頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは?症状チェックや対処法も解説

首の痛みや指の痺れ(しびれ)を感じる際は「頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア」が疑われます

ヘルニアを進行させると、痛みやしびれが強まったり、手に力が入りにくくなったりして日常生活に支障が出てくるかもしれません。状態を悪化させないよう「やってはいけないこと」を把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、頚椎椎間板ヘルニアの方がやってはいけない、避けるべき行動を詳しく解説しています。また、症状の改善が期待できる対処法やストレッチも紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

頚椎椎間板ヘルニアとは?【メカニズム・原因】

椎間板ヘルニアを説明した画像

椎間板の変性により、神経が圧迫されて起こる病気が「頚椎椎間板ヘルニア」です。

椎間板とは、背骨を構成する椎骨(ついこつ)と椎骨の間にある組織のことで、衝撃を和らげるクッションのような役割をしています。

なんらかの原因で椎間板に負担が積み重なり、亀裂が生じる場合があります。そして、ゼラチン状の髄核(ずいかく)と呼ばれる組織が後方に飛び出すことで、周辺の神経を圧迫、刺激してしまうのです。

原因

頚椎ヘルニアのおもな原因として「加齢」が考えられています。年齢を重ねるごとに椎間板の水分量が減少し、弾力性が低下することで亀裂が入りやすくなるのです。

また、その他の原因には「不良姿勢」「スポーツによる外力」も挙げられます。

とくに背中を丸めて、顔や顎を前に突き出したような姿勢(ストレートネック)は、頚椎にかかる負担を強めると言われています。したがって、頚椎ヘルニアの方は姿勢に気をつけることが大切です。

参考記事:【首の片側が痛い】右側 or 左側のみ痛い場合の原因と3つの対処法をわかりやすく解説!
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説

頚椎ヘルニアの症状チェック方法

頚椎ヘルニアでは、神経障害のレベルによって、以下のような症状がみられる場合があります。

  • 軽度:首の痛み、肩こり、頭痛
  • 中等度:手のしびれや筋力低下
  • 重度:足のしびれや筋力低下、手の細かい作業ができない、排尿・排便がうまくできない

なお頚椎ヘルニアは、頭を斜め後方に倒すと症状が悪化しやすいです。

また、神経が圧迫される箇所により、痛みやしびれが出る箇所が変わってきます。頚椎ヘルニアが起こりやすい「4番-5番」「5番-6番」「6番-7番」の症状は以下の通りです。

狭窄箇所を説明した画像

※たとえば「4番-5番」の場合、上から4番目の頚椎と5番目の頚椎の間に起きた椎間板ヘルニアを指します。

  • 4番-5番:鎖骨下から上腕の外側あたりにかけての症状
  • 5番-6番:前腕(肘と手首の間)外側から親指、人差し指にかけての症状
  • 6番-7番:中指あたりの症状

しかし、神経圧迫による症状には個人差があります。また、複数の神経が圧迫されて症状が複雑になっているケースもあるため、正確な状態を知るには医師の検査が必要です。

参考記事:ヘルニアの症状をチェックしたい! 椎間板ヘルニアの特徴や対処法を専門家が解説

【危険】頚椎ヘルニアでやってはいけない6つのこと

それでは、本題でもある「頚椎ヘルニアの方がやってはいけない注意点」を詳しくみていきましょう。

以下のことを無意識にやっていないか、日常生活を一度振り返ってみてください。

1.首を前に出した姿勢をとる

ストレートネックについて説明した画像

繰り返しになりますが、「猫背」や「ストレートネック」などの不良姿勢は、椎間板への負担を増加させてしまいます。

日常生活においては、スマホの操作やデスクワークで前のめりの姿勢をとりがちなため、要注意です。

また、長時間同じ姿勢が続くと、首への負担を強めてしまいます。タイマーなどを活用しながら、定期的な休憩を設けるように気をつけましょう。

参考記事:ストレートネック(スマホ首)の治し方〜寝ながら簡単ストレッチとともに解説〜

2.不適切な姿勢での睡眠

起きているときだけでなく、睡眠時の姿勢も重要です。

とくに「高すぎる、低すぎる枕」は睡眠時に首の位置が安定しないため、椎間板へのストレスを強めてしまいます。また、「やわらかすぎるマットレス」も、寝返りがスムーズに打てずに同じ姿勢が続くため、首にはよくありません。

