太ももの痛みはあなどれません。
太ももが痛むことで、歩行はもちろん走る動作やジャンプ動作に支障が出ます。そのまま放置して悪化すれば、膝や腰の痛みに広がる可能性も。
太ももの痛みを早期改善するには、セルフケアの実践や生活習慣の見直しが必要です。
そこで当記事では、太ももが痛い場合に考えられる原因と症状、おすすめのセルフケア方法を紹介します。
最後まで目を通すことで、ご自身の太ももが痛む原因や適切な対処法が見つかるでしょう。
【最初に確認】太ももってどこ?どんな働きをするの?
最初に、太ももについて確認しておきましょう。
太ももは「大腿部(だいたいぶ)」とも呼ばれ、膝と股関節の間の部位を指します。一般的に太ももというと前側をイメージされるかもしれませんが、後面や内側・外側も含まれます。
太ももの役割は「脚を前後左右に動かす」「膝を曲げる」といった動きや、「身体を支える」などです。したがって、歩く・走る・しゃがむ・ジャンプするといった動作には、太ももの働きが欠かせません。
そして、太ももには複数の筋肉や神経・靭帯(骨と骨をつなぐ繊維)が付いています。
太ももが痛い原因と考えられる症状を紹介
太ももの痛みの原因として考えられるのは、以下の3つです。
- 神経の損傷
- 筋肉の損傷・炎症
- 靭帯の炎症
またこれらの損傷や炎症が発生する背景には、太ももの酷使(スポーツを含む)や姿勢の悪さ、生活習慣による太ももへの負担が関係しています。
以下より具体的な症状について紹介していきますので、ご自身の痛みと照らし合わせながらご覧ください。
大腿神経痛【前側】
太ももの前面に痛みが出たり、力が入りにくくなったりする症状が「大腿神経痛(だいたいしんけいつう)」です。
「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」や「腰椎椎間板ヘルニア」など、腰が原因の症状から派生するケースが多いです。
肥満や太ももの締め付けすぎ、妊娠、過度な運動などが原因になります。
参考記事:【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!
参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
外側大腿皮神経障害【外側】
太ももの外側に痛みやしびれが出る場合、「外側大腿皮神経障害(がいそくだいたいひしんけいしょうがい)」の可能性があります。
高齢女性に多く見られ、歩行時や立った姿勢で痛みが増し、しゃがむと楽になるのが特徴です。
先ほど解説した大腿神経痛と同様に、肥満や太ももの強い締め付け、妊娠が原因になりやすいです。ただし、力が入りにくくなる症状はほとんど見られません。
腸脛靭帯炎【外側】
ランナーに多く見られる症状が「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」です。
走る動作によって脚に負担がかかった結果、太ももの外側から膝にかけて付く腸脛靭帯が炎症を起こします。したがって、膝に近い太ももの外側が痛みます。
重症になると、靭帯が断裂するケースもあるので注意が必要です。
閉鎖神経痛【内側】
太ももの内側(内もも)が痛む・しびれる場合、「閉鎖神経痛(へいさしんけいつう)」の可能性が考えられます。
ただし、閉鎖神経痛の症例は多くありません。
骨盤の内側にある「閉鎖孔(へいさこう)」を通る閉鎖神経が圧迫されることが閉鎖神経痛の原因で、肥満や座って脚を組む癖などがきっかけになりやすいです。
グロインペイン症候群【内側】
鼠径部(そけいぶ)周辺を中心に太ももの内側が痛むケースでは、「グロインペイン症候群」が考えられます。
グロインペイン症候群は鼠径部や股間、内ももに現れる痛みの総称。
サッカー選手やアイスホッケー選手に多いのが特徴で、競技における鼠径部・股関節への負担の蓄積が主な原因です。
痛みや筋力低下が主な症状で、重症になると運動の休養を余儀なくされる場合もあります。
坐骨神経痛【後ろ側】
太ももの後ろがピリピリ痛む・しびれる場合、「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」を疑いましょう。
「坐骨神経痛」は、腰から足の甲までつながる坐骨神経が圧迫され起こる症状の総称です。
そして坐骨神経痛が現れる症状(病気)の例は以下の通りです。
- 腰部脊柱菅狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)
したがって、太もものしびれと腰の痛みを併発している場合は坐骨神経痛の可能性が高いといえます。
なお、坐骨神経痛は太ももの後ろに現れるケースが多いですが、太ももの外側や前面に現れるケースもあります。
参考記事:【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!
