「腰痛を改善するためにはセルフケアが大事」と分かっていても、具体的に何を始めれば良いのか分からない方も多いはず。
そこでおすすめなのが、腰回りに付く筋肉の強化です。
腰の筋力トレーニング(筋トレ)を行うことで、腰痛が緩和し楽に生活できるようになるでしょう。それだけでなく、見た目にも良い変化が現れるかもしれません。
思い立ったが吉日、すぐに始めてみてはいかがでしょうか。
当記事では、腰痛に効く筋トレについて詳しく解説します。腰の筋トレが痛みの緩和に効く理由や、おすすめの筋トレ種目を紹介しました。
最後まで読み進めることで、筋トレと腰痛改善のつながりがイメージでき、具体的な方法まで理解できます。
ぜひ、腰痛改善のためにお役立てください。
【知ってる?】腰回りに付くおもな筋肉を解説
最初に、腰回りに付く筋肉を簡単に解説します。なお今回は、腰(背中)だけでなく、腰の高さに該当するお腹や脇腹を含めて「腰回り」としますので、あらかじめ把握しておいてください。
腰回りの筋肉には、皮膚上から触れられる浅層に付く筋肉と、深層に付く筋肉、いわゆる「インナーマッスル」があります。
では見ていきましょう。
まず、腰回りの前側(お腹)の中央には、腹直筋(ふくちょくきん)が付きます。
腰回りの横側(脇腹)の表層に付く筋肉は「腹斜筋(ふくしゃきん)」です。腹斜筋は「外腹斜筋(がいふくしゃきん)」と「内腹斜筋(ないふくしゃきん)」で構成されています。
そして、腹斜筋の下(深層)に付くのが「腹横筋(ふくおうきん)」です。
続いて、腰回りの後ろ側(背中)に付く筋肉を見ていきます。
腰の表層に付く主な筋肉は「広背筋(こうはいきん)」「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」です。
また、腰の深層には「腰方形筋(ようほうけいきん)」「腸骨筋(ちょうこつきん)」「大腰筋(だいようきん)」「多裂筋(たれつきん)」「下後鋸筋(かこうきょきん)」などが付きます。
こういった腰回りの筋肉はそれぞれ作用(はたらき)が異なるものの、「体幹を保持・安定させる」「体幹を前後・左右に曲げる」といった作用は共通している場合が多いです。
もちろん、解剖図や筋肉の名前をすべて覚える必要はないでしょう。
とはいえ、腰回りには浅層・深層含め多くの筋肉が付くことと、体幹を安定させたり体幹を動かしたりするために重要だという点は覚えておいてください。
腰回りの筋肉が「腰痛」に関係する理由
「腰の筋肉の炎症・凝り」や「骨の変形(ヘルニアなど)」をはじめ、腰痛の原因やタイプはさまざまです。
ただし、どういった腰痛であれ、脊柱(背骨)への負荷が増えることで痛みが悪化する傾向にあります。そして、運動不足や加齢によって腰を支える筋肉が衰えると、脊柱への負担が増えてしまいかねません。
そこで大切になるのは腰回りの筋力強化です。適度な筋トレを続けることで、腰回りの筋力がつき安定性が増すので、結果的に脊柱への負担が減ります。
さらに、筋力トレーニングによって血液の流れが良くなる「筋ポンプ作用」がはたらきます。
血液の流れが良くなれば、腰回りに酸素が行き届き、筋肉の炎症や凝りの改善につながります。
数ある腰痛の治し方の1つとして、筋トレは有効だといえるでしょう。
参考記事:【筋肉が原因となる腰痛】筋筋膜性腰痛とは?見分け方と対処法を解説!
参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
実践あるのみ!腰回りの筋力トレーニングを紹介
ではここから、具体的な腰回りの筋力トレーニング方法を紹介します。
腰痛改善のために鍛えるべき筋肉のなかで、「脇腹」「背骨」に付く筋肉に効果のある種目をピックアップしました。
どれも自宅で簡単に実践可能なので、さっそく始めてみましょう。
フロントブリッジ
1つ目は「フロントブリッジ」です。
STEP2:お腹を持ち上げ膝と肘で身体を支えます
STEP3:姿勢を一直線に保ちましょう
※ふらつかないように注意してみてください
※腰を丸めない・反らさないように注意しましょう
サイドブリッジ
STEP2:片肘・片膝で身体を支え一直線にします
STEP3:数秒間姿勢をキープしましょう
※身体がふらつかないように気をつけてください
※身体が開かないように注意しましょう
下肢伸展運動
STEP2:肩の真下と股関節の真下に手と膝をつきます
STEP3:片足をまっすぐ後方に伸ばしましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
※上げた足の膝が曲がらないように注意してみてください
腰痛改善だけじゃない!腰回りの筋肉を鍛えるメリット
腰回りの筋肉を鍛える意味は、腰痛の改善・予防だけにとどまりません。
鍛え方にもよりますが、腰回りの筋トレを続けることで「ぽっこりお腹」が改善され、いわゆる「下腹部痩せ」を実現しやすくなります。
引き締まった腰回りを「かっこいい」と感じる方も多いはず。
また、腰回りの筋肉を鍛えれば「猫背」や「反り腰」も改善されやすくなり、姿勢の矯正にもつながります。
つまり腰の筋トレは、見た目の面でもメリットが大きいといえるでしょう。
腰回りの筋力トレーニングを行う際の注意点
ではここで、安心・安全に腰回りの筋力トレーニングを行うための注意点をいくつかご紹介します。
筋トレの効果を高めることにもつながるので、ぜひチェックしてみてください。
1.腰回りのストレッチも忘れずに行おう!