3.首を大きく動かす運動を行う

ヘルニアの症状が出ている際は、首を大きく動かすような運動は控えてください。頚椎への負荷からヘルニアを悪化させてしまうかもしれません。

また、首へ強い衝撃がかかりますので、コンタクトスポーツ転倒のリスクが高いスポーツもなるべく避けたほうが良いでしょう。

ただし、適度な運動であれば、ヘルニアの改善に有効な場合があります。医師にも相談しながら、ストレッチや筋力トレーニングなどを取り入れてみてください。

4.むやみに首のマッサージを行う

マッサージに慣れていない方が首を刺激すると、痛みやしびれの悪化につながるおそれがあります。

筋肉の緊張は、ヘルニアの主要な原因ではありません。よって、首のマッサージが症状の改善につながるとは限らないため、とくに素人の方は首をむやみに触らないように気をつけましょう。

5.重たいものをもつ

重たいものをもつことで、首に大きな負担をかけてしまいます。

とくに、前屈みで重量物を持ち運ぼうとすると椎間板に強い圧迫力が加わるため、注意が必要です。

6.タバコを吸う

タバコに含まれる「ニコチン」の作用で全身の血管が収縮しやすくなります。それにより、椎間板への血流量が減少し、変性や損傷を進行させる可能性があります。

また、タバコを吸うことで、椎間板の主成分であるコラーゲンも減少しやすくなります。弾力性が低下することで、ヘルニアの状態が悪化してしまうかもしれません。

したがって、ヘルニアの方は、できるだけ禁煙することが推奨されています。

【すぐ実践】頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法

ここからは、頚椎ヘルニアの症状を緩和する対処法をご紹介します。

何かしら対策をしない限り、状態が悪化していく可能性が高いです。「いずれ良くなるだろう」とそのままにせず、早急に以下のようなケアを行っていきましょう。

病院を受診する

頚椎椎間板ヘルニアが疑われる際は、早めに医療機関に行って精密な検査を受けてください。ヘルニアの状態を正確に把握することで、症状にあわせた適切な治療やセルフケアを実施できます。

なお、腕や足の筋力低下が続いたり、歩行障害、膀胱直腸障害(排尿、排便が自分の意思でコントロールできない)がみられたりする場合は手術が必要となるかもしれません。

重症化するおそれもありますので、ご自身の判断で放置しないように気をつけましょう。

参考記事:左首から肩にかけての痛みの原因は?何科を受診?対処法と3つのおすすめストレッチを解説!

