腕の付け根が痛い原因とは?症状に合ったストレッチなどの対処法について解説

腕の付け根に痛みがあると、「肩を挙げる」「腕を後ろに回す」などの動作が難しくなります。

仕事や日常生活でも思うように腕を動かせず、不便と感じている方も多いでしょう。痛みの原因はさまざまですが、症状に合った適切な対処をすることで痛みの緩和に役立ちます

そこで当記事では、腕の付け根に痛みを生じる原因やストレッチなどの対処法について、わかりやすく解説します。

当記事を参考にすることで、腕の付け根に痛みがある際の疑問が解決できれば幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。

腕の付け根に痛みが出現した時に疑われる5つの原因とは?

肩の状態を確認する人の写真

まずは、腕の付け根に痛みを感じる際に疑われる、5つの原因について解説します。

特徴的な症状や、痛みが出る場所も説明するので、自分の症状と照らし合わせながらご確認ください。

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩):夜間にズキズキと痛む

肩の炎症を説明したイラスト

腕を挙げるなどの動作時就寝時に、腕の付け根や二の腕が眠れないほどズキズキと痛む場合は、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)が疑われます。

いわゆる五十肩四十肩と呼ばれる疾患で、肩周辺の靭帯や腱などの組織に炎症が起きている状態です。

肩関節周囲炎の原因は関節を構成する骨や靭帯、腱などの老化であると考えられています。そのため、40~70歳代で発症する方が80%以上です1)

主な症状として腕の付け根や二の腕、肩周囲などの強い痛みの他に、肩の動きが悪くなることも挙げられます。発症初期の段階では痛みが強いため無理はできませんが、痛みに配慮しながらストレッチなどを行い、肩の硬さを防ぐ必要があるでしょう。

参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介
参考記事:四十肩を早く治す方法が知りたい!痛み緩和に有効なストレッチや寝方・ツボを解説

腱板損傷:肩に力が入らない

腱板損傷を説明したイラスト

肩に力が入らず腕をうまく動かせない腕を挙げる途中で肩関節周囲がゴリゴリと鳴るなどの症状がある場合は、腱板損傷(けんばんそんしょう)が疑われます。

腱板損傷とは、不安定な肩を脱臼などのけがから守る役割がある腱板が損傷することで痛みが出る症状です。

加齢転倒のほかに、腕の使いすぎが原因となるケースも多く、肩関節周囲炎と比べると幅広い世代で発症しやすいです。

腱板損傷を発症した人の2/3は症状がないと言われており2)、損傷しても他の筋肉を使ってうまく腕を動かせる場合も。ただし、腱板損傷は気づかないうちに進行してしまう場合もあり、自然に治ることはありません。

症状が改善しない場合は手術が必要となるケースもあります。早期回復のためにも、気になる症状がある場合はすぐに病院へ受診しましょう。

参考記事:腕を上げると肩が痛い場合の対処法!『五十肩』や『腱板断裂』など原因別に解説!
参考記事:肩甲骨を回すとゴリゴリ鳴る!正体は筋肉のコリ?音の原因や解消法を詳しく解説

頸椎ヘルニア:腕にしびれがある

頸椎椎間板ヘルニアの病態を説明したイラスト

首や肩甲骨、腕の痛みに合わせて、手足のしびれ動きにくさがみられる場合は頸椎ヘルニアが疑われます。

骨と骨の間で衝撃を吸収する役割がある「椎間板(ついかんばん)」が破れ、脊髄や神経を圧迫してしまう状態が頸椎ヘルニアです。痛みやしびれ、頭痛など、圧迫する部位や程度によって症状は異なります。

30~50歳代の方が最も発症しやすく、加齢による椎間板の変化が発症の原因の一つです。また、首に負担のかかる重労働スポーツ、姿勢の悪さが原因となることもあります。

頸椎ヘルニアは対処をせずに放置すると、徐々に症状は進行します。重症化すると歩行障害めまいなどが現れることもあるため、早い段階で病院を受診し治療することが重要です。

参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介

寝違え:朝起きると急に痛くなった

首の痛みを気にする女性の写真

起床後、突然首から腕、背中側にかけて痛みが出た場合は、寝違えである可能性が疑われます。単なる寝違えとは言え、首を動かせないほど痛みが強いことも。

一般的にはレントゲンなどで見られる変化はありません。原因についてはさまざまな意見がありますが、睡眠中に同じ姿勢が連続することや、日中の腕の使いすぎが原因であると考えられています。

数時間経過すると痛みは落ち着くことが多いので、なるべく痛みのある方向に首を動かさず安静にしていましょう。ただし、痛みが強い時は他の病気も考えられるため、整形外科病院に一度受診することをオススメします。

参考記事:【首の寝違えの治し方】原因と痛みの対処におすすめのストレッチ3選を紹介
参考記事:【首を寝違えたような痛み】突然起きる痛みの原因と対処法を解説!

