【膝内側の痛み】鵞足炎(がそくえん)を早く治す方法とは?原因と効果的なストレッチ3選を紹介

サッカーやバスケット、ランニングなどのスポーツ時に膝内側に痛みが生じる「鵞足炎」。

痛みのある状態で運動を続けることで、歩くだけで痛いほど重症化する可能性があります。ただし、痛みの原因に合ったストレッチやアイシングなどの適切なケアを行うことで、自分で治すこともできるけがです。

 今回の記事では、鵞足炎の原因や早く治すための治療方法について、3つのストレッチと合わせて詳しく紹介します。

 最後まで読み進めることで、悩みが少しでも解決できればと思いますので、ぜひご覧ください。

鵞足炎(がそくえん)とは?

膝を触る人の写真

まずは、鵞足炎の症状について解説します。鵞足炎とは、膝内側から5cm程度下方にある「鵞足」と呼ばれる場所に炎症を起こすことで、痛みや違和感を感じるけがです。鷲足とは、脛骨(けいこつ)という脛(すね)の骨の内側に位置し、3つの筋肉が付着します。

初期の段階で鵞足部の痛みや違和感に加えて、押すと痛みが出る「圧痛」という症状のある方が多いです。また、階段昇降など膝の曲げ伸ばしにより痛みが増加することもあり、症状が進行することで、何もしていない状態でも痛みを感じることもあります。

鵞足炎はサッカーやバスケット、マラソンを含めた陸上競技などによる筋肉の使いすぎが原因となることが多いです。スポーツ障害の代表的なけがの1つであり、原因に合う適切な対処法を行わなければ痛みを繰り返してしまう可能性もあります。

参考記事:【膝の内側の痛み】4つの原因の見分け方と対処法をわかりやすく解説

膝内側に痛みが出現する鵞足炎の4つの原因

次に、鵞足炎の痛みの原因について、4つに分けて詳しく解説します。自分の運動習慣の中で、思い当たる原因があるのか確認してみてください。

急激な運動量の増加

膝をおさえる人の写真

鵞足炎で最も多い原因は、「急激な運動量の増加」などの筋肉の使いすぎによるものです。とくに、サッカーやランニング、バスケットなどのスポーツ時に膝の曲げ伸ばしなどの動作を繰り返すことで、筋肉に負担がかかり鷲足部の炎症を引き起こしてしまいます。

また、鵞足炎はスポーツによる筋肉の使いすぎのみが原因ではありません。変形性膝関節症などの膝関節の疾患による関節変形1)や、体重増加による膝へのストレスによって鵞足炎の痛みを感じることもあります。とくに、体重増加は変形性膝関節症の悪化にもつながると言われているので、体重管理には気を付ける必要があるでしょう。

膝関節周囲の筋肉の柔軟性低下

運動前後のストレッチ不足による、膝関節における周りの筋肉の柔軟性低下も、鵞足炎の原因の1つと言われています。筋肉の柔軟性が低下した状態で運動を続けることで、鵞足部に付着する3つの筋肉がうまく伸び縮みできず、痛みを感じてしまうのです。

さらに、運動後のストレッチが不足することで筋肉の緊張状態が続き、疲労が蓄積してしまいます。運動時のパフォーマンス低下につながることも多いので、記事後半部分で紹介するストレッチをぜひ試してみてください。

シンスプリントとは、脛骨という脛の骨にある骨膜に炎症を起こすけがです。別名「脛骨過労性骨膜炎」とも言われ、主な原因としてスポーツによる骨膜への過剰な負担などが挙げられます。走る、飛ぶを繰り返し行うバスケットボールやサッカー、バレーなどのスポーツで発症しやすいスポーツ障害です。

 筋力低下によるランニングフォームの崩れ

足の筋肉の筋力低下が原因となって、誤ったランニングフォームで練習を続けることも、鵞足炎の症状を引き起こしてしまいます。とくに運動時に膝が内側に入ってしまう「内また」の方は注意が必要です。

鵞足炎の症状のみではなく、他のけがにつながる可能性も高いのでなるべく早く改善しましょう。

シューズのサイズが合わないなどの不適切な運動環境

ランニングをする人の写真

鵞足炎は「シューズのサイズが自分の足に合わない」ことや「アスファルトなどの硬い地面での練習」など不適切な運動環境が原因で、痛みを引き起こすこともあります。どちらの場合も、足首や膝に大きな負担がかかるので、当てはまる場合はすぐに運動環境の見直しを行ってください。

鵞足炎になりやすい人の特徴とは?

