突然、右側の肩甲骨に痛みが走ると「体に何が起こったんだろう?」と不安に思いますよね。ぶつけたなどの心当たりがない急な痛みであれば、なおさらです。
また、痛みの原因がはっきりしない場合、どのように対処すれば良いかも分からないでしょう。そこで本記事では、右側の肩甲骨が突然痛くなる原因を詳しく解説しています。
痛みを緩和するセルフケアも紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
右肩甲骨が突然痛くなるのはなぜ?原因をチェック
症状への適切なケアができるよう、右側の肩甲骨周辺が突然痛くなる原因をこちらでみていきましょう。
痛みかたの特徴も挙げていますので、ご自身の症状と照らし合わせて確認してみてください。
筋肉の疲労(肩こり)
筋肉に疲労が溜まることで、肩甲骨まわりの痛みにつながる場合があります。
疲労で硬くなった筋肉が血管を圧迫し、血流が悪くなります。そして血行が悪化した結果、老廃物が蓄積して痛みを引き起こしてしまうのです。
一般的に「肩こり」と呼ばれている症状であり、右側に限らず左側の肩から肩甲骨の内側あたりにかけて鈍い痛みをともなうケースもあります。
なお筋肉の凝りからくる痛みには、「同じ姿勢が続くと、痛みや重だるさを感じる」「夕方以降に痛みやすい」といった特徴があります。
もし仕事終わりなど、疲れが溜まるタイミングで右肩甲骨の痛みが出現した場合は、筋肉の凝りの可能性をお考えください。
参考記事:肩甲骨周りが痛い原因とは?肩・首こり解消にもオススメのストレッチを紹介!
筋線維の損傷(ぎっくり背中)
肩甲骨周辺の筋肉を痛めて、炎症を起こした状態です。突然腰が痛くなる「ぎっくり腰」にならって「ぎっくり背中」と呼ばれることもあります。
ぎっくり背中の痛みには「寝違えたような痛み」「筋肉痛のような痛み」といった特徴があります。また、スポーツや日常生活における急な動作が、筋損傷のきっかけとなりやすいです。
したがって、もし体を捻ったり、背中を伸ばしたりした際に右の肩甲骨にピキッとした感覚があり、そのあとに強い痛みが出現した場合はぎっくり背中が疑われます。
参考記事:ぎっくり背中の治し方は?どうしたら楽になるの?原因と対処法について専門家が解説!
肩まわりの炎症(四十肩・五十肩)
肩関節まわりの筋肉や腱などに炎症を起こした状態です。
正式名は「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」ですが、40代、50代での発症が多いことから、一般的には「四十肩」や「五十肩」と呼ばれています。
四十肩・五十肩には「夜中に痛みが悪化する」「痛みで腕を動かす範囲が狭くなる」といった症状の特徴があります。もし、腕の付け根あたりが強く痛み、日常生活に支障が出るほど右肩の動きが制限されている場合は、四十肩・五十肩の可能性をお考えください。
なお、四十肩・五十肩と間違えやすい病気に「石灰沈着性肩板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)」もあります。
ただし、症状だけで見分けることは難しく、判別するには医療機関での検査が必要です。
参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介
背骨の問題(椎間板ヘルニア、頚椎症)
頚椎や胸椎など背骨周辺の神経の圧迫から、右肩甲骨が痛くなるケースもあります。代表的な原因としては「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」「頚椎症(けいついしょう)」などが挙げられます。
もし右肩甲骨の痛みとともに「腕から手にかけてのしびれ、力の入りにくさ」などがみられる際は、神経圧迫の可能性をお考えください。
また、上を向く動作によって症状が悪化しやすいことも、椎間板ヘルニアや頚椎症の特徴になります。
参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介
参考記事:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
内臓の病気
右肩甲骨の痛みが、内科的な疾患から引き起こされている可能性もあります。
肩甲骨周辺に突然の痛みをともなう病気には「狭心症(きょうしんしょう)」「心筋梗塞(しんきんこうそく)」「胆石症(たんせきしょう)」「胆のう炎」「膵炎(すいえん)」「リウマチ」などが挙げられます。
「発熱がある」「息苦しい」「食欲がない」など、痛み以外の症状がある場合は要注意です。中には命に関わる病気もあるため、少しでも異変を感じましたら、早急に医療機関で診てもらうようにしてください。
参考記事:背中の右側の痛みは内臓が原因!?考えられる原因と適切な対処法
【右肩甲骨の突然の痛み】まずは病院を受診しよう
きっかけがよく分からない右肩甲骨の急な痛みは、一度病院を受診して詳しく診てもらいましょう。痛みの正確な原因は、医療機関でないと分かりません。
原因が判明すれば、その後どのような治療やセルフケアを行えば良いのかがみえてきます。
なお、何科に行けば良いか分からない場合は、まず「整形外科」に相談してみると良いでしょう。もし他の治療が必要であれば、適切な診療科を紹介してくれるはずです。
