日本人の多くの方が悩まされている腰痛。
その中でも妊娠や出産、生理をきっかけに腰痛が出てしまう女性も多いのではないでしょうか。
そのまま放置してしまうと、痛みが長引いてしまい生活に支障が出てしまう可能性も。
そこで当記事では、ご自身の腰痛の原因や症状、それぞれの方に合った対処方法をわかりやすく解説していきます。
当記事を参考にすることで、普段の生活が少しでも楽になればと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
女性に多い腰痛の4つの原因
とくに女性に多い腰痛の原因を4つ挙げていきます。
ご自身の症状をみながら当てはまる原因を探っていきましょう!
妊娠・出産による姿勢の変化
妊娠中には約50~70%の方が腰痛を経験するという報告があります1)2)。
そして妊娠により次のような姿勢の変化が多く見られます。
体幹が後方に倒れる姿勢(Sway Back姿勢)
妊娠中はお腹や乳房が大きくなることで、重心が前に移動します。そのため、釣り合いを取るために体幹を後方に倒して姿勢を維持する、Sway Back(スウェイバック)と呼ばれる姿勢になりやすいです。
Sway Back姿勢では、腰のカーブが通常より小さくなり、骨盤が後傾している場合が多いです。また、腰の筋肉が伸ばされてストレスが掛かることが原因となり、腰痛へと繋がる可能性があります。
腰が反ってしまう姿勢(反り腰姿勢)
その他にも、お腹が大きくなることで重心を安定させるために、腰椎の前弯(腰の反り)が大きくなる場合があります。そして、妊娠中は腰が過度に反ることを防ぐ役割の腹筋の働きが弱くなり、反り腰になりやすいです。
反り腰姿勢になると、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん:腰部の筋肉)が緊張したり、腰椎にストレスが掛かったりすることが原因となり腰痛へと繋がる可能性があります。
また、妊娠前の姿勢や体の使い方によって、妊娠中の姿勢の変化も人によって異なります。
参考記事:【ぽっこりお腹を改善】腰痛のもとになる反り腰の原因・簡単な治し方をわかりやすく解説!
女性ホルモンの乱れによる影響
姿勢の変化のほか、妊娠中に多く見られる腰痛の原因として、ホルモンの影響があるケースも。
妊娠中には、関節を緩めるリラキシンやエストロゲンと言われるホルモン分泌が増えます。そのため、骨盤周りが不安定になり腰痛に繋がる可能性が高まります。
生理に伴う身体の変化
生理中には、経血を外に押し出すためのプロスタグランジンというホルモンが多く分泌されます。プロスタグランジンは子宮を過剰に収縮させる働きと、痛みを感じさせる働きを持ちます。
プロスタグランジンが過剰に分泌されることで、腰痛に繋がる可能性にも注意が必要です。
ハイヒールの着用による腰への負担
ハイヒールを履くことで反り腰になったり、人によっては骨盤が後ろ方向に傾き腰椎の弯曲が減少したりするなど、本来の脊柱のカーブから逸脱しやすくなります。
また、歩行の際の脊柱起立筋への負担が増えるという報告もあり3)、腰痛へと繋がっている可能性が考えられます。
女性に見られる腰痛の主な症状
それでは腰痛の原因がわかったところで、次は症状についてみていきましょう。
現在の体の状態とチェックリストを見比べて、腰痛のタイプを見つけていきます。
前屈みで痛い【椎間板性腰痛】
前屈みの姿勢で過度に椎間板(ついかんばん)に圧がかかることで、周りを覆っている線維輪(せんいりん)と呼ばれる組織に炎症が起こります。
この炎症が原因となって腰痛へと繋がる場合も。
そして、以下の症状が当てはまる方は椎間板が原因となっている可能性があります。
- 腰の両側に痛みを感じる方
- 前屈み姿勢が多い仕事や長時間のデスクワークをする方
- もも裏が硬く立ち姿勢で骨盤が後傾している(後ろに傾いている)
参考記事:【前屈型腰痛】腰を曲げると痛い原因は?適切な対処法をわかりやすく解説!