鵞足炎の症状が出現する4つの原因について、ご自身に当てはまるものは見つかりましたでしょうか?4つの原因を踏まえた上で、下記の項目に当てはまる方は鵞足炎になりやすいと言われています。

  • サッカーやランニング、バスケットなど膝の曲げ伸ばしが多いスポーツを行っている
  • 運動前後にストレッチを行う習慣がない
  • サイズや形が自分の足に合わないシューズを履いている
  • 急に運動量が増加したり、運動内容を変更した
  • 膝関節のけがをしたことがある
  • 最近急激に体重が増えた

【重症度別】鵞足炎を早く治すための適切な対処法

ここからは、鵞足炎を早く治すための適切な対処方法を、重症度別に詳しく解説します。鵞足炎は初期の段階であれば、自分で治すこともできるけがです。

さらに、違和感を感じる程度の症状の方は悪化予防にもつながりますので、ぜひ試してみてください。

歩くと痛いなどの重症の場合は運動を1度中止しよう

鵞足炎は重症の場合、何もしていない安静時に痛みが出たり、歩くだけでも痛みが強く出現したりすることもあります。そのように、症状が重度の時はすぐにスポーツを中断し、症状が落ち着くまで安静な状態を保ちましょう

また、スポーツ中断中であっても痛みが出現しない程度のストレッチに加えて、膝や股関節の筋力トレーニングを行うことでスムーズなスポーツ復帰を期待できます。

痛みを我慢した状態でスポーツを続けることで、痛みが治りにくくなってしまい、最悪の場合は手術が必要となる可能性もあります。また、スポーツをある程度中断しても、痛みが落ち着かない場合は整形外科病院へ受診してください。

症状が軽い場合は運動量を調節することが重要

運動時や運動後、膝内側に違和感や軽い痛みがある程度の軽度の症状の場合は、運動量を調整して足に負担がかからないようにするとよいでしょう。さらに、運動時にテーピングやサポーターを用いることもおすすめです。

膝関節の動きをサポートする役割や、制御する役割があるので、膝の内側の鷲足部への負担を軽減できます。

練習後はアイシングやストレッチでケアをしよう

座った状態で膝をおさえる人の写真

鵞足炎を早く治すためには、練習後にアイスバッグなどを使用し、痛みのある部位を10~20分程度冷やす「アイシング2)」や「ストレッチ」が有効です。痛みのある膝の内側部分を冷やすことで、鵞足炎の炎症症状を落ち着かせることができ、痛みの軽減につながります。

また、運動後のウォーミングアップやクールダウンとしてストレッチを行うことで、炎症の軽減はもちろん、疲労の蓄積予防3)にも効果的です。さらに、ストレッチは鵞足炎などのスポーツ障害の予防としても有効なので、日ごろから継続するとよいでしょう。

【自分で治す】鵞足炎を早く治す効果のあるストレッチ

ここからは、鵞足炎を自分で治すためにはもちろん、予防する効果もある3つのストレッチを紹介します。太もも周囲の肉離れや筋肉痛を予防する効果もあるので、ぜひ運動前後に取り入れてみてください。

ただし、膝に腫れや熱感が見られる場合は、炎症症状を抑えることが第一優先です。ストレッチを行うと痛みが強い状態の場合は、体の休息とアイシングを優先して炎症症状を抑えましょう。

座位四股ストレッチ

まず、鵞足炎の原因となる鵞足部に付着する筋肉のストレッチを紹介します。座った状態でできるストレッチで、足への負担もかかりにくいので痛みのない範囲で行いましょう

座位四股ストレッチ

STEP1:両脚を大きく開きましょう
STEP2:上半身を捻りながら、骨盤を前方へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
STEP5:太ももの内側が伸びるのを感じながら実施しましょう
※腰を丸めないように注意しましょう

