背中の左側が痛いのは内臓の病気かも?考えられる原因と対処方法を解説

多くの方が、何かしら背中の痛みを経験したことがあると思います。

しかし、背中の左側の痛みにプラスして、その他の症状が見られる場合は重篤な病気のサインかもしれません。

そこで当記事では、背中の左側が痛い場合に考えられる原因と対処方法をわかりやすく解説していきます。

最後まで読んでいただければ、背中の左側の痛みに隠された病気が分かり、適切な対処方法を学べます。ぜひ最後までお付き合いください。

背中の左側が痛む場合に考えられる原因は?

女性が腰を抑えている写真

背中の左側が痛む原因はさまざまです。一般的には背中の左側が痛む場合、アンバランスな姿勢による筋肉の問題などが考えられます。

しかし一部の方においては、内臓の病気による重篤な症状のサインかもしれません。その場合、専門の医療機関で適切な対応を行う必要があります。

そこでここからは、背中の左側が痛むときに考えられる原因と特徴的な症状を解説します。

姿勢の乱れによる筋肉の痛み

背中の左側が痛む原因として、姿勢の乱れによる筋肉の痛みが考えられます。

まず、正しい姿勢とは体を横から見たときに、耳・肩・骨盤・膝・外くるぶしを通る線が真っ直ぐになっている状態を指します。そして、正面からみたときには両肩を結んだ線が床と水平になっている状態が理想的です。

正しい姿勢を説明している図

しかし、現代の生活環境ではデスクワークやスマートフォンの使用により、頭が肩よりも前に出て、背中が丸くなった姿勢で過ごすことが多いです1)

姿勢が乱れると一部の筋肉が過剰に働いてしまい、場合によっては背中への負担が増えてしまいます。

他にも筋肉のバランスが崩れる理由として、左側の手や肩でかばんを持つ習慣のある方は、左の肩や背中周辺の筋肉が過度に収縮し痛みを引き起こしやすくなります。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:背中の筋が痛いのはなぜ?原因と対処法や危険な症状の見分け方も解説

背中の左肩付近に痛みが出る心臓の病気

胸を抑えている女性が診察を受けている写真

心筋梗塞や狭心症など心臓の病気と関連して、背中の左肩付近に痛みが現れることもあります。

心筋梗塞

心筋梗塞は冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる心臓にある血管の一部が詰まり、心臓の筋肉に酸素や栄養が供給できなくなる病気です。

心筋梗塞を発症した場合、背中の左肩付近に痛みや圧迫を感じることがあります。また、他にも以下のような症状が見られます。

  • 息切れ
  • 吐き気や嘔吐
  • 冷や汗

狭心症

さらにもう一つの原因として、狭心症の可能性があります。

狭心症は冠動脈の狭窄(きょうさく:狭くなること)によって、心臓の筋肉に酸素や栄養の供給が不十分になる病気です。狭心症も同様に、背中の左側に痛みや圧迫感を生じますが、心筋梗塞と比べると症状が軽度なのが特徴です。

また、狭心症の痛みは身体活動やストレスによって引き起こされ、休憩などで緩和されることもあります。痛み以外の主な症状は以下になります。

  • 圧迫感
  • 発熱や息切れ
  • 倦怠感
  • 動悸

背中の痛みと息苦しさを伴う肺の病気

背中の痛みと息苦しさを伴う場合、肺の病気が考えられます。また肺の病気にもさまざまあり、以下が挙げられます。

  • 肺炎
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 肺塞栓症
  • 肺がん

肺炎

肺炎は肺組織の感染症で、通常はウイルスや細菌によって引き起こされます。

また、背中の痛みは細菌の感染や炎症が原因で起こり肺の機能も低下するため、息切れや息苦しさ、発熱、咳なども引き起こされるのです。

COPD

次にCOPDは、主に喫煙や長期間の吸気汚染などの要因によって引き起こされる病気です。背中の痛みや圧迫感が現れることもあり、息苦しさや慢性的な呼吸困難も特徴的な症状となります。

