日本人の多くの方が悩まれている、膝の痛み。
特に中高年(40〜50代)の方は膝の内側に痛みが出ることが多く注意が必要です1)。
例えば、椅子からの立ち上がりや階段の昇り降りなど、体重による負荷が膝関節に加わる際やしゃがみ込み、正座などの深く膝を曲げる動きで痛みが生じます。そして単純に膝の内側の痛みといっても、症状や対処方法も様々です。
そこで当記事では、膝の内側の痛みの主な原因を解説し、症状別の対処法をお伝えします。
ぜひ最後までお付き合いください。
膝の内側の痛みには膝周辺の筋肉が影響
膝を支えるための主な筋肉は、前面に位置する大腿四頭筋と後面にあるハムストリングスに分かれています。さらに、膝内側の鵞足部(がそくぶ)と呼ばれる場所には、ハムストリングスの一部である半腱様筋(はんけんようきん)と、薄筋(はっきん)、縫工筋(ほうこうきん)という筋肉も付着しています。
このように膝関節の内側にはたくさんの筋肉が走行することから、負担がかかりやすく痛みの症状が出現しやすいのです。
膝の内側が痛い場合に疑われる4つの原因とは?
膝の内側が痛い場合に考えられる、一般的な4つの原因を解説します。ご自身に当てはまるものを見つけて、適切な対処法を実践しましょう。
関節軟骨のすり減りが影響する変形性膝関節症
変形性膝関節症は、加齢や筋力の低下などによりクッションの役割をしている軟骨がすり減って痛みが生じる病気です。
以下の項目が複数当てはまる方は、変形性膝関節症の可能性があります。
- 動き出しの際に膝に痛みがある
- 正座やしゃがみ込みができない
- 膝が腫れる(水が溜まる)
参考記事:痛みで正座ができない!膝が曲がらない原因と効果的なストレッチを解説
筋肉が付着している部分の炎症で起こる鵞足炎
縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの筋肉が付着している部分を鵞足(がそく)と呼びます。鵞足には膝の曲げ伸ばしにより強い負担が生じます。
以下の項目に当てはまる方は、鵞足炎かもしれません。
- 長距離のランニングをしている
- 膝の内側(すねの出っ張りの内側)を押すと痛い
- 階段の上り下りで膝の内側が痛む
- 椅子からの立ち上がりで膝の内側が痛む
参考記事:【膝内側の痛み】鵞足炎(がそくえん)を早く治す方法とは?原因と効果的なストレッチ3選を紹介
膝への過度な負荷により痛みが出現する半月板損傷
半月板は膝関節の間に存在し、膝にかかる負担の分散や衝撃を吸収する役割を持ちます。半月板損傷は、この半月板にヒビが入ったり、割れたりして痛みが出現する症状をいいます。
若い人では、スポーツや事故による外傷性の原因が多いですが、中高年(40代〜50代)の方では筋力低下や体重の増加で、慢性的に膝に負担がかかることで痛みが出現することが多いです。
以下の項目に当てはまる方は、半月板損傷の疑いがあります。
- 片足に体重を乗せた状態で膝を捻ってしまった
- 膝の曲げ伸ばしをする際に引っかかる感覚や痛みがある
- 膝に水が溜まって腫れている
- 膝がある角度から伸ばせなくなる(ロッキング)
参考記事:【半月板損傷】膝のロッキングを自分で治すのは危険?適切な治療方法を解説
繰り返しの屈伸運動により発症するタナ障害
膝関節の内部には関節の空間があり、その空間は滑膜ヒダという膜で仕切られています。タナ障害は、この滑膜ヒダが膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで、大腿骨(太ももの骨)と下腿骨(すねの骨)に挟まってしまい、腫れや痛みが出現します。
以下の項目に当てはまる方は、タナ障害の可能性が高いです。
- 膝のお皿が引っかかる感じがする
- 膝に何かが挟まる違和感を覚える
- 膝の内側(お皿の横)を押すと痛みがある
【原因別】膝の内側が痛い場合の対処法
ご自身に当てはまる症状は見つかりましたでしょうか?
