多くの方が抱える身体の不調が「肩こり」です。肩こりは厄介な悩みなので、緩和する方法を探している方も多いはず。
そこで思いつくのが「湿布を貼る」ではないでしょうか。ただ、肩こりの緩和に湿布が効くのかわからない方も多いかもしれません。
当記事では、肩こり改善に湿布は有効なのかを解説します。肩こりに湿布が効くケースや注意点、また肩の激痛が現れる「四十肩・五十肩」についてもお話ししました。
最後まで目を通すことで、ご自身の肩こりに湿布を貼るべきかどうかがわかり、また効果的に湿布を活用できるようになるでしょう。
ぜひ参考にしてください。
【まず確認】湿布の種類・含まれている成分
最初に、湿布とはどういったものかについて解説します。あらかじめ把握しておいてください。
湿布は、塗り薬とともに「外用消炎鎮痛剤」に分類されます。湿布に含まれる成分が皮膚を介して吸収されることで、鎮痛作用が現れます。
したがって、湿布は「薬」の一つにあたるので、慎重に使用しましょう。
そして、湿布は「冷湿布」と「温湿布」に分かれます。
冷湿布にはメントールという成分が含まれており、貼った際にひんやりとした清涼感が得られます。対して、温湿布にはトウガラシエキスが含まれているので、貼った際に温かさを覚えるでしょう。
つまり、冷湿布や温湿布には、貼った部位を冷やしたり温めたりする効果はほとんどありません。含まれる成分の作用によって冷えたように・温まったように感じるのです。
「冷」や「温」という文字があるので誤解しやすいですが、あらかじめ把握しておきましょう。
なお、軟膏が含まれていて厚みがある湿布が「パップ剤」、伸び縮みがしやすく薄い湿布が「テープ剤」と分類されます。
筋肉痛に似た肩こりなら湿布は効く!
では、肩こりの緩和に湿布の使用は有効なのでしょうか。それは、肩こりの程度やタイプによります。
疲れた際に現れる、筋肉痛に似た軽度な肩こりに対しては湿布が効果的です。凝り固まった肩に湿布を貼ることで鎮痛作用がはたらき、肩こりが楽になるでしょう。
ただし、「痛みが強い肩こり」や「しびれを伴う肩こり」には効果が現れないケースもあるので注意してください。
なお、「冷湿布」と「温湿布」の使い分けですが、先述したように作用自体は同じです。したがって、ご自身に合う方を選んで使用してみましょう。
目安として、暑い時季には冷湿布を、寒い時季には温湿布を使用するのが良いかもしれません。
参考記事:肩こりの重症度レベルをチェックしたい!ひどい肩こりに効くセルフケア方法も紹介
参考記事:寝違えに湿布は効果ある?首の痛みを早く治すための対処法や予防法も解説
肩こりに効く湿布の貼り方
ではここで、肩こりを和らげるためにおすすめな、湿布を貼る位置について解説します。
ポイントは「肩の後ろの肩甲骨(けんこうこつ)周辺に貼る」という点になります。なぜかというと、肩甲骨周辺の筋肉の凝りが肩こりの要因になるケースが多いからです。
したがって首の横にあたる肩に湿布を貼りつつ、肩甲骨周辺にも湿布を貼ってみましょう。とくに肩甲骨の内側は凝りやすいので貼るメリットがあるといえます。
肩こりに湿布を使う場合の注意点
湿布を使用するにあたって、いくつか注意点があるのでおさえておきましょう。
まず、「現在服用されている薬がある」「妊娠されている方」は、必ず専門家に相談したうえで湿布を使用してください。湿布の使用が身体にとって悪影響になる可能性があるからです。
次に、体質によっては湿布を貼ることで皮膚がかぶれてしまう場合もあり得ます。注意事項に目を通したうえで使用し、皮膚がかぶれた場合は使用を中止しましょう。
加えて、既にご存知かもしれませんが、湿布を貼ることで独特の香りがする場合があります。もし気になる方は、無香料の湿布を選んでみてください。
四十肩・五十肩には湿布よりも「氷嚢」で冷やすのが有効
肩こりと同じく、肩周りに痛みが現れるのが「四十肩・五十肩」です。
詳しい原因は不明ながら、肩周りに強い炎症が現れます。そして、肩こりに比べて痛みが強く、肩を自由に動かせない場合がほとんどです。
まずは炎症をおさえる必要があります。その際、湿布を貼るよりも氷で冷やすことを優先するべきです。氷を入れた袋(氷嚢)を肩周りに当てましょう。
もちろん湿布も有効ですが、痛みが強い場合は十分な効果が見込めません。したがって、補助的に湿布を使うように心がけてみてください。
参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介
参考記事:四十肩を早く治す方法が知りたい!痛み緩和に有効なストレッチや寝方・ツボを解説
【湿布を貼るより】肩こりを効率よく改善する方法
ここまで見てきたように、肩こりに対して湿布は効果的ですが、あくまで肩こりを一時的に緩和する方法だといえます。
肩こりの悩みをより根本的に解決するには、ご自身で体操したり生活習慣を見直したりするのが大切です。では以下より、肩こり改善に効果が期待できる方法をいくつかご紹介します。
いずれもすぐに取り組めるので、ぜひ参考にしてみてください。
参考記事:肩こりを一瞬で治す方法とは?ストレッチやマッサージで辛い肩こりを解消する方法!
