足の甲が痛い原因は?考えられる病気と対処法をわかりやすく解説

突然訪れる足の甲の痛み。その原因は靴の問題や疲労、病気など多岐にわたります。

本記事では日常生活で起こりうる要因から、疾患が関与するケースまで幅広く紹介し、セルフケアや受診の目安までをわかりやすく解説します。

最後までお読みいただくことで、あなたの痛みの原因がわかり適切な対処法を講じることができるでしょう。ぜひお付き合いください。


足の甲が痛いのはなぜ?主な原因と症状の特徴

運動中に足の甲を痛めた女性の画像

足の甲の痛みには様々な原因があります。ここではよく見られる代表的なケースをご紹介します。

足の甲に痛みを感じた経験がある人は意外と多く、その原因は日常生活の中に潜んでいます。歩行時の衝撃を受けやすい足の甲は、繰り返しの負担や些細な習慣の違いからも痛みを生じることがあります。まずはどんなケースがあるのか、わかりやすく解説します。

靴が足に合っていない、または履き方に問題がある

合わない靴による圧迫や摩擦は、足の甲に不自然な力を加えて痛みの原因になります。とくに甲の部分がきついスニーカーやローファーを長時間履いていると、足の甲の筋肉や腱靭帯ストレスがかかり炎症を引き起こすこともあります。

また、靴ひもを強く締めすぎたり、インソールが硬すぎたりすることも影響します。デザインだけで靴を選ぶのではなく、実際に歩いたときのフィット感や、足の甲に余裕があるかどうかを確認することが重要です。

参考:【足首の捻挫】歩けるけど痛い・腫れてる時はどうしたら良い?正しい対処法を解説

立ちっぱなしや運動後の疲労の蓄積

長時間の立ち仕事や激しい運動の後、足の甲に痛みを感じる人もいます。これは筋肉や腱が過度に使われることで一時的に炎症を起こし、痛みとして現れるためです。

特に、硬い地面の上で長時間立ち続けたり、ランニングやマラソンなど足に負担のかかる運動をしている人に多く見られます。運動中に足に合っていないシューズを使っていると、足の甲にかかる負担はさらに増します。

骨や関節にまつわる異常

慢性的な足の甲の痛みが続いている場合、骨や関節に何らかの異常が起きている可能性もあります。たとえば、「疲労骨折」は小さなヒビが骨に入ることで痛みを感じるもので、長距離ランナーなどの繰り返しの衝撃が原因になることがあります。

また、「リスフラン関節症」など足の甲の関節に変性や炎症が起きている状態も原因の一つ。これは足をひねった後や転倒の際など、直接的な外力が引き金となることが多いですが、年齢を重ねた人に自然発症するケースも見られます。

局所的な神経や腱のトラブル

神経が圧迫されたり、腱に炎症が起こったりすると、歩くたびに足の甲に鋭い痛みが走ることがあります。これは「伸筋腱」や「腱鞘炎」などが関与している場合があり、無理な動作を繰り返したり、疲労が蓄積した結果として現れる症状です。

また、前足根管症候群のように神経が圧迫される病態では、単なる筋肉痛とは違うしびれ感灼熱感を伴うこともあります。単に疲れたのか、何か病的な要因があるのかを見極めるためには、こうした神経のトラブルも知っておくことが重要です。

足の甲の痛みから考えられる代表的な病気

足の甲の痛みは、以下のような疾患と関連している可能性があります。

一時的な疲労や靴による影響では説明できない足の甲の痛みが続く場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。ここでは、足の甲に痛みを引き起こす代表的な疾患を取り上げ、それぞれの特徴や見分け方、注意点を解説します。

疲労骨折(中足骨骨折)

長期間にわたって繰り返される衝撃が原因で、足の甲の骨に小さなヒビが入るのが「疲労骨折」です。特に中足骨と呼ばれる部分に起こることが多く、走る・跳ぶといった動作を伴うスポーツ選手や、歩行量が多い人に見られます。

最初は違和感程度でも、放置すると痛みが強くなり、腫れや熱感を伴うこともあります。患部を押すとピンポイントで痛みを感じるのが特徴で、歩行時に体重がかかると特に痛みが増す場合は要注意です。

扁平足・変形性関節症

扁平足の画像

足のアーチが崩れてしまい、足裏全体が地面に接する状態を「扁平足」と呼びます。この状態では足の甲の骨や関節に不自然な負担がかかるため、痛みや炎症が起こりやすくなります。とくに長時間歩いた後に足の甲がだるくなる、痛くなるという人はこの傾向が見られるかもしれません。

