腰が痛いときは、夜になってもなかなか寝付けないことがありますよね。腰痛が原因で寝不足になってしまうことも。
そして、睡眠の質の低下と腰の痛みは関連している1)と言われています。
つまり、「腰が痛く夜に眠れないと余計に腰痛の回復が遅くなり、更に眠れなくなる」という悪循環に陥ってしまうのです。
そこで今回の記事では、腰が痛いときにおすすめの姿勢別の寝方や、睡眠環境について解説しています。
本記事を読むことで、腰の痛みの軽減にお役立ていただけますと幸いです。ぜひ最後までご覧ください。
寝る姿勢によって腰に痛みが出る原因
寝ているときは、起きているときと比較すると動く量が少ないです。長時間同じ姿勢をとってしまうことで、寝る姿勢によって体の同じ部分にばかり負担がかかることになります。
そのため、血行不良が生じたり骨盤が過度に傾いたりすることで、腰痛を引き起こしてしまいます。
また、長時間同じ姿勢になることを避けるために、無意識に行うのが「寝返り」です。腰の痛みを引き起こさないための寝返りですが、寝るときの環境によっては通常よりも寝返りの回数が少なくなってしまい、その結果として腰の痛みを引き起こすこともあります。
寝方の違いによって腰の痛みが出る理由とは?
ここからは、「仰向け」「横向き」「うつ伏せ」の3パターンの姿勢別に腰の痛みが出る理由について解説していきます。ご自身に当てはまるものを見つけて、適切な対処法を行いましょう。
仰向けの場合
仰向けに寝る場合、横向きやうつ伏せと比較して身体の圧力が均等に分散されるので、血行不良などによって腰に痛みが出ることはありません。
ただし、足を伸ばした状態で寝ることで股関節が伸び、それに伴って骨盤が過度に反ってしまいます。このように骨盤を過度に反った姿勢を「反り腰」と言います。
反り腰になることで、腰の後方に位置する関節にストレスがかかり痛みが生じてしまうのです。
参考記事:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
参考記事:仰向けに寝ると腰が痛い原因とは?夜に寝れない場合の対処法を解説
横向きの場合
横向きの姿勢では腰の痛みだけではなく、足に痛みやしびれが出ることもあります。
理由としては、腰椎の周りには肋骨や胸郭などの支えとなるものがなく、横向きの姿勢で寝ることで腰が大きくたわみ負担がかかってしまうことが挙げられます。
また、同時に腰椎の中を通る神経を圧迫してしまい、足にも痛みやしびれが出たりすることがあるのです。
うつ伏せの場合
仰向けや横向きと比べ、場合によってうつ伏せで寝ることは腰への負担が大きくなるので注意が必要です。うつ伏せの姿勢では重力がかかりベッドが沈み込むので、腰椎が過度に反ってしまい腰痛へとつながります。
さらに、うつ伏せの状態で上半身を起こすことで腰痛が悪化することもあるので、腰に痛みがある場合はおすすめできません。
参考記事:うつ伏せで寝ると腰痛が出るのはなぜ?辛い腰痛が楽になる寝方とストレッチを専門家が解説!
【姿勢別】腰が痛い時におすすめの負担がかかりにくい寝方とは?
ここからは、腰が痛いときにおすすめの対処法を姿勢別に紹介していきます。特別な道具は必要なく、ご自宅にあるもので実践できるので、腰が痛いときはぜひお試しください。
仰向けで寝る場合は「膝の下」にクッションを敷こう
仰向けの寝方で腰の痛みを軽減させるためには、膝の下にクッションを敷いて膝を立てた状態で寝るとよいでしょう。
膝が立つことで股関節が曲がり、腰とベッドの間の隙間がなくなり反り腰を防ぐことができます。また膝下に入れるクッションには筋肉の緊張を防ぐ効果があるので、ぜひ自分のリラックスできる高さに調整してみてください。
横向きで寝る場合は「腰や足の間」にタオルを入れると効果的
横向きで寝る場合は腰椎を支える必要があるので、腰のくびれがある部分に細長く丸めたタオルを入れるとよいでしょう。タオルを入れることで腰部の安定性が増し、背骨の近くにつく脊柱起立筋という筋肉の緊張を緩和できます。
また、曲げた状態で両膝の間にタオルやクッションを入れることで身体が安定し、腰への負担が軽減することもあります。横向きで腰に痛みがある場合は、ぜひ試してみてください。
うつ伏せは痛みが出やすいので注意
先述の通り、うつ伏せの姿勢は腰に重力がかかり腰椎が反りやすくなります。したがって、腰が痛いときにうつ伏せで寝ることで、痛みを悪化させやすいです。
できるだけ、他の姿勢で寝ることを検討してみてください。
ただし、腰に痛みのない方や柔軟性の高い方にとっては、うつ伏せという姿勢が特別悪いものではありませんので、ご自身の体の状態に合わせて楽な姿勢を考えていきましょう。
妊娠中の腰痛は膝を軽く曲げる姿勢で痛みが軽減
妊娠中で寝るときに腰が痛い場合は、膝を軽く曲げた状態で骨盤の過度な傾きを抑えるとよいでしょう。また妊娠初期から中期にかけてであれば仰向けの姿勢、中期以降でお腹が大きくなってからは横向きの姿勢がおすすめです。
お腹が大きくなってくると骨盤が過度に傾きやすくなるだけではなく、仰向けで寝ると圧迫感から息苦しさを感じる方もいるので、自分がリラックスできる姿勢を探してみてください。
【疾患別】腰が痛い時に負担がかかりにくい寝方を紹介
次に、腰が痛いときにおすすめの寝方を疾患別に紹介します。同じ腰の疾患でも、疾患によって症状が異なるのでぜひ参考にしてみてください。
腰椎椎間板ヘルニア:しびれの出ない姿勢を探そう
腰椎椎間板ヘルニアと診断された経験のある方は、寝方によって痛みやしびれが治る方もいます。先述した通り、横向きの姿勢では腰椎に十分な支えがなく、腰椎が不安定となります。
十分な支えがないことで神経を圧迫してしまいますが、ヘルニアとなっている場所によっては症状の出ない寝方があるので、自分のしびれの出ない楽な姿勢を探すとよいでしょう。
参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介
坐骨神経痛:痛い方を下にする寝方は症状が増悪する
坐骨神経痛とは、腰から足にかけて走っている坐骨神経が、何らかの原因で圧迫されることでお尻から太ももの裏、外側にかけて痛みやしびれが出現する症状を指します。痛みのある方の足を下にして寝ることで、筋肉などの組織により坐骨神経が圧迫されて症状が出現することが多いので注意が必要です。
また、痛みの出る足を上にしていても、坐骨神経が伸ばされる状態となり痛みが出る場合があります。そのため、横向きの場合は足の間にクッションやタオルを入れて眠るとよいでしょう。
参考記事:【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!
