「座っているとおしりに痛みを感じる」そんな症状に悩まされていませんか?この痛みには、単なる「座り疲れ」だけでなく、神経の圧迫や筋肉の緊張、関節のズレ、骨の異常など、さまざまな原因が隠れている可能性があります。とくに長時間のデスクワークや運転、姿勢の悪さは痛みを助長させやすく、放置すると慢性化することも。
本記事では、座っているときにおしりが痛くなる原因を医学的な視点から解説し、それぞれに合った対処法やセルフケアの方法も紹介します。日常生活の見直しに役立つ実践的なアドバイスをお届けします。
ぜひ最後までお読みいただき、おしりの痛み改善にお役立てください。
座るとおしりが痛くなる原因とは?
おしりの痛みは、筋肉・神経・骨格の問題が関係していることが多く、それぞれ異なる特徴を持ちます。以下に主な原因を紹介します。
坐骨神経痛:神経の圧迫による痛み
坐骨神経痛は、おしりから足にかけて痛みやしびれを伴う代表的な症状のひとつです。腰椎から足先まで伸びる坐骨神経が、何らかの原因で圧迫されることにより発生します。
特に長時間座っているときや、姿勢が崩れているときに症状が悪化しやすく、「ズキズキとした深部の痛み」が特徴です。
多くは椎間板ヘルニアや腰椎の変形、臀部の筋肉が神経を圧迫することで起こります。
参考記事:坐骨神経痛を早く治す方法はこれ!痛みの原因とオススメストレッチ3つを解説!
参考記事:【意外と知らない】坐骨神経痛と間違える病気は?自宅でできるセルフチェック方法も解説
仙腸関節障害:骨盤の関節のズレが原因
仙腸関節は、骨盤の中心にある関節で、上半身の重さを下肢に伝える重要な役割を担っています。この関節がずれたり、硬直したり、炎症を起こしたりすると、片側のおしりに鋭い痛みが走ることがあります。
片側だけが痛む、座っているときに痛みが増すという特徴があり、歩行や階段の昇り降りにも違和感が出ることがあります。
原因としては、姿勢の乱れや、いつも同じ側に荷重をかけるクセ(片足重心)、出産などによる骨盤の不安定化が考えられます。
筋肉の緊張や炎症による痛み
長時間のデスクワークや座りっぱなしの生活、また運動不足によって、おしり周りの筋肉は緊張しやすくなります。
特に、大殿筋や中殿筋などの臀部筋群が硬直すると、深部から重だるい痛みが出現します。
このタイプの痛みは、立ち上がったときに少し軽減されるのが特徴で、慢性的なコリや筋膜性疼痛症候群の可能性もあります。
尾骨痛:座るとピンポイントで痛む
尾骨は、背骨の最下部にある小さな骨で、転倒や打撲による外傷、または長時間の座位による圧迫によって炎症を起こすことがあります。
「座ると尾てい骨がピンポイントで刺すように痛い」という特徴があり、尾骨部分に直接的な刺激が加わると強く反応します。
特に、硬い椅子や姿勢が悪い状態で座ると症状が悪化しやすく、女性では出産後に起こることもあります。
参考記事:【真ん中】おしりの骨が痛い原因とは?痛み改善に効くストレッチ・筋トレを解説
椎間板ヘルニア:腰からくるおしりの痛み
腰椎の椎間板が飛び出して神経を圧迫すると、腰からおしり、さらに足にかけて放散する痛みが生じます。これが椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛です。
初期症状ではおしりの痛みだけの場合もあり、腰痛と区別がつきにくいことがありますが、徐々に足のしびれや力が入りにくくなると、ヘルニアの可能性が高くなります。
姿勢の悪さや過度な負担、加齢による椎間板の変性などが主な原因です。
参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介
股関節の障害:股関節からおしりの横の痛み
股関節に問題がある場合、おしりの横や太ももの外側に痛みが出ることがあります。変形性股関節症や関節唇損傷などが原因で、動作時に痛みが強まるのが特徴です。
立ち上がりや階段昇降、あぐらの姿勢などで違和感が出ることが多く、股関節の可動域制限がみられることもあります。
座るとおしりが痛いときの対処法
痛みの原因に応じた対策を取ることで、症状の緩和や改善が可能です。自宅でできる工夫やエクササイズも含めて紹介します。
座り方を工夫する
おしりの痛みを軽減する第一歩は、日常生活での座り方を見直すことです。
悪い姿勢や長時間の座位が、神経や関節、筋肉に不必要なストレスを与えるため、正しい座位姿勢を意識することが重要です。
まず、椅子に深く腰かけ、骨盤を立てて背筋を自然に伸ばすように座りましょう。膝と股関節が90度に保たれるよう、足の裏は床にしっかりと接地させます。必要に応じて、足台やクッションを使用して調整します。
また、ドーナツ型クッションやジェルクッションの使用も効果的です。尾骨や坐骨にかかる圧力を分散させ、神経や骨への負担を軽減できます。特に尾骨痛や仙腸関節障害には高い効果が期待できます。
さらに、長時間同じ姿勢を避け、1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かすよう心がけることも、慢性的な圧迫を予防するうえで有効です。
ストレッチと運動で筋肉をほぐす
痛みの原因が筋肉や関節の緊張にある場合は、ストレッチや筋力トレーニングを取り入れることで大きな改善が期待できます。以下に簡単なセルフエクササイズを紹介します。
梨状筋ストレッチ
STEP1:椅子に腰掛け、片足を反対側の膝にのせましょう。