状態の悪化を招きかねませんので、くれぐれも自己判断で放置しないようにご注意ください。
右肩甲骨に起きた突然の痛みへの対処法・治し方
ここからは、肩甲骨の痛みに対するセルフケアを紹介します。
なお、原因によって細かい対処法は異なる場合があります。とくに強い炎症や神経の圧迫をともなう痛みには、お医者さんとよく相談したうえで対処を行うようにしましょう。
痛みが強いときは安静にする
痛みが強く出ている時期は、なるべく患部を安静にしてください。肩や背中への負担を減らすことで、症状が落ち着きやすくなります。一般的に2〜3日ほどの安静で強い痛みは引いてくるでしょう。
しかし、例外として四十肩・五十肩は、長期化しやすい傾向があります。急性期の炎症が和らぐまでには、数週間〜2ヶ月ほどかかるとお考えください。
参考記事:五十肩でやってはいけないことをチェック!自分でできるセルフケア方法も解説
肩甲骨のまわりを冷やす・温める
肩甲骨周辺を冷やしたり、温めたりすることで、症状が和らぐ場合があります。
冷やすのか、温めるのかの判断は「激しい痛み、熱感があるときは冷やす」「慢性的な痛み、筋肉が凝ったような痛みは温める」を目安にすると良いでしょう。
なお、患部を冷したい場合は「氷水(氷嚢)を当てる」、温めたい場合は「ホットパックを当てる」「入浴する」といった方法があります。ぜひお試しください。
痛みが和らいだら運動をする
痛みが和らいできたら、できる範囲で肩を動かすようにしましょう。肩を動かすことで血流が良くなり、肩甲骨周辺の痛みや凝りが緩和しやすくなります。
血流を改善するには、肩をぐるぐると回すような簡単な運動でも効果が期待できます。
四十肩・五十肩の場合、しばらく肩の動かしにくさは残るかもしれません。しかし安静のし過ぎは、より肩の柔軟性を低下させてしまいます。
したがって、急性期の激しい痛みが落ち着きましたら、痛みが出ない範囲でなるべく通常の日常動作を行うことが推奨されています。
背中や肩まわりのストレッチを行う
右肩甲骨の痛みを軽減するには、ストレッチも有効です。ストレッチを行うことで筋肉の凝りがほぐれて、患部への血流も回復していきます。
肩甲骨の痛みに対しては、背中や肩まわりのストレッチがおすすめです。具体的なストレッチ方法をこのあと紹介していますので、ぜひご参照ください。
右肩甲骨の突然の痛みに効果的なストレッチ
それでは、右肩甲骨の痛みに効くストレッチ方法をみていきましょう。痛みの状態を確認しながら、無理のない範囲で行うように気をつけてください。
僧帽筋ストレッチ
肩の上面に付着する「僧帽筋上部線維(そうぼうきんじょうぶせんい)」を伸ばすストレッチです。僧帽筋をストレッチすることで肩甲骨まわりの緊張がほぐれ、血流も改善されてくるでしょう。特に筋肉の疲労が原因で痛みが出ている方におすすめのストレッチです。
STEP2:もう一方の手で肩を押さえましょう
STEP3:首を斜め前方へ倒しましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※肩の上が伸びるのを感じながら行いましょう
痛みがある側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同様にストレッチしてください。
胸椎回旋運動
胸椎(背中の高さにある背骨)の動きを良くする運動です。胸椎がやわらかく動くようになると、背中の筋肉の柔軟性も高まります。
STEP2:足を閉じたまま体を捻りましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※上半身をなるべく大きく捻りましょう
※足が開かないように注意しましょう
片側を10回ほど行ったら、体のバランスを整えるために反対側も同様に行ってください。
広背筋ストレッチ
背中の後面に付着する「広背筋(こうはいきん)」を伸ばすストレッチです。広背筋ストレッチによって肩甲骨周辺の血流を良くしたり、負担を減らしたりすることが可能です。
STEP2:片側のお尻に重心をのせ反対側へ体を傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※反対側のお尻に重心をのせましょう
こちらのストレッチも、左右バランスよく行いましょう。
まとめ
なぜ右肩甲骨に突然痛みが生じたのか、原因は見つかりましたか?
どのような原因であれ、まずは医療機関で検査を受けるようにしてください。症状によって、とるべき対処法や気をつけるべき注意点が変わってくるためです。
また、痛みを改善するためにも、本文で紹介したセルフケアをぜひ実践してみてください。とくにストレッチは継続して行うことで、肩甲骨の痛みの予防にもつながります。
それでは本記事が、あなたのお悩みの解決に役立てば幸いです。
参考文献
1)日本ペインクリニック学会:Ⅳ D 筋・筋膜性疼痛症候群
2)公益社団法人 日本整形外科学会「胸椎椎間板ヘルニア」
3)公益社団法人 日本整形外科学会「頚椎症」
4)Richard Dias 1, Steven Cutts, Samir Massoud:Frozen shoulder
5)日本リウマチ学会:脊椎関節炎(SpA)