乳がん:脇の下を押すと痛い

乳がん早期の段階で症状を自覚しにくい病気の一つ。進行するにつれて乳房のしこりや皮膚の赤み、腫れなどの症状が出現するのが特徴です。

また、乳がんはリンパ節に転移することが多く、脇の下にしこりや腫れ、腕のしびれなどの症状を引き起こします。

40~50歳代の女性に多い病気ですが、全体の約1%は男性患者である3)と言われています。

早い段階で治療を行うことで完治する可能性が高いため、定期健診を受けるように心がけてください。

【症状別】腕の付け根が痛い時の対処法を紹介

ここからは上記で説明した症状に合わせて、腕の付け根に痛みがある時の適切な対処法について解説します。

無理のない範囲でできるものを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

痛みが強い・しびれがある場合はすぐに病院を受診しよう

日常生活に支障をきたすような症状がみられる場合は、すぐに病院へ受診しましょう。早い段階で検査や治療を行うことで、早期回復につながります。

ただし、上記で説明した原因の中でも、症状によって受診する診療科は異なるため注意が必要です。

一般的に腕や肩の痛みは整形外科を受診する

腕や肩周りの痛みや、しびれなどの症状がある場合は整形外科を受診しましょう。

整形外科を受診し、レントゲンやMRIなどの検査をすることで症状の原因を特定できます。さらに、専門医と相談しながら症状に合った適切な治療を受けられるというメリットもあります。

乳がんが疑われる時は乳腺外科・外科を受診する

腕の付け根の痛みに合わせて、乳房のしこりや皮膚の赤み腫れがみられる場合は、乳腺外科や外科のある病院を受診しましょう。女性に多い病気のため、婦人科の受診を考える方も多いですが、婦人科では検査や治療を行いません。

また、早期治療で治癒する可能性が高い乳がんは、定期的に健診を受けることが重要です。住んでいる地域によっては助成金があり、自己負担なく検査を受けられる場合もあるため、ぜひ一度ご確認ください。

安静状態で痛い時は肩に負担がかからないように注意しよう

何もしていない状態で腕に痛みが出る場合は、手に負担がかかりやすい重労働やスポーツを制限しましょう。

また、肩関節周囲炎が原因で就寝中にも痛みが強い際は、痛みが出現しにくい姿勢を見つけることが重要です。

寝起きする際に腕を自分の力で動かすと痛い時は、反対の腕で動きをサポートすると痛みを軽減できます。下記の動画を参考に、枕やタオルを用いて自分が楽な姿勢を探してみてください。

日常的に良い姿勢を心がけよう

頸椎ヘルニアや寝違えなどは、日常的な姿勢の悪さが原因の一つであると考えられています。首が前に突き出るような猫背姿勢や、背中が丸まった状態を続けることで、症状が悪化してしまう可能性も。

また、長時間同じ姿勢をとることで、首や背中、肩周りの筋肉に負担がかかりやすいです。とくに、一日中パソコンを使うデスクワークが多い方や、長時間運転をすることが多い方は注意しましょう。

普段から良い姿勢を心がけ、定期的に席を立つようにするなど、体に負担がかからないように工夫してみてください。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
参考記事:首が前に出る姿勢(ストレートネック)の原因は?ストレッチや筋トレでの治し方を解説

痛みが落ち着いたら無理のない範囲で運動を行う

炎症症状が落ち着き、腕の痛みが軽減してきた段階でストレッチ筋力トレーニングを行い、少しずつ腕の可動範囲を広げましょう。

肩関節周囲炎では痛みで動かせない時期があるため、肩周りの皮膚や筋肉への血流が減少し、とくに動きが悪くなりやすいです。症状によっては、痛みが落ち着いても肩の動きが制限されてしまい、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。

次項では、肩に負担をかけずにできる簡単なストレッチを紹介するので、ぜひ試してみてください。

腕の付け根に痛みがある時にオススメのストレッチ3選!