また、中高年に増える「変形性関節症」では、足の関節がすり減って骨と骨が擦れることで痛みが出ます。歩行時や階段の上り下りなど、関節に負担がかかる動作で悪化しやすく、初期には軽い違和感として現れることもあります。

参考:【理学療法士監修】土踏まずが痛いのはなぜ?足底筋膜炎との関係とセルフケアを解説

腱鞘炎・腱炎(伸筋腱の障害)

足の甲には、足の指を動かすための腱けん)が複数走っています。これらの腱に炎症が起こると、「腱鞘炎」や「腱炎」として痛みを引き起こします。特に「長趾伸筋腱炎」「長母趾伸筋腱炎」は、足の甲の中央や内側に痛みを生じる原因としてよく知られています。

このタイプの痛みは、足の指を動かしたり甲の筋を伸ばしたりしたときに強くなるのが特徴です。また、階段の上り下りや、坂道を歩いたときにも痛みが増すことがあります。腱の過使用によるケースが多く、歩行習慣や靴の履き方の見直しも重要です。

神経の圧迫・障害(足根管症候群・腰椎由来)

足の甲の痛みの中には、神経由来のものもあります。「足根管症候群」は、足首の内側で神経が圧迫され、甲まで痛みやしびれが広がる病態です。足を反らす動きで症状が強くなり、足の裏にもしびれを感じることがあります。

また、腰椎ヘルニアによって坐骨神経が圧迫されると、その痛みや異常感覚が足の甲にまで及ぶこともあります。いわゆる「関連痛」として現れる場合で、腰の違和感を伴っているケースでは特に注意が必要です。

腰椎ヘルニアの画像

足の甲が痛いときの対処法と自宅でできるケア

足の甲にテーピングをしている画像

症状に応じて、自宅でできる対処法やケアを紹介します。足の甲の痛みは、必ずしもすぐに病院へ行く必要があるとは限りません。原因が明確で軽度のものであれば、自宅での適切なケアで改善が見込めます。
ここでは、応急処置から日常的に行えるセルフケアまで、効果的な方法を紹介します。

冷却・安静・圧迫・挙上(RICE処置)で早期回復を目指す

急な痛みや腫れがある場合、まずは「RICE処置」を基本とした対応が有効です。

冷却(Rest & Ice)

痛みや腫れがある箇所には、まず冷却が有効です。氷嚢や保冷剤をタオルに包み、1回15~20分を目安に冷やしましょう。冷やしすぎは凍傷のリスクがあるため、感覚が鈍くなったら中断することが大切です。

安静(Rest)

足の甲に痛みがあるときは、無理に歩いたり運動したりせず、しっかりと休ませることが回復への近道です。痛みが軽減するまでは、できるだけ体重をかけず、負担を避けるようにしましょう。

圧迫(Compression)

弾性包帯やサポーターなどを使って、軽く圧迫することで腫れを防ぎます。巻く強さは、血流を妨げない程度にとどめ、装着中にしびれや冷たさを感じた場合はすぐに外してください。

挙上(Elevation)

患部を心臓より高く保つことで、腫れの軽減が期待できます。横になる際は、クッションや毛布などを足の下に置いて高さを調整すると良いでしょう。

テーピングやインソールで足の負担を軽減する

足の甲にかかる負担を軽減するためには、サポートアイテムの活用も有効です。

テーピングの活用

痛みのある箇所に応じてテーピングを施すことで、動きを制限しつつ安定性を保つことができます。足の甲に沿ってX字型やU字型に貼る方法が一般的で、足のアーチをサポートしながら筋肉や腱への負担を和らげます。

インソールや靴の見直し

クッション性のあるインソールや、自分の足型に合ったアーチサポート付きのものを使うことで、歩行時の衝撃を吸収し、足の甲の疲労を軽減します。また、靴のサイズや甲の高さにも注意し、きつすぎずゆるすぎないものを選ぶことが重要です。

自宅でできるストレッチ・セルフエクササイズ

足の甲の痛みが慢性的にならないためには、日頃のストレッチや筋力強化も重要なポイントです。

アキレス腱と足底筋膜のストレッチ

壁に両手をつき、片足を一歩後ろに引いた姿勢で、かかとを床にしっかりつけたまま体を前に倒していきます。この動作でふくらはぎ〜アキレス腱、そして足底が効果的に伸ばされ、足全体の柔軟性が高まります。

腓腹筋ストレッチ

STEP1:壁に手をつき片足を前方に出しましょう。
STEP2:前方の膝を曲げ、体重をかけましょう。
STEP3:踵を浮かさないように注意す元の姿勢に戻りましょう。
注意点:踵が浮かないように注意しましょう。