肺塞栓症

そして肺塞栓症(はいそくせんしょう)は、肺動脈や分岐部に血栓(血の塊)が詰まることによって引き起こされる病気です。

背中の痛みは、血栓による肺血管の狭窄や閉塞によって生じます。他にも、呼吸困難や急激な息切れ、胸痛なども特徴的な症状です。

肺がん

最後に、肺がんは肺組織で悪性腫瘍が発生する病気で、背中に痛みが現れます。

他にも胸痛や動作時の息苦しさ、咳や血痰(痰に血が混じる)といった症状が見られる場合もあります。

肩甲骨の下に痛みが出るすい臓の病気

肩甲骨の下に痛みが出る場合、すい臓の病気が考えられることも。

すい臓は、お腹の中央近くで胃の後ろ側にあります。消化酵素※1や、インスリン※2の分泌などを行う重要な臓器で、主なすい臓の病気にはすい臓炎(すい炎)やすい臓がんがあります。

※1食べ物を分解して消化・吸収を促す酵素の総称
※2血糖値を一定に保つ働きを持つホルモンの一種

すい炎

すい炎とは、すい臓の組織が何かしらの原因で炎症を起こす病気です。症状としては、肩甲骨の下に痛みや圧迫感を生じることがあります。

また、痛みは急性で重度で、食事やアルコールの摂取後に悪化することが多いです。
特徴的な症状として、吐き気や嘔吐、腹痛、発熱などが見られることもあります。

すい臓がん

次に、すい臓がんはすい臓で悪性腫瘍が発生する病気です。初期段階では症状が現れにくく、進行すると肩甲骨の下に痛みや不快感が生じます。

他には、体重の減少や食欲不振、消化不良、黄疸などの症状が見られます。

胸やけ・吐き気を伴う胃の病気

背中の痛みに胸やけや吐き気を伴う場合、胃の病気が考えられます。胃は背骨にぶら下がるようについているため、問題が生じると背中に痛みが引き起こされることも。

代表的な胃の病気は、以下が挙げられます。

  • 胃炎
  • 胃潰瘍
  • 逆流性食道炎

胃炎

胃炎は、胃の内壁が炎症を起こす病気です。胃の内側が刺激されたり、胃酸の過剰分泌や胃粘膜のダメージが原因となることもあります。

他にも、吐き気や腹痛、消化不良の症状がみられる場合もあります。

胃潰瘍

胃潰瘍は胃の内壁にできる傷や潰瘍のことで、胸やけや吐き気を引き起こす一因になる場合があります。そして、胃潰瘍によって胃の内壁が傷つくため、痛みや不快感を生じるケースも。

特徴的な症状としては、吐き気や嘔吐、体重減少、口臭などです。

逆流性食道炎

最後に逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流し食道の内壁を刺激する病気となります。胸焼けが特徴的な症状で、吐き気や喉の痛みも現れる場合があります。

その他

内臓以外で、背中の左側が痛くなる原因として考えられるのは帯状疱疹(たいじょうほうしん)です。

帯状疱疹とは、水ぼうそうウイルスが免疫低下などの影響で再活性化し発症する病気です。初期症状は、左右どちらかの神経に沿って生じる皮膚の痛みや違和感、かゆみなどになります。

多くは上半身に見られ、痛みは「ピリピリする」「ジンジンする」「ズキズキする」と表現されるほか、「焼けつくような」と表現されることもあります。

参考記事:背中の右側の痛みは内臓が原因!?考えられる原因と適切な対処法

背中の左側だけ痛い!姿勢の乱れが原因となる痛みを改善するストレッチ3選

ここからは、姿勢の乱れが原因で背中の左側に痛みが出ているときの対処方法を解説します。

姿勢の乱れは、日常生活で偏った体の使い方をしている方に多く見られます。日ごろの生活で心当たりのある方は、以下で解説するストレッチにぜひチャレンジしてみてください。

背骨の動きを整える胸椎側屈運動

胸椎側屈(きょうついそっくつ)運動は、背骨の胸部分にある胸椎を左右に傾ける運動です。

背中の左側が痛む場合、周囲の筋肉が緊張していることが考えられます。たとえば、左側でかばんを持つことが多い方は、左側の肩や背中周りの筋肉が硬くなりやすいです。

さらに、筋肉が硬くなると背骨の動きも悪くなり、より背中への負担が大きくなります。ですので、胸椎側屈運動を行って筋肉の緊張を緩和し、背骨の動きを整えましょう。

胸椎側屈運動

STEP1:両手を頭の後ろで組みましょう
STEP2:体を傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻り、繰り返し行いましょう
STEP4:上半身をなるべく大きく傾けましょう
※背中が丸まらないように注意しましょう

