「腰が痛くて受診したら腰椎椎間板ヘルニアと言われた…」「ヘルニアってよく聞くけど詳しいことはよくわからない…」
腰椎椎間板ヘルニアは比較的身近な病気の一つです。もしかしたら、「ヘルニア」と聞くだけで不安な気持ちを覚えるかもしれません。
しかし、ヘルニアにはなりやすい人の特徴があり、それを踏まえて事前に予防することも可能です。
そこで当記事では、腰椎椎間板ヘルニアを中心に、腰椎の仕組みや働きから予防に関する知識、痛みを和らげる対処法まで分かりやすく解説します!
また、腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげるための具体的な運動方法も紹介しました。
ヘルニアについて理解を深めることで、辛さや怖さも減るかと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。
まずは腰椎(ようつい)の働きを知ろう
まずは腰椎椎間板ヘルニアの理解を深めるために、腰椎(ようつい)について解説をしますね。
腰椎とは、背骨の腰の部分にある骨を指します。
背骨は小さな「椎骨(ついこつ)」という骨が重なり合ってできています。そして腰椎を構成する椎体と椎体の間に、「椎間板(ついかんばん)」が挟まり衝撃を和らげるクッションの働きをしています。
そして椎間板は主に、中心部にある水分をたくさん含んだ「髄核(ずいかく)」という組織と、その周りを囲む「線維輪(せんいりん)」で構成されています。
この椎間板は若い人であればしっかりと弾力があるのですが、年齢を重ねると髄核の水分が失われ徐々に潰れてしまうことがあります。
腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みのメカニズムを解説
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎の椎骨と椎骨の間にある椎間板が潰れてしまい、椎間板の内部にある髄核が本来と異なる場所に飛び出すことで神経を圧迫している状態です。
診断には専門の医療機関で、下肢の筋力の評価や、X線、MRIなどの画像所見を用いて総合的に判断されます。
しかしながら、画像診断で異常が見つかったとしても症状が出ない方もいるため、その後の治療法に関しては詳細な検査を行った上で決められます。
なお、首の高さの背骨に現れるヘルニアは「頚椎椎間板ヘルニア」、胸の高さの背骨に現れるヘルニアは「胸椎椎間板ヘルニア」です。
このように、椎間板が変性して神経を圧迫する症状がヘルニアなので、併せて把握しておいてください。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
腰椎椎間板ヘルニアの症状には以下の通り2種類あります。
- 神経根型(しんけいこんがた)
- 馬尾型(ばびがた)
実際に自分がどちらに当てはまるかは主治医に聞くのが確実ですが、気になる方は以下の【馬尾型】の項にある簡易的指標をご参考ください。
痺れを伴う【馬尾型】
馬尾型は、主に下半身の痺れや尿意を司る神経に障害を及ぼす「馬尾症状」と呼ばれる症状が特徴的です。また、神経根型に比べて馬尾型は危険度が高く、寝たきりになる可能性もあるので早めの受診が必要となります。
自分に馬尾症状があるどうかの目安は以下の項目でチェックできます。
- 痺れはあるが痛みはない
- 痺れや痛みが両足にある
- 両足の裏が痺れる
- お尻の周りが痺れる
- お尻の周りがほてる
- 歩くと尿意がある
上記当てはまった場合は、馬尾型である可能性が高いといえるでしょう。
下肢痛が中心の【神経根型】
神経根型とは、腰椎から左右に分かれている神経の根元が圧迫されている状態を指します。
神経根型の症状には以下のものがあります。
- 脚や足の指にうまく力が入らない
- 脚が痛む
- 脚の感覚が弱くなった
神経根型の症状は主に片脚の痛みで、馬尾型に比べて危険度は高くありません。しかし、放置すると痛みが長引き日常生活に支障をきたす可能性もあります。
痛みや痺れのピークは2〜3週間ほどと言われていますが、ひどい場合は睡眠も妨げられるほど辛いケースも存在します。
医師の指示に従い、適切に痛み止めなどを利用しながら治療を進めましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの原因とは?なりやすい人の特徴
腰椎椎間板ヘルニアの有病率(どのくらいの人がヘルニアになるのか)の目安は、おおよそ100人に一人くらいと言われています。一見、あまり多くないように感じるかもしれませんが、これはあくまでも受診して診断名がついている場合の数です。
そのため、軽い症状で受診していない場合や、ヘルニアになる一歩手前の状態の人も入れるとさらに多くなる可能性もあります。
そして、この腰椎椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴は、診療ガイドラインでは以下の通りに記載されています1)。
- 20代〜40代
- 姿勢が悪い
- 喫煙者
- 肥満
では細かく解説していきます!