ここからは、肩関節周囲炎や腱板損傷の症状改善に最適なストレッチを紹介します。

肩に負担がかかりにくいものを紹介するので、腫れや痛みなどの炎症症状が落ち着いた段階で試してみましょう。

肩関節外旋運動

まずは、肩周りの安定性を高める効果がある「肩関節外旋運動(かたかんせつがいせんうんどう)」を紹介します。肩の安定性が高まることで腕への負担を軽減でき、痛みの改善にも効果的です。

ただし、症状によっては痛みが強く出る場合もあるため、痛みの調子をみながら慎重に行いましょう。

肩関節外旋運動

STEP1:横向きとなり肘を90℃に曲げましょう
STEP2:脇を閉じたまま腕を天井方向へ回します
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:腕はゆっくりと動かしましょう
※体が開かないように注意しましょう

広背筋ストレッチ

次に、背中から脇の下まで伸びる大きな筋肉「広背筋(こうはいきん)」のストレッチを紹介します。

広背筋に硬さがあると、腕を挙げにくくなるだけではなく、猫背などの姿勢の悪さにもつながります。そのため、長時間同じ姿勢をとることが多い方にオススメのストレッチです。

腕の痛みが軽減した後にもストレッチを継続することで、再発を予防できるでしょう。

広背筋ストレッチ

STEP1:両手をつないで万歳しましょう
STEP2:片側のお尻に重心を乗せ反対側へ体を傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
STEP5:脇腹の伸びを感じながら実施しましょう
※反対側のお尻に重心をのせましょう

テーブルサンディング

次に、腕を挙げにくい時にオススメの「テーブルサンディング」を紹介します。

テーブルやタオルを用いて行うため、肩への負担がかかりにくいエクササイズです。痛みを感じない範囲でしっかり伸ばすことで、肩を挙げる動きを改善する効果があるでしょう。

テーブルサンディング

STEP1:タオルの上に手を置きましょう
STEP2:タオルを滑らせ手を前方に動かしましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:痛みのない範囲で手を伸ばしましょう
※背中を丸めないように注意しましょう

【要注意】これを続けているとなかなか治らない可能性あり!

最後に、なかなか腕の痛みが治らないという方に確認していただきたい、2つのポイントについて解説します。

自分の日常生活で当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみてください。

痛みが強い状態で腕に負担がかかる運動や仕事をする

ソファを持ち上げる女性の写真

安静状態で痛みが強いなどの炎症症状がある場合、腕に負担がかかるような重労働やスポーツは行ってはいけません。痛みを我慢して動かすことで、症状が長引いたり悪化したりする可能性が高いです。

日常生活では「腕を高く挙げる」「手を後ろに回す」などの動作も、なるべく控えて安静を心がけましょう。

痛みが落ち着いたのに動かさない

炎症が落ち着いたにもかかわらず、ストレッチなどをせずに安静にしていると、どんどん肩が動きにくくなってしまいます。そのため、痛みが落ち着いてきたら、今度は積極的にストレッチなどで肩や背中周りを動かしましょう

また、ストレッチの継続や日常的に良い姿勢を心がけることは、再発予防にも効果的です。日々の体のケアとして、痛みなどの症状が落ち着いたあともぜひ続けてみてください。

まとめ

今回は、腕の付け根が痛い原因やストレッチなどの対処法について解説しました。

腕に痛みがあり思うように動かせないとなると、仕事や家事などの日常生活にも大きく支障をきたします。痛みが長期にわたることで、不便を感じる方も多いでしょう。

しかし、原因に合わせて適切な対処を行うことで、症状の重症化を防げます。また、普段の姿勢や生活習慣を見直すことが再発予防にも効果的です。

今回紹介したストレッチや筋力トレーニングを参考に、継続して体のケアを行ってみてください。

それでは、本記事があなたの痛み改善にお役立ていただけますと幸いです。

参考文献
1)村木 孝行:肩関節周囲炎 理学療法ガイドライン,理学療法学.43(1)67-72,2016
2)井樋 栄二:腱板断裂の治療とリハビリテーション,Jpn J Rehabil Med .56(8)650-655.2019
3)原 由起子,多田敬一郎:乳がんの治療と最近の傾向,日大医誌80(6),281-284.2021