足の甲を伸ばすストレッチ

座った姿勢で足の甲を床につけるように足の指を伸ばし、ゆっくりと上体を後方へ倒していくと、甲の筋や腱がストレッチされます。無理のない範囲で10〜15秒を2〜3回繰り返すと、硬さや緊張の軽減に効果的です。

タオルギャザー運動

床に敷いたタオルを足の指でたぐり寄せる運動は、足の筋力をバランス良く鍛える簡単な方法です。椅子に座って行えるため、毎日のルーティンとして取り入れやすく、足のアーチのサポート力強化にもつながります。

タオルギャザー運動

STEP1:タオルを床に敷きましょう。
STEP2:タオルを踏みましょう。
STEP3:指を丸めタオルを引き寄せましょう。
STEP4:指を開きタオルに置きます。繰り返し実施しタオルを引き寄せていきましょう。

どんなときに病院へ行くべき?診療科の選び方と受診の目安

セルフケアでは改善しない痛みには、専門的な診察が必要です。

足の甲の痛みがなかなか治らない、または日常生活に支障が出ている場合は、自己判断で放置せず医療機関を受診することが大切です。しかし、どの診療科を受ければいいのか迷う人も多いのではないでしょうか。ここでは、受診の目安と診療科の選び方についてわかりやすく解説します。

判断ポイント1:痛みの原因が明確でないとき

転倒や強い打撲など明確なきっかけがないのに足の甲が痛む場合、内部で炎症や神経圧迫などが起きている可能性があります。慢性的に続く痛みや、片足だけでなく両足に症状が出ているケースは、整形外科で詳しい検査を受けることが勧められます。

また、痛みが日ごとに強くなっていたり、朝より夕方に症状が悪化する傾向がある場合も、疾患の兆候であることが多いため注意が必要です。

判断ポイント2:しびれや感覚異常があるとき

ただの痛みではなく、足の甲にしびれやビリビリとした感覚がある場合は、神経が関与している可能性があります。足根管症候群腰椎からの神経圧迫などが考えられ、このような場合は神経の状態もチェックできる整形外科や神経内科が適しています。

特に、歩行中に足の感覚が鈍くなる、足の裏にも違和感が広がるといった症状は、放置すると悪化するリスクが高いため、早めの受診が重要です。

参考:【足のしびれ】治し方・マッサージ法を紹介!原因別のセルフケアで改善しよう!

判断ポイント3:皮膚の異常や腫れ・赤みが強いとき

足の甲に発赤や熱感、水ぶくれ、腫れが見られる場合は、皮膚の炎症や感染症の疑いもあります。外傷による細菌感染やアレルギー性皮膚炎、痛風などの内科的疾患も含め、皮膚科や内科の受診が適切です。

自己処置で悪化する前に、まずは炎症の原因を特定することが先決です。特に痛みとともに発熱がある場合は、全身症状の一部として現れていることもあるため注意が必要です。

判断ポイント4:生活に支障が出るほど痛むとき

歩くのがつらい」「立っているだけでズキズキする」といった生活に支障が出ている場合は、迷わず整形外科へ。痛みの背景にある骨や関節の異常、炎症を正しく診断し、適切な治療に早くつなげることが改善への第一歩です。

仕事柄、長時間立ちっぱなしの方や、歩行が不可欠な職種の方にとっては早期対応がとても重要です。症状が進行する前に専門的な診察を受けることが、回復までの期間を短くするポイントになります。

受診に備えて整理しておきたい情報

病院を受診する際には、医師に伝える情報をあらかじめ整理しておくとスムーズです。以下のチェックリストをもとに準備しておきましょう。

  • 痛みが始まった時期
  • 痛みのきっかけとなった出来事(例:運動、転倒、長時間歩行など)
  • 痛む場所(右足・左足、中央・内側・外側など)
  • 痛みの種類(ズキズキ・ジンジン・しびれ感など)
  • 痛みが強くなる時間帯や動作(朝起きたとき、歩いたときなど)
  • 使用している靴の種類や日常の歩き方

こうした情報は、診断を正確にし、治療方針を決める際に役立ちます。また、痛みの経過を簡単にメモしておくと、症状の変化を医師と共有しやすくなります。

まとめ

足の甲の痛みは、単なる疲労や靴の問題だけでなく、骨折や神経の障害など深刻な疾患のサインである場合があります。痛みを我慢して放置すると悪化の原因になりますので、適切なセルフケアを行い、症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。日頃から足を労わる意識が大切です。
本記事が、少しでもあなたの足の痛みの軽減につながれば幸いです。

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