反らすと痛い【椎間関節性腰痛】
椎間関節(ついかんかんせつ)に繰り返しストレスがかかることで炎症が起こり、痛みが出現します。とくに、女性でよくみられる反り腰の方に多いと言われ要注意です。
そして以下の症状が当てはまる方は、椎間関節の影響が疑われます。
- 体を反らした時に体の片側に痛みが出る
- 背骨の中心から2.5~3cm程度外側に痛みを生じる
- 痛みの場所を指1本でさせる
参考記事:【症状別】腰を反らすと痛い場合の対処法を3分で解説
長時間の同じ姿勢を取ることによる痛み【筋・筋膜性腰痛】
デスクワークでの前屈み姿勢や反り腰状態での立ち姿勢が長時間続くことで、背骨を支えている筋肉である脊柱起立筋が過度に伸ばされたり、緊張するなどの負担がかかります。
また、筋肉に過度に負担がかかると血流が悪くなり、痛みに繋がる可能性もあるので注意が必要です。
そこで以下の症状が当てはまる方は、筋・筋膜が原因となっているリスクが高いです。
- 広い範囲に痛みが出る
- 長時間同じ姿勢を取ることが多い
- 姿勢が悪いと感じている
参考記事:【筋肉が原因となる腰痛】筋筋膜性腰痛とは?見分け方と対処法を解説!
参考記事:立ちっぱなし腰痛はなぜ起こる?痛みの原因や立ち仕事が楽になるストレッチを紹介
お尻周りの痛み【仙腸関節性腰痛】
仙腸関節(せんちょうかんせつ)は本来大きく動かない関節ですが、中腰での繰り返しの作業や妊娠・出産などの体の変化から、関節にずれやストレスがかかることでお尻周りに痛みが出現します。
以下の症状が当てはまる方は、仙腸関節が原因になっているかもしれません。
- 妊娠・出産を機に痛みが出た
- 痛みの場所がお尻周りに指1本でさせる
- コルセットや骨盤ベルトなどをつけると楽になる
参考記事:【腰痛?】左側のおしりの上が痛い場合の原因と自分でできるストレッチを解説!
女性におすすめ!腰痛の症状別の対処法をご紹介
ここからは、簡単な立ったままでもできる腰痛予防・改善に効果的なストレッチを解説していきます。
特別な準備は必要なく、会社や自宅でも簡単にできるものなので、自身の悩みに当てはまる方法を行ってください。
前屈み姿勢で痛い場合はもも裏のストレッチを!
前屈み姿勢で痛い椎間板性腰痛は、骨盤が後傾し腰椎が後弯(前屈み状態)となることで椎間板に負担がかかっている可能性があります。
もも裏が硬いと骨盤が後傾しやすくなるため、もも裏のストレッチを行なっていきましょう。
STEP1:仰向けで片脚を抱えましょう
STEP2:可能な限り膝を伸ばします
STEP3:もも裏が伸びた状態を10秒間保持しましょう
STEP4:元の姿勢に戻り繰り返し実施します
※太ももがお腹から離れないように実施することがポイントです!
腰を反らすと痛い腰痛の場合は骨盤の体操が最適
腰を反らすと痛い椎間関節性腰痛は、反り腰状態が続くことで椎間関節に負担がかかり痛みが出現している可能性があります。
そこで反り腰状態を改善させ、椎間関節の負担を軽減させるために骨盤の体操を行なっていきましょう。
STEP1:姿勢を正して椅子に座りましょう
STEP2:骨盤を転がすように前方に動かします
STEP3:骨盤を転がすように後方に動かします
STEP4:前後交互に繰り返し動かしましょう
※骨盤を後方へ大きく動かすことがポイントです!
長時間の同じ姿勢で腰が痛くなる場合は腰部のストレッチをしよう!
