「寝返りしたら腰が痛くなって動けない。」
「急な腰の痛み。これってぎっくり腰??」
腰痛は全人口の80%が生涯に一度は経験する病気です1)。
その中でも、日常生活やスポーツで腰を痛めて動けなくなった経験はございませんか?当記事を読んでいるあなたは、急な腰の痛みでお悩みの方が多いはず。
そこで今回は、いわゆるぎっくり腰とも言われる「腰椎捻挫(ようついねんざ)」について、主な原因と自宅でもできるリハビリの解説をしていきます。
最後まで読んでいただくと、適切な対処法を身につけることができ、痛みの軽減に役立てられるでしょう。ぜひ最後までお付き合いください。
なかなか治らなくてつらい腰椎捻挫とは?
腰椎捻挫について詳しく解説していく前に、まずは背骨の構造や腰痛について理解を深めていきましょう。
背骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれる小さな骨が連なって形成されており、頭から「頸椎→胸椎→腰椎」と別れています。その中で腰の部分にあたる背骨を「腰椎」と呼びます。
この腰椎に無理な力が加わって、腰周りの関節や筋肉・腱が損傷してしまった状態を「腰椎捻挫」と言います。さらに、腰椎捻挫の急性期(受傷してから1日〜3日間)は、皆さんもよく耳にする『ぎっくり腰』と呼ばれているものです。
また、腰痛は大きく分けて「特異的腰痛」と「非特異的腰痛」の2種類に分けられます。
特異的腰痛は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など診察や画像診断で異常が見つかり、原因が特定できる腰痛です。これに対して、非特異的腰痛は画像検査などで異常な所見が見られない腰痛を指します。
腰痛の約85%は非特異的腰痛とされており、腰椎捻挫も非特異的腰痛の一つとされています2)3)。
【腰を捻った?】腰椎捻挫が起こる原因
では、腰椎捻挫はどのようにして起こるのでしょうか?
多くのケースでは重い物を持つ作業や、スポーツや交通事故などで勢いよく身体をひねる動きで腰椎捻挫を発症します。
しかし腰周りの筋肉が弱くなると、上記のような強い負荷でなくても捻挫は起こりやすくなるのです。
腰椎捻挫の種類と一般的な症状
腰椎捻挫と一言で言っても、さまざまなケースが存在します。
ここでは、「椎間板性」「椎間関節性」「筋・筋膜性」の3つを解説していきます。
ご自身にあてはまる症状を見つけて、原因を把握していきましょう。
椎間板性
椎間板(ついかんばん)は椎骨と椎骨の間に存在しています。
この椎間板は2層構造となっており、中心の「髄核(ずいかく)」と髄核を取り囲む「線維輪(せんいりん)」で構成されています。
椎間板性腰痛は、この中心にある髄核がずれることで症状が出るのです。
腰の重だるさや背中を丸める動作で痛みが出やすいです。
椎間関節性
椎間関節(ついかんかんせつ)とは、連なっている椎体を上下で連結している関節のことをいいます。
この椎間関節は、腰部では腰の曲げ伸ばしで動きます。
そして痛みは起床時や長時間座った後に立ち上がるなど、動き始めに発生することが多いです。また痛みの出現は主に片側で、腰を反らせたり、後ろを振り向いたりする動作で痛みが増すケースもあります。
筋・筋膜性
背骨周囲にある多くの筋肉は、姿勢を正しく保つように働いています。それらの筋肉が日常生活における急な動きや無理な姿勢により疲労が蓄積し、痛みが出現します。
また筋・筋膜性の腰痛は、腰が抜けるような不安定感、「立つ・座る・寝返り」などの動作による痛み、そして歩きにくいなどの症状が見られるのも覚えておくとよいでしょう。
他にも、筋肉を押すと痛みが生じやすいのも特徴となります。
参考記事:【筋肉が原因となる腰痛】筋筋膜性腰痛とは?見分け方と対処法を解説!
腰椎捻挫に効く!自宅でできる治し方・ストレッチ方法を紹介!
ここからは、自宅でもできるリハビリを種類別で紹介いたします。
ご自身にあてはまる症状を把握し、運動やストレッチを実践していきましょう。
椎間板性には『胸張り運動』が効果的!