肉離れ
「急に太ももが痛くなった」「太ももがズキズキ痛む」場合は、「肉離れ」の可能性が高いです。
肉離れの正式名称は「筋挫傷(きんざしょう)」。筋肉が部分的に損傷または断裂を起こした状態を指します。
そして、太ももは肉離れが起こりやすく、最も多いのが裏側(ハムストリングス)で、次いで多いのが前側(大腿四頭筋)です。
太ももの肉離れは、スポーツが原因で起こるケースが大半を占めます。過度な運動によって疲労がたまると肉離れになりやすいので十分注意してみてください。
参考記事:肉離れを早く治すコツとは?痛みの原因に効くストレッチやマッサージ・食べ物を解説
参考記事:肉離れが治るまで何日かかる?早く治すコツや部位別のストレッチ方法も紹介
参考記事:【肉離れの治し方】痛みを早く治すための応急処置やストレッチの方法を解説
筋肉痛
運動した翌日に太ももが痛むのは「筋肉痛」が原因だと考えられます。
筋肉痛は、運動によって筋肉が傷ついたり炎症を起こしたりした状態を指します。したがって、しびれなどは起こりません。
久しぶりに運動した際に筋肉痛が起こりやすいので把握しておきましょう。
太ももの痛みはどのくらいで治まる?
太ももの痛みが改善するまでの期間は、原因によって異なります。
筋肉の炎症(筋肉痛)の場合、1週間以内に痛みが改善する例が多いです。神経が原因の痛みの場合は、1か月から2か月かかるとお考えください。
そして筋肉の断裂(肉離れ)の場合、軽度なら2週間ほどで改善しますが、重症だと3か月以上かかるケースもあり得ます。
また、靭帯の炎症(腸脛靭帯炎)の場合、運動を休めば2か月ほどで痛みが引くケースが多いものの、中には6か月以上も痛みが続くケースが存在します。
もちろん生活習慣や痛みの度合いによっては、改善までより長い日数が必要です。
太ももが痛いまま放置したらどうなる?
太ももが痛いまま放置すれば、当然ですが痛みは増すでしょう。
自然に痛みが減る場合もあり得ますが、痛み自体は残ることになります。すると脚部を動かしにくくなったり、腰痛や膝の痛みにつながったりします。
したがって、太ももの痛みをそのまま放置することはおすすめしません。
太ももの痛みを改善するためのエクササイズ・セルフケア
太ももの痛みに対して、適切な対処法を行うことで改善までの期間を短くできます。
ここから、おすすめのエクササイズ・セルフケアを紹介します。いずれも実践しやすい方法ですので、ぜひ取り入れてみましょう。
十分な休養
痛みが強いうちは、無理に動かしたりせず、十分に休養を取りましょう。
とくにスポーツプレイヤーの場合、早く練習を再開したいと思うのは当然ですが、焦りは禁物です。無理に動くと炎症や損傷が広がるおそれもあります。
痛みが引くまで運動は控え、セルフケアに取り組むことを考えてみてください。
あわせて、痛みが現れた直後は氷を当てながら入念に冷やすことも有効です。
ストレッチ
太ももの痛みを改善するために、とくに重視すべきはストレッチです。
ストレッチを続けることで、筋肉が伸ばされて血液の流れが良くなり、痛みの早期改善が期待できます。
ではここから、おすすめストレッチを動画付きで解説しますので、さっそく実践してみてください。
太もも前面を伸ばすには「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)ストレッチ」がおすすめです。
横向きに寝た姿勢から上の脚を曲げ、手で持ちます。そこから後方に引っ張りましょう。このストレッチによって大腿四頭筋を効率的に伸ばせます。
太ももの後ろには「ハムストリングスストレッチ」が効きます。
仰向けになり片側の脚を抱えます。ここから足を伸ばしてみてください。太ももの裏に付くハムストリングスが伸びます。
太もも内側に効くのが「座位四股(ざいしこ)ストレッチ」です。
椅子に座った姿勢から両足を開きます。両膝に手を当てて骨盤を前方に倒します。お相撲さんが試合前に行う「四股(しこ)」をイメージしてみてください。
こちらのストレッチで、内ももに付く「内転筋群」を伸ばせます。
太ももの外側を伸ばすために「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)ストレッチ」を行ってみましょう。
仰向けから片方の脚を曲げて、もう片方の脚を太ももに乗せます。ここから乗せた側の脚の方向へ身体を捻り、保持してみてください。
この方法で、太ももの外側に付く「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」が伸びます。