STEP2:上体を伸ばしたまま骨盤を前方へ倒しましょう。お尻が伸びた状態を数秒間保持しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:背中が丸まらないように注意しましょう。
このストレッチは、坐骨神経の通り道を緩める効果があり、坐骨神経痛の緩和に特に有効です。
大殿筋ストレッチ
STEP1:片足を反対側の膝にのせ、両手でつかみましょう。
STEP2:抱えた膝を反対側の肩の方向へ寄せましょう。お尻の筋肉が伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻りましょう。
注意点:背中が丸くならないように注意しましょう。
筋肉の緊張や股関節周りの硬さが原因で痛みが出ている方にはおすすめのエクササイズです。
おしり上げ運動
STEP1:仰向けになり、両膝曲げましょう。
STEP2:ゆっくりとお尻を持ちあげましょう。
STEP3:お尻をゆっくり降ろし、元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう。
注意点:腰を反らないように注意しましょう。
骨盤周囲の安定性を高め、仙腸関節への負担を軽減します。姿勢の安定化にもつながり、予防にも効果的です。
自宅でできる日常ケアのポイント
ストレッチや姿勢改善と並行して、生活環境の見直しも行いましょう。たとえば、デスクワーク中の椅子や机の高さが合っていないと、知らず知らずのうちに姿勢が崩れ、慢性的な痛みの原因になります。
また、冷えは筋肉の緊張を助長するため、座布団や電気毛布などで腰部やおしり周辺を温めるのも一つの手です。特に冬場は血行不良が原因となる痛みが増えるため、温熱療法が有効です。
さらに、毎日の入浴も血流を促進する大切な習慣です。シャワーだけで済ませず、湯船にゆっくり浸かることで筋肉の緊張を和らげ、リラックス効果も得られます。
医療機関を受診するべきタイミング
おしりの痛みは一時的なものであれば自然に改善することもありますが、なかには放置してはいけないケースも存在します。
ここでは、医療機関を受診すべきサインや判断基準について解説します。
痛みが長引く・日常生活に支障がある場合
まず、2週間以上痛みが続く場合や、日常生活に支障をきたすようであれば、早めの受診が推奨されます。痛みが慢性化すると、筋肉や関節、神経へのダメージが進行し、回復までに時間がかかる可能性があります。
また、安静にしていても痛みが改善しない、寝ている間も痛みで目が覚めるなど、安静時痛がある場合は、炎症や骨の異常の可能性も考えられます。整形外科を受診し、画像検査(レントゲン・MRI)などを通じて正確な診断を受けることが重要です。
足のしびれや筋力低下がある場合
坐骨神経痛や椎間板ヘルニアが進行すると、おしりの痛みに加えて「足のしびれ」「足に力が入りにくい」などの神経症状が現れることがあります。
これらは神経への強い圧迫が起きているサインであり、放置すると日常動作や歩行に重大な支障をきたすリスクがあります。
とくに、片脚だけに強いしびれが出ている、階段を上がれない、つま先やかかとに力が入らないといった症状が見られる場合は、できるだけ早く専門の整形外科を受診しましょう。場合によっては、神経ブロック注射や手術が検討されることもあります。
排尿・排便の異常を伴う場合
まれではありますが、重度の椎間板ヘルニアや脊髄の圧迫によって、膀胱や直腸の機能に影響が出ることがあります。
排尿や排便がしづらくなった、あるいは失禁してしまうなどの症状がある場合は「馬尾症候群」と呼ばれる緊急性の高い疾患の可能性があり、早急な医療処置が必要です。
このような場合は、ためらわずに救急外来を含めて、早急に病院を受診してください。時間が経つほど回復が困難になるため、迅速な判断が求められます。
痛みの部位に腫れや熱感がある場合
おしりの痛みが「ズキズキする」「熱を持っている」「赤く腫れている」といった炎症反応を伴っている場合は、感染症や深部の膿瘍(のうよう)が関与している可能性も考えられます。とくに、糖尿病などの基礎疾患を持つ方は注意が必要です。
自己判断で放置せず、内科や外科、整形外科などを受診して、炎症の原因を特定しましょう。抗生物質による治療や、場合によっては膿の排出が必要になるケースもあります。
これまでにない激しい痛み・外傷後の痛みがある場合
転倒や打撲などの外傷後に急激なおしりの痛みが出た場合や、これまでに経験したことがないような強い痛みが突然現れた場合は、骨折や重大な損傷の疑いがあります。
特に高齢者や骨粗鬆症のリスクがある方は、軽微な転倒でも尾骨や骨盤にひびが入っている可能性があります。CTやMRIなどの精密検査によって早期に把握することが重要です。
まとめ
座っているときに感じるおしりの痛みは、軽い筋肉のこわばりから神経・関節・骨のトラブルまで、さまざまな原因によって引き起こされます。
坐骨神経痛や仙腸関節障害、筋肉の緊張などそれぞれに特徴的な症状と対処法があります。
軽度の痛みであれば、日常生活の中でのセルフケアで症状が和らぐことも少なくありません。しかし、痛みが長引く場合や、足のしびれ、排尿・排便の異常を伴うなどの症状がある場合は、専門医による診察と治療が必要です。
早めの対処と正しい知識で、自分の体と向き合い、快適な毎日を取り戻しましょう。
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