昨今、スマートフォンの利用時間の増加などにより、首へ負担がかかってしまい痛みに悩む方が増えています。
中でも「首の付け根が痛い」というケースが多く、注意が必要です。首の付け根の痛みを放置すると、痛みが悪化したり広範囲に及んだりして、仕事やプライベートに支障が出てしまいかねません。
そこで当記事では、首の付け根が痛い場合に考えられる症状や痛む原因、効果のあるセルフケア・エクササイズを紹介します。
最後まで目を通すことで、首の付け根が痛む原因がわかり、適切に対処できるようになるでしょう。
【筋肉・神経】首の付け根が痛い時に考えられる症状名は?
一般的に「首の付け根」とは、首の後ろ側で両肩と交差する箇所を指します。
特に首の付け根から後頭部は筋肉が凝りやすく「押すと痛い」というケースも少なくありません。では首の付け根が痛い時、どういった症状が現れているのでしょうか。
該当する可能性の高い3つの症状を解説します。
首こり(頚性神経筋症候群)
まず考えられるのが「首こり」という症状です。
文字通り、首を支える筋肉の凝り(こり)が特徴で、肩こりや頭痛を伴う場合も少なくありません。昨今のスマートフォンの普及で下を向く時間が増えたことにより、首こりに悩む方が急増しています。こういった背景から、首こりは「スマホ首」とも呼ばれます。
首の付け根が痛い場合、まずは首こりの可能性を考えてみましょう。
なお、首の付け根にゴリゴリした塊がある場合、首コリの原因になりえるので注意してください。
参考記事:つらい首こりの原因と解消法!おすすめストレッチを専門家が解説!
参考記事:首の付け根のゴリゴリの正体は?首こり・肩こりの原因となるゴリゴリの解消法を解説!
頚椎症
首の付け根が痛む場合、首の骨が変形して神経などを圧迫する「頚椎症(けいついしょう)」である可能性も考えられます。
頚椎症は40代以降に発症するケースが多いですが、スマートフォンの普及で頚椎への負担が増したことで、20代で発症する方が増えています。頚椎症が進むと、首の痛みはもちろん腕のしびれや筋力低下が見られる例も少なくありません。
ただ頚椎症は自然治癒が可能な症状で、日常生活での工夫によって予防や再発防止が可能です。
参考記事:頚椎症に効果があるストレッチ3選!しびれ・首の痛みを改善しよう!
寝違え(急性疼痛性頸部拘縮)
その他には首の筋肉の炎症、いわゆる「寝違え」によって痛む場合もあります。首の付け根の痛みとともに、首を回すのが難しい場合は寝違えた可能性も考えましょう。
寝違えた場合は無理に首を動かそうとせず、氷などで冷やしながら安静にすることが大事です。多くの場合、3日ほどで炎症が収まり痛みは改善されます。
参考記事:【首を寝違えたような痛み】突然起きる痛みの原因と対処法を解説!
参考記事:寝違えに湿布は効果ある?首の痛みを早く治すための対処法や予防法も解説
【原因】なぜ首の付け根が痛むの?
なぜ首の付け根が痛む症状が発生するのでしょうか?痛みが生じる原因が分からなければ、注意のしようがありません。
ここから、首の付け根が痛む原因を紹介します。ご自身に思い当たる部分がないかチェックしてみてください。
姿勢が悪く首に負担がかかっている
普段の姿勢の悪さが、首の付け根の痛みに繋がります。「猫背」や「反り腰」「ストレートネック(首が真っすぐになってしまう症状)」になることで、本来の骨格の形が崩れ、首に余計な負荷(重力)がかかるからです。
頭の重さは4キロ〜7キロほどですので、支えようとすれば首の筋肉が緊張して付け根が痛むのも無理はありません。
また、肩の左側と右側で高さが違うことも首への負担が増し、痛みを生む原因になりえます。
姿勢が悪くなる要因はスマートフォンのほかに、生まれつきの骨格や本人の癖なども関係してきます。したがって直そうとした場合、ある程度の時間がかかることを認識しておきましょう。
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説
運動不足
運動不足も首の付け根の痛みに関係します。
運動量が少ないと全身の血液の流れが悪くなりがち。すると筋肉に十分な栄養が巡らず、老廃物が排出されにくくなります。そうすることで首の筋肉のコリや疲れが取れず、痛みが悪化してしまうのです。
忙しいからという理由で運動をせずにいると、首の痛みはなかなか改善しないでしょう。
生活習慣の乱れ(ストレス)
生活習慣の乱れも、首の付け根の痛みと関連しています。
もし食生活が乱れたり睡眠時間が短すぎたりすると、身体の代謝が進まず疲労物質が溜まり続けるでしょう。結果的に首の筋肉が緊張して痛みが増します。
仕事や育児などに追われると、生活習慣が乱れるのも無理はありません。ですが「食生活」「睡眠」は削らないように十分注意しましょう。
その他関連する可能性が考えられる原因
他には、生理時に首の痛みが発生することもありますし、前日に力仕事を行ったりコンタクトスポーツを行ったりした際も、首の付け根が痛む可能性が考えられます。
症状とまではいかなくとも、様々な要因で首の付け根が痛くなるケースはあるので、あらかじめ把握しておきましょう。
首の付け根の痛みはどれくらいで治るの?
