【前屈型腰痛】腰を曲げると痛い原因は?適切な対処法をわかりやすく解説!

『長時間座って作業をしていると腰が痛い。』
『前かがみや中腰で重いものを持つことが多く腰が痛い。』
このような経験はありませんか?

日本人が抱える自覚症状で最も多いのは腰痛と言われています。1)また、腰痛は全人口の80%が生涯に一度は経験するという報告も。2)

そこで今回の記事では、腰の痛みに悩まれているあなたに向けて、腰を曲げると現れる『前屈型腰痛』の主な原因を解説し、対処法をお伝えします

本記事をご覧いただき腰痛に対する理解と適切な対処法を身につけ、痛みの軽減にお役立ていただきますと幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。

まずは腰椎の働きを知ろう

はじめに、痛みの対処法の理解を深めるために腰椎の構造を解説していきます。

背骨はいくつかの椎体(ついたい)が積み木状に重なっており、頭側から頸椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)の3つから構成されています。

椎体と椎体の間には水分を多く含んだゼリー上の骸核(ずいかく)とそれを取り囲む線維輪(せんいりん)と呼ばれる軟骨組織でできた椎間板(ついかんばん)があります。そして椎間板は、立つ、座るなど生活の中でさまざまな姿勢に応じて椎体に加わる圧力を分散させ、衝撃を和らげるクッションの役割があるのです。

椎間板の構成を説明した図

また、背骨の周りには脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)多裂筋(たれつきん)といった多くの筋肉が走行しています。特に脊柱起立筋は、背中で最も大きく長い筋肉で座っている時や立っている時も働いており、姿勢を真っ直ぐ保持する役割をになっています。

これら椎間板や脊柱起立筋は、猫背や中腰の状態が続くことでかなりの負担がかかり、腰を曲げると痛いなどのさまざまな症状を引き起こしてしまいます

前にかがむと痛い腰痛の原因は3つ

腰を前屈みにすると痛い人の画像

腰を曲げると痛い場合に考えられる一般的な原因は3つに分類されます。ご自身に当てはまる原因を押さえて、適切な対処法を実践しましょう。

椎間板への負荷(椎間板ヘルニア)

椎間板ヘルニアとは、加齢や使いすぎなどにより椎間板が変性し、断裂することで椎間板が飛び出します。そして飛び出した椎間板が神経を圧迫することで、足のしびれなどの神経症状を引き起こす病気です。

椎間板への負荷は、立っている時と比べて座っているときは1.4倍負荷がかかります。そのため長時間のデスクワークなど前屈みでの作業は椎間板への負担が大きいのです。

椎間板の構成を説明した図

以下の項目が当てはまる方は、椎間板への負荷が原因である可能性が高いです。

  • 主にお尻や足の痺れがある
  • 背中を丸めたり、前屈みになると痛みや痺れが強くなる
  • 背中を伸ばしている時や、寝ている時は楽になる

参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!

筋・筋膜への負荷(筋・筋膜性腰痛)

背骨は後方にある脊柱起立筋が働く事で、正しい姿勢を保ち安定しています。

デスクワークなど背中が丸まった姿勢で過ごすことにより、姿勢を真っ直ぐにしようとこの脊柱起立筋が過度に働きます。それにより、筋肉が過負荷状態となり、筋・筋膜の損傷が起こるのです。

また、長時間の同じ姿勢や、繰り返しの動作により、血流が滞り損傷した筋肉の修復が短期間で行えなくなり慢性的な痛みが引き起こされます。長時間座って作業することが、腰痛の危険因子であると述べられている論文もあります3)

以下の項目が当てはまる方は、筋・筋膜への負荷が原因である可能性が高いです。

  • 長時間、同じ姿勢を取ることがある
  • 重いものを持ち運ぶことが多い
  • しびれや感覚の異常など神経症状はない

参考記事:【筋肉が原因となる腰痛】筋筋膜性腰痛とは?見分け方と対処法を解説!