参考記事:背中のコリをほぐしたい!凝りやすい場所とおすすめストレッチ・気持ち良いツボを解説
参考記事:背中の痛みをストレッチで改善!体の硬さチェックから対策方法を紹介

背中の筋肉を伸ばす脊柱起立筋ストレッチ

次に、背中の筋肉を伸ばすために、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)と呼ばれる背中でもっとも大きな筋肉をストレッチする方法を解説します。

脊柱起立筋の役割は、背筋を真っすぐに保つことです。姿勢を真っすぐに保つように働くため、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などで背中が丸くなる姿勢を続けていると、脊柱起立筋に大きな負担がかかります。

結果、脊柱起立筋への負担が続くことで、背中の痛みが引き起こされるのです。ですので、デスクワークが多い方や猫背になりやすい方は脊柱起立筋のストレッチを行い、筋肉の緊張を緩和させましょう。

脊柱起立筋ストレッチ

STEP1:片足を前に出し反対側の足を組みましょう
STEP2:つま先に向かって両手を伸ばしましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:腰回りが伸びるのを感じながら行いましょう
※痛みに注意しながら行いましょう

脇腹の筋肉を伸ばす広背筋ストレッチ

最後に、広背筋(こうはいきん)のストレッチ方法を解説します。

脇腹の筋肉はさまざまありますが、とくに広背筋と呼ばれる筋肉が硬くなりやすいです。広背筋は、腰のあたりから腕の付け根にかけて筋肉があります。

そして、かばんを片側で持つ習慣のある方や車の運転をする方など、腕を頻繁に使うことで広背筋の緊張が高くなる傾向も2)

その結果、広背筋が硬くなり脇腹から背中にかけて痛みが引き起こされます。広背筋のストレッチで、背中の痛みを緩和していきましょう。

広背筋ストレッチ

STEP1:両手を繋いでバンザイをしましょう
STEP2:片側のお尻に重心を乗せ、反対側へ体を傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:脇腹の伸びを感じながら実施しましょう
※重心は反対のお尻にしっかり乗せましょう

背中の左側が痛いときに病院受診が必要な症状とは?

医師が患者に説明してる写真

背中の左側、あるいは肩甲骨の下あたりの痛みの原因が運動後の筋肉痛などの場合は、いったん様子をみても良いでしょう。

しかし、背中の激しい痛みに合わせて嘔吐、息切れ、呼吸困難などの別症状がある場合は、内臓や呼吸器系の異常がある可能性もあります。心当たりのある方はすぐに医療機関への受診が必要です。

背中の左側が痛いときは何科を受診するのが適切?

背中の左側が痛いときに受診する病院は、症状によって異なります。

当てはまる症状を確認し、以下の医療機関を受診しましょう。

  • すい臓に問題が生じている場合は内科、消化器内科
  • 胃に問題が生じている場合は、消化器内科
  • 心臓に問題が生じている場合は、循環器内科
  • 肺に問題が生じている場合は、呼吸器内科
  • 帯状疱疹の場合は皮膚科

自身で判断がつかず、何科を受診して良いか迷う場合は、かかりつけ医か内科医にまずは相談してみましょう。

まとめ

今回は、背中の左側だけが痛い場合に考えられる原因と対処方法を解説しました。

当記事をまとめると

  • 姿勢の乱れによる筋肉の痛みが考えられる
  • 背中の左側の痛みとあわせて特徴的な症状がある場合、内臓の病気も考えられる
  • 背中の左側が痛くなる場合、「心臓、肺、すい臓、胃」の病気が考えられる
  • 内臓の病気の可能性がある場合は、すぐに医療機関への受診が必要

となります。

背中の左側だけが痛い場合、筋肉の痛みなのか内臓からくるサインなのか見分ける必要があります。また、内臓からのサインは、痛みと共に特徴的な症状が現れるため、見落とさないよう注意しましょう。

自身で判断が難しい場合や不安なときは、かかりつけ医か内科医に相談するのが望ましいです。

それでは、当記事があなたの背中の痛み軽減に役立てば幸いです。

参考文献
1)藤村昌彦,他.座位作業における座面の傾動が腰背部に及ぼす影響 : 可動座面椅子を用いた試み,広島大学保健学ジャーナル,1(1),65-72,2001
2)三浦雄一郎, and 福島秀晃. “肩関節運動機能と ADL の関連性.” 関西理学療法 8 (2008): 25-34.