ここからは、膝の内側が痛い時の対処方法を、原因別に解説していきます。
変形性膝関節症へは内ももの筋トレが効果的
変形性膝関節症の可能性がある方は、大腿四頭筋の筋力低下により膝への負担が大きくなっている場合が一般的です。そのため、痛みに対しては筋力トレーニングが推奨されています2)。
関節に負担をかけないよう、タオルつぶしなどの運動をしていきましょう。
STEP1:片膝を伸ばして座りましょう
STEP2:膝の裏にタオルを入れて膝を伸ばします
STEP3:膝裏でタオルを潰すように太ももに力を入れます
STEP4:数秒間力を入れ繰り返し実施します
※なるべく姿勢は正して行いましょう
その他、膝関節周りの筋力低下以外にも、過度な体重増加が膝関節痛へ影響することも報告されています。そのため、日頃の食生活も心がけ肥満を予防・改善していきましょう3)。
鵞足炎には内もものストレッチを行いましょう
鵞足炎の可能性がある方は、膝の内側に付着している半腱様筋・半膜様筋・薄筋の柔軟性低下により、痛みが生じやすくなります。
内もものストレッチを行うことで筋肉の緊張を和らげましょう。
STEP1:両足を大きく広げましょう
STEP2:上半身を捻りながら骨盤を前方へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施します
※背中を丸めない様に注意しましょう
半月板損傷は膝の曲げ伸ばし運動を行い可動域を広げよう
半月板損傷の可能性がある方は、詳細な検査を行い、状態に応じた治療を行う必要があります。専門の医療機関を受診しましょう。(場合によっては手術が必要になることもあります)
また、リハビリは炎症症状を抑えることが第一優先となります。運動は避け、アイシング(痛みのある場所を冷やす)をしっかりと行い腫れを軽減させましょう。
腫れが徐々に治り痛みなく動かせるようになったら、可動域動域を広げるトレーニングをしましょう。
STEP1:両脚を伸ばし太ももを支えましょう
STEP2:手でアシストしながら膝を曲げていきます
STEP3:ゆっくりと膝を伸ばしていきましょう
STEP4:繰り返し膝を曲げ伸ばししましょう
※可能な範囲で大きく動かしましょう
タナ障害には太もも前面のストレッチが効果的
タナ障害の可能性がある方は、滑膜ヒダと膝との摩擦が大きくなり痛みが出現していることが多いです。そして、太ももの筋肉が硬くなると摩擦も強くなるため、ストレッチで筋肉の緊張を和らげましょう。
STEP1:横向きの姿勢となりなりましょう
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方から掴みましょう
STEP3:足を後方へ引っ張りましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※腰を反らさないように注意
膝の内側の痛みはどのくらいで治る?
膝の痛みによって歩くのが大変になり、お困りの方は多いのではないでしょうか?
膝の痛みは、加齢に伴う筋肉や骨格の変化も関係し、要因や種類もさまざまです。そのため、治療期間を明言することはできません。
特に半月板損傷などで膝が動かなくなってしまう、変形性膝関節症で歩けないほど重症化してしまうなど、場合によっては手術が必要となるケースがあるため、専門の医療機関を受診し今後の治療方針を相談することをお勧めします。
参考記事:【膝を伸ばすと痛い】原因となる病気と4つのおすすめ対処法を解説!
参考記事:【膝を曲げると痛い】突然の痛みの原因とあわせ3つのおすすめ対処法を解説!
まとめ
以上、膝の内側が痛い場合の対処法について、原因別に解説いたしました。
膝の痛みの要因には、加齢に伴う関節の変化・突発的な膝への負担・使いすぎなど、さまざまです。
誤った対処方法を行ってしまうと、症状や痛みが悪化してしまう可能性もあります。ご自身の症状に当てはまるものがあれば、症状に適した筋トレやストレッチを行いましょう。
それでは本記事が、あなたの膝の痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
1)科研製薬株式会社・生化学工業株式会社「ひざの痛みと対処法に関するアンケート」より
2)Lin CH, Lin YF, Jan MH (2009) Efficacy of 2 non- weight-bearing interventions, proprioception training versus strength training, for patients with knee osteoarthritis: a rand- omized clinical trial. J Orthop Sports Phys Ther 39(6):450–45
3)Messier SP, Loeser RF, Miller GD, et al.: Exercise and dietary weight loss in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis: the Arthritis, Diet, and Activity Promotion Trial. Arthritis Rheum 50: 1501-1510, 2004.