ハムストリングスストレッチ

太ももの裏の筋肉である「ハムストリングス」は、3つの筋肉からなります。ハムストリングスに柔軟性の低下があることで、膝の曲げ伸ばしがうまく行えず鷲足部を含めた膝全体に負担がかかってしまいます。

ハムストリングスストレッチ

STEP1:片足を前方に出しましょう
STEP2:骨盤を倒すように前方に体を傾けます
STEP3:もも裏が伸びた状態を保持しましょう
STEP4:ゆっくりと体を戻しましょう
STEP5:足首を反らして踵を地面につけましょう
※腰が丸まらないように注意しましょう

大腿四頭筋ストレッチ

太ももの前面につく「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」は、ジャンプやランニングなどのスポーツ動作を繰り返すことで、柔軟性の低下を起こしやすい筋肉です。鵞足炎だけではなく成長期に多いオスグッドや、大腿四頭筋の使いすぎによるジャンパー膝など膝関節のスポーツ障害の原因ともなります。

大腿四頭筋ストレッチ

STEP1:横向きの姿勢となりましょう
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方から掴みましょう
STEP3:後方へ引っ張りましょう
STEP4:元の姿勢に戻りましょう
STEP5:繰り返し実施しましょう
STEP6:太もも全面の伸びを感じながら行いましょう
※腰が反らないように注意しましょう

鵞足炎が治る期間はどれくらいかかる?

筋肉の使いすぎによる鵞足炎は重症度にもよりますが、5日〜14日程度で炎症症状が落ち着く場合が多いです。その後、原因に合わせて適切なストレッチや筋力トレーニング、運動環境の見直しを行い、徐々に運動量を増やしていく必要があります。そのため、スポーツ復帰までの期間は1ヶ月程度かかるでしょう。

ただし、適切な休養期間が取れていなかったり、原因となる不適切な運動環境を継続したりすることで、復帰後に再び痛みを感じる場合もあります。

痛みが続く場合は整形外科への受診が必要

膝内側の痛みから鵞足炎の症状を疑い、休養や運動量の調整、ストレッチを行っても痛みが落ち着かない場合もあります。そのような痛みが続く場合は、整形外科病院を受診しましょう。

整形外科病院を受診することで、レントゲンや超音波などの検査によって痛みの原因が明らかになるでしょう。原因が明らかになることで、適切な治療法を見つけることができます。

さらに、痛みが強い場合はロキソニンなどの痛み止め薬を処方してもらえることもあります。医師の説明通りに薬の用法・用量を守って適切に服薬しましょう。

整骨院に通うことで早く症状が改善することも

鵞足炎の症状を疑う場合、整骨院に通うことで膝内側の痛みなどの症状が早く改善することがあります。整骨院では早期にスポーツに復帰ができるよう、痛みの緩和目的で高周波治療器や超音波治療器の使用、ストレッチやランニングフォームの指導などを行ってくれる施設が多いです。

まとめ

今回の記事では、鵞足炎の原因や早く治すための治療方法について、3つのストレッチと合わせて詳しく紹介しました。

鵞足炎は筋肉の使いすぎが原因となるケースが多いです。そのため、痛みを感じる場合は練習量を調整して、炎症症状が落ち着くまで安静を優先する必要があります。

スポーツ復帰後も、ストレッチやアイシングを行うことで鵞足炎の再発を予防できるので、体のケアは継続して行いましょう。

本記事があなたの痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。

参考文献
斉藤 正佳, 赤羽根 良和, 永田 敏貢, 栗林 純:内側型変形性膝関節症に合併した鵞足炎の発生機序,第27回東海北陸理学療法学術大会八木茂典 :シンスプリントの重症度分類と治療,Sportsmedicine 2010 NO.126,p21-22
2)大西範和,山根 基,、照屋博康 他:運動後のスポーツアイシングの効果的活用に関する基礎的研究-運動後の回復に対するアイシングの影響-

3)市橋則明:ストレッチングのエビデンス,理学療法学第41巻8号,p531-534,2014