椎間板性腰痛は、椎間板の中心に存在する髄核がずれてしまい、痛みなどの症状が出現します。
さらに、猫背姿勢や前屈みなどによって背骨や周辺筋肉の柔軟性が損なわれると、髄核がずれた状態で固定され腰痛が治りにくくなるのです。
そこで胸張り運動を行うことで、背中周辺の柔軟性を改善しましょう。
STEP1:両手を前方へ伸ばしましょう
STEP2:胸を張りながら肩甲骨を内側へ寄せましょう
STEP3:背中を丸めながら両手を前方へ伸ばしましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※顎を引きながら運動を行いましょう
椎間関節性には『猫の運動』
椎間関節性腰痛は、主に反り腰姿勢の方がなりやすい腰痛です。そのため、背骨の後ろにある椎間関節に負荷がかかり痛みを生じやすくなります。
背骨の運動を行い、反り腰姿勢を改善していきましょう。
STEP1:四つ這いの姿勢となりましょう
STEP2:肩甲骨を寄せながら背中を反らしましょう
STEP3:肩甲骨を離しながら背中を丸めましょう
STEP4:背中をなるべく大きく動かしましょう
※腰を丸める方向中心に動かしましょう。
筋・筋膜性『背中のストレッチ』
筋・筋膜性腰痛は、背中周りの筋肉が疲労することで起こります。とくに、背骨の横につく筋肉である脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は姿勢を正しく保つのに最も働く筋肉です。
脊柱起立筋の緊張を和らげるため、ストレッチを行いましょう。
STEP1:片足を前に出し反対側の足を組みましょう
STEP2:つま先に向かって両手を伸ばしましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:腰回りが伸びるのを感じながら行いましょう
※痛みに注意しながら行いましょう
腰椎捻挫になったら注意したい日常生活の過ごし方
腰を痛めると、日常生活にも支障をきたします。
「なるべくなら痛みが引くまで動きたくない」と考えている方も多いかもしれません。しかし、安静にしている方が症状の悪化につながるとしたらどうでしょうか?
そこで以下、運動以外で注意していただきたい日常の過ごし方について解説していきます。
安静期間について
腰痛を発症してから炎症症状は48時間程続くとされており、4日以上の安静に効果はないと報告2)4)されています。
腰を痛めた直後は動くのも怖いかと思いますが、長期間の安静は逆に痛みの悪化や再発の可能性を高めてしまうのです。ある程度痛みが落ち着いたら、できる限り通常の日常生活を過ごすように心がけましょう。
ただし、以下の症状がみられる場合は、すぐに専門の医療機関へ受診してください。
- 痛みが全く良くならない
- お尻から下にしびれが走る
- 足が動かない(動きにくい)
参考記事:【ぎっくり腰】これでひと安心!楽な姿勢(寝方・座り方)と対処法を解説!
コルセットの着用は良いのか
コルセットは、腰椎の動きを制限する効果と痛みを緩和する効果があります2)。また、腰椎捻挫(ぎっくり腰)など急性腰痛を緩和するのに、コルセットの使用は有効とされています。
しかし、コルセットを使用して腰椎をサポートすることは、根本の解決にはなりません。それどころか、常用していると本来発揮されるはずの筋肉が使われず、筋力低下を招く危険もあるのです。
コルセットを使用する場合は、短期間に留めておくのがよいでしょう。
参考記事:コルセットは寝る時に外すべき?就寝時・寝起きの腰痛を改善するセルフケアも紹介
腰椎捻挫はどのくらいで治るのか
腰椎捻挫にはさまざま症状やケースが存在しており、治癒期間を明言することはできません。
腰椎捻挫を対象とした研究では、約33%の人が発症から3ヶ月で痛みが改善したという研究報告があります。しかし、65%の人は1年後も腰痛が存在しているという報告も2)。
この結果から、腰椎捻挫では大部分の人で自然回復するとはいえないとされています。
安静に過ごすだけでなく、ご自身の症状を把握し適切な処置や運動を行いましょう。
参考記事:【ぎっくり腰】即効では治らない!1日でも早く治す適切な対処法を解説!
まとめ
今回は、腰椎捻挫の原因と対処法を解説していきました。
腰椎捻挫は原因がはっきりせず、不安な気持ちがある方も多いはず。ですが長期間安静にしていると、逆に症状悪化につながることもあるのです。
お伝えしたトレーニングやストレッチを参考に、無理のない範囲で運動も心がけましょう。
それでは、当記事があなたの痛み解消のお役にたてれば幸いです。
参考文献
1)平成28年国民生活基礎調査.厚生労働省
2)腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版
3)Low Back Pain Clinical Guidelines.J Orthop Sports Phys Ther,42(4):A1-A57:2012.
4)Acute Lower Back Problems in Adults,Clinical Practice Guideline.95-0642:1994