肩周りのストレッチ
手軽かつ効果的なのが、肩周りのストレッチです。
ストレッチを行うことで肩に付く筋肉が伸ばされ、血流が良くなります。すると、痛みや重だるさが緩和されます。そして、気持ちよさも得られるでしょう。
では、おすすめのストレッチをいくつか紹介します。
1つ目は「僧帽筋(そうぼうきん)ストレッチ」です。
STEP2:首を斜め前方へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰を反らさないように注意してみてください
こちらのストレッチを行うことで、肩の上面に付く「僧帽筋上部線維(そうぼうきんじょうぶせんい)」を柔らかくできます。肩の後面の肩甲骨の動きも良くなるので、肩こり改善に効果が期待できるでしょう。
2つ目は「頸部伸展筋(けいぶしんてんきん)ストレッチ」です。
STEP2:首を前方に傾け、数秒間保持しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:首の後面が伸びるのを感じながら実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
上記のストレッチによって、首の後ろに付く「頸部伸展筋群(けいぶしんてんきんぐん)」を柔らかくできます。
首の筋肉の緊張によって肩こりが発生するケースも少なくありません。とくに長時間デスクワークを行っている方におすすめです。
3つ目は「胸張り運動」です。
STEP2:胸を張りながら肩甲骨を内側へ寄せます
STEP3:背中を丸めながら両手を前方に伸ばしましょう
STEP4:繰り返し実施してみてください
※顎を引きながら行いましょう
このストレッチには、肩の後面に付く「僧帽筋中部線維(そうぼうきんちゅうぶせんい)」や「菱形筋(りょうけいきん)」を柔らかくする効果があります。
数分間行うだけでも、肩周りがスッキリするでしょう。空き時間などで実施してみてください。
参考記事:【ガチガチ肩こり解消】寝ながらできる肩甲骨ストレッチを動画で解説!
姿勢を見直す
日常生活における姿勢の崩れが、肩こりの原因になっている可能性も考えられます。悪い姿勢によって筋肉が縮んだり、負荷が増えたりするからです。
あらためて、ご自身の姿勢を見直してみましょう。
たとえば、背中が丸まった「猫背」や、首が前に出た姿勢になっていませんか。あるいは、肩が前方に出た「巻き肩」になっていたり、肩が下がった「なで肩」になったりしていないでしょうか?
まずは頭をやや後ろに引き、適度に胸を張ることを意識してみてください。軽度の肩こりであれば、姿勢に気をつけるだけですぐに緩和する場合もあります。
参考記事:なで肩がひどい時の3つの対処法 〜肩こりもこれで改善!〜
参考記事:巻き肩を治す方法はある?効果的な寝方やグッズの使い方・おすすめストレッチを解説
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
まとめ
本文でお話ししたように、疲れた時にだけ現れる軽い肩こりに対しては、湿布を貼るのが効果的です。鎮痛作用によって、肩こりが幾分楽になるでしょう。
ただし、湿布の使用に注意を要する方もいます。事前に専門家に相談することを忘れないようにしてください。
また、湿布には冷やす・温める効果はほとんどありません。したがって、肩の激しい痛みや動かしにくさが伴う四十肩・五十肩には、十分な効果が見込めない場合が多いので把握しておいてください。
そして、湿布はあくまで肩こりを緩和する方法です。より根本的に肩こりを改善するために、ぜひストレッチや姿勢改善に取り組んでみましょう。
それでは当記事が、あなたの肩こり改善に役立てば幸いです。
【参考文献】
1)相良 英憲, 北村 佳久, 岡田 健男, 末丸 克矢, 荒木 博陽, 千堂 年昭, 五味田 裕:湿布剤に関する外来患者の意識調査
2)浪平 辰州, 坂田 勝美:ケトプロフェン湿布剤により喘息重責発作を来たした1例
3)小竹 武, 松本 優里香, 塚本 あゆみ, 井上 知美, 石渡 俊二, 草薙 みか, 坂野 千賀, 大里 恭章, 伊藤 吉將, 長井 紀章:消炎鎮痛パップ剤の適正保管に関する研究:痔疾用軟膏剤への成分混入の危険性
4)小清水 英司, 坪井 実, 駒林 隆夫:4044 皮膚貼付薬の疲労回復に関する基礎的研究 : サリチル酸メチルの経皮吸収並びに皮膚呼吸、皮膚血流量に及ぼす影響について