年齢による影響(20代〜40代に最も多い)
腰椎椎間板ヘルニアになっている年齢で割合が高いのは、20代から40代との結果が出ています。
その理由としては、椎間板は加齢による変化を受けやすい部分であるためと考えられています。したがって、若年者でのヘルニアは珍しいと言われているのです。
一方、高齢者(50代以降)の場合は腰椎椎間板ヘルニアよりも腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)になりやすいです。加齢により椎間板の水分量が減ることで腰部脊柱管狭窄症のきっかけになりやすいと言われています。
参考記事:【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!
姿勢による影響(長時間の不良姿勢は危険)
腰椎椎間板ヘルニアは姿勢の影響も受けます。長時間の姿勢不良は腰椎に無理な力を与えるため、椎間板が潰れやすくなってしまうからです。
長時間の姿勢不良とは、以下のような状態で長い時間過ごすことと考えてください。
- 体にあっていない椅子や机での作業
- 腰を丸めた状態での車の運転
もしご自身がこのような状況に当てはまるのであれば、姿勢が良くなるように改善してみましょう。
なお、後半の【長時間の同一姿勢】の項目でヘルニアを予防する姿勢のポイントについて解説しています。
喫煙による影響(喫煙者は要注意)
喫煙者は腰椎椎間板ヘルニアになる可能性が高くなると言われています。これはタバコに含まれるニコチンが体の血流を悪くしてしまい、椎間板の脱水が起こるためです。
そして椎間板が脱水になってしまうと、ニコチンの作用で非喫煙者に比べて椎間板が弱くなってしまいどんどん状態が悪化してしまいます。日常的にタバコを吸う方は注意しましょう!
肥満による影響(BMIが高いほどなりやすい)
肥満になると腰椎への負担が大きくなります。この肥満の目安としてはBMIが30以上と言われています。
そしてBMIは以下の計算式で求めることが可能です。
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
※適正値は22と言われていて、18を下回ると痩せ、30を超えると肥満になります。
研究によるとこのBMIが4年間の増減により6年後の腰痛リスクに影響を及ぼすかどうかを検証し、BMIが4年間で5%増加すると、腰痛の発症リスクが11%高くなることがわかっています。
つまり、肥満傾向の方は今からでも適正体重に近づけることで、腰痛や腰椎椎間板ヘルニアの予防に繋がります。
適正体重に近づけるためには無理な食事制限などは行わず、適度な運動とバランスの取れた食事に気をつけてください。逆に、いま適正体重の方でも今後体重が増えてしまうと、ヘルニアになりやすくなる可能性がありますので注意しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる効果的なストレッチ方法・筋トレとは?
では、実際に椎間板ヘルニアになってしまった場合はどのようにしたら良いのでしょうか?
腰椎椎間板ヘルニアの場合は多くの方が自然治癒すると言われている中、リハビリ(ストレッチや筋トレ)を行いつつ回復を目指すケースが多いです。
それでは以下でリハビリの方法を説明しますね。今回取り上げるリハビリはストレッチ2種類とお尻や体幹の筋トレ1種類です。
2つのストレッチで体幹や腰に関する筋肉を適度にゆるめて腰の痛みの改善を目指します。それに加えてお尻の筋トレを行うことで体幹を鍛えて良い姿勢を続けられるようになります。
全て実施しても5分程度ですので、お風呂上がりなど体が温まった時に気軽にやってみてくださいね。
体幹前面ストレッチ
体幹前面ストレッチの中でマッケンジー法という腰痛体操があり、腹筋の一部である腹直筋のストレッチができて腰痛改善に繋がります。
STEP1:手をついてうつ伏せになります
STEP2:肘を伸ばして体をそらします
STEP3:その姿勢をキープします
STEP4:ゆっくりと体を戻します
※痛みがある場合は肘をついて体を反らせましょう。
動画のように長くキープできないようであれば、2〜3秒程度でも良いので繰り返し数回実施しましょう。
梨状筋(りじょうきん)ストレッチ
お尻にある梨状筋(りじょうきん)が硬くなると猫背になりやすく、椎間板への負荷が増えてしまいます。また姿勢不良だけでなく、お尻を走る「坐骨神経(ざこつしんけい)」を圧迫することもあるので日々のケアが大切になります。
そこで梨状筋のストレッチが効果的です。
STEP1:椅子に腰掛けて右の足首を左の太ももの上に乗せます
STEP2:背筋を伸ばして腰を軸に体を二つ折りにするイメージで前傾します
STEP3:その姿勢をキープします
STEP4:呼吸は止めないようにしましょう
※背中を丸めないように注意しましょう
ストレッチ時間は動画のように10秒程度でも伸びますが、30秒以上実施すると効果がより深まります。
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
ヒップリフト
ストレッチで体が温まったら筋トレも実施しましょう。腰に負担がかかりにくい姿勢を保持するためには、お尻や体幹の筋力が必要だからです。
逆に、お尻や体幹の筋力が弱くなってしまうと、重力に負けて猫背や反り腰に繋がります。ヒップリフトで鍛えていきましょう。
STEP1:仰向け姿勢となり両膝を曲げましょう
STEP2:お尻を持ち上げましょう
STEP3:ゆっくり下ろします
STEP4:身体が一直線になるまでお尻を持ち上げましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
動画のようにゆっくりと上げてキープすると効果的です。また、呼吸は止めないようにしましょう。
今回ご紹介した「腹直筋のストレッチ」「梨状筋のストレッチ」「ヒップリフト」は症状を少しでも軽減するために重要な運動です。日々の生活に取り入れて継続して実施しましょう。
ただし痛みや痺れが増えてしまう場合は、一度中止して医師の指示にしたがってください。
参考記事:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
【症状悪化に注意】腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと
「腰椎椎間板ヘルニアと言われたけど、気をつけることは何?」「仕事を休めないんだけど、悪化しないだろうか?」このように不安になることもありますよね。
腰椎椎間板ヘルニアと言われた場合に医師に「安静にしましょう」と言われることは少なくありません。しかし、どうしても仕事を休めない場合や家事育児で一日中動かなければならないこともあるはず。
そこで、誰でも気をつけることができる簡単なポイントをご紹介します!
