デスクワークやPC作業が増え、近年は腰痛に悩まされる人が増えています。
腰が痛いとき、あなたはどのように解決しますか?
1番手軽にできる解決策は「ストレッチ」ではないでしょうか。最近では動画やSNSでもストレッチを解説しているコンテンツは多く、色々な方法を試している人も多いはず。
しかし、その方法はあなたの腰痛に適したストレッチかどうか、自身では判断がつかないことも。
そこで当記事を最後まで読んでいただければ、腰痛の正しい知識と効果的なストレッチを知ることができます。
また、今回はどこでも手軽に行えるように、立ったままできるストレッチを厳選してご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
腰痛の原因はさまざま。代表的な腰痛の分類を紹介
腰の痛みに対する対処法の理解を深めるため、まずは腰痛に関する知識を解説していきます。
まず、大きく分けると腰痛は原因によって大きく2つに分類されます。ご自身の状態と合わせて、どちらに分類されるか把握していきましょう。
痛みの原因が特定される【特異的腰痛】
特異的腰痛とは、診察や画像検査にて原因が確定できる腰痛のことをいいます1)。
全体の15%程度はこの特異的腰痛であると言われているのです。そして特異的腰痛には、以下の疾患が当てはまります。
ただし、以下の症状がみられる場合は、すぐに専門的な医療機関へ受診しましょう。
- 椎間板(ついかんばん)ヘルニア
- 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
- 脊椎すべり症
- 圧迫骨折
- 感染性脊髄炎
など
これらは何かしらの医療的処置が必要となるケースが多いため、医者の判断に従い治療を進めていきましょう。
参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介
参考記事:【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!
痛みの原因が特定できない【非特異的腰痛】
非特異的腰痛とは、診察や画像検査をしても原因が断定できないものをいいます1)。そして腰痛の約85%は非特異的腰痛に分類されます。
多くの場合、痛みの原因は椎間板や椎間関節(ついかんかんせつ)・仙腸関節(せんちょうかんせつ)など、腰椎の関節や背中と腰の筋肉を構成する組織である可能性が非常に高いとされています。
しかし、それらを厳密に断言できる検査法がないため、痛みの原因を明確にできません。
治療に関しては、非特異的腰痛の1つとされる「ぎっくり腰」などの急に出現する腰の痛みは、発症してから間もない時期の対処法を誤らなければ短期間でよくなるとされています。
一方で対処法を誤ってしまうと、1度発症すると長期にわたり再発を繰り返しやすいともされているため、ストレッチなどの適切な対処が必要です。
参考記事:【筋肉が原因となる腰痛】筋筋膜性腰痛とは?見分け方と対処法を解説!
参考記事:これってぎっくり腰!?腰椎捻挫の症状と自分でできるリハビリ方法をわかりやすく解説!
腰痛に悪影響を及ぼす代表的な姿勢とその原因
腰痛を引き起こす1つの要因として「姿勢不良」があげられます。
背骨はS字を描くようにカーブしており、このS字カーブがあることで日常生活で背骨に加わる衝撃を分散することができるのです。
そのため、腰の反りすぎや前かがみの姿勢が長く続くと背骨にかかる圧の分散がうまくいかなくなります。その結果、一部の関節に負担がかかり痛みを引き起こす原因となるのです2)。
出産後の女性に特に多い過度な反り腰姿勢
女性のライフイベントの1つである出産。産後の女性は腰痛に悩まされることが多く、腰痛発症率は全体の43.2%3)とされています。
そして妊娠中は大きくなるお腹や乳房を保持し、姿勢を保つために反り腰になるケースが多いです。
妊娠から出産で反り腰が長く続き、本来姿勢を保持するために使われる筋肉が働きにくくなり、筋力低下や柔軟性低下を引き起こすのです。それらは、産後もすぐに改善することはないため、姿勢不良による腰痛が続きます。
参考記事:女性に多い腰痛の原因は?症状とストレッチや体操などの対処法を解説!
デスクワーカーに多い猫背姿勢
近年、在宅ワークの推奨によりデスクワークが増えています 。
長時間座って作業をした後、腰が痛くなった経験はありませんか?
実は、座っている時間が長いと椎間板へ大きな負担がかかってしまうのです。
ある文献では、立っている時と比べ座っている時は1.4倍もの負担が椎間板へ加わっていることが明らかになっています4)5)。また、猫背などの姿勢不良が長く続くと疲労に耐えきれず、筋肉が硬くなります。
硬くなった筋肉は血管を圧迫し、血流の流れを悪くするのです。さらに、血流が悪い状態で同じ姿勢を繰り返したり、身体を動かしたりすると筋肉に疲労がたまります。
そして、溜まった疲労は徐々に痛みに変わっていき慢性的な腰痛に繋がるのです。
参考記事:長時間の座り過ぎは要注意!腰痛悪化の原因と対策を紹介
立ったままできる!腰痛予防・改善ストレッチ4選!
