夜中にふくらはぎが突然つって目が覚めたり、運動中に激しい痛みに襲われた経験はありませんか?
この記事では、足がつる原因やその背景にある体の仕組みをわかりやすく解説。さらに、日常でできる予防法や、つった時にすぐできる対処法・ストレッチも紹介します。
足がつるとは?その仕組みと起こるタイミング
「足がつる」とはどういう状態なのかや、起こりやすいタイミングについても理解しておくことが大切です。以下より詳しく解説しているのでみていきましょう。
筋肉の誤作動による痙攣が原因
「足がつる」とは、医学的には「筋痙攣(きんけいれん)」と呼ばれる現象で、意図せず筋肉が急激に縮み続けてしまう状態を指します。特にふくらはぎの筋肉(腓腹筋やヒラメ筋)が影響を受けやすく、本人の意思とは無関係に収縮し、激しい痛みを伴います。
この収縮は通常、脳からの命令で制御されていますが、何らかの理由で信号の伝達が誤作動を起こし、筋肉が必要以上に収縮したまま戻らなくなることで「つる」現象が発生します。いわば、筋肉の「暴走状態」といえるでしょう。
よく起きるシーン1:夜中の就寝中
多くの人が経験するのが「寝ているときに足がつる」ケースです。特に明け方、まだ体が深く休んでいる時間帯に起こりやすいとされています。これは、就寝中は体温が下がり血行も緩やかになるため、筋肉が冷えて硬直しやすくなるからです。また、寝ている姿勢が長時間変わらないことで、筋肉が軽い緊張状態に陥っていることも一因です。
よく起きるシーン2:伸びをした瞬間
朝起きた直後や、体を思い切り伸ばした瞬間に足がつることもあります。これは、急激に筋肉を伸ばしたことで、脳からの信号が乱れ、筋肉が誤って収縮してしまうためです。特に運動不足の人や筋肉がこわばっている人は、この反応が強く出やすくなります。
よく起きるシーン3:運動中または運動直後
スポーツや激しい動きのあとに足がつる経験をした方も多いのではないでしょうか。これは、運動によって筋肉が過度に使われ疲労した状態であること、また汗で体内の水分や電解質(ナトリウムやカリウムなど)が不足していることが主な原因です。とくに夏場や水分補給が不十分な状況ではリスクが高まります。
こむら返りとの違いと共通点
「足がつる」とほぼ同義で使われる言葉に「こむら返り」がありますが、厳密には「こむら返り」はふくらはぎの筋肉がつった状態を指します。つまり、こむら返りは「足がつる」現象の中の一部という位置づけです。
どちらも原因や対処法は共通しており、特に中高年層では頻度が高まるため、日常のケアが重要です。
足をつる主な原因とそのメカニズム
足がつる原因は様々あります。電解質のバランスの乱れや血行不良、筋肉の柔軟性の低下などの原因が挙げられます。それぞれについてみていきましょう。
水分・ミネラル不足による電解質バランスの乱れ
もっとも多く見られる原因のひとつが、体内の水分やミネラル(電解質)バランスの乱れです。人間の筋肉はナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムといった電解質の働きによって、伸び縮みをスムーズに行っています。ところが、発汗や脱水、偏った食生活などでこれらが不足すると、筋肉の動きを調整する神経伝達が乱れ、誤って収縮指令が出続けることがあります。
とくに夏場やスポーツ中など、大量に汗をかく場面では注意が必要です。水だけでなく、ミネラル分を一緒に補うことが大切で、例えばバナナや梅干し、経口補水液、スポーツドリンクなどが有効です。
血行不良や冷えによる筋肉の硬直
足先は心臓からの距離が遠いため、冷えやすく血流が滞りやすい部位です。血行が悪くなると、筋肉に必要な酸素や栄養素が行き届きにくくなり、筋肉の働きが鈍くなってしまいます。その結果、神経や筋線維の反応が乱れて「つる」状態につながるのです。
とくに就寝時や朝方、室温が低下する時間帯は冷えやすく、つりやすい状況が整いやすくなります。寝る前にレッグウォーマーを着用したり、湯たんぽで足元を温めることで予防に効果的です。また、長時間座りっぱなし・立ちっぱなしの仕事をしている人も、血流の低下により足がつる傾向があります。
筋肉疲労・運動不足・筋力低下
筋肉は使いすぎても、逆に使わなさすぎても、つりやすくなります。ハードな運動や長距離歩行などで筋肉が疲労すると、乳酸などの疲労物質が蓄積し、筋肉が正常に働かなくなります。疲れた筋肉は、わずかな刺激で異常収縮を起こしやすくなり、結果として足がつってしまうのです。
一方で、運動不足や加齢によって筋力が低下している人も要注意。筋肉が弱ると、筋収縮や神経伝達のコントロールが不安定になり、些細なきっかけで足をつりやすくなります。特に中高年ではこの傾向が顕著で、日常的なストレッチや軽い運動の習慣が重要になります。
病気が隠れている可能性も?
