「ふくらはぎの下のほうが急に痛くなった」「押すとピンポイントで痛い」「片足だけ違和感があって心配」そんな症状があると、このまま様子を見ていいのか、病院に行くべきなのか迷ってしまいますよね。
ふくらはぎの下の痛みは、よくある筋肉疲労の場合もあれば、放置しないほうがよい原因が隠れていることもあります。自己判断で間違った対処をすると、痛みが長引いてしまうケースも少なくありません。
この記事では、ふくらはぎの下が痛いときに考えられる原因を整理しながら、自分の症状がどのタイプに近いのかを見極めるポイントや、今すぐできる対処・受診の目安までわかりやすく解説します。最後まで読むことで、「不安な状態」から「今どう動くべきかが分かる状態」へ変わるはずです。
ふくらはぎの下が痛いときの特徴|まず把握したいポイント

ふくらはぎの下が痛むときは、「いつから」「どんなときに」「どこが」痛むのかを整理することで、原因をある程度絞り込むことができます。ここでは、最初に確認しておきたいポイントを解説します。
痛みが出たタイミングときっかけを振り返る
まず重要なのは、痛みが出たタイミングです。運動や長時間の歩行のあとに痛くなったのか、それとも特に思い当たることがないのに急に痛みが出たのかで、考えられる原因は変わります。
たとえば、歩きすぎや立ち仕事のあとに痛む場合は、筋肉の疲労や軽い損傷が関係していることが多くなります。一方、何もしていないのに急に強い痛みが出た場合は、血流や神経の問題も視野に入れる必要があります。
「押すと痛い」「動かすと痛い」の違い
次に確認したいのが、痛みの出方です。指で押したときに限って痛むのか、歩いたり力を入れたりすると痛むのかによって、原因の傾向が異なります。
押すと痛い場合は、筋肉や腱、皮膚の炎症が関係していることが多く、動かしたときに強く痛む場合は、筋肉やアキレス腱への負担が疑われます。この違いを把握しておくだけでも、セルフケアの方向性が見えやすくなります。
片足だけ痛い場合に注意したいこと
ふくらはぎの下の痛みが片足だけに出ている場合は、左右差にも注目しましょう。筋肉疲労でも片側だけ痛むことはありますが、腫れや熱感を伴う場合は注意が必要です。
特に、片足だけ明らかに張っている、触ると熱っぽい、日に日に痛みが強くなるといった場合は、自己判断せず慎重に様子を見ることが大切です。
【原因1】筋肉のトラブル|筋肉痛・軽度の肉離れ・こむら返り後の痛み
ふくらはぎの下が痛む原因として、もっとも多いのが筋肉のトラブルです。使いすぎや急な負荷によって、筋肉に小さなダメージが起こると、押したときや歩いたときに痛みを感じやすくなります。ここでは、代表的な3つのケースを確認していきましょう。
筋肉痛・疲労による痛み
長時間の歩行や立ち仕事、慣れない運動のあとにふくらはぎの下が痛くなる場合、筋肉痛や疲労の蓄積が考えられます。特に下の方は、体重を支える役割が大きく、負担が集中しやすい部位です。
このタイプの痛みは、動かし始めに違和感があり、体が温まると少し楽になることが特徴です。押すと痛むこともありますが、腫れや強い熱感がなければ、過度な心配はいらないケースが多いといえます。
軽い肉離れ(部分断裂)
「ブチッとした感じがあった」「急に片足だけ強く痛くなった」という場合は、軽い肉離れの可能性があります。肉離れは筋肉の一部が傷ついた状態で、重度でなくても、動かすと痛みが続きます。
歩ける程度でも、無理をすると悪化しやすいため注意が必要です。押すと鋭い痛みが出る、特定の動きで強く痛む場合は、早めに安静を心がけることが大切です。
参考記事:【保存版】ふくらはぎの肉離れを1日でも早く治すための5つのポイント
こむら返りの残痛
夜中や早朝にふくらはぎがつり、その後も下の方がジンジン痛むことがあります。これは、強く収縮した筋肉にダメージが残っている状態です。