痛みが強い時期は安静にする

痛みやしびれなどが強く出ている時期は、なるべく首を安静に保ちましょう。無理に動くことで、ヘルニアが進行するかもしれません。

ただし、安静にしすぎると、首まわりの柔軟性や筋力を低下させて症状を長引かせる可能性があります。

状態にもよりますが、安静にするのは3日までを目安としてください。そして、症状が落ち着いたら、できるだけ通常通り首を動かすことが推奨されています。

普段の姿勢を意識する

猫背やストレートネックなど、悪い姿勢によって椎間板にかかる圧迫力を強めてしまいます。

よってヘルニアの改善を図るには、首や頭部が前に出ないように軽く胸を張り、背中をまっすぐ伸ばした姿勢を意識することが大切です。

横からみると「耳の穴、肩、股関節」が直線上に並ぶ姿勢が理想と言われています。姿勢が悪くなっていないか、鏡などでこまめにチェックしてみるのも良いでしょう。

良い姿勢・悪い姿勢を説明した画像

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

寝方に気をつける

一般的に「うつ伏せ」「手枕で横向きになる」などの寝方は首が本来の位置からねじれるため、椎間板への負担を増やす可能性があります。

睡眠中の姿勢になりますので、意識的に制御するのは難しいかもしれません。しかし、枕の高さを見直すことで、首に負担のかからない楽な睡眠姿勢を取りやすくなります。

ご自身の体にあった枕を選ぶためには、以下の2点に気をつけてみてください。

  • 仰向けになった際、真上よりも少し目線が下を向く高さ
  • 横向きになった際、頭が横に傾かずに背骨がまっすぐ保たれる高さ

また、頭や体が沈むと寝返りが打ちづらくなるため、適度な反発力のある枕やマットレスを使用するようにしましょう。

できる範囲でストレッチをする

ヘルニアの症状を和らげるには、姿勢(猫背)の改善が必要だとお伝えしました。しかし、骨格を支える筋肉が硬い状態では、正しい姿勢をキープするのが難しくなります。

そこで、猫背を改善して首にかかる負担を緩和するためにも、胸や背中まわりのストレッチを行いましょう。

このあと姿勢改善に効果的なストレッチを紹介していますので、ぜひご参照ください。

姿勢を支える筋力をつける

正しい姿勢を維持するには、筋力も必要です。とくに猫背を改善するには、首の前側や背中の筋力が重要となります。

簡単にできるトレーニング方法をこのあと紹介しますので、ぜひできる範囲で日常に取り入れていきましょう。

頚椎ヘルニアに効果的なストレッチ・筋トレ3選

それでは、頚椎ヘルニアの症状改善が期待できるストレッチや筋トレ方法をみていきましょう。

大胸筋ストレッチ

胸の前面に位置する「大胸筋(だいきょうきん)」を伸ばすストレッチです。大胸筋がやわらかくなると胸を開きやすくなるため、猫背の改善につながります。

大胸筋ストレッチ
STEP1:足を前方へ出し、片腕を壁に当てましょう
STEP2:体重を前方の足へ乗せましょう
STEP3:姿勢を元に戻しましょう
STEP4:胸の前が伸びた状態を保持しましょう

左右でバランス良くストレッチしてください。

チンインエクササイズ

首の前面に位置する「頚部深層屈筋群(けいぶしんそうくっきんぐん)」を鍛えるエクササイズです。

頚椎を支える筋力がつきますので、椎間板にかかる負担も軽減できます。

上位頸椎屈曲運動(伏臥位)
STEP1:両肘をついたうつ伏せ姿勢となりましょう
STEP2:顎(あご)を軽く引きましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※頭を後方へ引くイメージで運動を行いましょう
※首が丸まらないように注意しましょう

僧帽筋下部(そうぼうきんかぶ)エクササイズ

背中の後面に位置する「僧帽筋下部線維」を刺激するエクササイズです。僧帽筋下部線維を鍛えることで肩甲骨の位置が安定し、背中を伸ばした姿勢を楽に維持できるようになるでしょう。

僧帽筋下部エクササイズ(Y)
STEP1:うつ伏せとなり片手を伸ばしましょう
STEP2:伸ばした手を上方へ挙げましょう
STEP3:ゆっくり下ろしましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※可能な限り高く挙げましょう
※肘が曲がらない様に注意しましょう

片側を行ったら、体のバランスを整えるために反対側も同様に行ってください。

参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介

まとめ

ヘルニアのおもな原因には「頚椎(首)への負担の積み重ね」が考えられています。ゆえに、日頃の姿勢や体の使い方などを改善しない限り、椎間板の損傷や変性を進行させる可能性が高いです。

本記事で紹介した避けるべき行動をうっかりやっていないか、一度よく確認してみてください。また、ストレッチやトレーニングを中心にセルフケアも継続して行い、ヘルニアの症状改善を目指していきましょう。

それでは、あなたを悩ませる手の痛みやしびれの軽減に、本記事が役立てば幸いです。

参考文献
1)日本整形外科学会 頚椎椎間板ヘルニア
2)Marije L S Sleijser-Koehorst 1 2, Michel W Coppieters 1 3 4, Martijn W Heymans 5, Servan Rooker 6, Arianne P Verhagen 7 8, Gwendolijne G M Scholten-Peeters 9 10 11:Clinical course and prognostic models for the conservative management of cervical radiculopathy: a prospective cohort study