一時的な筋肉の誤作動ではなく、背景に病気が潜んでいるケースもあります。たとえば、動脈硬化によって足の血流が著しく悪化している場合や、糖尿病による末梢神経障害、腎疾患による電解質異常などが挙げられます。また、心筋梗塞や脳梗塞の前兆として足がつる症状が出ることもあり、繰り返し足がつる人は注意が必要です。
さらに、妊娠中の女性や、甲状腺機能異常、肝機能低下などホルモンバランスや代謝に関わる病態でも、足のつりが起こることがあります。もし片足だけに集中して頻繁につったり、その他の異常な症状を伴う場合は、医療機関での相談をおすすめします。
参考記事:足がつる(こむら返り)の原因が知りたい!すぐできる対処法や予防法を解説
足をつるのを防ぐための5つの予防法
本章では、日常生活の中で簡単にできる「つり予防」を5つ紹介します。すぐに取り入れる内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。
1. 水分補給とミネラル摂取を意識する
足がつる原因として最も多いのが、脱水や電解質の不足です。これを防ぐためには、日常的に水分とミネラルの両方を適切に摂取することが大切です。特に汗をかきやすい夏場や運動後には、ただの水だけでなく、ナトリウムやカリウムを含んだ飲料を選ぶとよいでしょう。
具体的には、スポーツドリンクや塩分を含む梅干し、カリウム豊富なバナナなどが効果的です。また、朝起きた直後やお風呂上がり、寝る前など、水分が失われがちなタイミングでこまめに補給する習慣を持ちましょう。
2. 冷え対策で血流を促す
冷えは血流を悪化させ、筋肉がこわばることで足がつる原因になります。特に女性や高齢者は冷え性になりやすいため、日常的な冷え対策が欠かせません。足首を温めるレッグウォーマーや、寝る前に使う湯たんぽは、下半身の血流を良くするのに役立ちます。
また、エアコンを使用する季節は、足元だけ冷えないように工夫が必要です。靴下を履いたり、ひざ掛けを使うなどのちょっとした対策が、足のつり予防につながります。
3. 寝る前のストレッチと軽い運動を習慣に
筋肉が硬くなることも、足をつる原因の一つです。そのため、就寝前に軽いストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が保たれ、つりにくくなります。とくにふくらはぎや足裏のストレッチは効果的です。
例としては、壁に手をついて片足を後ろに引き、ふくらはぎをじんわりと伸ばす「カーフストレッチ」や、床に座ってつま先をつかみ足裏を伸ばすストレッチなどがおすすめです。また、日中の適度なウォーキングや軽いスクワットも筋力維持に有効で、特に運動不足を感じている方には積極的に取り入れてほしい習慣です。
4. 寝具の見直しや姿勢の改善も重要
実は「布団の中で伸びをした瞬間につる」という人も少なくありません。これは寝具の硬さや寝姿勢によって筋肉に不自然な緊張がかかっている場合があります。マットレスが柔らかすぎたり硬すぎたりすると、筋肉に負担がかかりやすくなるため、適度な反発力を持った寝具に見直すことが大切です。
また、枕の高さや寝返りのしやすさも関係しているため、寝具全体を見直すことが予防につながります。寝る前の姿勢も含めて、筋肉が自然な形でリラックスできる環境を整えることが、つりを防ぐ第一歩です。
5. 栄養バランスを意識した食生活
足がつるのを防ぐには、筋肉の働きをサポートする栄養素を日々の食事で摂ることも欠かせません。カリウムやカルシウム、マグネシウム、ビタミンB群などは筋肉の収縮と弛緩に深く関係しています。
たとえば、カリウムはバナナやアボカドに、カルシウムは牛乳や小魚、マグネシウムはナッツ類や海藻に豊富です。ビタミンB群は豚肉や納豆、玄米などに含まれており、神経や筋肉の働きを正常に保つ役割があります。これらを意識してバランスよく取り入れることで、足のつりを根本から予防できます。
足がつったときの即効対処法とセルフストレッチ
ここからは、即効性があるストレッチを紹介します。とくに、「寝ている時に足がつってしまったらどうしよう」と思っている方におすすめです。
つった足を正しく伸ばす方法(腓腹筋・ヒラメ筋)
足がつったら、まずは焦らず深呼吸をし、つった筋肉をゆっくりと伸ばしましょう。特にふくらはぎがつった場合は、腓腹筋やヒラメ筋のストレッチが効果的です。
腓腹筋ストレッチ
STEP1:タオルをつま先にかけましょう。
STEP2:タオルを引っ張り足首を反らせましょう。
STEP3:力をゆるめましょう。
