起床時に首が痛くて動かせなくなる「寝違え」は、どなたにも身近に起こりうる症状です。
一般的な痛みに対しては湿布がよく用いられていますが、寝違えにおいても湿布を貼ることは効果的なのでしょうか?
そこで当記事では、寝違えの痛みに湿布は効果があるのかどうか、そして寝違えを早期に治すための対処法やストレッチを解説しています。
湿布を使用する際の注意点も紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
【最初に確認】首を寝違える原因は?
寝違えの詳しいメカニズムは、いまだ解明されていません。
しかし、医療機関の検査で骨の異常はみられないため、筋肉の緊張から起こる血行不良が首の痛みの原因ではないかと考えられています。
日常生活では次のような要因で、寝違えを起こすリスクが高まります。
首や肩甲骨まわりの緊張
首や肩甲骨まわりの筋肉が硬くこわばっていると、血流の悪化から寝違えを起こしやすくなります。
日常生活において首・肩まわりの筋肉を凝らせる要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 不良姿勢(猫背)
- 長時間の同じ姿勢
- 体の冷え
- ストレス
特に長時間のスマホの操作やデスクワークでのパソコン作業は、猫背で長時間同じ姿勢が続くため、首まわりの筋肉を緊張させやすくなっています。
不自然な姿勢での睡眠
首が傾いた状態で寝ていると、首肩まわりの血管が圧迫されて血行が悪くなってしまいます。
首の位置が安定しないため、特に床の上やソファの上など、ベッド以外の場所で寝た際に首を痛めやすくなります。
参考記事:【首を寝違えたような痛み】突然起きる痛みの原因と対処法を解説!
首の寝違えに湿布は効果的なのか?
湿布を貼ることで、消炎鎮痛成分が皮膚から吸収されていきます。それにより、炎症や痛みを抑える作用が期待できるため、首の寝違えに対して湿布は効果的です。
炎症が強く出ている急性期(痛めてから48〜72時間以内)には、特に湿布が有効な対処といえるでしょう。
首や背中など痛みを感じる場所に湿布を貼るようにしてください。
【危険】湿布を使うときの注意点
湿布を使用する際には、いくつかの注意点があります。何かしらの副作用を起こす可能性があるため、以下の項目はしっかりと確認するようにしてください。
※使い方で少しでも疑問点や不安な点があるときは、医師に相談してみてください。
用法・用量をしっかり守る
湿布には薬の成分が含まれているため、パッケージなどに記載されている用法・用量を守るようにしてください。
湿布の種類にもよりますが、大きいサイズの湿布で1日2.3枚の使用が限度とされています。特に膝や腰など首以外の箇所にも痛みを抱えている方は、一度に湿布を貼りすぎてしまう可能性があるため注意が必要です。
妊娠中の方は湿布を避ける
非ステロイド抗炎症剤の総称である「NSAIDs(エヌセイズ)」が含まれている湿布は、薬の成分が全身をめぐることで、胎児に悪影響をおよぼす可能性があります。
また、妊娠の時期によっても使用できる薬の成分が異なるため、自己判断で湿布を貼ることは避けたほうが良いでしょう。
妊娠中の方でどうしても湿布を使いたい場合は、医師に相談したうえで安全性の高いものを選ぶことをおすすめします。
子どもに使用できない湿布がある
妊娠中の方と同様、子どもに対しても使えない湿布があります。「15歳未満の子どもには使用できない」などと記載してあるため、使用前にパッケージの説明書きをよく読むようにしてください。
皮膚の異常がある箇所には貼らない
傷口や湿疹のある場所、肌がかぶれている場所には湿布を貼らないようにしてください。
これらの箇所に湿布を貼ることで、症状を悪化させたり、副作用を生じたりするおそれがあります。
湿布だけに頼らない
湿布は薬の成分で一時的に痛みを抑えているに過ぎず、実際に寝違えを治しているわけではありません。痛みを早く治すためには、湿布で痛みを抑えつつ、これから紹介する対処法もしっかり行いましょう。
【激痛で動けない】寝違えを早く治すための対処法
湿布を貼るだけではなく、次のようなセルフケアを行うことで、寝違えの早期改善を目指しましょう。
痛めた直後は安静にする
炎症や痛みが強く出ている急性期は、なるべく安静を心がけてください。
早く動かせるようにしたいからと、ストレッチをやりたくなるかもしれません。しかし、無理に動かすことで痛みが悪化する場合があります。
また、何度も首を動かし痛みを確認するような動作も炎症が広がるきっかけになるため、急性期では行わないようにしましょう。
安静にできていれば、2.3日以内に痛みが落ち着くことがほとんどです。
痛みがある箇所を冷やす
首のあたりのアイシング(冷やすこと)も大切です。
買い物で使うようなビニール袋に氷水を入れて、痛みや熱感のある箇所を冷やしてください。アイシングには炎症を抑える効果のほか、知覚神経の働きを鈍らせ痛みを軽減する効果を期待できます。
一度の冷却時間は5〜10分が目安です。氷水を離してみて、痛みが戻るようであれば再度冷やすを繰り返してください。
しかし、冷やしすぎると筋肉がこわばり、血流の悪化を招いてしまうかもしれません。過度な冷却を避けるため、アイシングはなるべく急性期(痛めて48〜72時間以内)に限るようにしておきましょう。
痛みがひいたらストレッチを行う
急性期の強い痛みがひいたら、無理のない範囲で首や肩甲骨の筋肉をストレッチしてください。ストレッチを行うことで患部への血流が回復し、痛みや可動域の制限が早期に改善しやすくなります。