筋力トレーニングと併せて、腰回りのストレッチも実施しましょう。
腰痛改善のためにストレッチはとても効果的です。筋肉を伸ばすことで硬い筋肉が柔らかくなり、血流が改善したり関節が動かしやすくなったりします。
また、筋トレにおける怪我の防止にも役立ちます。したがって、筋トレの前後にストレッチを行い、腰の筋肉をほぐすのがおすすめです。
以下より、簡単かつ効果的なストレッチを紹介します。
1つ目は「ヒップロール」です。
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒します
STEP3:元の姿勢に戻ります
※腰の伸びを感じながら実施してみてください
※肩が床から離れないように注意しましょう
このストレッチを行うことで、背中を反る動作に作用する「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」が柔らかくなります。
2つ目は「体幹前面ストレッチ」です。
STEP2:肘を伸ばして身体を後方へ反らせましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
※腹筋の伸びを感じながら行いましょう
上記のストレッチを行うと、体幹を前方に曲げる・体幹を安定させるために作用する「腹直筋(ふくちょくきん)」が柔らかくなります。
なお、ストレッチを行う際は、呼吸を止めずにゆっくり行うことを心がけてみてください。
参考記事:【1日たった5分】腰痛改善に必要な簡単ストレッチを原因とあわせて紹介!
参考記事:【立ったままできる】腰痛の予防・改善に効果的なストレッチ4選!
2.正しいフォームを心がけよう
腰回りの筋力トレーニングは、腰痛の改善に有効です。ただし例外もあり、やってはいけない筋トレが存在します。
その1つが「誤ったフォームでの筋トレ」です。
もし誤ったフォームで筋トレを続けると、狙った筋肉に対し正しく効かせられません。思うような筋力アップは望めないでしょう。
また、誤ったフォームが原因で予想外の負荷がかかり、怪我をするリスクも増えてしまいます。
したがって、正しいフォームでトレーニングできているか定期的にチェックしてみてください。
3.少なめの回数・秒数から始めよう
これから初めて筋トレに取り組むという方は、まずは少なめの回数・秒数からスタートしましょう。
最初から無理して体力の限界まで行おうとすると、怪我をするリスクが高まります。疲労がたまりひどい筋肉痛が続けば、すぐ燃え尽きてしまいかねません。
筋トレは、ある程度継続することで徐々に効果が出てきます。
したがって、無理のないメニューでトレーニングを始めて、余裕が出てきたら徐々に回数や秒数を増やしてみましょう。
また、筋トレは毎日行う必要はなく、数日おきにトレーニングを続ければしっかり効果が現れます。
「いかに長期にわたって続けられるか」を意識してみてください。
4.腰が痛くなったらトレーニングを休もう
正しいフォームで行っても、余裕ある回数・秒数で行っても、筋トレがきっかけで腰を痛める可能性はあります。
もし、トレーニング中に腰が痛くなったら、すぐにトレーニングを中断してください。そのうえで、ある程度痛みが引くまで筋トレを再開するべきではありません。
「軽い筋肉痛のような痛みだから大丈夫」と無理して筋トレを続けると、大怪我や腰痛の悪化につながる可能性が高いです。くれぐれも注意してください。
まとめ
本文で紹介したように、腰回りの筋トレを行うことで腰痛の改善が期待できます。それだけでなく、引き締まったお腹や美しい姿勢など、見た目のメリットも大きいです。
ぜひ、腰の筋肉強化を始めてみてください。
もちろん無理は禁物です。できる範囲でコツコツ筋トレを続けていけば、きっと成果が出てくるでしょう。
それでは当記事が、少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
【参考文献】
1)青木 孝文, 今野 俊介, 宮本 雅史, 伊藤 博元:腰痛に対する簡便な運動療法の試み
2)菊地 尚久:運動療法の可能性
3)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第 3 版
4)上 井 浩:腰痛診療ガイドライン 2019 の要旨と解説
5)門間 陽樹 ,川上 諒子,山田 綾, 澤田 亨 :“筋トレ”の疫学: Muscle-strengthening exercise に関するナラティブレビュー
6)浜西 千秋:腰痛性疾患にみられる「コルセット筋」の筋力低下と簡便な座位トレーニング