仙腸関節への負荷(仙腸関節性腰痛)

腰椎の下方には仙骨(せんこつ)・腸骨(ちょうこつ)から構成される仙腸関節(せんちょうかんせつ)があります。

仙腸関節は左右の脚を大きく開いたり、腰を大きくひねるなど、骨盤に左右非対称の力が加わり負担が増えることで痛みが出現しますこの仙腸関節が由来の腰痛は年齢に関係なく発症するそうです。

また長時間のデスクワークや出産など、仙腸関節の一部に負担がかかり続けることでも痛みが出現するケースもあります

仙腸関節の構造・仙腸関節炎の病態

そこで以下の項目が当てはまる方は、仙腸関節への負荷が原因かもしれません。

  • 痛い方を下にして寝れない
  • 歩く時に痛みはあるが、徐々に楽になる
  • 正座は痛みなく座れる

腰を曲げると痛い場合の対処法(ストレッチ方法)

ご自身に当てはまる症状は、見つかりましたでしょうか?ここからは、腰を曲げると痛い場合の対処法を原因別に解説していきます。

下半身における筋肉の硬さを改善させるために『もも裏のストレッチ』

もも裏の筋肉(ハムストリングス)は股関節や骨盤の動きを助ける役割を持ちます。

デスクワークなど猫背の姿勢で長時間作業をしていると、ハムストリングスを使う機会が減り、柔軟性が低下し固くなってしまうのです。ハムストリングスが固くなることで、骨盤や腰椎の動きが悪くなり、腰への負担が増え痛みを引き起こします

そのため、ハムストリングスの緊張を和らげるストレッチを行いましょう。

もも裏のストレッチ

STEP1:片足を前方へ出しましょう
STEP2:骨盤を倒すように前方に体を傾けます
STEP3:もも裏が伸びた状態を保持しましょう
STEP4:足首を反らせて踵を地面につけましょう
※腰が丸まらないよう注意しましょう

猫背の姿勢改善のために『ヒップロール』

腰痛に悩んでいる方の特徴の1つとして考えられるのは、脊柱起立筋が常に働いていることが挙げられます。ある研究では腰痛のある人は、腰痛のない人と比べ、少ない動きでも、筋肉への負担が大きくなるという報告もあるのです。

脊柱起立筋がオーバーワークにならないよう、筋肉の緊張を和らげるストレッチを行いましょう。

ヒップロール

STEP1:仰向けとなり両手を真横へ広げましょう
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:腰の伸びを感じながら実施しましょう
※肩が床から離れないように注意しましょう

正しい姿勢保持のために『クロスエクステンション』

猫背姿勢は椎間板や筋・筋膜への負担を増大させ、腰痛を引き起こします。そのため猫背姿勢を改善し、正しい姿勢を長時間保持するためにインナーマッスルのトレーニングが必要になります

腰痛がある人は、腰痛がない人に比べてインナーマッスルの筋力低下が起きているという報告4)もあるので、痛みのない範囲で筋力を鍛えるトレーニングを実施しましょう。

クロスエクステンション

STEP1:四つ這いとなりましょう
STEP2:肩の真下、股関節の真下に手と膝をつきます
STEP3:対角線上の手足を伸ばしましょう
STEP4:肘・膝が曲がらないように注意しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう

こんな方は要注意!腰を曲げると痛い場合に医療機関への受診が必要な症状とは?

腰を曲げると痛い場合の腰痛には、さまざまな要因が影響します。

今回説明したセルフケアなどで対処できる筋力低下や使いすぎの他に、骨折や血管性症状などが影響している場合もあります。要因がわからないまま放置してしまうと手術が必要になってしまうケースもあるでしょう。

そのため以下の項目が1つでも当てはまる場合は、専門の医療機関への受診をおすすめします。

  • 痛みや痺れの症状が悪化している
  • 尻餅や重いものを持ち上げたあとから痛みが続いている
  • じっとしていてもしびれが引かない
  • 足のしびれだけでなく、尿や便の失禁を伴う

まとめ

腰を曲げると痛い場合の原因と対処法を解説しました。

腰痛は正しくない姿勢で長時間作業をしたり、重いものを頻繁に持つことで痛みが生じるケースが一般的です。症状によっては、痺れや痛みで歩けなくなる可能性もあります。

ご自身の状態に合わせ適切な筋トレやストレッチを行い、正しい姿勢を保つことを心がけましょう。

本記事があなたの痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。

参考文献
1)平成28年 国民生活基礎調査の概要 厚生労働省
2)Levine DB:Arthritis and allied conditions. 12th ed. Lee & Febiger, 1993, p1583-600.
3)Park S, Kim H et al. Longer sitting time and low physical activity are closely associated with chronic low back pain in population over 50 years of age: a cross-sectional study using the sixth Korea National Health and Nutrition Examination Survey. Spine J, 18(11), 2051 – 2058, 2018.
4)生方 瞳 他.慢性腰痛症における多裂筋筋硬度の左右差について.理学療法科学,29(1),101-104,2004.