いずれも自宅で簡単に行えるので、ぜひ継続していきましょう。
筋力トレーニング
痛みが悪化しない範囲で筋力トレーニングを行うことも有効です。
一歩前に踏み出しながら膝を曲げる「ランジ」や、仰向けから膝を曲げて臀部を挙げる「ハムストリングブリッジ」がおすすめ。
ただし、無理や焦りは禁物です。まずはストレッチを入念に行ったうえで、徐々に筋トレを行っていきましょう。
セルフマッサージ
太ももへのセルフマッサージ(揉みほぐし)もおすすめです。ストレッチとあわせて行うことで、痛みの回復がより早まるでしょう。
セルフマッサージを行う際は、指もしくは手のひらを使ってみてください。そのうえで、上から強く押し付けることはせず、優しい力でさすって揺らすようにほぐしましょう。
他には、テニスボールやフォームローラー(筋膜リリース用の道具)を床に置き、太ももに当てて転がす方法も有効です。
姿勢に気をつける
悪い姿勢が原因で、太ももへ過度な負荷がかかっている可能性も考えられます。
猫背や反り腰になっていると、身体のバランスを取ろうと無意識に太ももが緊張して、次第に痛みへと変わっていきます。
したがって、正しい姿勢で過ごすことで太ももの緊張が減り、痛みの改善が期待できるでしょう。
まずは頭を正しい位置に保つために、顎を若干後ろに引いてみてください。これだけで正しい姿勢をキープしやすいです。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
参考記事:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
太ももを締め付けすぎないように注意する
日常生活のなかで、太ももを締め付けすぎていないでしょうか?
たとえば「締め付けが強い下着やガードルを履いている」「痩せていた頃に買ったジーンズを無理して履いている」などです。
こういった太ももの締め付けが血流の悪化につながり、太ももの痛みを生む可能性があります。
もちろん1日だけ履くだけなら問題はありませんが、長期間履いているなら注意が必要です。
ご自身の現在の体型に合わせて服を選ぶとともに、締め付けが強い下着やガードルを長期間着用することはできるだけ避けてみましょう。
痛みが引かない場合は病院で診てもらうことが大事
もし、セルフケアを続けているのに痛みがまったく引かない場合は、病院で診てもらいましょう。
重篤な病気が原因で太ももに痛みが出ている可能性もあります。そして病気の発見には精密な検査が必要です。
手遅れにならないように、できるだけ早めの受診をおすすめします。
まとめ
太ももが痛む原因はさまざまです。
過度な運動や疲労による痛みもあれば、悪い姿勢や肥満、ジーンズや下着の締め付けが原因で起こる痛みも存在します。
太ももが痛くて動かせないと、日常動作に大きく影響します。「痛い」と感じたら、そのまま放置せず早めのケアを心がけましょう。
当記事を参考にストレッチや筋トレを続けつつ、生活習慣をあらためて見直してみてください。
あなたの太ももの痛みが早く改善することを願っています。
【参考文献】
1)C Hughes 4th 1, C T Hasselman, T M Best, S Martinez, W E Garrett Jr:Incomplete, intrasubstance strain injuries of the rectus femoris muscle
2)財団法人 日本体育協会 スポーツ医・科学専門委員会:№Ⅴ肉離れに関する最新の指針
3)Alun G Davies 1, Andrew W Clarke, J Gilmore, M Wotherspoon, David A Connell:Review: imaging of groin pain in the athlete
4)Kevork Hopayian 1, Armine Danielyan:Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features
5)Darren de Sa 1, Per Hölmich 2, Mark Phillips 3, Sebastian Heaven 1, Nicole Simunovic 3, Marc J Philippon 4, Olufemi R Ayeni:Athletic groin pain: a systematic review of surgical diagnoses, investigations and treatment