ふくらはぎが「つったような痛み」で悩まされることはありませんか?
その痛みが数日続くようであれば、単なる筋肉疲労とは限りません。実は、こむら返りの後遺症や血流障害、神経のトラブルなど、隠れた原因が潜んでいることも。さらに、片足だけに現れる痛みや歩行困難を伴うケースでは、重大な病気のサインである可能性もあります。
本記事では、ふくらはぎのつったような痛みが続く理由やその仕組み、注意すべき病気、そしてセルフケアの方法までを徹底解説します。早期対応と日常的な予防が、健やかな足を守るカギになります。ぜひ最後までお付き合いください。
ふくらはぎがつったような痛みが続くのはなぜ?そのメカニズムを解説
ふくらはぎの「つったような痛み」が続くのは、単なる筋肉疲労とは限りません。血流障害や神経トラブルなど、見逃せない原因が潜んでいることもあります。まず最初に痛みの正体とメカニズムを解説します。
筋肉疲労や過度な負担が原因の場合
ふくらはぎの筋肉は、歩行や立位を維持する際に常に使われています。日常生活での移動はもちろん、運動や仕事などで過剰に使用された場合、筋肉疲労を起こしやすくなります。
とくに、スポーツ後や長時間の立ち仕事の後に「つったような」感覚とともに痛みが数日続くことがあります。
疲労した筋肉は、炎症反応を起こしやすくなり、筋膜や腱の緊張が高まります。その結果、軽微な動きや立ち上がり動作でも再び痛みを感じやすくなります。
筋肉の張りやこわばりも原因に
疲労が蓄積すると、筋肉が硬くなり「張っている」ような状態になります。この状態では、血液の流れも滞りやすく、老廃物が排出されにくくなるため、さらに痛みが悪化することがあります。
参考記事:ふくらはぎの筋肉痛のような痛みの原因と対策|自宅でできるケア方法
こむら返りの後遺症として残るケース
夜間や運動中に突然起こるこむら返り(筋痙攣)は、多くの人が経験する一過性の現象ですが、場合によっては筋肉に小さな損傷が残ることもあります。
こむら返りが強い痛みを伴う場合、筋繊維に微細な断裂が生じることがあり、その炎症が治まるまで数日から1週間ほど、鈍い痛みや違和感が続くことがあります。
神経の過敏状態が影響することも
こむら返りの後に神経が一時的に過敏状態になると、ちょっとした刺激にも「つったような」感覚やピリピリした痛みを感じることがあります。これは神経性疼痛の一種で、痛みの伝達経路に異常が起こることで生じます。
血管や神経のトラブルによるもの
痛みが慢性的に続く場合、単なる筋疲労やこむら返りとは異なり、血流障害や神経障害といった内的なトラブルが関与している可能性があります。
深部静脈血栓症のリスク
ふくらはぎの血管に血栓(血のかたまり)ができる深部静脈血栓症は、初期症状として「つったような痛み」や「重だるさ」が現れることがあります。
この状態を放置すると、血栓が肺に移動し、命に関わる肺塞栓症を引き起こすこともあるため注意が必要です。
坐骨神経痛との関連
坐骨神経痛では、腰から足先にかけての神経が圧迫されることにより、ふくらはぎにも放散痛が生じます。この場合、「筋肉が張って痛む」ように感じられますが、実際には神経の炎症や圧迫が原因です。
参考記事:坐骨神経痛を早く治す方法はこれ!痛みの原因とオススメストレッチ3つを解説!