ここからは、立ったままでもできる簡単な腰痛予防・改善に効果的なストレッチを解説していきます。
特別な準備は必要なく、会社や自宅でも簡単にできるものなので、自身の悩みに当てはまる方法を行ってください。
股関節付け根のストレッチ
まずは反り腰を改善するためのストレッチをご紹介します。反り腰が原因の腰痛は、腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる筋肉の緊張が高まっている可能性が高いです。
腸腰筋は股関節の前面にある筋肉で、緊張が高まると反り腰になりやすく腰への負担が大きくなります。したがって、腸腰筋の緊張を緩和するストレッチを行うことで、腰痛予防に効果的です。
背骨の運動を行い、反り腰姿勢を改善していきましょう。
STEP1:片足を前方へ大きく開きましょう
STEP2:膝を曲げ前方の足に体重をのせましょう
STEP3:繰り返し実施します
STEP4:股関節の付け根の伸びを感じながら実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
もも裏のストレッチ
もも裏の筋肉である「ハムストリングス」は股関節や骨盤の動きを助ける働きがあります。さらに、骨盤は腰椎の動きをサポートしているため、ハムストリングスが硬くなることで腰は丸まってしまいます。
よって、腰への負担が増え腰痛を引き起こしやすくなるのです。
デスクワークなど猫背の姿勢で長時間作業をすることで、太もも裏側の筋肉を使う機会が減り、柔軟性が低下します。そのため、座った状態で長時間作業する人は、ハムストリングスのストレッチを積極的に行いましょう。
STEP1:片足を1歩前に出しましょう
STEP2:骨盤を前方に傾けましょう
STEP3:ゆっくりと戻しましょう
STEP4:太もも後面の伸びを感じましょう
※腰が丸まらないように注意しましょう
胸前のストレッチ
デスクワークやパソコン作業が多い方は、前にかがみ込む姿勢で過ごすことが必然的に多くなってしまいます。手を前に突き出しての作業は、背中を丸めて頭を前に出すだけでなく、常に両肩を前に突き出した姿勢(巻き肩)になってしまうのです。
日常的に巻き肩姿勢を多く取る方は、猫背になりやすく、腰椎への負担が大きくなり痛みの原因になります5)。
また、巻き肩を改善しようと無理に背筋を伸ばすと反り腰になりやすく、腰痛を引き起こすケースもあります。巻き肩は胸の前面にある大胸筋(だいきょうきん)と呼ばれる筋肉の緊張が高まっている状態です。
そのため、座った状態で長時間作業することが多い方は、胸前のストレッチを積極的に行いましょう。
STEP1:足を前方に出し片腕を壁に当てましょう
STEP2:体重を前方へ乗せましょう
STEP3:姿勢を戻しましょう
STEP4:胸の前面が伸びた状態を保持しましょう
※痛みがない範囲で行いましょう
グッドモーニングエクササイズ
この運動では、肩甲骨を内側に寄せ安定させる働きをもつ背中の筋肉を鍛えられます。
これらの筋肉が弱まると、肩甲骨が外側に開きやすくなります。そして肩甲骨が外に開いた状態は、猫背となり首や肩が前に出た姿勢になりやすいです。
そのため、常に前かがみの姿勢となりやすく、腰にかかる負担が増大してしまうのです。猫背を改善し、真っ直ぐ正しい姿勢で作業できるよう鍛えていきましょう。
STEP1:両足を開き腕を頭の後ろにおきましょう
STEP2:股関節を深く曲げ体を前傾させましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:膝を軽く曲げながら行いましょう
※腰を丸めないように注意しましょう
参考記事:寝ながらできる腰痛改善ストレッチ!4つの症状別の対処法を解説
やってはいけない腰痛ストレッチとは?
「ストレッチをしても効果を感じない」
「逆に痛みが強くなってしまった」
痛みを改善しようとストレッチをした結果、痛みが増してしまう人も。そのような人は、”自分には合わないストレッチ”をしている可能性があります。
では、どのようなストレッチを行うべきではないのでしょうか?
とくに腰痛に最も多いとされている非特異的腰痛は、日頃の姿勢が影響して痛みが出ている可能性が高いです。そのため、先ほどお伝えしたエクササイズを実施し、まずは不良な姿勢の改善するのが重要です。
エクササイズを行う中で、痛みの悪化やお尻から足にかけてしびれが強くなるような動きやストレッチがある場合は、無理なエクササイズは控え専門の医療機関に相談しましょう。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
まとめ
今回は、腰痛の予防・改善に効果的なストレッチをご紹介いたしました。
腰痛は原因を特定できないものが多いため、普段の姿勢や動きに注意する必要があります。
また、ストレッチを行う場合も自身の症状を確認しつつ、痛みやしびれが出ない方法を実施していきましょう。
当記事が、あなたの痛み改善にお役立ていただけると幸いです。
参考文献
1)厚生労働省 腰痛対策
2)A.I.KAPANDJI, 2010, カパンジー機能解剖学 Ⅲ.脊椎・体幹・頭部 原著第6版, 医歯薬出版株式会社, 14-15
3)平元 奈津子.妊産婦に対するウィメンズヘルス理学療法.理学療法の臨床と研究,27, 15-20.2018.
4)Nachemson AL. The Lumbar Spine An Orthopaedic Challenge
5)Sakai Y, Matsuyama Y, Ishiguro N. Intramuscular oxygenation of exercising trunk muscle in elderly persons. J. Lumbar Spine Disord. 2005; 11: 148-156.