首の付け根の痛みが改善するまでの期間は、症状や原因によって異なります。
寝違えのような筋肉の炎症であれば、3日ほどで改善するケースが考えられます。筋肉が損傷している場合も、2週間以内に改善する場合が多いです。
一方、骨や神経が原因で痛みが出ている場合は、改善までに数ヶ月かかるケースも少なくありません。また、たとえ痛みが一旦改善しても、首に負担がかかることによって痛みが再発する可能性もあります。
したがって、首の付け根に対して処置を行うだけでなく、生活習慣から見直す必要があるでしょう。
首の付け根の痛みを放置するとどうなる?
「首の付け根が痛いけど自然と治るはず」と、そのまま放置するべきではありません。痛みが増したり痛む範囲が広がったり、別の痛みが現れたりするからです。
首の付け根の痛みをそのまま放置すると、頭痛が発生する可能性があります。また、痛みが肩や腰まで波及すると、肩こりや腰痛に繋がりかねません。
加えて、「眠れない」「のぼせ」「息切れ」など自律神経に関係する症状が出ることがあります。
もし数日間に渡って首の付け根が痛む場合は、医療機関を受診するか、生活習慣を見直してみましょう。
参考記事:頭痛を早く治す方法とは?即効性が高いツボや対処法・おすすめの食べ物を紹介
首の付け根の痛みに効くセルフケア・エクササイズ
首の付け根の痛みを改善するために、生活習慣の見直しやセルフケアを行うことが大切です。継続することで首全体が軽くなり、生活がより快適になるでしょう。
以下より、首の付け根の痛みに効くセルフケア・ストレッチをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
ストレッチ
定期的にストレッチを行って首に近い筋肉を伸ばすことで、痛みの改善に効果があります。ストレッチを行う際は、呼吸を止めないようにゆっくり筋肉を伸ばすことを心がけましょう。
ではここから、おすすめのストレッチを2つ紹介します。
首の後面のストレッチ
1つ目は、首の後ろに付く筋肉のストレッチです。
このストレッチを行うことによって、首の付け根から後頭部に付く筋肉の緊張が和らぎます。
椅子に座った状態でも実践しやすいので、毎日継続してみましょう。
胸周りのストレッチ
2つ目は、胸の周りの筋肉のストレッチです。
このストレッチを行うことで胸周りの筋肉が緩むので、首の痛みの原因になる猫背姿勢の改善を期待できます。
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
姿勢を良くする
普段から良い姿勢を意識することで、首への負担を減らせます。良い姿勢とは「本来の骨格の形に近い姿勢」です。
身体を横から見て、耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線に繋がっているかチェックしてみましょう。
姿勢を良くするには意識が必要ですが、まずは普段から顎を後ろに引くことを意識してみてください。これだけで良い姿勢を保ちやすくなります。
とくに座ってのパソコン作業時やスマートフォン使用時に姿勢が崩れやすく、首への負担が増えるので注意しましょう。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
定期的な運動
定期的な運動も、首の痛み改善には大切です。運動を行うことで全身の血流が良くなり、痛みも早く改善されます。
運動といっても、激しいメニューを行う必要はありません。軽いランニングや肩の筋力トレーニングで十分なので、時間を見つけて続けてみてください。
また、体内の水分やリンパの循環を良くするために、運動中は十分にミネラルウォーターを補給しましょう。
そして運動の前後に、先ほど紹介したようなストレッチを入れることがおすすめです。
寝具を見直す
夜、就寝時に使用する「寝具」を見直すことも効果的です。
寝具が合っていなければ眠りの質が低下しかねません。また、首の緊張が生まれやすいので痛みも増してしまうでしょう。