つった直後は筋肉が過敏になっており、数日間は押すと痛みを感じやすくなります。水分不足や冷えが関係していることも多く、再発を防ぐためにも、無理に動かさず回復を待つことが重要です。
【原因2】アキレス腱のトラブル|ふくらはぎの“下だけ”が痛む典型例
ふくらはぎの下、特にかかとに近い部分が痛む場合は、アキレス腱まわりのトラブルが関係していることがあります。筋肉痛と似ているようで原因が異なり、対処を間違えると長引きやすいのが特徴です。ここでは、よく見られるアキレス腱由来の痛みを確認します。
アキレス腱周囲炎(付け根の痛み)
アキレス腱周囲炎は、ふくらはぎの筋肉とアキレス腱の境目あたりに炎症が起こる状態です。歩き始めや階段の上り下りで痛みが出やすく、押すとピンポイントで痛むことが多く見られます。
特に、運動量が急に増えたときや、硬い靴・合わない靴を履き続けている場合に起こりやすいのが特徴です。初期の段階では腫れが目立たないこともあり、「少し痛いだけ」と放置されがちですが、無理を続けると慢性化しやすくなります。

参考記事:アキレス腱の痛み・腫れ・違和感の原因はアキレス腱炎?適切な対処法をわかりやすく解説!
過使用で腱が硬くなるケース
立ち仕事や歩きすぎが続くと、アキレス腱やその周囲が硬くなり、動くたびに引っ張られることで痛みが出ることがあります。この場合、ふくらはぎ全体ではなく、下の方だけが張るように痛むのが特徴です。
朝起きて最初の一歩が痛い、しばらく歩くと少し楽になるといった症状がある場合は、腱の柔軟性低下が関係している可能性があります。無理に伸ばしたり、強く揉んだりすると悪化することがあるため注意が必要です。
【原因3】血流の問題|むくみ・血栓など注意すべき痛み
ふくらはぎの下の痛みは、筋肉や腱だけでなく、血流の滞りが原因になっていることもあります。特に「急に腫れた」「片足だけ強く痛む」といった場合は注意が必要です。ここでは、見逃してはいけない血流由来の痛みについて解説します。
むくみによる張り・痛み
長時間の立ち仕事や座りっぱなしの姿勢が続くと、ふくらはぎに血液やリンパ液がたまりやすくなります。その結果、下の方がパンパンに張り、重だるさや痛みを感じることがあります。
このタイプの痛みは、夕方から夜にかけて強くなりやすく、押すと鈍い痛みを感じるのが特徴です。皮膚が突っ張るような感覚や、靴下の跡がくっきり残る場合は、むくみが関係している可能性が高いと考えられます。
深部静脈血栓症(DVT)
注意が必要なのが、血管の中に血のかたまりができる深部静脈血栓症です。この場合、片足のふくらはぎだけが急に痛くなり、腫れや熱感を伴うことがあります。
押すと強く痛む、歩くのがつらい、左右で明らかに太さが違うといった症状がある場合は要注意です。長時間動かない状態が続いた後や、急な腫れを感じた場合は、自己判断せず早めに医療機関へ相談することが重要です。
【原因4】神経のトラブル|しびれ・鋭い痛みを伴うケース
ふくらはぎの下の痛みに、しびれ・ビリビリする感覚・ズキズキした鋭い痛みが伴う場合は、筋肉ではなく神経が関係している可能性があります。このタイプの痛みは、押してもあまり変わらないことが多く、動きや姿勢によって強さが変化するのが特徴です。
坐骨神経痛
坐骨神経痛は、腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけて伸びる神経が刺激されることで起こります。そのため、ふくらはぎの下だけが痛く感じることも珍しくありません。
この場合、片足だけに症状が出やすく、
- 電気が走るような痛み
- じっとしていてもズキズキする
- 腰を動かすと痛みが強まる
といった特徴があります。筋肉を押しても痛みが再現されにくい点が、筋肉由来の痛みとの大きな違いです。

参考記事:坐骨神経痛でやってはいけないことは?つらい症状を軽くする簡単ストレッチも紹介!