参考記事:【意外と知らない】坐骨神経痛と間違える病気は?自宅でできるセルフチェック方法も解説
慢性的な血流障害も注意
高齢者や喫煙者、動脈硬化の既往がある方は、血流が慢性的に悪化しやすく、ふくらはぎの筋肉に十分な酸素が供給されなくなります。
これにより、歩行中や休憩後に「つるような痛み」が繰り返されることがあります。
考えられる病気とは?受診すべき症状と診療科の選び方
自己判断が難しい場合、早めの医療機関受診が大切です。受診をすべき症状を把握しておきましょう。
注意が必要な疾患リスト(肉離れ・血栓症など)
ふくらはぎの痛みが「つったような感覚」とともに数日続く場合、単なる筋肉疲労ではない可能性があります。以下のような疾患が考えられるため、注意が必要です。
肉離れ(筋断裂)
運動中や日常生活で突然「ブチッ」という感覚が走った後、ふくらはぎに鋭い痛みが現れる場合は、筋繊維が断裂する「肉離れ」の可能性があります。
軽度であれば自然治癒も期待できますが、適切な安静と冷却が必要です。放置すると再発しやすくなるため、専門医の診察が望まれます。
参考記事:肉離れを早く治すコツとは?痛みの原因に効くストレッチやマッサージ・食べ物を解説
参考記事:肉離れが治るまで何日かかる?早く治すコツや部位別のストレッチ方法も紹介
血栓症(深部静脈血栓症)
ふくらはぎの一部が赤く腫れたり、熱感があったり、押すと痛むといった症状がある場合は、深部静脈血栓症の疑いがあります。
特に長時間の移動や手術後、また高齢者や妊婦はリスクが高いため注意が必要です。早期に治療を始めれば、重篤化を防ぐことができます。最悪のケースでは、血栓が血流に乗って肺に飛び、肺の動脈を詰まらせことで突然死を招くことがあるので注意しましょう。
血行障害
動脈硬化などによって血流が制限されると、筋肉に酸素が届かなくなり、「つるような痛み」や「しびれ」を感じるようになります。歩いていると痛くなり、休むと和らぐのが特徴で、間欠性跛行と呼ばれる状態です。
片足だけ痛む場合の危険サイン
ふくらはぎの痛みが片足だけに集中しており、反対側に異常が見られない場合、それは特定の疾患による局所的なトラブルの可能性が高くなります。
筋肉痛のような痛みが長く続く場合
運動していないのに一方の足にだけ筋肉痛のような鈍痛が続く場合は、軽視すべきではありません。血管障害や神経圧迫、あるいは筋膜炎など、自己判断が難しい問題が隠れている場合があります。
歩行困難を感じる場合
片足に力が入りにくくなったり、踏み出すたびに痛みが強くなるようなケースでは、神経や関節、骨の問題が関連していることもあります。日常生活に支障を感じる場合は、できるだけ早く専門医を受診することが重要です。
何科を受診すべき?整形外科・内科の目安とは
ふくらはぎのつったような痛みが長引くとき、どの診療科を受診すればいいのか迷う方も多いでしょう。症状の出方によって、適切な診療科を選ぶことが大切です。
整形外科が適しているケース
明確な動作によって痛みが出現した場合や、筋肉や関節に関連する痛みが疑われるときは、整形外科を受診しましょう。肉離れ、筋膜炎、神経痛などが対象です。
内科や循環器内科が適しているケース
足の腫れや赤み、熱感があり、痛みが安静時にも続くような場合は、血栓症や血行障害の疑いがあります。このような症状では内科、特に循環器内科を受診するのが適切です。
放置すると危険?長引くふくらはぎ痛がもたらすリスク
痛みの放置は、生活の質を低下させるだけでなく、重大な病気のリスクにもなりえます。
日常生活に支障をきたすケース
ふくらはぎの痛みが慢性化すると、日常の動作が困難になり、生活の質(QOL)が著しく低下します。たとえば、立ち上がるときや階段を上るときに痛みを感じるようになると、活動量そのものが減ってしまい、体力や筋力の低下を招く悪循環に陥ります。
また、痛みをかばう動きが習慣化すると、姿勢が崩れ、膝や腰、反対の足にも負担がかかってしまう可能性があります。結果として、新たな痛みや疾患を引き起こすきっかけとなることもあるのです。
血栓など重篤な病気につながる可能性
痛みの背後に「血栓」が隠れていた場合、それを放置することは極めて危険です。深部静脈血栓症などは、ふくらはぎの軽い違和感や「張り」のような症状から始まり、徐々に悪化します。血栓が肺に流れてしまうと、命に関わる肺塞栓症を引き起こすこともあります。
特に以下のような兆候がある場合は、すぐに医療機関を受診すべきです。
- 足が赤く腫れている
- 熱を持っている
- 静止時でもズキズキと痛む
- 呼吸が苦しい、動悸がする
こうした症状は「ただの筋肉痛」と見過ごされがちですが、重篤な疾患の初期サインである可能性があります。
慢性化による痛みの習慣化
ふくらはぎの痛みが「いつものこと」となってしまうと、身体はその状態に適応しようとします。これは一見、良いことのように思えるかもしれませんが、実は神経の過敏化や慢性的な炎症の持続を招く危険な状態です。
中枢性感作のリスク