注意点:タオルがない場合は、軽く膝を曲げて手でつま先を掴みましょう。
マッサージや温めも有効
ストレッチの後、筋肉の緊張が続いているようであれば、やさしくマッサージして筋肉をほぐしてあげましょう。手のひらで軽くさすったり、指の腹で筋肉に沿って圧をかけながら揉みほぐすことで、血流が改善され、回復が早まります。
また、冷えていると感じた場合には温めも有効です。カイロや温タオル、お風呂などで温めることで筋肉の緊張をやわらげ、再発の予防にもつながります。特に就寝中につる人は、寝る前に足を温めておくと良いでしょう。
症状が重い場合は漢方や市販薬も検討
頻繁につる、夜中に何度も目が覚める、といった強い症状が続く場合には、市販薬や漢方の使用を検討してもよいでしょう。特に有名なのが「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬で、急激な筋収縮による痛みに対して即効性が期待されます。
市販薬の中には、カルシウムやマグネシウムを含むサプリメントタイプのものや、漢方薬成分を配合したものもあります。ただし、服用を始める前に、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。背景に病気が潜んでいる可能性もあるため、自己判断での継続使用には注意が必要です。
つってしまった後に気をつけたいこと
一度足がつると、しばらくは筋肉が張った状態が続き、再発しやすい状態になっています。そのため、つった直後だけでなく、その後数時間は筋肉のケアを意識することが大切です。急に歩き出したり、同じ姿勢を長く続けるのではなく、定期的に軽く動かしたり、再度ストレッチを行うとよいでしょう。
また、つった原因が明確であれば、それに対する対策(例:水分補給・冷え対策・睡眠環境の見直しなど)を速やかに実行して、再発を防ぐ意識を持ちましょう。
足を頻繁につる人が注意すべきポイント
足のつりが日常的に続く場合には、注意が必要です。片足だけ頻繁につる場合にはとくに気をつけてください。また、足をつる原因に心当たりがない方は早めに医療機関を受診しましょう。
片足だけ頻繁につる場合は要注意
足がつるという現象は多くの人が経験するものですが、特に「片足だけ」「同じ箇所ばかり」「頻繁につる」といった特徴がある場合は、単なる筋肉の問題にとどまらず、体の深部に別の問題が隠れている可能性があります。
たとえば、下肢静脈瘤や動脈硬化など血管系の異常がある場合、一方の足にだけ血流障害が起こり、それが足のつりとして現れることがあります。神経の圧迫や椎間板ヘルニアのような整形外科的な疾患でも、片側の神経伝達に乱れが生じ、足がつる原因となることがあります。
単なるつりだと軽く考えず、明らかに片足だけに症状が集中しているようであれば、早めに整形外科や血管外科を受診しましょう。
心当たりがないのにつる場合は医療機関へ
特に運動をしたわけでもなく、冷えや脱水の状況にもないのに、頻繁に足がつるという方は、体の内側に異常があるサインかもしれません。
以下のような疾患が背景にあることがあります:
- 糖尿病による末梢神経障害:神経が傷つくことで筋肉の制御がうまくいかず、つりやすくなります。
- 腎機能障害:電解質バランスが崩れやすくなり、足がつる要因になります。
- 甲状腺機能の低下:代謝の低下によって冷えや筋肉の硬直を引き起こします。
- 肝機能の異常や栄養障害:タンパク質不足、ビタミン・ミネラルの欠乏で筋肉機能が低下します。
- 脳梗塞・心筋梗塞の前兆:血流の急激な変化により、足のつりとして前触れが現れることもあります。
このように、繰り返す足のつりは重大な疾患のサインであることもあるため、数週間以上続く場合や、日常生活に支障が出るほど頻度が高い場合は、医療機関での検査をおすすめします。
まとめ
足がつる主な原因は、筋肉の誤作動による痙攣です。水分・ミネラル不足や冷え、運動不足などが影響します。予防には水分補給、栄養バランスの改善、冷え対策、就寝前のストレッチなどが効果的です。
万が一つってしまった場合は、落ち着いてストレッチやマッサージを行いましょう。頻繁につる場合は病気の可能性もあるため、生活習慣の見直しとあわせて、医療機関での相談も検討することが大切です。
【参考文献】
1)平井正文,牧 篤彦,他:下肢静脈瘤におけるこむら返りの発生因子
2)平井 正文,岩田 博英,他:日本におけるこむら返りの頻度-とくに加齢と末梢循環障害の関与について-
3)北岡 治子,馬嶋 素子,他:糖尿病患者にみられる有痛性筋痙攣 (こむらがえり)の特徴