下腿の神経の圧迫
ふくらはぎ周辺には細かな神経が多く走っており、筋肉の緊張やむくみによって圧迫されると、局所的な神経痛が出ることがあります。
この場合、
- 下のほうがピンポイントでビリビリ痛む
- 触れると過敏に痛い
- 長時間同じ姿勢で悪化する
といった症状が見られます。筋肉痛のように広い範囲が痛むのではなく、「一点が鋭く痛む」感覚が特徴です。
【原因5】その他の疾患|皮膚の炎症や下肢静脈瘤
ふくらはぎの下の痛みは、筋肉・腱・神経・血流以外のトラブルが原因になっていることもあります。特に、皮膚の変化や血管の異常を伴う場合は、セルフケアだけで様子を見るのは注意が必要です。ここでは見落とされやすい代表的な疾患を解説します。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤は、足の血管が浮き出たり、ボコボコと膨らんだりする状態です。血液がうまく心臓に戻らず、ふくらはぎにたまることで、下の方に重だるさや痛みを感じることがあります。
この場合、
- 夕方になると痛みやだるさが強くなる
- 立ち仕事のあとに症状が出やすい
- むくみを伴うことが多い
といった特徴があります。見た目の変化を伴うことが多いため、鏡で脚の血管を確認することも判断材料になります。
蜂窩織炎
蜂窩織炎は、皮膚や皮下組織に細菌が入り、炎症を起こす疾患です。ふくらはぎの一部が赤く腫れ、熱っぽく強く痛むのが特徴で、押すと強い痛みがあります。
この痛みは筋肉痛とは異なり、
- 皮膚の色が明らかに赤い
- 触ると熱感がある
- 短期間で急に悪化する
といった変化が見られます。発熱を伴うこともあるため、このような症状がある場合は早めの受診が重要です。
痛みのタイプ別セルフチェック|3つの質問で原因を絞る
ふくらはぎの下の痛みは、症状の出方によって原因の方向性をある程度整理できます。ここでは、病名を決めるためではなく、「今すぐ様子を見てよいか」「注意が必要か」を判断するためのセルフチェックを紹介します。次の3つの質問に答えてみてください。
1. 押すとピンポイントで強く痛みますか?
指で押したときに、はっきりとした一点の痛みがある場合は、筋肉・腱・皮膚の炎症が関係していることが多くなります。特に、運動や歩きすぎのあとであれば、筋肉疲労や軽い損傷が疑われます。
一方、押してもあまり変わらず、ズキズキ・ビリビリする痛みが続く場合は、神経や血流の問題も考える必要があります。
2. 片足だけ腫れたり、熱っぽく感じますか?
左右を比べて、明らかに片足だけ太い、張っている、触ると熱を持っている場合は注意が必要です。
むくみが原因のこともありますが、急に腫れが出た場合は、血流トラブルや炎症性の疾患も視野に入ります。
「昨日まで普通だったのに、今日になって急におかしい」と感じる変化は、重要な判断材料になります。
3. 動かすと痛みが変わりますか?
歩くと強く痛む、階段で悪化する、朝の一歩目が特につらいなど、動作によって痛みが変化する場合は、筋肉やアキレス腱由来の可能性が高くなります。
逆に、動かしても変わらず、じっとしていても痛い場合は、神経や血流、皮膚の炎症など別の原因が隠れていることもあります。
ふくらはぎの下が痛いときの対処法|冷やす?温める?