痛みの信号が脳に繰り返し送られると、「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」という現象が起こりやすくなります。
これは、実際には軽微な刺激にも関わらず、脳が「強い痛み」として認識してしまう状態です。このような神経の過敏状態になると、リラックスしていてもふくらはぎに痛みを感じるようになり、精神的なストレスや不眠の原因にもなり得ます。
痛みが「クセ」になる前に
痛みは身体からの重要なサインですが、それが慢性化すると逆に本来の警告機能を失い、「ただつらいだけ」の感覚に変わってしまいます。だからこそ、痛みが続くときには適切な対処とケアが欠かせません。
ふくらはぎの痛みを軽視せず、「まだ我慢できるから」と放置しないことが、重大な健康トラブルを避ける第一歩です。
自宅でできる!ふくらはぎのセルフケアと予防ストレッチ
簡単なセルフケアでも、痛みの緩和や予防につながります。
痛みを感じたときの応急処置(RICE処置など)
ふくらはぎに痛みを感じた直後は、まず炎症や損傷を広げないようにすることが大切です。特に肉離れや急な筋肉痛の場合は、RICE処置が有効です。
- Rest(安静):無理に歩かず、痛みのある部位を休ませましょう。
- Ice(冷却):氷や冷湿布などで患部を冷やすことで、炎症や腫れを抑えます。1回15〜20分を目安に。
- Compression(圧迫):包帯などで軽く圧をかけることで、腫れを防ぎます。ただし強く締めすぎないよう注意。
- Elevation(挙上):心臓より高い位置に脚を上げることで、血流を促し腫れの軽減に役立ちます。
これらを痛みの初期段階で行うことで、回復を早めることが可能です。
予防のためのふくらはぎストレッチ方法
日常的にストレッチを取り入れることで、筋肉の柔軟性を高め、こむら返りや筋肉疲労を防ぐ効果が期待できます。
足首の運動
STEP1:膝下にタオルを入れます
STEP2:つま先を伸ばします
STEP3:足首を反ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
腓腹筋ストレッチ
STEP1:壁に手をつき片足を前方に出しましょう。
STEP2:前方の膝を曲げ、体重をかけましょう。
STEP3:踵を浮かさないように注意す元の姿勢に戻りましょう。
注意点:踵が浮かないように注意しましょう。
水分補給・冷え対策など日常生活での工夫
ふくらはぎのつりや痛みは、日々の生活習慣が大きく影響しています。ストレッチと併せて以下の工夫も取り入れましょう。
水分補給を意識する
筋肉の収縮にはミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が必要です。
脱水状態になると電解質バランスが崩れ、筋肉が異常収縮しやすくなります。こまめな水分補給に加え、スポーツドリンクや麦茶などのミネラル補給も有効です。
冷え対策を行う
冷えによって血流が悪くなると、筋肉が硬くなりやすくなります。特に冬場や夏場の冷房環境では、レッグウォーマーや靴下での保温、湯船に浸かる入浴などで下半身を温める習慣を取り入れましょう。
長時間の同じ姿勢を避ける
デスクワークや立ち仕事など、同じ姿勢が長時間続くとふくらはぎの筋肉がこわばり、血流が滞りやすくなります。
1時間に一度は立ち上がる、つま先立ち運動をするなどの軽い動きを取り入れて、筋肉をリラックスさせるよう心がけましょう。
まとめ
ふくらはぎのつったような痛みが長引く場合、単なる疲労とは限らず、肉離れや血栓症、神経の異常など、放置すべきでない原因が隠れていることがあります。
痛みを我慢したままにすると、慢性化や生活への支障につながるリスクも。早期に医療機関を受診し、適切な診断と対応を受けることが何より大切です。
また、自宅でできるストレッチや冷え対策、水分補給といった日常のセルフケアも、予防と再発防止に有効です。「いつもと違う痛み」を見逃さず、身体のサインに丁寧に向き合いましょう。
【参考】
1)Armfield DR, Kim DH, Towers JD, Bradley JP, Robertson DD. Sports-related muscle injury in the lower extremity. Clin Sports Med. 2006 Oct;25(4):803-42. doi: 10.1016/j.csm.2006.06.011. PMID: 16962427.
2)Nsitem V. Diagnosis and rehabilitation of gastrocnemius muscle tear: a case report. J Can Chiropr Assoc. 2013 Dec;57(4):327-33. PMID: 24302780; PMCID: PMC3845475.
3)深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防について 厚生労働省