しかし、急に伸ばすと筋線維を痛める場合もあるため、呼吸をしながらゆっくりと筋肉を伸ばすように意識しましょう。
寝違えにはどのようなストレッチが有効なのか、具体的な方法は後ほど解説いたします。
首の寝違えを改善するおすすめストレッチ3選
それでは、寝違えの痛みを緩和するために、以下のストレッチを行いましょう。無理はせず、痛みが出ない範囲で行うようにしてください。
胸の前のストレッチ
鎖骨・胸骨(きょうこつ:胸の前側にある平たい骨)から上腕骨(じょうわんこつ:腕の骨)にかけて付着する大胸筋(だいきょうきん)を伸ばすストレッチです。
大胸筋を伸ばすことで、胸が開きやすくなります。それにより猫背が矯正され、首や肩まわりの緊張もほぐれていきます。
STEP2:両ひじを伸ばし胸を前方へ突き出しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※胸の前面の筋肉が伸びしているのを感じながら実施しましょう
大胸筋を十分に伸ばせなくなるため、腕を後ろに引く際は肩が上がらないようにお気をつけてください。
広背筋ストレッチ
広背筋(こうはいきん)と呼ばれる、腰部・背部から腕にかけて付着する筋肉を伸ばすストレッチです。広背筋を伸ばすと、背中や肩まわりの柔軟性が高まるほか、猫背(巻き肩)の改善にもつながります。
STEP2:片側のお尻に重心をのせ反対側へ体を傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※反対側のお尻に重心をのせましょう!
片側を伸ばしたら、反対側も同様に伸ばしてください。
僧帽筋上部線維ストレッチ
首から肩、背部にかけて広く付着する僧帽筋(そうぼうきん)の上部を伸ばすストレッチです。僧帽筋をストレッチすると首や肩まわりの緊張がほぐれて、血流を促すことができます。
STEP2:首を斜め前方へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※肩の上が伸びるのを感じながら行いましょう
片側が終わったら反対側も同様に行い、左右でバランスよくストレッチしてください。
寝違えやすい方必見!普段からできる寝違え予防法
寝違えを頻繁に繰り返している方は、普段からの予防も欠かせません。寝違えを起こしにくくするには、次のような対策が挙げられます。
寝具を見直してみる
寝具があっていないと睡眠中の姿勢が悪くなり、首を寝違えやすくなります。負担の少ない体勢で眠れるよう、枕の高さを見直してみましょう。
横向きになっても頭が横に傾かず、背骨がまっすぐな状態で寝られる枕の高さが理想とされています。
また、柔らかい素材は寝返りを妨げてしまうため、枕やマットレスなどは反発力のあるものを選ぶようにしましょう。
寝る前にストレッチを行う
ストレッチを行うと筋肉の緊張がほぐれて、血行が良くなります。また、体が柔らかくなると寝返りもスムーズにうてるようになるため、寝ている時に同じ姿勢が続くことを防止できます。
寝違えを予防するには、上で紹介しているストレッチの方法をぜひご参照ください。
参考記事:【首の寝違えの治し方】原因と痛みの対処におすすめのストレッチ3選を紹介
酔いを醒ましてから寝る
お酒に深く酔っている状態では寝返りが減るため、血流の悪化から寝違えを起こしやすくなります。睡眠中に首を痛めないよう、お酒を飲んだ際には酔いを醒ましてから寝ることがおすすめです。
一般的に適量と言われているアルコール20g(ビール500ml、日本酒1合)を分解するのは、男性でおよそ2.2時間、女性で3時間ほどかかるといわれています。そのため、お酒を飲みたい場合は、最低でも寝る4.5時間前までに飲酒を済ませておくと寝る際には酔いが醒めやすくなるでしょう。
寝ているときに体が冷えないようにする
体の冷えは筋肉をこわばらせ、首や肩まわりの血行を悪くしてしまいます。寝違えを防ぐためにも、暖房などもうまく活用しながら、睡眠中に体が冷えないように対策しておきましょう。
寝違えの痛みがひかない場合は病院へ
首を寝違えたとしても、数日で痛みがひくことがほとんどです。
しかし、1週間ほど湿布や安静、ストレッチといった対処をしても痛みが変わらない、悪化するといった場合は、何かの病気かもしれません。
寝違えと似た症状がみられる病気には、頚椎症(けいついしょう:首の骨の変性により周辺の神経を刺激する病気)が挙げられます。
また、首の痛みに加えて手がしびれる場合は、頚椎症とともに頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアも疑われるでしょう。
原因によって適切な処置が変わります。
通常の寝違えとは異なる症状がみられましたら、速やかに整形外科に行って検査を受けるようにしてください。
参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介
まとめ
今回は、寝違えへの湿布の使い方や注意点について解説しました。
湿布を貼ることで、寝違えの痛みを緩和できる場合があります。しかし、それだけで症状が治せるというわけではありません。寝違えの痛みをできるだけ早く治すためにも、安静やストレッチなどセルフケアもあわせて行うようにしましょう。
また、何度も睡眠中に首を痛めている方は、再発を防ぐためにも予防もしっかりと行うようにしてください。
それでは当記事が、あなたを悩ませる寝違えの症状改善に役立てば幸いです。
【参考文献】
公益社団法人 日本整形外科学会