ふくらはぎの下が痛いとき、「冷やしたほうがいいのか、それとも温めるべきか」で迷う人は多いと思います。対処法を間違えると、痛みが長引くこともあるため、痛みの出方に合わせた対応が重要です。ここでは、基本的な考え方を整理します。
急な痛みのときは冷やす
急に痛みが出た場合や、押すとズキッと痛む、腫れや熱感がある場合は冷やす対応が適しています。これは、筋肉や腱に炎症が起きている可能性が高いためです。
冷やすことで、炎症の広がりを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。保冷剤や冷たいタオルを使い、短時間ずつ行うのがポイントです。冷やしている最中に強い不快感が出る場合は、無理に続けないようにしましょう。
固まって痛いのときは温める
慢性的な張りや、朝よりも夕方にかけて強くなる痛みの場合は、血流が滞っている可能性があります。このようなケースでは、温めることで筋肉がゆるみ、楽になることがあります。
入浴や温かいタオルを使って、ふくらはぎ全体をじんわり温めるのがおすすめです。ただし、赤く腫れている、熱っぽいと感じる場合は温めないよう注意が必要です。
自宅でできるストレッチ・セルフケア
ふくらはぎの下の痛みが、筋肉やアキレス腱まわりの負担によるものであれば、無理のないセルフケアで症状が和らぐことがあります。ここでは、自宅で安全に行える基本的なストレッチを紹介します。痛みが強い場合は無理をせず、「気持ちよく伸びる範囲」で行うことが大切です。
腓腹筋ストレッチ
腓腹筋は、ふくらはぎの表層にある筋肉で、歩行や立ち姿勢でよく使われます。この筋肉が硬くなると、ふくらはぎの下の方に張りや痛みが出やすくなります。
腓腹筋ストレッチ
STEP1:壁に手をつき片足を前方に出しましょう。
STEP2:前方の膝を曲げ、体重をかけましょう。
STEP3:踵を浮かさないように注意す元の姿勢に戻りましょう。
注意点:踵が浮かないように注意しましょう。
ヒラメ筋ストレッチ
ヒラメ筋は、腓腹筋の奥にある筋肉で、ふくらはぎの下やアキレス腱付近の痛みに関わりやすい部位です。腓腹筋ストレッチであまり伸びを感じない場合は、この筋肉が原因のこともあります。
ヒラメ筋ストレッチ
STEP1:台の上に片足を乗せましょう。
STEP2:身体を前方に倒し、足首を曲げます。ふくらはぎが伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。
注意点:踵が離れないように注意しましょう。
受診が必要な危険なサイン
ふくらはぎの下の痛みの多くはセルフケアで様子を見られますが、中には早めに医療機関を受診したほうがよいケースもあります。ここでは、「放置しないほうがいいサイン」を整理します。
急に強い腫れや熱感が出てきた
片足だけ急に腫れ、触ると熱っぽい場合は注意が必要です。痛みが日に日に強くなる、皮膚が張って歩きにくいといった変化がある場合は、血流や炎症性のトラブルが隠れている可能性があります。
歩くのがつらい・安静にしても痛む
筋肉疲労であれば、安静にすると徐々に楽になることが多いですが、じっとしていても痛みが続く場合は要注意です。体重をかけられないほどの痛みや、夜間も痛みで目が覚めるような状態は、自己判断を避けたほうが安全です。
しびれ・息苦しさ・発熱を伴う
ふくらはぎの痛みに加えて、しびれが強くなる、発熱がある、急な息切れを感じるといった症状が出た場合は、早急な受診が必要です。痛みだけでなく「全身の変化」にも目を向けることが大切です。
まとめ
ふくらはぎの下の痛みは、筋肉・腱・血流・神経など原因がさまざまです。痛みの出方や腫れの有無を整理することで、対処の方向性が見えてきます。急な腫れや強い痛みがある場合は無理をせず、セルフケアで改善しないときは早めに専門家へ相談することが安心につながります。
【参考文献】
1)Hutchison AM, Evans R, Bodger O, Pallister I, Topliss C, Williams P, Vannet N, Morris V, Beard D. What is the best clinical test for Achilles tendinopathy? Foot Ankle Surg. 2013 Jun;19(2):112-7. doi: 10.1016/j.fas.2012.12.006. Epub 2013 Feb 12. PMID: 23548453.
2)Van Ginckel A, Thijs Y, Hesar NG, Mahieu N, De Clercq D, Roosen P, Witvrouw E. Intrinsic gait-related risk factors for Achilles tendinopathy in novice runners: a prospective study. Gait Posture. 2009 Apr;29(3):387-91. doi: 10.1016/j.gaitpost.2008.10.058. Epub 2008 Nov 29. PMID: 19042130.
3)Hopayian K, Danielyan A. Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2018 Feb;28(2):155-164. doi: 10.1007/s00590-017-2031-8. Epub 2017 Aug 23. PMID: 28836092.