参考記事:坐骨神経痛でやってはいけないことは?つらい症状を軽くする簡単ストレッチも紹介!
ぎっくり腰:横向きで腰への負担を減らそう
ぎっくり腰とは、急激な動作により筋肉が損傷し、強い痛みとなって出現する症状です。この強い痛みは、炎症症状が起きてから2~3日ほど続くケースが多く、無理をせずに安静にする必要があります。
寝返りを打つことも辛い状態なので、まずは自分にとって楽な姿勢を見つけることが重要です。痛めた場所によって個人差はありますが、一般的に横向きの姿勢が起き上がりの際に寝返りの必要がなく、腰に負担がかかりにくいと言われているのでぜひ試してみてください。
参考記事:【ぎっくり腰】これでひと安心!楽な姿勢(寝方・座り方)と対処法を解説!
参考記事:これってぎっくり腰!?腰椎捻挫の症状と自分でできるリハビリ方法をわかりやすく解説!
腰が痛い時におすすめの環境・動作
寝ているときや起床後に腰が痛い場合、睡眠環境や動作が影響している可能性があります。ここからは、腰痛を感じているときにおすすめの睡眠環境や動作について解説します。
腰痛の悪化を防ぎ、改善することも多いのでぜひ試してみてください。
参考記事:寝起きに背中が痛い原因とは?寝具の選び方・即効性が高いストレッチを紹介
寝返りをうちやすい敷ふとんやマットレスを選ぶ
先ほど述べたように、人は寝返りを打つことで長時間同じ姿勢をとることを防ぎ、背中につく筋肉の過度な緊張も防ぐことができます。反対に寝返りの回数が少ないことで、腰の痛みにつながる可能性があります。
そのため、寝ているときに腰が痛い場合は、寝返りの打ちやすい敷ふとんやマットレスなどの寝具を選ぶとよいでしょう。
寝返りの打ちやすい寝具を具体的に述べると、以下のとおりです。
- 適度な硬さや反発のある敷ふとんやマットレス
- 首が過度に反ったり下を向いたりしない適度な高さの枕
寝るときはコルセットを外そう
日常的に腰が痛い場合は「コルセット」を装着している方も多いのではないでしょうか。普段からコルセットを装着している方も、寝るときはコルセットを外すようにしましょう。
運動時の腰への負担を軽減する目的のあるコルセットですが、長い時間装着することで筋力の低下を引き起こし、腰の痛みが悪化するリスクもあります2)。また、寝ているときにコルセットを装着することで汗をかきやすく、湿疹などの肌トラブルの原因ともなりうるので注意が必要です。
参考記事:コルセットは寝る時に外すべき?就寝時・寝起きの腰痛を改善するセルフケアも紹介
腰への負担が少ない起床方法とは
腰に痛みがあるときは、腰への負担がなるべくかからない起床方法を確認しましょう。動作のポイントとしては、「腰を捻らないこと」と「腰に力が入らないようにすること」の2点です。この2点のポイントを踏まえて以下の起き上がり方を試してみてください。
STEP1:仰向けの状態からゆっくりと両膝を立てます
STEP2:身体を捻らないように上半身と下半身を同時に動かして横向きの姿勢をとります
STEP3:足をベッドの下におろせる場合はおろします
STEP4:頭や上半身の重みを腕で支えて肘を伸ばす力で起き上がります
STEP5:なるべく腰をまっすぐに保ちながら上体を起こします
まとめ
今回の記事では、腰が痛いときの寝方やおすすめの睡眠環境について解説しました。
寝方に合わせて自宅にあるものを使って痛みが改善でき、睡眠環境を工夫することで腰痛を改善できるケースがあるので、ぜひ試してみてください。
それでは本記事が、あなたの腰の痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
1)Alsaadi SM, James H McAuley, Julia M Hush et al:Poor sleep quality is strongly associated with subsequent pain intensity in patients with acute low back pain. Arthritis Rheumatol. 2014; 66: 1388 -1394.
2)小林正典:腰部コルセット装着の腰背筋群の筋力の影響に関する形状記憶合金入りコルセットを用いた実験と考察,大同大学紀要,50:p59-64,2014