腰を丸めた状態で力を入れるような動作
まず一番気をつけてほしいことは、腰を丸めて重い物を持つなど力を使う動作をしないことです。
この動作は椎間板への負担がとても大きくなります。
特に介護や運搬の仕事に就いている場合は気をつけましょう。
そこで腰の負担を少なくして重い物を持ち上げるポイントは以下の二つです。
- 足を開いてお尻を真下におろすようにしゃがむ
- 顔は正面を向いたまま胸を張って物を持ち上げる
この2点を守ることで腰を丸めずに物を持ち上げることができます。しかし重い物を一人で持つ動作はどうしてもリスクがあるので、できるだけ周囲の人に手伝ってもらいましょう。
長時間の同一姿勢
腰は同じ姿勢が続くと負担が増えてしまいます。意外なことに、座っているだけでも腰の負担は大きくなります。
特にデスクワークなどで長時間座っている方や、運転手の方は注意が必要です。
デスクワークであればスマホのタイマー機能などを使って、30分に1回は立つようにしましょう。例えばアラームが鳴ったら、水分をとって立ち上がり軽くストレッチするなどとルーティン化すると適度な休憩にもなります。
また、デスクワーク中もクッションなどを利用して正しい姿勢を心がけるのも効果的です。
しかし、正しい姿勢と言われても自分でどこを直せば良いのかわからない場合がほとんどですよね。そんな時は簡単にわかる以下の3点に注目してみてください。
- 背筋が伸びて顎を引いているか
- 腰と足の付け根が90度になっているか
- 足の裏はしっかり床についているか
特に猫背や反り腰、背もたれに寄りかかる姿勢は腰の負担を増やすので、そのような姿勢をとるクセがある方は注意しましょう。
最初は慣れないかもしれませんが徐々に自然とできるようになりますので、日頃から意識してみてください。
ドライバーの方は運転開始から30分ほどしたら、安全に車を停められるところを見つけて車からおりましょう。
少し体を伸ばすだけでも全身の血行が良くなり、腰のストレッチにもなります。
ストレッチの方法ですが、いきなり大きく腰を曲げ伸ばししたり捻ってしまうと、悪化させてしまうこともあります。
そのため小さく体を動かし始めて「気持ち良い」というくらいの強さで実施しましょう。
参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
腰椎椎間板ヘルニアの自然治癒期間はどのくらい?早く治す方法はあるのか?
腰椎椎間板ヘルニアは、潰れてしまった部分が吸収されて自然治癒する場合が多いと言われています。
国によってデータは異なりますが、研究によると60%〜80%の方が自然治癒するとの結果が報告されています。しかし自然治癒までの期間は詳しくわからないのが現状です。
馬尾型のヘルニアのように放置してしまうと歩くことが難しくなったり、尿漏れなどが起こり日常生活もままならなくなる可能性があります。そして最悪の場合は寝たきりなることも考えられますので、自分一人で悩まずに整形外科などの専門機関を受診しましょう。
また残念ながら、すぐに治す方法はありません。
普段から姿勢や生活習慣に注意して健康的な生活を心がけることも治療の大きな一歩に繋がります。
症状が心配な場合は、医師の指示にしたがって適切な対応を心がけましょう。
まとめ
今回の記事では、腰椎椎間板ヘルニアについて腰椎の働きから症状、痛みをやわらげるセルフケアの方法、やってはいけないことについて解説しました。
特に働き盛り、姿勢が悪い、肥満傾向、喫煙習慣がある方はヘルニアになりやすいと言われています。
生活習慣を見直してヘルニアにならないように注意するのとあわせ、適度に運動を心がけてください。
それでは以上になりますが、当記事があなたの生活において少しでもお役に立てれば幸いです。