという場合は、筋肉疲労の可能性が高いでしょう。
ただし、痛みが1週間以上続く、動かしていないのに痛む、安静時にもズキッとくる場合は、筋肉痛ではない可能性があります。次の項では、骨折との違いを詳しく見ていきましょう。

② 疲労骨折のサインと見分け方
咳による「肋骨の疲労骨折」は、特に中高年層や骨密度が低下している人に起こりやすく、気づかないうちに発症していることも少なくありません。肋骨の骨折は、転倒や強打がなくても、繰り返される内圧(=咳)によって生じるケースがあり、「咳だけで骨折するの?」と驚く方も多いです。
疲労骨折の特徴は、「一点に鋭く突き刺すような痛み」があることです。深呼吸や咳で強く痛みが走る、押すとビリッと響く、笑ったり体をひねったりするだけで痛い…といった症状がある場合は要注意です。
また、患部に腫れや熱感がある、寝返りを打つたびに痛みで目が覚める、常に同じ部位が痛むなどの状態も、筋肉痛では説明がつかない可能性があります。
このような症状がある場合は、「無理をすれば治るだろう」と考えず、早めに整形外科でレントゲンやCTなどの画像検査を受けることが大切です。特に、3日以上痛みが増していくようであれば、筋肉ではなく骨の損傷を疑いましょう。
③ 危険な痛みの見極めポイント
肋骨の痛みには「放置していい痛み」と「すぐに医師の判断を仰ぐべき痛み」があります。特に注意したいのは、以下のような症状が出ている場合です。
- 咳や深呼吸で毎回鋭い痛みが走る
- 息を吸うたびに肋骨がきしむ感覚がある
- 夜間も痛みが強く、眠れない
- 胸部の左右差があり、一方だけが強く痛む
- 日を追うごとに痛みが悪化している
こうしたケースでは、骨折や内臓への影響をともなっている可能性があるため、自己判断せず、なるべく早く医療機関を受診してください。「ただの筋肉痛だと思っていた」が、実は骨にひびが入っていたという事例も珍しくありません。
病院に行くべきサインと受診先の判断

肋骨の痛みがあるとき、「病院に行くべきか?」「何科にかかればいいのか?」と悩む方は少なくありません。特に痛みが長引いたり、呼吸が苦しい、咳が止まらないといった症状を伴う場合には、自己判断せず医師の診察が必要です。
この章では、咳による肋骨の痛みで受診すべき具体的なサインと、整形外科・呼吸器内科など症状に合った診療科の選び方について解説します。
① 放置NGなサインと重症化リスク
咳による肋骨の痛みは軽く見られがちですが、以下のような症状がある場合は、放置すると状態が悪化するリスクがあります。
- 息を吸うだけで肋骨に鋭い痛みが走る
- 咳が続いて胸部が圧迫されるような感覚がある
- 1週間以上痛みが続き、悪化傾向にある
- 患部に腫れや熱感がある
- 寝返りや起き上がりで痛みが悪化する
これらは、肋骨の疲労骨折や炎症、または胸膜や肺にまで影響が及んでいる可能性があります。とくに中高年では骨がもろくなっているため、咳の衝撃だけで骨折することも。症状を軽視せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
② 呼吸器内科 or 整形外科?判断基準を解説
咳による肋骨の痛みで病院を受診する際は、「呼吸器内科」と「整形外科」のどちらを選ぶべきか悩むこともあります。それぞれの判断基準は以下の通りです。
- 咳や痰、発熱、息苦しさがある場合
呼吸器内科を選択しましょう。気管支炎、肺炎、感染症などの可能性を調べます。 - 痛みの場所が明確で、動作や圧迫で悪化する場合
整形外科を選択しましょう。肋骨の骨折や筋肉・関節の障害を画像検査で確認できます。
どちらに行くか迷う場合は、まず内科で診察を受け、必要に応じて整形外科に紹介される流れでも問題ありません。呼吸器の問題と骨の問題が同時に起きていることもあるため、状況に応じた柔軟な受診判断が重要です。
自宅でできる正しい対処法と予防ケア

病院に行くほどではないけれど、肋骨の痛みが気になる…。そんなときは、自宅でできる対処法を取り入れて症状を緩和することが大切です。
また、咳による痛みを繰り返さないためには、日頃のケアや生活環境の見直しも重要になります。この章では、痛みを和らげるための安静姿勢、呼吸の工夫、市販薬の活用、そして再発を防ぐための生活習慣について、実践的にわかりやすく紹介します。
① 痛みを和らげる安静姿勢と呼吸法
肋骨が痛むときは、できるだけ患部に負担をかけず安静にすることが最優先です。寝るときは横向きや、背中にクッションを当てて少し上体を起こした姿勢が楽なことが多く、呼吸も浅くなりにくくなります。
また、痛みを我慢して浅い呼吸を続けると、肺の換気が不十分になり、肺炎などのリスクが高まることもあるため注意が必要です。意識的に鼻から息を吸い、口をすぼめてゆっくり吐き出す「口すぼめ呼吸」を取り入れると、負担を軽減しながら酸素をしっかり取り込めます。
安静と正しい呼吸を両立させることが、痛みの緩和と合併症予防につながります。
② 市販薬の活用方法と注意点
肋骨の痛みがつらいときは、市販の鎮痛薬を上手に活用することで日常生活の負担を軽減できます。代表的なのはロキソニンやカロナールなどの解熱鎮痛剤です。
ロキソニンは即効性が高く、炎症を抑える効果がありますが、胃への負担が大きいため、空腹時の服用は避け、必要であれば胃薬と併用しましょう。一方、カロナールは胃にやさしく、副作用も比較的少ないため高齢者や胃腸が弱い方に向いています。
ただし、市販薬は一時的な症状の緩和を目的としたもので、根本的な治療にはなりません。数日使用しても痛みが引かない場合は、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。また、妊娠中・授乳中の方や既往歴のある方は、自己判断での服用を避け、薬剤師や医師に相談するのが安全です。
③ 予防に効く生活習慣の工夫
肋骨の痛みを繰り返さないためには、咳を起こしにくい環境づくりと、身体の強化が欠かせません。まず、部屋の湿度は50~60%に保ち、空気の乾燥を防ぐことで、喉への刺激を減らし、咳の頻度を抑えられます。
また、呼吸器の粘膜を守るために、マスクの着用やこまめな水分補給も効果的です。加えて、骨密度を保つためのカルシウム・ビタミンDの摂取や、日光を浴びる習慣を意識しましょう。
軽いストレッチや呼吸筋を鍛えるトレーニングも、肋間筋の柔軟性を高め、咳による負荷に強くなります。生活習慣の小さな工夫が、再発の予防と身体の防御力アップにつながります。
まとめ
咳のしすぎによる肋骨の痛みは、単なる筋肉痛だけでなく、疲労骨折や炎症が隠れていることもあります。見極めを誤ると悪化や長期化のリスクがあるため、「おかしいな」と感じた時点で正しく対処することが大切です。
セルフチェックや自宅ケアを取り入れつつ、必要に応じて医療機関を受診しましょう。早期対応が回復を早め、再発の予防にもつながります。無理をせず、自分の体の声に耳を傾けましょう。
【参考文献】
1)日本骨折治療学会:肋骨骨折
2)日本整形外科学会:「骨折」
3)中谷 晃,上村 史朗,他:咳嗽により肋骨骨折・気胸・皮下気腫を併発した慢性関節リウマチの1症例,奈良医学雑誌,40(4):481-485,1989