「枕の高さは合っているか」「敷布団は寝返りしやすい硬さか」など、毎日使うものだからこそ改めてチェックしてみてください。
参考記事:首が痛い時の楽な寝方とは?姿勢別に負担の掛からない方法をポイント解説
ツボを押す・セルフマッサージを行う
人体には無数の「ツボ」が点在しており、中には首の付け根の痛みに効くツボも存在します。ツボを狙ってセルフマッサージすれば、痛みが幾分か和らぐでしょう。
おすすめのツボを2つご紹介します。
1つ目は「大椎(だいつい)」というツボです。ちょうど首の付け根に位置します。
ご自身で揉みほぐすのはもちろん、温かいシャワーを当てることも効果的です。首の付け根が温かくなりほぐれていくことが実感できるでしょう。
2つ目は「肩井(けんせい)」というツボです。首の付け根から肩の外側のラインの中間地点に存在します。
肩こりに効くツボとして有名ですが、首の付け根の痛みにも効果が期待できます。
参考記事:【辛い】首こりに効果のあるツボはどこ?肩コリや目の疲れにも効くツボを紹介
【要注意】首の付け根の痛みに重篤な病気が関連しているサイン
ここまで、筋肉や骨が原因で起こる首の付け根の痛みを解説してきました。
数週間ほど時間を要しますが、生活習慣を見直したり定期的にストレッチや運動を行ったりすることで改善が期待できます。
しかし、中には首の付け根の痛みに重篤な病気が隠れている場合もあります。
以下の病気でも、首の付け根に痛みが現れる可能性があるので注意してください。
- くも膜下出血の前兆
- 椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)
- 頚椎偽痛風(けいついぎつうふう)
- 後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう:OPLL)
- 頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア
もし上記の病気が原因で首の付け根に痛みが出ている場合、姿勢を改善したりストレッチを続けたりするだけでは改善しない場合が多いです。
気になる場合はすぐに整形外科を受診するべき
首の付け根の痛み方が急激であったり、「発熱」「胸の締め付け」「めまい」を伴ったりする場合は、病気が隠れている可能性が考えられるので、すぐに病院を受診しましょう。
首の痛みなので、まずは整形外科への受診をおすすめします。
病気を治すには「早期発見・早期治療」が大切です。首の痛みだからと放置せず、少しでも違和感を覚えたら早めに医療機関に受診しましょう。
まとめ
首の付け根が痛い場合、まず首こりや頚椎症、寝違えといった症状が出ている可能性が考えられます。
首の付け根が痛くなる原因が、生活習慣に隠れているケースが少なくありません。
普段から姿勢が崩れていないか、忙しさのあまり運動不足に陥っていないか、生活習慣が乱れていないか、あらためてチェックしてみましょう。
そのうえで首の付け根の痛みを改善するために「姿勢を正す」「ストレッチや運動を続ける」「寝具を見直す」ことが大切です。最初は面倒に思えたとしても、ぜひ継続していきましょう。
首の痛みはもちろん、身体全体の健康にとってメリットが多いです。
ただし、首の付け根の痛みに重篤な病気が隠れている可能性もあります。
少しでも違和感があったり、時間が経っても痛みがまったく減らなかったりする場合は、病院への受診を忘れないように注意してください。
それでは当記事を参考に、首の付け根の痛みを改善しましょう。
【参考文献】
1)公益社団法人 日本整形外科学会:「頚椎症性神経根症」
2)一般社団法人 日本脊髄外科学会:頚椎症・頸椎症性脊髄症
3)厚生労働省:自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)
4)東海大学医学部脳神経外科:くも膜下出血
5)千葉大学:頚椎環軸関節偽痛風 (Crowned dens syndrome・CDS)84例の検討