長時間、同じ姿勢を取ると筋・筋膜性腰痛の方は腰部の筋肉が過剰に緊張し、血流が低下していくことで痛みに繋がっている可能性があります。
ストレッチをすることで筋肉の緊張を和らげ、腰痛を改善していきましょう。
STEP1:片方の足を前に出し反対側の足を組みましょう
STEP2:つま先に向かって両手を伸ばします
STEP3:腰の筋肉が伸びた状態を10秒間保持しましょう
STEP4:元の姿勢に戻り繰り返し実施しましょう
出産後に多いお尻周りの痛みにはお腹・お尻の筋トレが効果的
仙腸関節性腰痛がある方は、仙腸関節の不安定性が原因となっている可能性があります。
お腹、お尻の筋肉を使うことで、骨盤の安定化を目指すことが効果的です。
STEP1:仰向け姿勢となり両膝を曲げます
STEP2:体が一直線になるまでお尻を持ち上げていきます
STEP3:ゆっくり下ろしていきましょう
STEP4:繰り返し実施します
※腰を反らさないことがポイントです!
女性は要注意!日常生活で意識して欲しい5つのこと
次に、腰痛を予防する上での日常生活の注意事項を5つご紹介していきます。
実は腰痛は、生活習慣が大きくかかわる病気と言われています。そのため、日頃の生活が腰痛の予防・改善には非常に重要となります。
どなたでも意識できるポイントになりますので、明日の生活より取り入れていきましょう!
長時間の同じ姿勢は要注意
長時間同じ姿勢を取ることで筋肉が緊張して血流が悪くなり、腰痛に繋がる可能性があります。
また、体をあまり動かさず座る時間が長くなればなる程、腰痛のリスクが高まると言われているので適度に姿勢を変えることがポイントです!
参考記事:長時間の座り過ぎは要注意!腰痛悪化の原因と対策を紹介
なるべくスニーカーを着用
ハイヒールでは踵の高さが姿勢に影響し、椎間板や筋に負担がかかります。ヒールのないスニーカーを履くことで正しい姿勢が取りやすくなり、腰部の負担を減らせるでしょう。
また、ハイヒールと比べてスニーカーでは腹筋やお尻の筋肉も使いやすいと言われているため、腰周りの安定にも繋がりやすいです。
デスクワーク時の姿勢に注意
座って前屈みになる姿勢は、立っている時の姿勢と比べ約1.85倍にも椎間板内圧が高まる4)と言われています。椎間板内圧が高まると、椎間板やその周辺の組織へ炎症や血流障害が起こり、痛みに繋がる可能性があります。
デスクワーク時に前屈みの姿勢になっていないか意識してみてください。
ストレッチを習慣化しよう
多くの腰痛で下半身・腰回りの筋肉の硬さが影響し、姿勢が悪くなることで痛みに繋がっています。先ほどもお伝えした通り、腰痛の対処法にはストレッチがとても重要です。
そのため、腰痛が出てきてしまっている方は、積極的にストレッチを行うことを心がけましょう。
参考記事:寝ながらできる腰痛改善ストレッチ!4つの症状別の対処法を解説
参考記事:【1日たった5分】腰痛改善に必要な簡単ストレッチを原因とあわせて紹介!
体を冷やさない
体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなります。そして血流が悪くなると筋肉がエネルギー不足を起こし、痛みを感じる物質が分泌され腰痛につながる可能性があります。
そのため、体を冷やさないように温かい飲み物を飲んだり、レッグウォーマーや腹巻きを使うのもおすすめです!
まとめ
今回は女性に多い腰痛の原因と症状、対処法について解説していきました。
辛い腰痛ですが、そのまま放置してしまうと痛みが長引いてしまう可能性も。
早めに原因を探り対処していくことで、快適な毎日を取り戻していきましょう。
それでは本記事が、あなたの腰痛改善にお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
1)榊原愛子 妊娠時の腰痛が日常生活動作へ及ぼす影響 理学療法科学 21(3):249–254,2006
2)平元 奈津子 妊婦に対する理学療法 理学療法学 第 41巻第 3 号 165〜169 頁 2014 年
3)Franklin ME, Chenier TC, Brauninger L, et al.: Effect of positive heel inclination on posture. J Orthop Sports Phys Ther, 1995, 21(2): 94-99
4)The load on lumbar disks in different positions of the body.Nachemson A:Clin Orthop Relat Res.1966;45:107-122